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第30回日本柔道整復接骨医学会学術大会 開催

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第30回日本柔道整復接骨医学会学術大会が2021年11月13日(土)・14日(日)の2日間、帝京平成大学・池袋キャンパスで開催され、ハイブリット形式で行われた。

大会会長講演

帝京平成大学学長で大会会長の冲永寛子氏が「柔道整復学における大学のミッション」と題して大会会長講演を行い一般公開された。座長は帝京平成大学教授で日本柔道整復接骨医学会・会長の安田秀喜氏が務めた。

冲永寛子氏

このようにハイブリッド形式で大会を開催できたことに感謝申し上げます。本大会のテーマが、「臨床と学術の融合」という大変大きなテーマです。今日は私が学長として柔道整復学におけるミッションをどのようにとらえているか。大学として、どのように社会に貢献しようとしているかを中心に、臨床と学術の融合を大学の立場からお話したいと思います。私はこの学会の大会長を引き受けるのが2度目であり、前回の2014年では、『「みる」(視・観・診・看) を探る』というテーマで、私も内科医の立場からお話をさせていただきました。本日は『臨床と学術の融合』という大きなテーマで開催されていることにこの学会の皆様の強い志を感じています。私と柔道整復学との関わりについて、少しお話してから本題に入りたいと思います。私と柔道整復学の関わり自体が柔道整復の在り方と趨勢を経験したということでもあります。まず2001年から帝京短期大学学長になったことをきっかけに、帝京の中でも最も歴史のある帝京医学技術専門学校に関わらせていただくことになりました。帝京医学技術専門学校は、1968年に設立され、設立当時は帝京柔道整復専門学校という名前で、当初から柔道整復師の養成をしており伝統ある専門学校でした。私として有難かったのは、柔道整復師養成課程を持つ様々な学校、つまり専門学校、短期大学、そして4年制の大学、加えて専門学校には夜間部、二部も含めて運営することを経験することが出来ました。養成施設の形態のバリエーションがあり、それぞれの対応を行っていくうえで、私としては柔道整復師を社会に輩出していくことを深く考えさせられる面が多くありました。池袋のような都会のど真ん中に柔道整復学科があるという一方で、千葉県市原市や宇都宮といった地方、地域で密着した教育と学生募集、その地域で魅力ある学部として、どうやって学生募集をしていくかと考えさせられたことは私の経験となっています。このような経験を活かして本日お話をさせていただきます。

2015年に厚労省から発表されたデータでは、柔道整復師の学校数が1998年に14校でしたが、5,6年で増えてきます。専門学校と大学を併せますと、2015年には109校になっています。定員数も上昇しており最初は1,050名ですが、8797名となっています。先述のように私が帝京医学技術専門学校に関わり始めたのが2001年でしたので、それから専門学校が増えていくという状況の中、本学の学長になったのは2007年ですので、まさに学校数が増えていくど真ん中にいました。すなわち、老舗の専門学校としての苦悩もありましたし、一方で新設する大学側としては、学生の志願者が増えていく中で千葉・池袋・宇都宮に次々と柔道整復学科を設置し、大学として柔道整復学士の人材養成というのはどうしていくのかということを常に考えてきたというのが私と柔道整復学との関わりの歴史であるということです。厚労省のデータでは、2011年くらいから学校数もだんだん頭打ちになってきます。その理由としては、学校数が増え、定員数が増えたけれども、定員を充足できない学校が増えてきたということで、この辺から厳しい状況になってきました。もう1つ、国家試験の合格者数・合格率は、課題の1つです。定員が増加しているのと同時に合格者数は増えていますが、合格率に着目してみると、1998年の学校数が14校の時には、合格率は85%を保っていました。合格者は増えているけれども、合格率は徐々に下がってきて2015年には、65.7%となり、昨年の合格率は66%。大体65~66%位で推移しています。学生数が増えて、合格者も増えている一方で、残念ながら不合格者も増えています。つまりなりたいと思って入学したけれども、なれない学生たちも増えているということになります。しかも大学の置かれている状況は、非常に厳しいものがあります。これは柔道整復学に限ったことではありません。日本は少子化で、人口減少の中で特に18歳人口の減少が大きく、2018年の18歳人口118万人を100%とした時に、2030年の18歳人口が88.8%まで落ち込み、実に13.2万人減少します。特に2020年から2024年までの落ち込みが非常に厳しいと言われており、その後少し回復したとしても、トレンドとしては減少ということで、最終的には2030年に88.8%となります。この少子化が進む中で、大学のミッション、使命は何なのでしょうか?ということで、いよいよ本題に入っていきたいと思います。

