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これだけは知っておいて!!

第48回   【柔整八策 ― そのⅤ】

2012/05/16
柔道整復師・接骨院のニーズについて考える

就業柔道整復師、施術所の数は急増しています。1998(平成10)年、全国で29087名であった就業柔道整復師が2010(平成22)年には50428名(宮城県は含まず)と21341名(173%)増え、柔道整復の施術所(接骨院、整骨院)も1998(平成10)年、23114所が2010(平成22)年には37997所(宮城県は含まず)で14883所(164%)増えています。

  1998(平成10)年 2010(平成22)年
就業柔道整復師 29087名  50428名(宮城県は含まず)
接骨院、整骨院 23114所 37997所(宮城県は含まず)

これだけの急増は社会の「柔道整復」ニーズが高く接骨院不足解消のためとみるのがふつうの考えであるが・・・

本当に需給の関係からの増加なのであろうか?

1998(平成10)年の柔道整復師養成施設不指定処分取消請求事件、所謂、福岡裁判の判決以後、1998(平成10)年、全国に14校であった柔道整復師の養成施設は2010(平成22)年には大学12校、養成校88校の100校となっています。一学年の定員も1050名から7000名以上(学生実数はこれより少ない)となっています。

それまでは14校1学年定員1050名という総量規制が引かれていました。受領委任の取扱も各都道府県社団法人会員のみに許されていました。社団法人という組織ですからもちろん保険指導や自主審査は積極的に行われていました。学術の研鑽も当然行われて柔道整復師界全体の質の向上もちゃんと担保されていた時期であったと思います。

柔道整復師の資格を取得してすぐに開業する者は皆無でした。老舗の接骨院に弟子入りして早くて5年、通常10年の修業を行い師匠に許しを得て開業したものでした。開業地も既存の接骨院から半径何百メートル内はダメという暗黙のルールがありました。

今のように同じビル内に何軒も接骨院があるなど信じられない時代でした。古い時代の徒弟制度だと一蹴できない良き要素がたくさんありました。

師匠が治療の腕においても保険に係る知識においても「良質な施術」と「良識ある請求」を行うだけの器量が構築されたと太鼓判を押して開業させるわけですから本人も一門としての責任を持ち地域医療を担う一員となるようさらなる人格形成の研鑽を行いました。倫理観もおのずとついてきます。

力量に合わせてクリアするべきハードルがあったと思います。

現在は、養成施設を卒業し国家試験に合格するとすぐに受領委任の取扱いの手続きをして開業する人が多くなってきています。いわゆる「即独(即、独立)」です。第20回(平成23年度)国家試験合格者5227名(受験者総数6754名、合格率77.4%)のうち何名の人が合格即開業するのでしょうか?柔道整復師としての「患者さんを治す」という技術、「業務範囲外」だと判断し、しかるべき専門医を紹介する診立て、「医療従事者」としての倫理感などが養成施設就学3年間で本当に身についているのかはなはだ疑問であります。

接骨院や整骨院を開業するほとんどの柔道整復師は【療養費】の【受領委任の取扱い】により業を営んでいると思います。いわゆる健康保険の制度を使っての治療を患者さんに行っているのです。一般に3割負担、高齢者の場合は1割負担の一部負担金で柔道整復を提供しています。この受領委任の取扱いの手続きは柔道整復師側が行わなくては患者さん(国民)に対して健康保険を使っての治療は出来ません。

 

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