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「匠の技 伝承」プロジェクト2024年度第1回指導者養成講習会開催

トピック

2024年4月14日(日)、日本柔道整復師会館において『「匠の技伝承」プロジェクト2024年度第1回指導者養成講習会(指導者評価確認講習)』が開催された。

指導者養成講習会

今回は鎖骨骨折・肋骨骨折および肘関節後方脱臼の整復・固定とエコー画像描出について、合同で実技実習を行い、その後指導者評価確認が行われた。

長尾会長

公益公益社団法人日本柔道整復師会・長尾淳彦会長は〝この「匠の技伝承プロジェクト」は10年計画で実施しているが、「骨折の患者さんはめったに来ないのにどうして」「こういうことをして何になるのか」と言う意見も耳にする。だが我々柔道整復師の根幹は、骨折・脱臼の整復固定ができるというところにある。「匠の技伝承プロジェクト」もトライアンドエラーで、失敗してもきちんと修正をして良い方向に向かっていけばいい。次の世代に柔道整復術を継承していくためにも、まずは今日お越しの指導者候補の先生方にしっかりと技術を身に付けていただいて、各地区で指導を行っていただく。自分のためだけではなく柔道整復師のために、どう継承していくかということも考えて実行していただきたい〟と述べた。

竹藤敏夫副会長は〝休日にも関わらず、ご参加いただき誠にありがとうございます。今年度からは、各地区で会員に向けた講習も始まる。ますます先生方のご尽力を期待している〟、森川伸治副会長は〝今回行う指導者評価確認は、指導者として各県で活躍していただくための評価となる。超音波の使用に関しても、超音波のみに頼るのではなく、問診・視診・触診で評価したものを確認するということをよくご理解いただきたい。次の世代に繋げられるよう、ご協力をお願いしたい〟と挨拶。
また、徳山健司学術教育部長は〝指導者候補の先生方の知識と技術を各都道府県の先生方に広めていただくことでエビデンスの構築が進む。エコーもエビデンスを構築するための必要なアイテムだ。平準化した技術とエビデンスを持つことが柔整療養費にもつながっていくと確信している。先生方にはこの趣旨を十分理解していただいて、ご協力いただけたらありがたい〟と改めてプロジェクトの趣旨を説明した。

合同実技実習

実技実習に先立ち、小野博道講師、山口登一郎講師より実技評価のポイントの解説が行われた。

小野講師

超音波観察に関して、小野講師は〝エコーで観察する前に、まずは我々の強みである触診で確認していただきたい。鎖骨骨折の場合、鎖骨は前に少し突出しながら後ろにへの字に曲がっていくが、ちょうどへの字に曲がっていくところの骨折が多い。超音波では、まずは肩峰、そして大結節の腱板部分を描出する。肩鎖関節は人によって全く形が違う。肩峰と鎖骨が同じ高さの方もいるのでしっかり確認すること。そのままずっと鎖骨から内側に、鎖骨にしっかりとエコーを当て、線状高エコーが出るように描出する。空いている左手で鎖骨のカーブに沿って指を置いて、リードするようにプローブを動かすと描出しやすい。短軸像では肩峰端の部分は平らに映る。鎖骨をそのままずっと中央の方へ追っていくと、平らな部分の幅がだんだんと細くなり、そこから形が丸みを帯びて円柱状になる。このようにエコーでは形の変化を観察することができる。また鎖骨骨折は、上から見れば上下の転位がわかるが、前後に変形がある場合は前から観察して評価する方法もある。

肋骨骨折では、第5~第8肋骨の骨折が多い。肋骨はエコーで探すととても分かりにくいため、まず圧痛が一番強い部分の皮膚に印をつけておくと目標が定めやすくなる。短軸像で観察すると、綺麗な楕円状の肋骨が確認できる。少し下には胸膜があるが、深さが全く違うので間違えないように気を付ける。プローブを上のほうで持ってしまうと非常に不安定になるため、なるべく短く持ち、空いている手指でしっかりと相手の患者さんの体表に触れるようにして、プローブを安定させるというのもポイントとなる。