大学のミッションは、教育・社会貢献・研究の3つに大きく分けられます。この3つを掲げることによって、其々の教育機関としての質の向上が図られ、教員がレベルアップし、学生もレベルアップし、社会に素晴らしい人材を送り出すことが出来ます。先ず、「教育」に関してですが、柔道整復学科のカリキュラムマップに示しているのは、1年生から4年生までどのように学生が学修していくかを示したものです。教育機関において柔道整復学を如何位置づけ、学生たちに如何支援して、教員たちも自分たちが何所の位置で教えているのかを自覚することによって効果的に学修を進めることが可能になります。本学においては、パソコン演習、英語などを教養科目として1年生の間に学修します。やはり社会人として将来医療人になる上において、十分な素養となる科目群です。専門基礎科目では、医療人としての基礎知識を身につけます。つまり柔道整復学においては基礎的な医療科目を主に1,2年生で、解剖学・生理学・公衆衛生、一般臨床学、整形外科学等を学びます。2年生以降で学修するのが専門科目であり、柔道整復学の理論、演習、実習などで、この専門科目のボリュームが最も大きいです。また本学では更に学びたければアスレチックトレーナー、保健体育の教員資格が取得できるような環境を整えています。本学においては「社会人、そして専門的職業人として求められる汎用的知識と問題解決能力を有し、医療関連分野の基礎知識や専門的職業人としての自覚と責任感を身につけ、柔道整復師に必要な知識と技能、職業倫理を身につけ、地域社会に貢献する次世代を担うリーダーとしての資質を身につける。」ということを目指しており、1年生から4年生まで、学修を積み重ねることによって、このような力が卒業した時に身についているということを保証するものです。少子化の中、大学は、受験生に魅力ある大学であることをアピールしていくことが大変重要な問題であり、私は常にそういった観点から大学の将来ビジョンを先生方と相談しながら進めております。

また都会のど真ん中にある池袋キャンパスと比べた時に千葉キャンパスの柔道整復学科をどのような魅力をもって運営していくかということは、大きな課題でした。千葉キャンパスの魅力は何なのかということを先生達と検討した結果、都会とは比べ物にならない広い敷地において、「帝京平成スポーツアカデミー」というものを設立しようと考えました。地元の方々が通えるスポーツクラブのような施設を本学の先生方や学生たちで運営し、いま地元の方々800名位が会員として登録をされている状況です。千葉キャンパスのもう1つの魅力として運動部の設立をすすめることになり部活にも力を入れております。陸上トラック等を整備したサッカーグラウンド、柔道場を作りました。昨年、本学の女子サッカー部は全国優勝をしました。このように元々あった千葉キャンパスをどのように魅力的にしていくのかを考えた結果、スポーツであり運動部の部活動であるということになりました。人材養成、国家試験合格、そしてその後の医療人として社会で活躍できるようにということを考えながら進めてきた結果、柔道整復師の合格者数は全国1位、はり灸も全国1位の合格者数となっております。まだまだこれで満足せずにこれからもこの取り組みは続けていきたいと考えております。以上、大学のミッションの1つである教育という観点でお話させて頂きました。

