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日本機能訓練指導員協会、認定機能訓練指導員実務者研修会ベーシックコース開催される

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2021年12月5日(日)・12日(日)、東京都柔道整復師会会館(東京都文京区)において、日本機能訓練指導員協会主催『認定機能訓練指導員実務者研修会(ベーシックコース)』が開催された。

認定機能訓練指導員実務者研修会(ベーシックコース)

日本機能訓練指導員協会は、2019年12月に公益社団法人日本柔道整復師会と公益社団法人日本鍼灸師会によって設立された。今回の研修会は、新型コロナウイルス感染症防止策として来場による受講人数は20人程度に制限し、その他の受講者はZOOMによるWEB参加というハイブリッド形式を採用した。会場ではマスクの着用、受講者同士の距離の確保、定期的な換気など徹底した感染症対策が行われた。

三橋裕之副会長

(公社)日本柔道整復師会・三橋裕之副会長は〝柔道整復師や理学療法士、あん摩マッサージ指圧師などの資格を有していれば機能訓練指導員として活動することができるが、「どの業態であっても平準化された機能訓練が行える状態を目指す」という目的をもって日本機能訓練指導員協会を立ち上げた。今後開催するアドバンスコースでは厚生労働省の方にもご講演いただく予定となっている。また、来年には機能訓練指導員のシンポジウムの開催も検討している。機能訓練指導員という役割をもっと充実させ、介護分野において必須の職業として認識されるようにしていきたい〟と話した。

介護保険制度における機能訓練指導員の役割

(公社)日本鍼灸師会・松浦正人氏
(公社)日本柔道整復師会・三谷誉氏

松浦氏
松浦氏
三谷氏
三谷氏

機能訓練指導員の役割と対象者像

機能訓練指導員の要件として、柔道整復師、鍼灸師、理学療法士、作業療法士などの資格が必要となる。(ただし、鍼灸師については6か月間の実務経験が必要。研修先の管理者に証明書を発行してもらう)。

機能訓練指導員は、機能訓練を必要とする利用者(主に高齢者が対象)が、その人らしく生活するために必要な身体生活能力を獲得し、最終目標として社会参加を獲得するために必要な機能訓練を提供する。具体的業務として、①身体能力や生活能力(ADL・IADL)の評価、②個別機能訓練プログラムの立案・作成・実施など、③多職種とのカンファレンスへの参加が必要となる。特に高齢者介護は関連職種のチームで行うため、他の職種にも理解しやすい言葉で説明する必要がある。また、機能訓練には科学的裏付けが必要不可欠となる。何がどの程度良くなったのかを評価することが重要。単に運動して食事や衣類の着脱ができるようになったということではなく、高齢者の心理状態や加齢に伴う身体機能の変化等、すべて理解したうえでその人の機能訓練をどう行うかを考える必要がある。

機能訓練指導の対象者は、介護保険制度等による対象者、心身機能による対象者が存在する。機能訓練を行うには、通所介護事業所を自分で立ち上げる(費用も人材も必要)、もしくは施術所で1号通所事業の指定・委託を受ける必要がある。要介護認定はまず認定調査の基本項目について、コンピュータにより判定され、その後介護認定審査会による二次判定を経て認定される。要介護と要支援の特徴的な違いは、要介護の場合は認知機能の低下がみられること。ただし、これは機能訓練指導員が判断するものではなく、医師の診断によっては介護度が上がる場合もある。この区分によって、機能訓練指導員として状態にあったプランを立て、ケアを行っていく。介護が必要となる主な原因では、要支援判定を受ける人については関節疾患や高齢による衰弱、骨折・転倒などが多いが、要介護者では認知症、脳血管疾患などが多い。加齢に伴い有病率が向上するサルコペニア、ロコモ、フレイルは、骨格筋や運動機能の問題が含まれており、各症状別に対応を検討するのではなく、筋力と運動機能向上に対する運動処方を検討しなければならない。

機能訓練指導員としての介入視点

ケアプランは利用者一人ひとりの現在の状況を踏まえ、その方が望むその方らしい生活をしていくための設計図であり、機能訓練はケアマネジャーから送られてくるケアプランに基づいて行う。そこで、ケアプランから自分がどのような機能訓練を行うべきかを読み取る能力が必要となる。業務の流れとしては、利用者からケアマネジャーに対して相談が来る。それに対しケアマネジャーがアセスメント(評価)を行い、ケアプランを提案・説明し利用者の同意を得る。ケアプラン作成時には、ケアマネジャーはまず利用者の現状把握として、機能面・精神面・社会面・臨床面など多方面から考察する。利用者の意向や家族の考えなども踏まえて長期目標・短期目標を設定し、それに向けてケア内容や頻度を考える。機能訓練指導員もほぼ同様の流れで個別サービス計画を作成する。

