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この人に聞く!【帝京平成大学・樽本 修和 教授】

2011/07/16

臨床技術については、診断・処置・治療法が伝承的及び伝統医科学的観点から科学的根拠を持った技術(テクニック)になるための研究を行う、柔道整復学の本筋は骨折や脱臼の非観血的処置と、外傷における軟部組織損傷からくる痛みに対する非観血的療法の技術が特徴であり、柔道整復師は実技(技術的)が本流で、その特徴ある技術は個々の能力により異なるので、再現性はなかなか困難であるため、多くの臨床デ-タ-を集積して、理論や科学性を後付することが重要なってきます。例えば、足関節捻挫の特徴ある治療法の臨床データを集積し、再現性のある手技療法や治癒期間の短縮の可否などを調べることで、臨床現場における技術の研鑽に繋がり、臨床実習施設と接骨院での臨床デ-タ-を如何に科学的根拠にするかは、統計学的な評価を行い、医者や研究者との協力体制の確立が重要になってきます。

大学の研究機関としては、整復技術の科学性とその根拠を研究機器によってデ-タを抽出し、柔道整復の固定法が伝承的及び普遍的であることを求め、その固定法の科学的根拠を如何に立証するか、 症状に応じた固定具を選択してその根拠を探求し理論付けることが重要です。特に臨床現場でおこる様々な疑問などについて研究を進め科学性のあるデ-タを蓄積することが科学的根拠に繋がってきます。

社会医療においても柔道整復師の治療が医療経済学的な観点から医療費の軽減に役立っている事を示すことが必要です。

柔道整復師と医療経済においても、医療財政が逼迫する中で、保険給付額引き下げの圧力は柔道整復業界にも及んでいます。柔道整復分野の保険給付は、療養費扱いの包括払いが中心で、必ずしも実際の行為を反映しているとはいえません。

そこで接骨院における診療行為の実態を、原価計算から算出した治療費と、レセプトから算出した療養費とを、一定期間の全例調査によって比較することで解析し、代表的疾患の確定と標準治療モデルの構築を行い、標準治療モデルの治療コストを、原価ベース・レセプトベースの双方から、算出・比較して検討することで、治療効果が費用に見合っているか否かを判定する経済性のエビデンスを見いだすことが社会の医療として重要になってくるので、この分野での研究の必要性が求められています。

昨年より日本柔道整復接骨医学会の編集委員を務めさせていただいておりますが、数年前に比べますと多くの原著論文が出てくるようになってきていると感じています。この傾向は柔道整復師の皆様が柔道整復学の構築を真剣に考えはじめたのではないかと考えます。 大学も学校協会も柔道整復教育における共通の問題点があり、それは養成校の乱立、学生の多様化、学校間の格差拡大、臨床実習の不足、実習施設の多様化、卒後臨床研修が法制化されていない、教育面においても専門基礎教育の教科間の連携が希薄であり、単純丸暗記・知識偏重がうまれ、それによって統合性に乏しい教育になっています。また知識を統合する能力を賦与できないために応用力・問題解決能力・臨床能力も賦与できていないと感じます。よって国家試験は単純丸暗記・知識偏重の試験で合格率が高くなる傾向が生まれ、病態生理学を軽視しているために臨床現場では役に立たない柔道整復師が生まれています。

この状態を解決するには大学と学校協会が連携し柔道整復学構築の確立を成し遂げることです。その一歩として柔道整復学の一定水準を保証するには、到達目標のある教科書や教材の作成が急務であり、臨床実施習施設の充実が不可欠です。特に骨折・脱臼を鑑別診断できる臨床技能とその処置能力を研鑽できる環境を作ることが重要であります。