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「柔整療養費の算定基準の見直し」について
我が国の医療費は小泉政権下における医療費政策によって総額1.1兆円の総医療費削減計画に端を発し、以来マイナス改定が常道となった。今年度は新たに誕生した民主党政権のもと、一条の光明を得ることになったのであろうか。
今春決定された医療費改定は、総額(本体)1.55%(約6000億円)、医療費ベースでは0.19%(約700億円)アップとして発表され、その内訳は医科1.74%に対して歯科2.09%となったことが今回の最大の特徴であると言える。日医連、日歯連それぞれの支持政党対策の差異がダイレクトに影響した結果であろう。我々柔道整復療養費の改定はどのような結果であったのか、少し説いてみたい。
柔道整復療養費(以下 柔整療養費)の改定基準は正式には定められていないが慣例上、概ね医科改定率の1/2として表されている。今年度の医科外来における改定率は0.31%であるので、慣例上の改定率は0.15%となり、柔整療養費として扱われる総額に0.15%(改定率)を乗じた額が実質の改定金額となる。本来、柔整療養費総額に対する改定率とその結果に生じる影響率(金額)を改定の根拠として示されることになるようだが、数字に疎い筆者にも今回は期待できないことが容易に推察できる。加えて昨年11月に実施された行政刷新会議事業仕分けにおいて、国庫負担との関連から柔整療養費が俎上にあげられ、多部位逓減率強化や負傷原因記載強化、並びに不正請求排除などについて15名の仕分け人中11名による“見直し”判断が下された。厚生労働省ではなく財務省が主導し、事前資料に基づいて仕分けされたことによってより一層柔整療養費改定に対して厳しい対応がとられる事は当然である。
また保険者サイドからは本年3月、全国健康保険協会・健康保険組合連合会の連名により「柔道整復師の療養費単価改定に当たっての意見(要望)」が厚生労働省 外口保険局長へ提出され、より拍車をかけた結果となった。加入者の保険料率や拠出金負担では若干の軋轢のある両保険者が対柔整療養費に関して、スクラムを組んだ形での要請に至った事情を我々は反省材料とするべきである。
さて、このような経過のもと、平成22年5月17日(月)厚生労働省より「柔道整復療養費の算定基準の見直し」が発表された。見直しに際して“平成22年度の診療報酬改定における医科外来の改定率が0.31%であったこと、及び行政刷新会議における多部位請求適正化の指導等を踏まえ、±0%とする”と定義され案の定である。改定内容は既に承知されたことであるが再掲すると、4部位目以降の請求はカットされ3部位目逓減率が70%に強化された反面、打撲・捻挫に係る後療料は30円アップして500円となり、かろうじて柔道整復の技術部分は認められる結果を得た。その他には、3部位以上の請求に部位別負傷原因の記載・骨折脱臼における医師同意について施術録記録と同じく記載すること(どちらも支給申請書)、領収書の無料発行義務づけ・希望者へ有償で明細書発行義務づけ、支給申請書の施術日(通院日)記載(いわゆるカレンダー方式)の義務づけ、以上の見直しが加えられた。ペナルティーに関しては、不正発覚の際に開設者(オーナー)へも責任追及が可能となるよう改められた。
これらの見直し内容が明らかとなる以前の予測に比べて結果的には非常に有難いことであり、筆者の周辺においても安堵された方が多いように感じられた。柔整療養費に係る国庫負担との関連から実施された事業仕分け結果を踏まえると、安堵される諸兄が多い事は頷けることである。しかし、本当に安堵して良いものなのか、むしろ危機迫る予感を隠しえないのは筆者だけであろうか。
柔道整復師法単独法が昭和45年に成立した頃から、昭和60年に至る経過は凡そプラスの改定が続いたと記憶している。プラス改定とは単に料金のみならず、各種制限の緩和を含めて捉えていただきたい。一方、昭和60年以降は“アメとムチ”と例えられる改定が繰り返されているが、過去に発令された通知に今回の見直し結果を重ねて私見を加えてみる。
今回、正式に義務化された領収書発行であるが(明細書は希望受診者へ有償で発行)、この努力義務は昭和61年保険発57において発令されていたことから、やや遅れた義務化であると考えられる。柔整療養費受領委任に伴う窓口負担金であっても授受内容の明確化を励行する事は当然であり、協定上(契約締結柔整師含む)定められた負担金遵守の目的からも大切な事である。巷には無料施術、サービス治療、キャンペーンなどを行う柔道整復師の存在が取り沙汰されるが、協定違反行為であり言語道断である。領収書や明細書の発行はむしろ保険者による受診者照会や、返戻屋とも呼べる昨今の保険者代行外部委託会社による患者調査の際に有効な回答根拠ともなり得るので歓迎すべきである。3部位目の逓減が強化されたが、平成4年保発56にて初導入されて以来強化に向かう事は必至であり、今後も逓減率拡大は避けられないと考える。4部位目の請求カットについては、初回施療料算定は可能であるが後療請求は認められない。この4部位目カットの改定は我々の治療方針・算定方法の最大の特徴であった“部位別算定方式”を完全に否定される方向付けがなされたと受け止める必要があると思われる。