肘関節脱臼に関しては、腕頭関節、そして腕尺関節を観察する。ある程度の関節の位置は予め触診で確認しておくこと。また内側上顆の部分や側副靭帯のところに圧痛があるのかも触診でしっかり評価しなければならない。まず上腕骨を短軸像で観察する。骨幹部、上腕骨の中央2分の1のところからずっと遠位方向に追っていくと、だんだんと上腕骨の形が丸みを帯びていたものが平坦に変わる。外側に行くと小頭、内側に行くと滑車の部分が描出できる。小頭の方からまたさらに遠位へ移動すると、関節面のところでエコーがなくなって、橈骨頭が出てくる。よく小頭と橈骨頭を間違えてしまうケースがあるが、回内・回外して動けば橈骨頭、動かなければ小頭だと判別できる。次に腕頭関節を長軸で観察する。上腕骨からずっと降りていくと、橈骨窩があって小頭があり、橈骨頭、橈骨頚部が見えてくる。外側の離断性骨軟骨炎の場合には、この小頭の丸みも欠損することがあるため確認が必要。次に、腕尺関節を見ると鈎状突起のせり上がりが観察できる。とんがり帽子の形のように見えるのが滑車の部分だ。 後方脱臼の場合には、この鈎状突起が欠損して剥離骨折が起きる可能性もある。続いて軽度屈曲位で内側上顆を描出する。内側上顆を描出した状態でプローブを上げ下げすると、鈎状突起が観察できる。さらに内側上顆から鈎状突起に向かって前斜走線維が描出できる〟と丁寧に解説。

山口講師

整復固定について、山口講師は〝鎖骨骨折の整復固定で最も楽なのは臥位整復法、クラビクルバンド固定だ。クラビクルバンドを健側に緩めに装着したうえで、ベッドに円柱状の枕を縦に置き、その上に患者を仰臥位で10分程度寝かせる。たいていの鎖骨骨折の場合はこれだけで自然と整復できる。整復されたら寝かせたまま、クラビクルバンドを患側にも装着する。鎖骨骨折は胸郭を拡大するため、どうしても腋窩の管理が難しいため腋窩枕子を使用する。肩甲骨間部に手を当て、胸郭が開いた状態を維持したまま患者を起こす。クラビクルバンドは一度に締めるのではなく、整復の状態を確認しながら増締めをしていく。1週間から10日を目処に徐々に合わせていっても鎖骨は癒合する。最終的な整復完了の肢位の目安として、肩甲骨がくっつくようになるまで後上方に引っ張る。腋窩が圧迫されすぎるとすぐに痺れや血行障害が起きてしまうため、必ず知覚あるいは血行障害の有無を確認するようにする。 肋骨骨折は整復の必要がない場合が多い。固定はバストバンドによるものが最も簡便だ。呼吸に合わせて最大呼気時にバンドを締める。増締めをすることで胸郭の動揺を抑えられる。この上から包帯を巻くことで、患者にさらに安心感も与えられると考える。服用している薬によっては出血しやすい場合もあるので、特に高齢者の場合は日常的に服用している薬も確認しておくと良い。

肘関節後方脱臼では、前腕の近位端を把持し弾発性固定の肢位のまま、上腕骨の長軸方向に牽引する。牽引を持続したまま、母指を上腕の遠位端へ移動させ、他4指は肘頭に当てがう。槓桿作用を働かせるように、母指を前方から後方へ、他4指は後方から前方へ押し、ゆっくりと肘関節を屈曲させると整復される。脱臼の場合は再度肘関節を屈伸させ、必ず弾発性固定の有無を確認すること。固定肢位は肘関節90度前腕中間位とする。クラーメル副子を当てて、蛇行帯で患肢と副子を仮固定してから螺旋帯で被覆する。関節部分は亀甲帯で固定を行う。包帯は末梢から中枢まで均等な厚さになるように巻く。肘関節後方脱臼は出血量が多く著明に腫脹することがあるため、アイスバック等で冷却することも重要。三角巾の伸びない辺を内側にして提肘する〟とポイントを押さえた解説を行った。

合同実技実習では受講者は2人1組となり、互いを術者・患者役として整復・固定と超音波画像描出を行なった。 その後、指導者評価が実施された。評価確認は1回7分間とし、整復法、固定法、説明対応力についてA・B・Cの評価判定が行われる。総合でC評価となった受講者については再確認が行われる。

評価確認終了後、徳山学術教育部長は〝お疲れ様でした。緊張している先生も見受けられたが、今年度は各ブロックの学術大会でも先生方が中心となってワークショップを行っていただきたい。「匠の技伝承プロジェクト」は今年度から各県において開催する予定となっている。これから自県で切磋琢磨していただくことを期待している〟とこれから指導者として活躍する受講者たちを鼓舞し、金子益美理事による閉会の辞で終了となった。

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