第2回柔整療養費検討専門委員会の詳細!
平成25年3月26日(火)15時より、厚生労働省において社会保障審議会医療保険部会第二回柔道整復療養費検討専門委員会(以下、専門委員会)が開催された。厚生労働省事務局から提出された改定案は既にお伝えした通りだが、いったい専門委員会ではどのような議論が展開されたのであろうか?今回は各委員の発言内容を中心に詳細をお伝えする。(改定内容の詳細はこちらをご覧ください)
【配布資料】
専門委員会は、中・長期的な視点に立った療養費の在り方の見直しと平成24年度療養費の改定のために設置されたものだが、今回は療養費改定を主題として議論が交わされた。最初に厚生労働省事務局から資料説明がされ、その後改定案および運用の見直し案が公表され、これに対し各委員から意見が挙げられた。
(公社)日本柔道整復師会副会長・工藤鉄男委員は規制の方法について触れ、〝部位数の多い一部の地域だけをピックアップして全てが悪いように議論するのはいかがなものか。多くの柔道整復師はルールに基づいて施術しているのが事実〟と述べ、また全国柔道整復師連合会会長・田中威勢夫委員は〝柔道整復師に求められることは正しい診断をして正しい治療をして正しい保険請求をすることだと考える。負傷部位の経過や頻回理由を記載した文書を義務づけるのであれば、再検料をその都度つけて、きちんとした診断をさせる方が保険者としても納得できるのではないか〟と運用の見直しを求めた。
秋田県井川町町民課長・伊藤弥志長委員から、改定率0.00%で3部位目を60/100に引き下げた場合の実際の療養費総額と往療料の逓減について質問が上がり、厚生労働省事務局は〝施術回数等が仮に一定とした場合には総額一定となる。往療料については全体に占める割合が非常に低いため、逓減の対象から除外した〟と説明。
健康保険組合連合会理事・池上秀樹委員は、平成22年度の会計検査院の指摘について言及し〝203施設940名について、申請書に記載された負傷部位と患者に対して実施された聞き取り調査結果とで齟齬が生じている。申請書と調査結果が違うものが66%となり、驚異的な数字と受け止めている。適正ではないから適正化を行うのであって、評価を引き上げる項目があるというのは今回の会議の基本的な考え方として、どう考えても保険者としては納得できるものではない〟と厳しい見解を述べた。
全国健康保険協会理事・高橋直人委員は〝平成21年11月の行政刷新会議では3部位目の請求の際に状況・理由を報告させた上で給付率を33%としてはどうかと提案されている。なぜ厚生労働省の提案が未だに60%なのかが理解し難い〟と改定案を一蹴。しかしその反面、〝一部の患者はかなりの頻度でひとつの負傷原因に対して長期的に治療を受けている。これはむしろ施術者ではなく加入者の問題。無制限に使っていいというのはおかしいのではないか〟とも述べ、被保険者による保険浪費も医療費の増大の一因となっていることを指摘した。
これに関連して、全国柔道整復師連合会常任理事・近藤昌之委員は柔道整復と整形外科の料金体系を比較し〝我々柔道整復師は、料金が安い、早い、怪我に慣れているということが特性だと思う。整形外科と柔道整復では、初検時の料金においては約5倍の格差がある。確かに業界の問題はあるが、これだけ医療費が逼迫している時代なのだから料金が安い柔道整復をもっと上手く利用してほしい〟と柔道整復の活用が医療費削減に繋がると主張した。
日本臨床整形外科学会医療システム委員会委員・相原忠彦委員は討論の前提となる資料として、整形外科における初診患者数に対する外傷患者数および外傷部位数統計調査結果を発表。〝1回の外傷部位数は平均1.2部位で、2部位に達しない。およそ95%以内が2部位以下という統計結果であった。初診患者に対する初診の外傷患者の割合が約35%で、外傷部位数に特に地域格差は見られなかった〟と報告した。
これについて(公社)日本柔道整復師会理事・萩原正和委員は〝部位別請求としてかつては5部位や7部位といった形での請求が認められていたが、現在は3部位までで4部位以上は請求できなくなっている。部位に対する考え方が、医科と柔整では違うのではないか〟と反論。
続いて(公社)日本柔道整復師会副会長・松岡保委員は〝柔道整復師の質の向上と受領委任払いによる適切な施術と請求をしなければならない〟と業界の問題を認識した上で、〝審査会の権限が強化され、指導・監査を徹底的に行うことで適正化が図られると考えている〟と述べた。
池上委員からは〝柔道整復の施術の部位数は整形外科より平均的に1部位多いようだ。事務的に煩雑であるとは思うが、出来れば1部位のレセプトからどういった状態でどこを怪我されたのかを記載することを義務づけるよう検討していただきたい〟と提案がなされ、それを受け、相原委員は〝柔道整復師の施術録にはいつ、どこで、何をしたかは必ず書いてある。だから1部位からそれを申請書に記載すれば保険者はお金を払って外部委託までして患者照会をしなくても済み、手間も省ける〟と賛同した。
一方で田中委員は〝その接骨院が良くて行っているのに、2回も3回も照会文書を出されてしまうと良い接骨院も悪いように感じてしまう。受診抑制につながるのではないか〟と懸念を示し、近藤委員からも〝我々が専門としている急性、亜急性、繰り返しの外力については、原因が判らないものもあり、その場合患者に照会しても施術者の答えとは違う回答が返ってくることになる。そうすると業界が悪者になってしまう〟など、患者照会の問題点が訴えられた。
この意見に対しては、相原委員は〝亜急性とは病期を表す言葉であり、外傷というのは転んだりぶつけたり1回で起こるものだから『亜急性の外傷』は医学用語では在り得ない。厚生労働省の通達は誰もが理解できる言葉に改めていかないとさらに誤解が生じてしまう〟と厚生労働省による通知・通達の重要性を強調し、用語等を見直していく必要があるとした。
最後に、学習院大学経済学部教授・遠藤久夫座長より〝改定率は政府の責任で決定するものだが、ここでは当事者が平場で議論しているのだから、当専門委員会での考えを出来る限り反映させていただきたい。委員会として一致した意見になることが一番望ましい〟として厚生労働省事務局が提出した改定案について賛否が問われた。
施術者代表側は〝検討を重ねた結果の事務局案なので大枠認めたい〟〝今後、制度の抜本的改革をお願いしたいが今回は賛成する〟など容認する姿勢を示したが、保険者代表側は〝この場で事務局案を了解するとは言い難い〟と最後まで抵抗を見せ、終始意見は一致しなかった。最終的な判断は厚生労働省に委ねられる形となり委員会は終了した。
次回の専門委員会の開催日は未定だが、今度は中・長期的な視点に立った療養費の在り方の見直しとして、制度改正に深く議論が及ぶことを期待したい。
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