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柚木脩氏、超音波装置使用法について講演
平成24年5月20日(日)、東京国際展示場にて開催された日本超音波骨軟組織学会第27回東日本支部学術集会において、東京有明医療大学保健医療学部柔道整復学科長の柚木脩氏による講演が行われた。
冒頭に、日本超音波骨軟組織学会副会長の佐藤和伸氏より〝これから当学会は骨・軟部組織に関して医学を牽引していくような素晴らしい学会にしていきたいと思っております。皆様と勉強し、明日の臨床に役立てて頂きたいと思います〟と挨拶があり、柚木氏の基調講演へと移った。
四肢・骨盤組織の保存的治療 超音波検査の価値をたかめる使用法の模索
東京有明医療大学保健医療学部柔道整復学科長 柚木脩氏
超音波は観えるということだけではなく、どのように使うかということが重要
柚木氏は〝医療を取り巻く環境は厳しく、第三者が非常に厳しく評価している。それに耐え得る学会でなければならない〟と医療が難しい局面にあることを再認識させた上で、超音波検査の使用において必要とされる心構えについて述べた。
〝最初に治療の手順について、現代西洋医学ではクリティカルパス(危急時の行程)あるいはクリニカルパス(臨床における検査・治療行程)というものを作成する。今の皆様の業界では自分の治療の仕方を皆さんが持っていて、必ずしもそれがデータベース化されていない可能性がある。他の人とは違うのだと仰る方もいるが、実は自分たちが違うと言っているだけで中身はそう変わらないことが多い。だからそれをデータベース化する必要がある。
どんな治療があるかということを話す時には、治療法のオプション(選択)、その中でもこの方法が良いというガイドライン(指針)があり、またその中である程度合意を得られるようになったものをスタンダード(標準)とする。今、医療には世界中で標準が求められており、WHOも医療に携わる者は21世紀の人類にどのように貢献できるのかを明確にしなさい、そしてどの業界のどの分野の人もその成果を示す研究デザインを持って、なおかつ評価法を示しなさいと述べている。そういうことを示すスタンスを持つこと、即ち研究デザインを念頭に置くということが大事であり、医療においては単一の調査対象者を縦の時間軸に沿って継続的に調査していく縦断的研究、初診時から治癒時まで計画的にデータを収集する前向き研究というスタンスを常に持つことが求められる。患者さん一人ひとりが研究の対象だというつもりでデータを蓄積しておかなければならない。こういうことをきちんとやることが超音波検査の価値を高める使用法につながるのではないかと思う。
超音波装置は対象物にプローブ(探触子)をあてて超音波を発射する。超音波が対象物の中を進んで固いものにあたると反響し、その反響した超音波をプローブで受信しコンピュータ内部でデジタル信号に変換して画像データとして可視化処理する。しかし、超音波装置は言い換えればエコーによる探知機であり、何かが見えているが決して実物を見ているわけではない。だから我々には、如何に真実に近づくかという研究者としての態度が必要となる。
共通理解として持っておかなければいけないことは、1つ目に医の理念を共有すること。生命への畏敬を本旨とし、個人の尊厳を中心的な柱とする。2つ目に厳正な自己規律と相互批判の態度を持つこと。特に、人間を対象とする研究者、我々自身は個人や集団が治療現場や非医療現場、基礎的研究現場あるいは立場に関係なく倫理基準や科学的原則に従う。3つ目が専門家であるという自覚を持つこと。つまり言い換えるならば、エコー写真は患者さんのためであり、患者さんのものである。医療人は誰にでも分かるエコー写真を撮り、地域完結型医療の連携ツールとして用いる。そして学会としては、プロとしてのエコー検査習得の仕組みをつくる使命があるのではないかと私は思う〟と、エコーに頼り切るのではなく、研究者としてのスタンスを崩さずに計画的に研究を進める必要性を訴えた。