健康や病気、障がいに関連する仕事に従事する専門家と、当事者とを含めたすべての関係者の間での相互理解と協力のための「共通言語」としてつくられたICF(国際生活機能分類)では、個人の健康状態を3つのカテゴリーにわけ、その中の阻害因子がどのようなものか、また背景因子とされる環境・個人因子がどのようにかかわっているのかを評価する。これに沿って、生活目標を達成するための具体的な実施内容(訓練)や頻度などを計画する。「できる生活活動」、「している生活活動」等の確認・評価を行い、改善の可能性や方法などを検討し、機能訓練指導員の専門知識を活かして目標を設定することが重要となる。

アセスメントの視点

実際にアセスメントを行う際には利用者の背景を探ることが重要で、例えば廃用症候群といっても怪我をきっかけに動かなくなったのか、内科的疾患が原因でそうなったのかによって対応が異なる。個別サービス計画書はケアプランに沿って作成していくが、どのような問題があるのかを推察し、どのように質問して話を聞き取るのか、そして聞き出した内容をもとにどのように考えるのかが重要となる。例えば食事を作るのが億劫なのであれば、食事を作る動作(献立を考える、食材を買いに行く、調理する等)に問題があるのか、あるいは認知機能が低下しているのかなど、状況を細かく分析していく必要がある。

アセスメントにおいて一番大切なのは、実際に行ってもらって観察すること。次に本人や家族、サービス提供者、医療機関等からの聞き取り、そして他の職種の連絡ノートやお薬手帳などの確認。機能訓練に必要なアセスメントの項目としては①生活目標、②している活動とする活動、③転倒の回数、④過去3日間の運動時間、⑤認知機能、⑥生活環境などがある。

特に、転倒は寝込むきっかけや死亡する主な原因となるため注意が必要である。転倒の既往がある者は転倒リスクが高い。立っている状態から倒れたものだけでなく、ベッドからの転落など、本人が最終的に床や地面その他低い場所についてしまう意図しない姿勢の変化も転倒の定義に含まれる。基準日を設定して、30日間・90日間の間に何度転んだのかを聞き取るが、単に聞くというのではなく話の流れの中で聞き取るようにすることも大切。転倒がいつ起こったのか(時間帯)、怪我をしたか、どこで転倒したか、薬の服用との関連も確認する。また、転倒リスク要因の検討、転倒後の心身の変化の聞き取り、転倒後不安に感じて動かなくなり廃用性症候群に陥っていないか、内的評価や外的要因の検討など、運動器以外の問題にも目を向けることも重要となる。転倒後のリスクについては本人や家族、スタッフと共有する。運動メニューとしては、生活空間内の距離を測って食堂やトイレへの歩行も習慣とするなど、耐久性向上を日常生活に組み入れると良い。運動を習慣化するには本人にしっかり説明することが大切となる。

安全管理と運動の実際

個別機能訓練加算にはI(イ・ロ)、Ⅱがある。Ⅰは利用者の日常生活の充実を目指して、生活基本動作(ADL)の維持・向上を目的として行う訓練につく加算である。Ⅱは単なる機能の維持向上だけでなく、地域や家庭で人としてより質の高い生活を送ることを目的として、利用者個々のニーズに合った生活機能に対するリハビリを行うことに付加する加算である。ⅠとⅡでは「身体機能の維持向上を目的としている」か「生活機能の維持向上を目的としている」かという点で異なる。

機能訓練指導員はリスクをすべて回避することはできないが、事業所の理念を確認することで、利用者をどこまで動かすか等、機能訓練指導員として自分の立ち位置を確認できる。そして機能訓練のプログラム以上に「何のために機能訓練を行うのか」という目標が重要となる。また、強化の対象となる筋・部位について利用者に意識させることも効果的。運動処方としては、1クール3か月、週2~3回を目安として、1か月ごとに段階的に負荷を高めていく。抵抗運動が推奨されており、セット間には2~3分の休憩を挟みながら行う。プログラム実施の際には、内容の説明と同意を得ることはもちろんのこと、不良姿勢や利用者の変化、脱水症状などに注意しつつ行う必要がある。

