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JICA草の根技術協力事業(パートナー型)柔道整復術普及事業、日本研修修了式が開催

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2023年12月25日(月)、日本柔道整復師会会館において、JICA草の根技術協力事業(パートナー型)柔道整復術普及事業における日本研修修了式が開催された。

本事業はベトナム国内における保健医療の地域間格差是正のため、ベトナム人伝統医学医師が柔道整復術を習得することを目的として、2016年3月に公益財団法人国際医療技術財団(JIMTEF)・公益社団法人日本柔道整復師会・ベトナム政府保健省伝統医学局の三者により覚書(MOU)が締結、共同宣言が採択されたことに始まる。そして2023年5月、ベトナムにおける草の根技術協力事業としてJICAとの契約が成立し事業が始まった。同年10月より医療法人宏友会栗原整形外科(埼玉県朝霞市)および市毛接骨院(東京都練馬区)にて、国立ホーチミン市伝統医学病院所属のベトナム人伝統医学医師2名の本邦研修が開始された。本事業の活動期間は4年3ヶ月で、その間本邦研修は計6回、現地研修は年2~3回行われる。

公益社団法人日本柔道整復師会・長尾淳彦会長は〝研修を終えたお二人のとても良い表情が見られて非常に嬉しい。このような事業では節目にこういう行事をして反省し、また気持ちを新たにしていただくことが非常に大切だ。今日は反省も含めて、また次のステップに向けて気持ちを新たにしていただきたい。3ヶ月間、本当にお疲れ様でした〟と頑張りを称え、労をねぎらった。

公益財団法人国際医療技術財団・小西恵一郎理事長は〝この政府開発援助政府事業の立ち上げから取り組んできたが、本邦研修が無事、終了の日を迎えることができたのは、長尾会長はじめ日本柔道整復師会の先生方、そして市毛院長、栗原院長の絶大なるご理解とご協力、ご指導の賜物だ。厚く御礼を申し上げます〟と述べた。

研修報告<概要>

グエン・スアン・ルオン(Nguyen Xuan Luong)

私は現在、国立ホーチミン市伝統医学病院でリハビリテーション科の副科長を務めている。3か月間の研修を終え、自分の気持ちや学んだことをご報告できる機会をいただきとても光栄に思う。これを機に、私たちが実際にどんな研修を受けてきたのか、どういう課題がまだ残っているのかを皆さんに共有させていただき、今後、ベトナムで柔道整復術を普及していく方法について一緒に考えていきたい。

この3か月間、2つの医療機関で研修を行った。研修先では周りのスタッフの皆さんに温かく迎えていただいた。

栗原整形外科では、数多くの外傷に対する整復・固定を具体的な症例を持って勉強できた。患者さんが診察室に入るところから、どのように診察していくのか、診断、整復の仕方や患者さんへの指導、機能回復のためのリハビリといった一連の流れを詳しく丁寧に教えていただいた。実際に患者さんがどのような症状で来院されるのか、それに対してどういう整復方法があるのかを具体的に学ぶことができた。
1番印象的な症例はアキレス腱断裂のケースで、初診から回復するところまで一緒に診させていただいた。ベトナムではこのような症例は手術になることが多いが、保存療法で手術とほぼ同等の効果が得られたと実感できた。1番の強みとして感じたのは、スタッフの皆さんがとても親切丁寧で、私たちが課題を感じていたり困っていたりすることがあると必ず話を聞いてくださって、解決策を提案してくれたり、私たちの気持ちを理解してくれたことだった。また、週1回は必ずプロジェクト担当の先生が来てくださり、私たちが勉強したことを確認し、技術で不十分な部分を具体的に練習しながら指導してくれた。先生たちの経験も色々と共有していただけた。

2つ目の研修機関である市毛接骨院では、患者さんの回復期にあたる段階での施術内容をたくさん教えていただいた。特に印象に残っているのは、高齢者向けのケアの施術だった。どんどん高齢化が進んでいるベトナムでも、今後こういった知識を活用できるのではないかと感じながら勉強できた。また、市毛先生から教えていただいた肘関節脱臼の整復法もとても印象的で勉強になった。実際の柔道整復師の活躍する現場を見て、患者さんにとってはコストも低く侵襲も少ない治療方法でありながら、外科治療と同様の効果が得られると実感でき、特に高齢者や小児には体に負担が少ないと感じられた。

