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柔道整復療養費点検業務委託会社について

2010/07/01
明治国際医療大学   教授   長尾淳彦

柔道整復療養費支給申請書の内容を保険者が外部の業者に点検業務を委託している。

これは平成12年8月15日と平成18年1月12日に厚生労働省保険局保険課が地方厚生(支)局保険主管課長宛の事務連絡により保険者が外部委託出来る根拠となっている。

平成18年1月12日付の事務連絡を紹介すると

健康保険組合における事務の外部委託について

標記については、平成12年8月15日付事務連絡「診療(調剤)報酬明細書の点検業務について」を始め、個人情報の保護に重点を置いた指導をお願いしてきたところですが、最近、被保険者等から、

・被保険者等へ質問する権利は健康保険法上、保険者(又は保険者の職員)にしか認められていないにもかかわらず、療養費支給申請書の審査を委託されている業者が照会をしているが、これは違法ではないのか。
・健康保険組合事務センター等と名乗るところから療養費支給申請書にかかる施術内容の照会を受けたが、このような組織は存在するのか。
・健康保険組合が事務委託をしている場合の個人情報保護についてはどうなっているのか。

といった質問等が寄せられていることから、事務の外部委託にあたり留意すべき点を下記に示しますので、貴管下健康保険組合への周知・指導方よろしくお取り計らい願います。
なお、管下健康保険組合への周知にあたっては、統一性を図るため、別添「事務連絡例」を使用していただきますようお願いいたします。

 

保険者又は保険者の職員(以下「保険者等」という。)に限り認められていると解せられる法令上の権利・能力については、外部委託によって行使することはできないこと。
なお、権利・能力の行使に伴う事務、例えば、療養費支給申請書にかかる施術内容を照会する文書の発送や取りまとめについては、外部委託することも差し支えないが、その場合、被保険者等に誤解を生じさせないよう、権利・能力を行使しているのは保険者等であることを明確にすること。

 

(外部委託ができない権利・能力の例)
健康保険法(抄)
第五十九条  保険者は、保険給付に関して必要があると認めるときは、保険給付を受ける者(当該保険給付が被扶養者に係るものである場合には、当該被扶養者を含む。第百二十一条において同じ。)に対し、文書その他の物件の提出若しくは提示を命じ、又は当該職員に質問若しくは診断をさせることができる。

【要旨】 
この条は、保険給付が適正に行われることを確保すべく、保険者に、保険給付を受ける者(被扶養者にかかる保険給付については、当該被扶養者を含む。)に対し、文書その他の物件の提出もしくは提示を命じ、または当該職員に質問もしくは診断させることができる権能を付与することを規定している。

 

外部委託している事務の内容や委託先等については、必要に応じ被保険者等への周知を図ること。
外部委託した事務の実施に伴う被保険者等からの質問等については、健康保険組合が責任を持って対応すること。
個人情報の保護については、個人情報保護法等に基づく適切な措置を講じること。

 

【解釈と運用】
1)
「保険給付に関して必要があると認めるとき」
傷病手当金または療養費の支給の可否、給付制限および給付調整事由の確認、第三者求償、不正利得徴収の可否および額の決定、その他レセプト点検にともない明らかとなった事実の確認等に必要な場合である。
2)
「文書その他の物件」
文書とは、たとえば医師の診断書等であり、その他の物件とは、たとえばレントゲンフィルム等である。
3)
「当該職員」
健康保険組合の職員も当然含まれる。
4)
「診断をさせる」
「受診中の被保険者の治療経過が良好でないときその診療を担当していた保険医以外に当該職員をして診断させる場合、及び保険医が就業不適当と認めたが保険者は業務に服し得ると認めその保険医以外に当該職員をして診断させる場合などは、第六十五条[現行・第五十九条]の診断の範囲に入る。その他本条は、主として傷病の治療を遷延せんとする場合及び虚病の防止を目的とするすべての診断を含む。(昭和八年十月五日保規第三六五号)」

 

第百二十一条  保険者は、保険給付を受ける者が、正当な理由なしに、第五十九条の規定による命令に従わず、又は答弁若しくは受診を拒んだときは、保険給付の全部又は一部を行わないことができる。

【要旨】
この条は、保険給付が適正に行われることを確保すべく、第五十九条に基づき、保険者から、文書その他の物件の提出もしくは提示を命ぜられ、または当該職員から質問もしくは診断を受けることとなったにもかかわらず、この命令に従わず、または答弁もしくは受診を拒んだ保険給付を受ける者(被扶養者にかかる保険給付については、当該被扶養者を含む。)に対し、給付制限を行い、その実施を保障することを規定している。

【解釈と運用】
1)
「正当な理由なしに」
正当な理由の有無は保険者において決定する。
2)
「保険給付の全部又は一部を行わないことができる」
保険者が、文書その他の物件の提出もしくは提示を命じ、または当該職員に質問もしくは診断をさせることにより、実情を明確に把握した上で給付しようとするその保険給付についてという意味である。

 

 

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