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「日整元会長・原健氏に聞く!」

2010/09/16

からだサイエンス第42号でのインタビューで〝国への要望事項を1つに絞るとすれば〟という質問に対して、原会長は〝最大の要望事項は医療保険制度の抜本改革に関与することであり、柔道整復師が医療界の抵抗を排除して21世紀に生き残るための制度的な位置の確立に尽きると思います〟と発言されていらっしゃいます。医療保険制度の抜本改革とは具体的にどのようなことなのかお聞かせください。現在でもその意見に変わりはありませんか?今の状況と照らし合わせて、その方向に近づいていると思われますか?

憲法第9条で自衛隊は軍隊でないと解釈されながらも事実は軍隊であることは周知の通りであり、柔道整復師の施術について、医師と同様の医療であると解釈すべきであります。私が日整会長当時、厚労省の課長に強く申し入れたことがあります。この問題については、日整の活動状況などを見聞きいたしますと、約17,000人の柔道整復師を束ねて、会員優位指導をする日整本来の機能が低下しており、医療保険制度の抜本的な改革や柔整校の乱立など日整創設以来、かつてない難問山積の乱世を生き抜くノウハウがないのか・・・と日整の未来を憂い、危惧する会員の一人として一言申し上げます。私の会長時代のプランニングは殆どが破棄されております。その中で最も残念なことは、その1、柔道整復師の社会的認識を日本で著名な有識者の先生方に持っていただくと共に、柔道整復師への有識者から考えられる提案をいただく為に柔整懇話会を設置いたしました。医事評論家で医道審議会柔整部門の委員長の水野肇先生を座長に、千葉大学の守屋整形外科教授、武見敬三参議院議員、国保中央会理事・田中一哉先生、国際医療福祉大学学長・谷修一先生等で構成されておりました。
医療保険制度の抜本改革の動き、柔道整復師の資質の向上や生涯学習、学術誌のあり方、寄付講座問題、介護保険への取り組みなど多くの貴重な提言をいただきました、柔道整復師の明るい未来を築き上げる為に一つ一つ実現していかなければならないことばかりでありました。その2、柔道整復師支援の為の200万人署名の放置。これは平成15年3月の総会の決議事項であります。柔道整復師1名が200人の署名を全国で集め、全体で200万人に達したときに、マスコミを活用して大きく宣伝活動を行い、柔道整復師の命運を握る重大な事項の要求、①医療保険制度の抜本改革、②柔道整復師の業務の確立と拡大、③身分の向上と組織の拡大、④無資格者の開業に対する取締法の設置などに活用する目的でありました。現在、日整に送られてきた膨大な数の署名は、会員が患者さんや友人、知人に依頼して集めていただいた貴重な汗の結晶であります。しかし、これらが活用されずに放置されることは如何なる理由をもってしても許されることではありません。法人の総会決議が一部の役員によって破棄されることは重大問題であり責任を問うべきであります。

 

原会長は、連絡協議会の設立を呼びかけ水面下で行った数少ない日整の会長です。現在、歴史上初めてと思われる民主党の「統合医療を促進する議連」の中にある柔道整復師小委員会(大島九州男参議院議員が中心)の呼びかけで数多くの業界団体が一つのテーブルにつくことが実現しました。日整からもK県社団会長やF県社団会長が出席されているものの多くの日整会員や各県の会長も内容について余り知らされていないとお聞きします。日整の業界内での主導的立場や政治との関係が自民党時代とは異なり、ハッキリいえば弱くなっていると感じます。しかし日整はやはり業界ではまだまだ、実務的にも、社会貢獻にしても、また学術的にも主導的な位置にいると思われ、やはり排他的というよりも先頭に立ち、業界のさまざまな懸案に対応し事業を進めて行かなければいけない立場だと思いますが、本来は日整主導で意見を統一する必要があるのではないでしょうか?また原会長はこの柔整小委員会に何を期待されますか?

民主党の国会議員を中心に「統合医療の促進のための小委員会」が開催されたことについて余り意味がないと思われます。日整や府県の社団は戦後60年間自民党と親交を深めてまいりました。今回、政権交代が行われたからと言って政権与党に歩み寄る・・・オポチュニストと非難されかねないと思います。二大政党の時代に入ろうとする中で、従来通り業会(社団)はかたくなに自民党の支援を続けるべきであります。

 

原先生は、柔整の業務範囲とされる〝骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷〟以外に「廃用性筋の萎縮」について柔整の治療法、業務の可能性について意見を述べておられましたが、業務範囲に関して日整は、どのような取り組みをされてきましたか?

柔道整復師の業務の中に廃用性筋の萎縮を含むことを主張してまいりました。大腿四頭筋や下腿三頭筋の萎縮により、高齢者の歩行時の転倒が原因となって脊柱、大腿頸部、前腕骨の骨折が惹起される例が非常に多くあります。高齢者の骨折は血栓などを起こして死に至ることもあります。寝たきりに繋がることもあります。柔道整復師が適切に治療することで、患者の安心と治療上の経済的負担の軽減につながります。もう一つの持論は、真の意味で柔整理論の確立は、骨折、脱臼、打撲、捻挫、軟部組織損傷に加えて廃用性筋の萎縮について、診断法、治療法、後療法、社会復帰までの柔整の理論を構築して初めて学問として完成されると言えます。整形外科の真似をして柔整学の構築などとは言えないと思っております。

 

原先生は現在も京都社会福祉協議会の会長を務めていらっしゃいますが、柔整の介護に対する有用性がまだまだ社会に認知されていないように思います。今後の可能性についてお考えをお聞かせください。

今年の1月で京都市社会福祉協議会の会長を辞しました。市社会福祉協議会の定款では、80歳が定年となっております。今は顧問として、若い方に道を譲り、意見を求められたときに助言をするのみを旨といたしております。介護については、京都では柔整師は大変に活躍し、評価もそれなりに頂いております。
地域介護予防推進センター担当事業所の決定につきましても4事業所を押しのけて社団が落札し、事業展開を行っております。ケアマネ事業所として11年間運営されております。京都市のすべての行政区の介護保険審査会に柔整師が委員として参加しております。さらに京都市系のデイサービスに機能訓練指導員を派遣しております。デイサービスを経営する接骨院院長も10人は下りません。今年は老人ホームを設置する会員も生まれようとしております。介護保険満身に享受しております。私が嘗て11年前に介護保険制度がはじめられること、ケアマネその他で会員が参加することを強力に先見性を持って、推進してまいりました。柔道整復師が経済的に窮乏するようになった時の支えとして会員に進めてまいりましたが、今になって理解されているものと思います。