HOME トピック 第15回柔道整復療養費検討専門委員会開催される

第15回柔道整復療養費検討専門委員会開催される

トピック

令和1年9月6日(金)、TKP新橋カンファレンスセンター新館ホール12E(東京都)において、『第15回柔道整復療養費検討専門委員会』(以下、検討専門委員会)が開催された。

第15回柔道整復療養費検討専門委員会

本検討専門委員会では、本年10月に予定されている消費税増税に伴う柔道整復療養費改定と、これまでの柔道整復療養費検討専門委員会の議論の整理の各項目の状況についてが主な議題となった。

柔道整復療養費の改定について

まず厚生労働省より、柔道整復療養費改定案が提示され、〝本来であれば施術所の消費税負担がどの程度か把握したうえでそれに基づいて改定を行うところだが、診療報酬の医療経済実態調査に相当する調査がないことから、確定申告書に添付する決算書を各施術所に提供いただき、収入・経費を分析できないかと考えた。しかしサンプル数が少なく、また課税分と非課税分が混在している部分が非常に多かったため、これに基づいて改定を行うことが困難であると判断した。そこでこれまでの方法を踏襲し、診療報酬における消費税対応分の改定率が0.88%であることを踏まえ、柔道整復療養費の改定率は0.44%とした。改定内容については、初検料及び再検料に上乗せをするとともに、骨折・脱臼に係る療養費などについても改定率に応じた上乗せを提案している〟と解説した。

これを受けて施術者側委員からは〝平成26年の改定では料金改定と消費税増税のタイミングが重なっていたため、診療報酬全体改定率の50%であっても納得したが、今回は消費税増税に伴う改定のみであるのに診療報酬全体改定率の50%というのはいかがなものか〟との意見があったものの、概ね賛同が得られた。

保険者側委員からは、〝平成26年の療養費改定時の資料でも「平成27年10月に予定されている消費税率10%への引上げ時に療養費改定で対応する場合には、施術所における経費の実態調査を実施することとする」と明記されていたにもかかわらず、なぜ実態調査が出来なかったのか〟、〝前回を踏襲したというが、前回の補填が適切であったかどうかという検証は行ったのか〟等、改定額の根拠が不明確だとする疑問の声を上がった。これについて厚生労働省は、〝厚生労働省としても課税負担の調査を行ってからの改定としたかったが、諸課題もあり成果が伴わなかったことは申し訳なく感じている。補填分の検証については今後の課題とさせていただきたい〟と述べるにとどまった。

また、〝改定率は0.44%であるのに、各項目の引上げ額が0.44%を超えているのはなぜか〟との質問が上がり、厚生労働省は〝各項目の算定回数が異なるため、それを加味した金額設定となっている。また、すべての項目を引き上げているわけではなく、据え置いた項目もあることも加味している〟と説明したが、保険者側委員からは〝消費税増税に係る改定なのだから各項目均等に0.44%アップで良いのではないか。配分を変えてしまうと政策改定の意味合いを含んでしまう〟との懸念が示された。

最終的には、〝この改定案が妥当だという納得できる根拠も提示されないままで決定することはできない〟との反対意見もあり、その場で決定されることはなく座長預かりとされた。

尚、厚生労働省が提案した内容は以下の通り。


柔道整復療養費の改定について

1. 改定率 0.44%

令和元年度における柔道整復療養費の改定率については、本年10月に予定されている消費税率の10%への引上げに伴い、柔道整復施術所における経費の増加が見込まれることから、診療報酬における消費税対応分の改定率等を踏まえ、政府において決定したもの

(参考)今回の診療報酬全体改定率 0.88%
            平成26年:診療報酬全体改定率 1.36%(柔整改定率0.68%)

2. 改定の内容

柔道整復療養費の前回(平成26年)の消費税改定も踏まえ初検料及び再検料への上乗せを行うとともに、骨折・脱臼に係る療養費等についても、今回の改定率に応じた上乗せを行う

