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「柔道整復の歴史的背景からみる傷病名(負傷名)見直しの必要性」を拝見して

2012/01/16

これにより柔道整復療養費取扱いに係る捻挫とは、急性期の新鮮外傷性関節損傷のみに限定されたことになると言えなくもない。
それでは今日まで関節周囲組織の損傷として、或いは反復的動作による損傷として捉えて、扱ってきた請求対象傷病が除外される可能性を生じることとなる。
そこでその対処となる支給基準上の解釈として「挫傷・亜急性」の文言が加えられたと理解しているが、自己理論過剰であろうか。

我々は損傷原因のある損傷に対しては、骨折・脱臼はもとより打撲・捻挫・挫傷の傷病名を受診者の症状や損傷状態に照らして使用してきた経緯がある。
その根拠のひとつとして、柔道整復師を行政管理する厚生労働省が認可をしている柔道整復養成校学校協会が教育カリキュラムとして使用する教科書において、亜急性定義が次のように示されている。

 

亜急性

反復あるいは持続される力によって、はっきりとした原因が自覚できないにも関わらず損傷が発生する。この中には、臨床症状が突然発生するものと、徐々に出現してくるものがある。前者は、先に述べた荷重不均衡状態、あるいは静力学的機能不全の状態下で損傷される場合が多く、組織損傷が拡大していく中で、外力として認知できない場合あるいは軽微な外力で突然発生したかのように機能不全に陥る。後者は、静力学的機能不全の状態であることが多く、症状は次のような経過をたどることがある。
まず疲労感を覚えやすくなることで、身体に何か異常があることにきづくが、当初はそれを強く感じない。経過とともに疲労するのが早くなり、また安静によっても容易に回復しなくなることでそれを損傷と認識するようになる。ついて、この疲労状態は疼痛となって現れ、さらに症状が強くなると、局所の腫脹、発赤などが現れたりする。

(社団法人全国柔道整復学校協会・教科書専門委員会編  
株式会社 南江堂 発行 柔道整復理論より抜粋)

 

これら一連の経緯経過をマスコミや保険者が理解しているとは到底考えがたい。
変形性の関節症や慢性の疼痛、五十肩などと受診者が自己判断されている場合においても亜急性の損傷を生じる症例が多々見受けられることは適正な柔道整復を業とされている柔整師ならば臨床上少なからず経験されているはずである。
しかし、現状では支給基準に準拠した傷病名以外の使用は許されず、打撲や捻挫等の傷病名で施術と算定を行わなければならない。
この事実が既に柔道整復の適正な算定の概念上の誤解を生じていることになる。
その上、特例として今日に至っている柔道整復療養費受領委任の最大の特色である支給申請書への受診者による事前署名方式においても、あたかも違法な白紙委任であるとした失礼極まりない大きな誤解までを生じさせていると言っても過言では無かろう。

柔道整復師の業務とは?との問いに対して、骨折・脱臼・打撲・捻挫の施術だと言いきられる御仁が業界にもいらっしゃる。
国会での質疑応答内容を注視してみると岩尾医政局長答弁においても「骨折、脱臼、打撲、捻挫“等”」とされており、明らかに『等』を含んでいることが判る。
この場合の『等』は、平成5~7年の医療保険審議会柔道整復等療養費部会において現在での「挫傷」を指すものである・・・と判断された記憶があるが定かではない。

有り体に言えば、柔道整復業界も柔道整復師の管理行政機関も柔道整復の縛り本体にメスを入れずに、単なる対症療法的処置に重きをおかれて来た結果ではなかろうか。
以上の記述は、あくまでも筆者の独断的思考であるが、タイムリーであり喫緊の重要課題として、明治国際医療大学 長尾淳彦教授・日本整復師会 田中威勢夫代表の両氏による傷病名の見直しについての連名寄稿は溜飲下がる思いで拝見させて頂いた。
両氏におかれては、業界のキーマンとして傷病名見直しを是非とも実現させて頂きたいと願うものであり、柔整師の一人として心よりエールを送りたい。

平成24年度医療費改定率は本体ベースで1.379%と発表された。
うち、医科改定率では1.55%であり前回の1.74%を若干下回る改定となった。
外来点数と入院点数の比率は定かではないが、医科外来改定率を根拠として柔整療養費料金が改定されるとの定義が前回から示されているかぎり多くは望めない。
冒頭に記述した如く厳しい改定になろうことは今一度述べておきたい。
そして本稿を記した日にオウム真理教関連の犯罪に関わる重要容疑者の逮捕である。
しかも同容疑者の逃走を手助けしていた女性も犯人蔵匿の疑いで逮捕された。
約10年ものあいだ女性の生活基盤となったのが大阪府東大阪市内の整骨院勤務であった事も明らかになっているようであり、もう本当にご勘弁願いたい心境である。
とにもかくにも我々一般の柔道整復師に今必要なことは、一人一人が脚下照顧し原点である『信頼回復』に全力を注ぐべきである。

 

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