筋肉から健康を考える!シニアのための筋育栄養学

東京大学大学院特任研究員・竹並恵理氏

竹並恵理氏

加齢に伴い、肥満や糖尿病、認知症や体力の低下、衰弱、転倒やそれによる寝たきりなど、様々な問題に対応しなければならないが、これらに共通する背景としてサルコペニアが存在する。サルコペニアは、加齢による筋量の減少を指す。筋肉は糖と脂肪をエネルギーとするため、筋肉量が減少すると糖尿病や脂質異常症になりやすく、肥満にもなりやすい。エネルギー消費量が減少すると食欲が低下し、低栄養になるため、筋量がさらに減少し基礎代謝も低下する、というスパイラルに陥る。これをフレイルサイクルという。

「筋育」に必要なのは、運動・栄養・休養。運動をすると筋肉に負担がかかり弱るが、そこに栄養を与えると回復するだけでなくレベルアップする。このメカニズムを「超回復」という。適切な栄養がないと筋肉は育たない。ただし、シニアは加齢により栄養に対する反応が低下しているため、タンパク質をしっかり摂ることが重要となる。タンパク質は筋肉作りに利用しやすい必須アミノ酸がバランスよく含まれている動物性食品(肉・魚・卵・乳製品)や大豆食品を摂取すると良い。その他の栄養素とのバランスや規則正しく摂取することも大切だが、最も大切なのは摂取する量。目安は65歳以上の場合、男性で1日60g、女性で1日50gと言われている。しかしサルコペニアになりやすい高齢者の場合は反応が低下した分、タンパク質を体重1kgごとに1.2~1.5g摂取量を増やすべきとの考え方もある。

筋タンパク質は食事摂取で合成優位になり、空腹時は分解優位になるため、欠食はすべきでない。空腹を感じないよう間食を取り入れるのがよい。特に朝食の欠食は長時間の空腹となり筋肉の分解が進んでしまうため、筋育には十分なタンパク質を含む朝食が不可欠となる。最近では一日の摂取量ではなく一食の摂取量も関係しているとの考え方もある。タンパク質はまとめ食いした場合、各食に分けて食べた場合よりも筋タンパク質合成率が低くなってしまう。また、筋肉の合成反応が低下している高齢者においては、ロイシンを多く含むアミノ酸摂取がサルコペニア予防に効果的である。

認知症について(認知症サポーター養成講座)

(公社)日本柔道整復師会特別諮問委員・藤本進氏

藤本進氏

認知症とは、正常に発達した脳の機能が、何らかの原因によって認知機能が持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたした状態をいう。認知症と老化による物忘れは異なる。物忘れは体験したことの一部を忘れるのに対し、認知症では体験したことを丸ごと忘れてしまう。また、物忘れの場合は日常生活に支障はなく判断力も低下しないが、認知症では日常生活に支障があり判断力の低下もみられる。認知症の出現率は年齢を重ねるにつれて高くなり、65歳以上の要介護のうち半分程度が認知症(判定基準Ⅱ以上)の恐れがある。

認知症の症状は、周辺症状と中核症状の大きく2つに分けられる。周辺症状は必ずしもみられる症状ではない。中核症状としては記憶障害(物事を覚えたり思い出せなくなる)のほか、見当識障害(時間や場所、人との関係等がわからなくなる)、実行機能障害(計画や段取りを立てて行動できない)、理解・判断力の低下などがある。

認知症の主な種類としては、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症がある。
「アルツハイマー型認知症」は海馬を中心に脳全体が委縮することが原因で、新しいことが記憶できない、時間や場所が思い出せなくなる、ものとられ妄想や徘徊などの特徴がある。レビー小体型認知症」は、認知機能障害、認知機能の変動、幻視・妄想、睡眠時の異常行動、抑うつ症状、パーキンソン症状、自律神経症状などがある。「血管性認知症」は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害により脳の一部が壊死してしまうことが原因。脳が壊死したところが確認できる、できること・できないことがはっきり分かれているのが特徴である。

認知症サポーターは特別なことをするわけではなく、認知症に関する正しい知識と理解を持ち、地域や職域で認知症の人や家族に対してできる範囲での手助けをする。また、認知症は社会と隔離された状態でより進行することから、生きがいを持った生活や認知症等の介護予防のため、社会活動参加を促す体制整備が地域支援事業として位置づけられている。

口腔機能と嚥下機能

新宿医療専門学校歯科衛生学主任・内藤美生氏

内藤美生氏

歯は、前歯・小臼歯・大臼歯に大別される。口腔の役割としては、摂食嚥下機能、発声構音機能、運動機能(咬合・下顎運動・舌運動・咀嚼)、感覚機能(味覚)、唾液分泌機能、呼吸機能がある。