大学のミッションの2つ目である「社会貢献」についてお話します。 社会貢献にはいろいろあると思いますが、どこの大学でも行っているのが、公開講座です。地元の皆さんを招いて、本学であれば、健康をテーマに、先ほどお話した「帝京平成スポーツアカデミー」では、地元の皆さんが参加できるようなアカデミーも社会貢献の一つと思います。そして2020東京オリンピック・パラリンピックにも柔道整復師の先生達が大変多く協力をされています。また接骨院も、地域で利用していただいておりますので、接骨院自体も社会貢献になっていると思います。また本学では、振込詐欺の様々なPR活動に地元で学習ボランティアとして参加しています。社会貢献をすると何が良いかというと、地域から信頼される、そして地域から愛される大学になれるということです。学生と教員だけで中で閉じてしまっていては、地域から愛され、地域から信頼される大学になることは出来ません。外に出ていろんな学生の学びの場を提供し、そして地元の方にも大学に入ってきてもらう、そういったことによって地域から信頼される大学になることが出来ます。更に本学ではリカレント教育を始めました。「リカレント教育」とは、一旦社会人として社会で働いていた人達に対し、ブラッシュアップやステップアップのために学修をすることで、更に社会で求められ活躍できるような教育のことです。柔道整復学においては、教育・研究・社会貢献を融合したものとして専科教員認定講習会を本学で実施することになり、今年度の4月からスタートしました。募集人員は前期・後期ともに30名です。コロナ禍ということもあり、オンライン授業と組み合わせながら実施することになりました。コロナ禍になりまして、オンライン授業というのは格段に進み、殆どの教員がこのオンラインを使いこなすことが出来るようになり、ITCのリテラシーが格段に向上したと思います。4月にスタートしたばかりのこの専科教員講習会は柔道整復学がおかれる大学の社会貢献として、本学の優れた教員たちと続けていこうと考えております。本学を修了された方は、全国の専門学校や大学で教える時に実際に役立つことを学修できるように効率化を工夫して参りたいと考えています。 大学のミッション3つ目の「研究」についてお話します。研究の場としての大学、教育機関の使命は、教育と同時に研究によって社会に発信することであるということを第一義としたいと思います。それに伴い、教員というのは、教育者であり、研究者である。この2つの顔を持つことが必要です。教員によって教育者よりの方もいたり、研究者よりの方がいたりして構わないと思います。ただし、両方の面を持ってほしいと思います。また大学のミッションとしては大学に所属する研究者を支援する環境を整えることです。科研費を申請するアドバイス等は教育機関として責任をもって行うべきです。そして本学の教員には、科研費だけではなく、いろいろな民間の資金を活用すること、外部資金を出来るだけ獲得しようということで奨励しています。そして私が教員に期待したいのは、研究マインドを持つということです。まず未知の事象に対して探求する気持ちを常に持つことが大事です。次に、論理的思考で、物事の原因、結果を論理的に考えられるか、これが研究の土台であると考えます。そして医学の世界はご存知の通り日進月歩であり、医療者としての日々の向上心を持つ。この3つが研究マインドであると私自身は考えています。教員には個人研究であれ、共同研究であれ、いろんな場で研究を進めていってほしいと期待しています。本学の学生さんも卒業研究として少しでも研究マインドを持つという意味でカリキュラムに卒業研究が含まれています。

次は大学にとって1つの柱である研究に関して、違った視点から話したいと思います。この第30回日本柔道整復接骨医学会の座長と演者の方々の男女比を抄録集の氏名から抽出しました(共著者は省略)。柔道整復接骨医学会の場合209人のうち女性は33人、つまり全座長・全演者16%が女性で、私の予想よりも高く、ぜひ頑張ってほしいと期待しています。柔道整復接骨医学会との比較として、10月に開催された日本アスレチックトレーナー学会では、少し女性が多く28%でした。柔道整復学会も今後女子学生が増えていますし、女性の先生方も増えていますので、本日この学会にご参加している方々、或いは学生の方々、共に今後女性の活躍というのも大事であると思います。医師のほうも女性が増えており、いま女性の入学者が40%位、全体でも30%位で増えてきております。これはどの業界でもこういったトレンドというのは、続いていくと考えております。しかしながら一方で、日本の男女格差というのは、世界から観るとまだまだです。ジェンダーギャップ指数は、男女の格差がどれ位あるかを調べたものですが、日本は160カ国中、なんと120番目であり、ちなみに1位はアイスランドです。先日の衆議院選挙では日本の国会議員の女性の比率が10%を切ってしまいました。日本の女性研究者の比率は、2008年の13.0%から2018年16.2%まで徐々に増え、実数も11万人から15万人位まで増えていますが、残念ながら世界的レベルまでにはまだ低い。韓国が18.5%、アイスランドでは44%ですので、世界最低水準であると言えます。女性研究者の6割が大学に所属しており、やはり大学が率先して女性研究者を育てていくという取り組みを拡げていくことが重要です。日本はご存知のとおり、超少子化、超高齢社会に突入していますので、働き方改革などを通じて女性を中心にダイバーシテイ人材で活躍しながら働き続けるような社会づくりが必須となると考えています。ここまで柔道整復学における大学のミッションということで、教育・社会貢献・研究、この3つの観点からお話をして参りました。

