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第9回柔道整復療養費検討専門委員会開催される

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平成29年1月18日(水)、全国都市会館大ホール(東京都千代田区)において、『第9回柔道整復療養費検討専門委員会』(以下、検討専門委員会)が開催された。

第9回柔道整復療養費検討専門委員会

はじめに厚生労働省から資料および議事に関する説明がなされた。

本委員会は、『柔道整復療養費検討専門委員会における議論の整理に係る検討(案)』のうち、①審査・指導監督関係、②施術管理者の研修受講・実務経験関係、③「亜急性」の文言の見直し、④その他、を主題として議論が交わされた。

1. 審査・指導監督関係

審査会の権限強化

審査会の権限強化は過去の検討専門委員会でも施術者側から強く訴えられてきたことであるが、今回示された審査委員会設置要綱の具体的な改正案では、柔道整復師に対する調査権限は付加されたものの患者に対する調査は盛り込まれていなかった。

これについて、施術者側は〝患者に対する調査権限はどうなっているのか。施術者側からだけ聞き取りをしても片手落ちになってしまう〟と主張したが、厚生労働省は〝従来の審査委員会設置要綱には「柔道整復師から報告等を徴するよう申し出ることができる」と書かれており、患者に関する記載はなかった。そのため今回、直接施術者に対して調査を行うことができるとする項目を新たに設ける案としたが、患者については受領委任に係る協定・契約においても当事者として出てくるものではないため、盛り込むことは難しいと考えている〟と説明した。

保険者側からは〝審査会の権限強化自体は賛同するが、現状の体制で果たして調査に対応できるのか。体制を強化しなければならないのではないか〟との疑問の声も上がった。

審査基準の作成・審査要領

審査基準の作成および審査要領について、厚生労働省は〝現行の審査要領でも10個の審査項目から任意に選択した事項について重点的に審査するようにとされている(資料『審査・指導監督関係』 6ページ参照)。しかし近年は部位転がしが議論の的となっており、要領に含まれていないとしても審査されている場合もあるとは思うが、重点的に審査していただく項目の一つとして「部位転がし」に関することを加えてはどうかと提案した〟と述べた。

これに対し、幸野委員は〝患者が請求を把握していないということが不正の原因であり、部位転がし等の重点審査だけでは根本的な解決にはならない〟と語気を強めた。

施術者側は、多部位施術・長期施術・頻回施術が重点的に審査する項目として記載されている点について、田中委員が〝審査委員を務めているが、多部位・長期・頻回施術で請求を出す人はもうほとんどいない〟として、重点審査項目とする必要はないと発言。同項目については、伊藤委員も〝傾向審査で判断できるのではないか〟とした。

通院履歴等の資料の開示

保険者や柔整審査会が施術所に対して領収書の発行履歴その他通院の履歴がわかる資料を求めることができる仕組みについては、厚生労働省は〝この提案には白紙署名による架空請求や付け増し請求が問題としてあり、不正ではないと確認する手段として、例えば領収書の発行履歴や通院履歴が分かる資料で証明してもらうという意図がある〟と述べた。

これについては、施術者側からは〝支給申請書にはカレンダー欄が設けられており、また保険者も審査を行っている中で領収書の発行履歴まで求める必要があるのか〟との意見が上がる一方で、保険者側では〝領収書の発行履歴や通院履歴が開示されない場合、通院の事実がなかったとし、不正とみなすべきだ〟、〝施術録で確認が取れない場合には請求できないとしていくことが原則ではないか〟と、より厳格な規定が必要との見方が大勢を占めていた。

しかしながら厚生労働省は〝通院履歴がない場合に、直ちに施術がなかったものと判断していいかというのは議論が必要〟と慎重な姿勢を見せた。

また、三橋委員は〝一昨年問題となった反社会的勢力が介入した不正請求のような事案の場合、患者と施術者が結託しているため領収書の発行履歴等では用をなさない〟と懸念を示した。