「食べる」一連の運動を行う能力を摂食嚥下機能という。摂食嚥下は、①先行期(視覚・触覚・嗅覚などによって口に取り込む前に食べ物を認知し、口へ運ぶ量や口腔内での処理方法を予測する時期)、②準備期(捕食した食物の硬さ、大きさ、粘性などを口腔の感覚器によって感知し、食塊を形成する時期)、③口腔期(口腔内の食塊を咽頭に送り込む時期)、④咽頭期(嚥下反射によって食塊が口峡を通過して咽頭から食道入り口を通過するまでの時期)、⑤食道期(食道入り口から胃の入り口までの食塊移送が行われる時期)の5期に分類される。なお、準備期においてもいくらかの食塊はすでに咽頭部に送られている。

歯の欠損による口腔の変化として、前歯の場合は特に発音障害や審美性の低下が起こりやすい。また臼歯欠損では咀嚼障害や感覚障害が起こりやすい。そのほか、隣在歯の傾斜や移動などの歯列の変化や食片圧入の原因などにもなり、う蝕・歯周病の発生や悪化、さらなる歯列の変化、口腔機能の低下を招く要因にもなる。

成人期・老年期における摂食嚥下障害は、一度獲得された摂食嚥下機能が失われ、減退していくことにより生じる。原因としては、脳卒中、神経筋疾患(パーキンソン症候群・筋委縮性側索硬化症)、サルコペニア、認知症、口腔癌関連などがある。「食べる」ということは喜びであり、栄養摂取だけでなく人生の楽しみ、人とのコミュニケーション手段でもある。加齢に伴う機能的な変化により、摂食嚥下障害を起こしやすくなるが、訓練を行い、嚥下機能を向上させることで誤嚥や誤嚥性肺炎を防ぐことができる。基礎訓練(間接訓練)は食物を使用せずに行う訓練であり、摂食訓練(直接訓練)に比べて誤嚥リスクが低く、経口摂取を行っていない者にも実施できる。口をすぼめて深呼吸、首を前屈・側屈・回旋、頬を膨らませる・すぼめるなどの嚥下体操は、食前の準備体操としても効果的である。

福祉用具と住宅改修

株式会社ペアレント専務取締役・谷元健吾氏

谷元健吾氏

日本の平均寿命はどんどん延びており、これからは高齢化率が問題となる。介護保険の受給者数・受給率を見てみると、年齢を重ねるにつれて女性のほうが受給率が高くなる傾向にある。男性は筋量が多いため怪我が少ないのに対し、女性は筋量が少なく転倒なども多いためと考えられている。介護保険制度は65歳以上で要介護状態または要支援状態の方、あるいは40~65歳未満までの医療保険に加入している方で老化が原因とされる16種類の特定疾患により要介護・要支援状態となった方がサービスを利用できる。65歳以上の方は外出機会も減るため、事故の多くは住宅で起こっている。死亡事故が最も多いのは浴室だが、台所や食堂、居室、階段などでも事故が多く発生している。

転倒を予防するために、段差の昇降や立ち座り動作、滑りやすい場所、バランスを崩しやすい動作など、身体状況や生活状況をヒアリングする。住環境整備では、ヒアリング内容から危険因子を分析したうえで、その家屋にあったツールを使用し、動作の安全性と容易性を高め、住み慣れた自宅でより安心した生活ができるように提案する。

具体的な住環境整備としては、歩いて移動する場合は、玄関に踏み台や壁取り付けタイプのベンチを設置する、廊下・階段に手すりを設置する、トイレのドアを引き戸にする、浴室にはすべり止めマットを設置するなどの方法がある。車椅子の場合は、ベッドはモーター式で移動用の手すりをつける、トイレは入り口を広げて便器の近くまで車椅子を近づけられるようにする、上り框や外階段には簡易スロープを設置するなどの対策を行うと、利用者、介助者の動作の容易性を高め、精神的不安が軽減できる。

福祉用具13種目については貸与も可能だが、貸与可能な種目は介護度によって異なる。衛生上、貸与に適さない腰掛便座や入浴補助用具については「特定福祉用具」とされ、購入後に申請することでかかった費用の9割相当額が支給される。手すりの取り付けや引き戸への扉の付け替え、洋式便器等への取り換えなどの住宅改修を行う場合は介護保険が適用され、要支援であっても要介護であっても上限20万円まで給付される。


来年2月に開催が予定されている認定機能訓練指導員実務者研修会アドバンスコースでは、4日間にわたりグループワークを中心とした、より実践的な研修が行われる予定だという。

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