最後に教員の人格、つまり大学教員とはという私の見解をお話します。先ほどの自己紹介でお伝えしたように、私は元々医師でありながら、いろいろな流れで大学の方針を決める立場になったのが35歳位で、学長という立場でやらせていただいてから既に10年以上という中で、自分が思い描く教員に必要な人格というのは次の3要素ではないかと思っております。まず一つめの要素が医療者としての技術、知識、これはいわずもがな先生方が常日ごろから修練、鍛錬していらっしゃる分野であると思います。しかも医療に関する技術と知識は日進月歩ですので日々自分自身も勉強し続け、最新の技術・知識もアップデートしていく必要があります。特に教育機関で教える立場としては、間違ったことを学生に教える訳にはいきませんので、学生が社会に柔道整復師として正しい対応が出来るようにということを常に心がけていかなければなりません。二つめの要素は研究者としての論理的思考と探求心です。さきほども研究のところで述べましたが、強い志、意志、ビジョンなどを持って論理的に考えるということです。これら二つは個人によって強弱があり、特に柔道整復のように手技を伴う職種、または医師でいうと手術をする外科では技術にとても長けている人がいます。一方で大学では研究に力を注いでいる教員、外部の研究機関などと協力して研究を進める人がいます。これら二つの要素の要素を兼ね備えており、実は教員として一番大事なのは、全人格的素養であり、最終的には人として共感とか信頼とかを持って学生を導いていける、それには人間観、歴史観、哲学のバックグラウンドも必要ではないかと私自身は考えています。全人格的素養といわれるものは、先の2つすなわち最新の知識・技術と倫理的思考・探求心を磨くようにしながらも、全人格的素養というものも同時に磨いていくことによって、医療者、教育者・研究者としての理想の形が整っていくと考えております。これを高い次元で兼ね備えて、しかも教育の場や研究の場、社会貢献の場で実践で発揮できることが重要だと思います。考えているだけではなく実践で発揮できるということが非常に大事になってくると考えます。

本日は「柔道整復学における大学のミッション」と題しまして教育機関の使命を再認識する機会をいただいたことに改めて感謝申し上げます。今後も魅力ある学問として柔道整復学を社会に発信していきたいと考えております。ご清聴ありがとうございました。

特別講演

帝京大学医学部整形外科学講座教授・中川匠氏が「膝関節疾患・外傷に対する外科的治療」と題して特別講演を行った。座長は帝京平成大学教授・樽本修和氏が務めた。

中川匠氏

私は大学時代、アメリカンフットボール部に属していまして大学5年の試合前練習でタックルを受け右膝の靭帯損傷を起こしています。かなり重症で靭帯3本、ほぼ脱臼みたいな状態で手術を受けました。こういうことで膝関節外科を目指し、今、膝関節の治療を行っています。
今日は、変形性膝関節症と、スポーツ外傷の2つの治療法をやっていきます。

変形性膝関節症の病態

変形性膝関節症は非常に多く、日本人の9割位で起こり、関節軟骨が加齢とともに摩耗し隙間が狭くなり徐々に曲がり進行するとO脚変形になっていきます。

変形性膝関節症の疫学調査では、加齢とともに増え、男性よりも女性が多く、60代の女性で6割、70歳だと7割、80歳で8割、患者さんは予備軍を含めて2500万人と言われています。

軟骨は、綺麗で、すべすべした血管の無い組織で白色をしています。血流が無いことから一度痛みが出てしまうと治りにくいという特徴があります。

関節内にはいろんなことが起きています。1つは炎症です。軟骨のくずが滑膜を刺激して関節に炎症を起こし、炎症が起きると膝関節に水が溜まり、炎症反応で痛みが辛くなる。軟骨はクッションのため無くなると骨に力がかかり骨がリモデリングといって固くなる反応があります。膝関節は荷重関節ですが、最近の研究で両足立ちで片方の膝に体重の1.05倍、両足であっても半分ではない。筋肉収縮と合わせると体重と同じくらいの力がかかっている。片足立ちは2.5倍。立ち上がり動作、しゃがみこむ動作も、大体2.5倍前後になります。階段を昇る時で3.16倍、降りるときは3.5倍くらいの力がかかる。また肥満になると変形性膝関節症になりやすいことが研究で明らかになっていて、BMIの上昇で35%上がります。

続いてX線は、アライメント、膝関節の向き、O脚とかX脚がないかどうか、隙間から軟骨がどれくらいすり減っているか、などが診断できます。下肢全体を観ること、患者さんの立っている姿、歩いている姿を見る、評価するというのは非常に重要で下肢全体のアライメントを明らかにします。

変形性膝関節症の保存療法

変形性膝関節症は、内科疾患と違い、非薬物療法が大事になります。痛みの悪循環現象があり、痛みが生じると安静にして使わなくなる、すると筋力が落ちて関節が固くなりバランスが悪くなる、その悪循環を断つことが治療の基本的な考え方です。

変形性膝関節症の国際学会のガイドラインでは、治療の基本はピラミッドのように段階的治療が推奨されています。

変形性膝関節症の保存療法

第1段階は、病気をよく知っていただく。運動療法、肥満は減量、これが基本です。運動療法は、痛み止めと同等の効果があるというエビデンスがあり、必要性があります。足上げ体操、伸びない曲がらない患者さんにストレッチ、ウオーキングを推奨しています。

