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特集

『国保中央会に期待』

2010/07/01
算定基準の明確化と審査の基準

算定基準と審査基準は同じであるはずが、各都道府県知事との協定となっており各県にローカルルールと言うのが存在し審査基準が全国同じではない。

例えば頚部と左肩関節と右肩関節を例にすると、「柔道整復師の施術に係わる算定基準の実施上の留意事項」、第5の4その他の事項(1)近接部位の算定方法 イには、左右の肩関節捻挫と同時に生じた頚部捻挫又は背部打撲~、と記載がある。同時でなければ算定出来ると解釈出来る文章である。ところがその後ろにある表の④算定可能な部位の負傷例には、4肩関節脱臼・捻挫の所に、頚部捻挫(ただし、肩関節一側の場合)とあり、頚部捻挫は一側の肩関節捻挫しか算定出来ないと記載がある。どう読んでも矛盾があるとしか思えない。

全国健康保険協会(協会けんぽ)で昨年の12月にこの解釈に対するアンケートを全国的に実施したが、結果については未だ連絡がない。これだけの大きな組織が算定の可否を判断出来ないでいるのは、各県の審査会でも解釈がまちまちである為と推測される。

学術的にガイドラインが無く算定部位基準が曖昧であることは以前から指摘があり、同じ患者が2軒で施術を受け、出てきた申請書の算定部位が違う事はしばしばある。さらに保険取り扱いで算定基準までもが曖昧では何もかもが曖昧である。

CMで「国境が命の境であってはならない」とあったが、県境が請求額の境となって良いのだろうか。

今年から算定基準に対する厚生労働省によるQ&Aが出される。これらについても当然のごとく出てくる質問と思う。Q&Aを繰り返すことでこれらの溝が埋まり、算定基準および審査基準が一本化されて行くと期待している。

 

疑義申請書対策と指導・監査

今回においても柔整審査会の権限は確立されなかった。その前に審査委員の選定基準や欠格事項が定まっていなければ権限を与えること自体が難しいのだろうか。

ほとんどの健保組合や共済組合では、民間の調査会社に委託し、患者照会と称して強引な返戻で圧力を掛けてきている。柔整審査会の権限を強化し調査権や査定権を持たせ、そこに保険者権限を委任してしまえば無駄な民間調査会社への出費は必要ない。そもそも柔道整復療養費の給付過程において、請求代行業を含め第3者が利益を上げること自体が問題であり、それが闇組織の資金源になりうることを国は再認識して対応してもらいたい。

ところで全国健康保険協会(協会けんぽ)の各支部(県単位)では調査部を作り、患者調査を専門に行う部署を設置した。また、部位や日数による統計処理システムを導入し、多部位の請求者をワースト順に並べるなどの一覧表を簡単に作成出来るようになった。これも国保中央会からの提言が活きた形で厚労省から出た指示と思う。

やはり特に大事なのは指導・監査マニュアルの構築である。行政にとってこれは命綱であり、彼らは理由付け・大儀がなければ動かない。柔整審査会でいくら不正の傾向を指摘しても実行に移さなかったのは、基準だとか目安がなかったためで、この項目のこのレベルに達したらこう動くとのマニュアルを作れば動くようになる。今後は不正する側と更なる知恵比べとなり、規制の抜け道を閉ざしていくマニュアルが作られることを期待したい。

 

IT化の推進

国保連合会と意見交換してもIT化に難色を示すわけではない。システム上の問題であり、これも整備されれば問題ないと思われる。やはりシステム構築の設備費をどうするか。これには政治的な力が必要でしょうから、是非、柔道整復師小委員会に頑張って頂きたい。

2年前からの会計検査院・健保連から厚生局への要望、マスコミ等の業界批判、民主への政権交代、国保中央会の提言など、この業界を立て直す今がテコ入れの好機ではないか。自浄作用と言われるが柔道整復師側が適正化に効果的な意見や要望を出しても、行政側は直ぐに受け入れてはくれない。縦割り社会では我々業界の横からの意見は受け付けてもらえない。

しかし、今回、国保中央会という大きな後ろ盾により、保険者と柔道整復師の適切な意見を国に受け入れさせた意義は大変大きいと思っている。この良い流れを断ち切ることなく国民に納得頂ける保険取扱制度に改善することが、受領委任のみならず柔道整復師の存続に必要であることは誰も疑わない。

 

プロフィール
    塚崎    康之
        1963年    長崎県生まれ
        社団法人  岡山県柔道整復師会  理事・保険部長


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