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この人に聞く!【明治国際医療大学教授・中川貴雄氏

2012/02/01
柔道整復高等教育の課題

私は、放射線技術を短期大学で学びました。短期大学は3年制。2年制専門学校からの格上げで2期目でした。大学のポリシーは医療における放射線技師の資質の向上であったと思います。また、かつて学び、教鞭を執ったアメリカのカイロプラクティック大学のポリシーも、医療におけるカイロプラクターの資質向上でした。
これらの大学と現在の柔道整復高等教育とを比較してみると、柔道整復高等教育の焦点が未だしっかりと定まっていないのではないかと思われます。それは柔道整復の高等教育が始まったばかりであるという理由からだと思います。
私が2期生として学んだ放射線の短大の場合も焦点が定まっていなかったのではないかと思われます。焦点が定まっていたのは、理論を単に教授するのではなく、将来、学生が新しい理論を創造できる能力を培うため、従来の専門学校では習わないような高等数学や物理学、専門である放射線物理学を習得することでした。その目的は、業界を牽引するリーダーの育成であったと思います。それに対して、焦点が定まっていなかったのは臨床分野でした。臨床実習にはほとんど時間を割いていませんでした。そのため、病院などに就職した同級生は、臨床経験不足に泣かされたようです。しかし、幸運にも、就職した病院には後輩を支える経験豊富な多くの先輩達がおり、後輩の経験不足を補うシステムができていました。
柔道整復の高等教育でも、専門学校では習うことのない科目が多く組み入れられています。知識の面では、柔道整復師のリーダー育成のための方向性を見ることができます。しかし、この知識を実際に活用するための臨床実習不足は否めないところです。これからの柔道整復のリーダーとなるべき卒業生のための臨床実習経験が不足しているように思われます。そのため、この不足している臨床実習を充実させるためのカリキュラムや研修施設の拡充がこれからの課題であると思います。
私が教鞭を執ったアメリカのカイロプラクティック大学は1911年創立の大学です。充実したカリキュラムが有名でした。特に、専門知識の分野は充実していました。そのため、それを勉強したいという学生が多く集まる大学でした。しかし、臨床実技は貧弱でした。この大学の卒業生は知識では太鼓判を押されていましたが、治療に関しては非常に低い評価を受けていました。この臨床実技不足のため、徐々に評価を下げてしまっているのが大学の悩みだったのです。そこで大学のとった方法は、知識重視のカリキュラムから臨床重視のカリキュラムへの改編でした。それも単に技術を教えるというのではなく、患者を治療するためのカリキュラムへの改編でした。数年後、大学は全米で有数のカイロプラクティックの有名校となりました。
柔道整復の高等教育に必要なものは従来の柔道整復の教育体系ではなく、柔道整復を担うリーダー育成のための教育体系であり、それが柔道整復全体の資質向上につながるのではないかと思います。
その選択肢の一つが、知識重視のカリキュラムに、臨床重視のカリキュラムをくわえることであり、「知識だけでなく実際の臨床に強い柔道整復師」育成のためのカリキュラムではないかと思います。

 

中川教授  プロフィール

    中川 貴雄
       1948年生まれ

【学歴】
昭和43年3月 明治東洋医学院専門学校柔道整復科卒業
昭和43年4月 大阪大学医療技術短期大学部診療放射線科入学
昭和43年9月 明治東洋医学院専門学校鍼灸科卒業
昭和46年3月 大阪大学医療技術短期大学部診療放射線科卒業
昭和50年9月 Los Angeles College of Chiropractic入学(以下LACC)
昭和53年12月 同校卒業

【職歴】
昭和46年10月 大阪府池田市にて中川療院を開業
昭和53年2月 LACCにてカイロプラクティック・テクニック・クラス助手
昭和54年1月 LACCにてカイロプラクティック・テクニック・クラス講師
昭和55年9月 LACCカイロプラクティック・テクニック・クラス助教授
昭和56年10月 カイロプラクティック国家試験委員
昭和57年4月 ロサンゼルスにてNakagawa Chiropractic Office を開院
昭和57年6月 LACCカイロプラクティック・テクニック・クラス非常勤講師
平成11年9月 アメリカから帰国
平成11年9月 大阪市にて中川カイロプラクティック・オフィスを開院
平成16年4月 明治鍼灸大学医療技術短期大学部柔道整復学科非常勤講師
平成19年4月 明治鍼灸大学(現 明治国際医療大学)保健医療学部
                      柔道整復学科教授(現在に至る)

【免許・資格】
柔道整復師、Doctor of Chiropractic (LACC)、カイロプラクティック開業資格(カリフォルニア州)、Bachelor of Science(生物学士)LACC、鍼灸師、カリフォルニア州公認鍼灸師、診療放射線技師、放射線取扱主任二種免許

【会員】
日本カイロプラクティック徒手医学会 会長、日本柔道整復接骨医学会 会員、モーション・パルペーション研究会 会長

【著書および論文】
1.
Determination of bony subluxation by clinical, neurological and chiropractic procedure (共同執筆 Journal of Manipulative and Physiological Therapeutics, SEP. 1980, 3-3)
2.
脊柱モーション・パルペーション(科学新聞社 1985)
3.
関節の痛み(訳書 科学新聞社 1986)
4.
クリニカル・カイロプラクティック・テクニック(訳書 医道の日本社 1990)
5.
カイロプラクティック・ノート 1(科学新聞社 1990)
6.
オステオパシー臨床マニュアル(訳書 科学新聞社 1994)
7.
オステオパシー・テクニック・マニュアル(訳書 科学新聞社 1995)
8.
カイロプラクティック・セラピー(訳書 科学新聞社 1996)
9.
四肢のモーション・パルペーション(上巻)(科学新聞社 2001)
10.
四肢のモーション・パルペーション(下巻)(科学新聞社 2003)
11.
中川貴雄 カイロプラクティック・テクニック 上巻 (科学新聞社 2008)
12.
ビデオ/DVD:中川貴雄カイロプラクティック・テクニック 全10巻(ジャパンライム 2001-2005)
13.
ビデオ/DVD:脊柱モーション・パルペーション 全4巻 (科学新聞社 1988/2006)

 

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