第二段階は薬物療法、装具、理学療法士による介入。装具は、足底板を処方することがあります。薬は、以前より選択肢があり、特に先ほど言った炎症のある人には有効です。貼り薬もありますし、飲み薬、注射もあります。整形外科では、ヒアルロン酸は機能の向上に有効であると言われております。炎症のある場合はステロイドを打ったりしています。ただこれは一時的に痛みが良くなったからといって、それで全て良いかといったらそうではなくて、やはり運動療法を十分やる必要性があります。それでもダメな場合は手術となります。

変形性膝関節症に対する外科治療・最先端の人工膝関節全置換術

手術も「骨切り術」、「関節鏡手術」がありますが、一番多く行われているのは、「人工膝関節の置換手術」です。非常に患者さんに喜ばれ、成功した手術です。ただ手術は人間がやるので間違えることがある。

コンピューターナビゲーション

そこで最近の手術は、コンピュータナビゲーションとしてコンピュータ技術が導入され一様で正確に手術が出来ることになります。

人工膝関節は、95%の人が15年大丈夫で、70歳の人で100歳位まで平気で持つ。人工関節の満足度が8割位ですが、どちらともいえない微妙な方が2割位いて、それを減らす取組みが行われています。1つは、膝関節は、関節面が軸に対して平均値をとると少し内側に傾斜している。片足で立つと水平にならない。片足で立った時に水平になるような人は30%位で、あとは内側に向いている。実は患者さんが生まれつき持っていた関節の向きは、其々違っているが、画一的に同じやり方でやっていたので、不満の方がいるのではないか、ということが1つあります。若い時からO脚の方は特に日本人は多い。今までは全員真っ直ぐにしていましたが、実はこういう人を真っ直ぐにしてしまうと術後はよくない。

患者さんに合ったアライメントを求めていこうということです。

ロボット手術

ロボットを使うことで患者さんに合ったところに戻してやるという新しい取組みをやっています。

スポーツ膝外傷に対する外科治療

最後はスポーツ外傷の手術対象として、前十字靭帯損傷と半月板損傷について話します。

帝京大学はスポーツに力を入れ、八王子キャンパスにはスポーツ医科学センター、アスリートのケアをする素晴らしい施設があり研究も行っています。帝京大学だけでなく、日本のスポーツを強くしようということで一丸となって取り組んでいます。その他に栄養士が競技特性に合わせてバランスの良い食事を提供します。1階には診療所があり、MRIとかX線撮影をすることが出来ますので、一般の方でもスポーツで困ったことがあれば受診することができます。是非相談に来ていただきたい。

なお特筆すべきは、中に何人も入れる大型の高気圧治療室があって、復帰を早くすることが出来るので、これを使って研究を進めているところです。

前十字靭帯再建術

膝の前十字靭帯損傷はスポーツ選手に多い怪我で一度切れると治らない。そこで手術が必要になります。そのままにしていると怪我した当初は痛いんですけれども、1か月もするとよくなって、また出来るというようになる、しかしそれでまたスポーツをやると膝がカクンと外れたり、膝が崩れる状態になってしまって半月板とか軟骨を痛めてしまう。前十字靭帯損傷の手術は非常に進んでいて、元と同じように解剖的な再建が可能になってきています。元あった靭帯とそっくりな靭帯を作るようになってきています。殆どの前十字靭帯損傷は大腿骨側から切れるケースが多く、スポーツ選手は怪我したら直ぐ手術になるというケースが多いです。

前十字靭帯の手術は関節鏡という内視鏡を使って大腿骨側と脛骨側の骨に穴を開けて、そこにハムストリング、膝の屈筋腱から取った再建靭帯を2つ非常に小さい穴を大腿骨に2つ、脛骨側には3つ作ります。一昔前、術後のリハビリが大変でしたが、今は解剖学的に元とそっくりな靭帯を内視鏡を使った手術で行いますので傷が小さい。低侵襲で術後のリハビリが楽になりました。前十字靭帯の分野に関して手術のやり方が進歩してきています。

半月縫合術

半月板の手術もかなり進んできています。半月板損傷もスポーツ選手に多く、半月板が切れると引っかかったり、ロッキングでずれてしまうと非常に困ったことになります。

半月板は、重要な組織で、あっという間に軟骨が痛んでしまう。半月板は、軟骨と一緒で、半月板の真ん中の部分には血流はありません。ただ外側は3分の1の部分血流がありますので、ここは治る可能性がある。真ん中は中々治りにくいということで、以前は関節鏡を使って半月板をとってしまうような手術が行われていましたけれども、スポーツ復帰した後に水が溜まるや痛みが残ることがあり温存療法が多くやられています。

☆この後、質疑応答が行われたが、紙面の都合で割愛します。

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