指導・監査の実施状況

平成27年度の指導・監査等の実施状況に関して、保険者側は〝735件の情報提供のうち、監査が行われたのは26件と3%程度となっている。確実に不正と判断されるものだけではなく、怪しいものについてはどんどん監査をすべき〟、〝情報提供件数に対する指導・監査件数の割合は前年度より減少している。厚生支局の体制強化と併せて、通報があった際には個別指導を実施し、抑止力として効果を発揮してほしい〟と、積極的な指導・監査の必要性を訴えた。

厚生労働省は〝個別指導をして、不正の疑いが強いものから優先的に監査を実施している。明確に不正と判断できないために、監査に至らず経過観察になっている例が多い〟との現状を吐露し、さらに〝厚生局も不正と考えられる客観的な証拠が複数あれば監査に踏み切りやすい〟と、より証明度の高い情報の提供を求めた。

加えて、幸野委員は〝個別指導を何度も受けているが、監査に至っていないという人もいるはず。指導された内容がクリアになるまで受領委任を停止するなど、ペナルティを課すべき〟とさらなる罰則強化も主張した。

2. 施術管理者の研修受講・実務経験関係

施術管理者の要件として求められる実務経験について、相原委員は〝病院、診療所などの保険医療機関における勤務を実務経験の期間として考慮することは、運動器リハビリの一員として勤務するのであって柔道整復師としての業務を行うわけではないので不具合がある〟との見解を示した。

これに対して三橋委員は〝養成施設には、多くの整形外科から柔道整復師としての求人募集がたくさん届いている。病院、診療所での勤務経験を実務経験として認めないというわけにはいかないだろう〟と反論したが、相原委員は〝業務内容による〟とし、厚生労働省に要件の再検討を求めた。

3. 「亜急性」の文言の見直し、判断に迷う事例の収集及び公表関係

「亜急性」の文言については、検討専門委員会でも認識の相違により毎回議論が紛糾しているところである。

医師である相原委員は〝亜急性の実例を厚生労働省から出していただかなければ議論にならない。医学的には突然ある瞬間に起こる怪我が外傷であり、急性しか有り得ない〟と強く述べる一方で、施術者側も〝柔道整復では内科的疾患ではなく、急性と慢性の間に当たるものを亜急性とすることが定例となっている。外傷が急性しかないというのはあくまで医学論であり、何をやっても治らないような疾患でない限りは柔道整復の業務範囲内だ〟との従来からの主張を崩さず、真っ向から対立する形となった。

保険者側は〝判断に迷うような文言を修正していただきたいということに尽きる〟とし、曖昧な表現を改めるよう要望した。

今後、これまでの意見を考慮し、厚生労働省による例示も含めてさらに検討が重ねられる見込みだ。

4. その他

負傷原因の1部位目からの記載

負傷原因の1部位目からの記載に関しては、有識者から〝大正15年に発令された健康保険法施行規則に、療養費の支給を受けるためには『傷病名及びその原因、発病又は負傷の年月日並びに負傷の経過』を記載した申請書を保険者に提出しなければならない、とある。これが原則であり、3部位や4部位から書かせるのではなく1部位から記載させるべき〟との意見があった。

これに施術者側は〝大正と現在では状況が違う。当時よりも多数の支給申請書を扱っていることも考慮し、審査会で傾向審査をすれば1部位からの原因記載は必要ないのではないか〟と述べた。

白紙委任

白紙委任の問題については、相原委員が〝白紙委任は現金給付としておかしい。療養費の原則に基づくべき。患者が通院を中止した場合も、毎回署名させていれば問題ないだろう〟と述べると、幸野委員も賛同し〝昔は不正が顕著ではなかったのではないかと思うが、現在は白紙委任が不正の温床となっている。原理原則に戻し、施術ごとに署名させるべき〟とした。

施術者側は〝毎回の署名は、怪我をして来院している患者やきちんと申請をしている施術所にとっては大きな負担になる〟と、ひいては受診抑制にも繋がる可能性があると示唆した。

不適切な広告の是正

不適切な広告の是正については、施術者側・保険者側の意見は早急に対処する必要があるとの意見で一致した。

保険者側は〝厚生労働省から地方厚生局を通じて、市区町村や都道府県に対し集中的に取り組むように指導を検討していただきたい〟と念を押した。

次回検討専門委員会の開催日程は未定となっている。

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