このプロジェクトにおいてベトナムで柔道整復術を普及するにあたり、ベトナム政府だけではなく、日本の政府からもサポートしていただいている。ただ、柔道整復術はベトナムでは初めての医療技術であり、まだまだたくさん課題が残っている。ベトナムと日本では文化も国の状況も、医療システムも違う。個人的な課題としては、まだ柔道整復術の経験が浅いこと、言語の違いがとても大きな壁になっている。また柔道整復師になるにはX線や超音波といった医用画像の見方や解剖学の知識がとても大切だとわかった。周りの協力も得ながら、課題を克服できるように頑張っていきたい。今後もベトナム側と日本側で情報を共有し、意見を交換しながら改善策を一緒に考えていきたい。

ド・ホン・フオン・ミン(Do Hong Phuong Minh)

私が所属する国立ホーチミン市伝統医学病院は、第一級病院として認定される医療機関でありながら、研究機関でもある。「患者さんのために、全ての活動において患者さんを中心に」という視点で、健康で美しく生きるための機能の向上を目指した医療や支援を行い、治療とリハビリのための機器の整備、鍼灸やマッサージ、指圧など薬の使わない分野におけるインフラ整備と人材育成に力を入れている。脊椎に関連する病態、変形性関節症、椎間板ヘルニア、関節由来疾患や肩関節症など、当院でよく対応している疾患にも柔道整復術が使える分野はたくさんあるように思う。

今回の3ヶ月間で、研修先である栗原整形外科と市毛接骨院では、患者さんが診察室に入ってくるところの観察から、診察、その後の治療やリハビリの指導・機能回復まで丁寧に詳しく教えていただき、ベトナムでは経験できなかった新しい知識が得られた。

患者さんに最良の治療を行うためには道具の準備も大切であり、固定に必要な道具の準備の方法も指導していただいた。腰痛治療の患者さんの治療においては、コルセットを使用することが効果的だと教えていただいた。治療だけで終わるわけではなく、患者さんに対して正しい姿勢や動作を指導して再発を防ぐこともとても大切だと実感した。柔道整復術における画像観察はとても重要で、私たちもX線画像や超音波画像の見方を教えていただいた。

今回の研修で、私たち研修生が研修に集中できるように、両国の政府と関係者の方々から精神的にも経済的にもサポートしていただいた。柔道整復師の皆さんやスタッフの皆さんからは、研修の内容だけではなく私たちの日常生活まで献身的なサポートと指導をしていただいた。様々な疾患に対応できる質の高い柔道整復の専門施設で研修させていただき、また、スポーツの施設も見学させていただいて、様々な分野での柔道整復応用に関する理解を深めることができた。さらに柔道整復師の先生方から、講義の資料、研究のレポートなどの貴重な資料を数多く共有していただいた。これらの資料をベトナムに持ち帰り、今後の自分自身の研究やベトナムで柔道整復を展開していくのに活用していきたい。

私たちは整形外科分野における基本的な知識も持っていたので、今回の研修はスムーズに理解することができた。一方で、課題もいくつかあると感じた。まずは研修方法に関して、研修先のスタッフの皆さんは日々の診察や治療でとても忙しく、研修生が柔道整復術の練習をする時間が足りなかったように感じた。個人的には語学力が足りず、スタッフの皆さんとの専門的な意見交換があまりできなかった。今後の改善策として、実技実習をもっと増やしたい。言葉の問題については、日本語をもっと勉強しなくてはいけないのは勿論だが、専門用語までカバーするのは難しい。そのため、特に重要な事項を学ぶ際には通訳の配置を増やすなどの対応をしていただきたい。今後、ベトナムで柔道整復術を技術移転していくにあたって、まず自分の課題をどうやって克服していくのかを考えながら頑張っていきたい。

初来日し3ヶ月が経ったが、初めて柔道整復術に触れ、戸惑うところもたくさんあった。しかし、周りのスタッフの皆さんがすごく親切に熱心に指導・サポートしてくださって、最初の戸惑いや心配もすぐ消え、とても安心できた。右も左もわからない状況で皆さんには迷惑をかけたが、私たちが3ヶ月間ここまで過ごせたのも、周りの皆さんのおかげだと思っている。どうもありがとうございました。


最後に、研修生2名に対し修了証が授与された。
公益社団法人日本柔道整復師会・竹藤敏夫副会長は〝第1回目の研修終了おめでとうございます。ベトナムでも日本でも、患者さんの利益を第一に考えるという点で共通している。ぜひ患者さんに対するリスクもかなり少ない日本の柔道整復術を、ベトナムの伝統医学の中で普及していただきたい〟と締めくくった。

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