【改定率】

 現行引上額改定後
初検料1,460円60円1,520円
整復料2,300円

11,500円
200円2,500円

11,700円
固定料3,600円

9,200円
200円3,800円

9,400円
再検料400円10円410円
後療料
(810円)
(骨折)
810円10円820円
後療料
(680円)
(不全骨折、脱臼)
680円10円690円
金属副子加算950円50円1,000円
柔道整復運動後療料310円10円320円

3. 施行日

消費税率の引上げが、本年10月1日に予定されていることから、同日の施行とする。


なお、その後関係者とも相談の上、提示された事務局案のとおりに改訂が実施されることとなったと、9月10日付で発表された。

改定内容に関する発表の詳細はこちら

柔道整復療養費検討専門委員会の議論の整理の各項目の状況について

次に、平成28年に行われた検討専門委員会で取りまとめた議論の整理の各項目について、厚生労働省から進捗状況が報告され、意見交換が行われた。

進捗の詳細は、資料「柔道整復療養費検討専門委員会の議論の整理の各項目の状況について」をご覧ください。

療養費の推移

施術者側:平成24年度以降、柔道整復療養費は減少の一途を辿っている。行き過ぎた患者照会もその要因になっている。一部保険者には、被保険者に対し「柔道整復師に照会内容について聞いてはいけない」などとルール違反と思われる指導も見受けられる。こういった事例に対し、健保連はどう取り組んでいるのか。

保険者側:出された通知に即して各健保が適切に対応していると考えている。健保連としては患者照会のありかたについて、各健保に対し定期的に研修を行っている。また、外部に点検を委託している保険者も多いので、そういった業者にも研修を行っている。

保険者や柔整審査会が施術所に対して領収書の発行履歴その他通院の履歴がわかる資料の提示を求めることができる仕組み

保険者側:施術者が、患者が前月分の請求後に来院した場合に、前月の支給申請書の「写し」又は明細書を、患者又は家族に交付する(既に患者の求めに応じて明細書を交付している場合を除く。)などにより、患者が施術・請求内容を確認する取組について、平成31年中の実施に向けて検討するとされているが、スケジュールはどう考えているのか。

厚労省:施術者・保険者双方の意見にかなり隔たりがあるが、合意点を見出すようやっていきたいと考えている。日程は調整していきたいが、単に検討専門委員会を開けば議論が進むとは考えていない。

電子請求に係る「モデル事業」の実施

保険者側:実務者会合などで検討するのは重要だと思うが、署名の問題をどうするのか。また患者が請求内容を確認する点をどう取り込んでいくのか等、基準を先に決めてから進めるべきではないか。

不適正な広告の是正

保険者側:別途、広告に関する検討会でガイドライン策定に向けて議論されているところではあるが、ガイドラインが施行されたら不適切な広告を掲げている施術所に対し受領委任の中止ができるように規定を改訂することも検討してもらいたい。

問題のある患者に対し、保険者において受領委任払いではなく、償還払いしか認めない権限を与えること

保険者側:あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう(以下、あはき)では問題のある患者にはどういうケースが該当するのか等の調査を行なっているが、柔道整復ではどう調査するのか。柔整審査会が面接するのは施術管理者であって患者ではないのに、どのように問題のある患者を特定していくのか。

厚労省:具体的に説明できる状況ではないが、今年度調査した状況を分析して検討していきたい。

これらの他、有識者委員からは〝柔道整復が受領委任払いは認められた経緯として、①整形外科医が不足していた、②応急の場合には医師の同意なく施術ができる、③対象疾患が外傷性のもので発生原因が明確で他の疾患との関連が問題になることはない、の3点が挙げられる。しかし、昨年からあはきも受領委任払いが認められるようになり、あはきと柔道整復の差がなくなってきている。日本臨床整形外科学会の調査では、慢性疾患の患者の多くが接骨院・整骨院に通っているという実態も明らかになった。それであれば、あはき同様に医師の同意書を必要とすべきではないか〟との意見も挙げられた。

次回検討専門委員会の開催日程は未定となっている。

Visited 21 times, 1 visit(s) today