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つよく、かしこく、美しく!『統合医療女性の会』発足!

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2013年8月24日(土)午後1時半から東京大学医学部総合中央館において、『かしこく、ていねいに食べる』をテーマに統合医療女性の会・発足記念セミナーが開催され、3題の講演が行われた。

渥美英子氏

先ずはじめに日本統合医療学会統合医療女性の会代表渥美英子氏は〝今日は女性部会ですので皆様気安くお過ごしください。「健康は食にあり」という諺は健康にはたす食品の重要性を力説したものとして有名ですが、単に栄養としての食べ物ではなく文化的な背景から個性まで含めた表現になっており、食べる物は、食べる人を表す。「食は人なり」と訳されています。私が子どもの頃、第二次世界大戦があり、昭和20年8月15日、日本の敗戦によって幕を閉じました。一面焼け野原になった東京は家や家族を失った人々で大混乱の状態で治安は悪化し、昼間でも町を歩くのが恐い状況の中で人々が最初に直撃した大きな問題が食べ物をいかに獲得するかでした。食べられる物はなんでも食べました。今の時代はお金さえ出せばなんでも手に入る時代で、食べ物にも季節感がなくなりました。そんな時代だからこそ、私達統合医療女性の会の発起人は食べるということの本質に立ち向かって単なる回顧主義ではなく今の時代に対して賢く丁寧な食との関わりを広く社会に発信することを思い立ちました。今年の夏の締めくくりにみんなで食べ物という言葉をかみ締めつつ、食を通じて健康を考え、その先にある人生を如何に豊かなものにしていくか皆さまのお手並み拝見です〟と述べ、ご自身の健康法について〝第1によく噛むこと。2番目はよく歩く。3番目は腹がたっても一日寝てから怒る。4番目、寝る時はその日の楽しかったこと、良かったことだけを考える。おまけの5番は、冷たい水で顔を洗う。私は今年で83歳になりますが皺が少ないねって言われます。自慢話に思われますが、そのせいではないかなと思います〟とユーモアたっぷりに挨拶を行った。

次に「いろどりで食を考える」と題した講演で、帯津三敬塾クリニック院長・板村論子(いたむらろんこ)氏は、〝忙しい日常の中でやれること、やってきたことを紹介したい、食に関する情報があふれるほどある中で本当に役立つ知識は何かを考えて皆さんに共有していただければと思います。今、皮膚科と心療内科が専門で、統合医療の1つであり元々人間が持っている自然治癒力に働きかけるホメオパシーをやっています。2011年に「Food as Medicine」というアメリカのセミナーに参加しました。今まで西洋医学中心の医療は疾患をみて、人が真中に居なかった。これからの医療は、西洋医学・相補代替医療であるホメオパシー・漢方、フードアズメディスン・衣食住等とソーシャル的、経済的なものを包括的にみる、人を中心とした医療システムではないかと思います。今日は自分が一番関心をもっている脂質と、フィトケミカルについて紹介したい〟と話した。

脂質は生物から単離される水に溶けない物質の総称である。よく私達が使う脂肪(fat)という言葉は脂質の中でも動植物に含まれ、通常食事で摂取するもので中性脂肪・コレステロール・脂肪酸・リン脂質の4つを意味する。脂肪酸は化学構造上の呼び名で飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸、さらに不飽和脂肪酸に一価、多価(オメガ3やオメガ6)などがある。食品の酸化だけでなく「酸化」が何故、身体にとって悪影響を及ぼすのか?人は毎日500リットルの酸素を体内に取り入れ、体内のミトコンドリアでたえず酸素を消費しているが、これらの酸素の一部は代謝過程において活性酸素に変換される。活性酸素は防御機能などに関与しているが、余剰な活性酸素は脂質・タンパク質・酵素や遺伝子を酸化し損傷を与える。植物も紫外線から遺伝子を守るために豊富な抗酸化物質を備えている。だから植物由来の化合物や栄養素であるフィトケミカル(植物化学物質)のもつ抗酸化作用が着目されている。フィトケミカルは1万種類(β‐カロテン、リコピン、ルテイン、カプサイシン、アスタキサンチン、クルクミン、アントシアニンなど多数)あり、1つの野菜に数百種類含まれている。フィトケミカルは「色」と関係している。β‐カロテンは赤や黄色、リコピンは赤、リテインは濃緑色、クルクミンは黄色など、野菜のもつ「色」には深い意味があり、野菜はまたビタミン、ミネラル、食物繊維、糖質を含んでいるので野菜を毎日食べることが重要である。アリゾナ大学のプログラムに抗酸化炎症ダイエットがあり、地中海式ダイエットとアジア式ダイエットを推奨している。また、米国内務省で2011年6月に打ち出した「My plate」、栄養バランスを改善するための10項目、1.自分に必要なカロリーを把握して調整、2.食事を楽しみ、食べる量は少なめ、3.お皿に大盛りにするのはやめ、小さめのお皿やお茶碗を使う、4.野菜・果物・穀類・乳製品を積極的に食べる、5.食事の半分を野菜と果物、6.乳製品は無脂肪か低脂肪、7.主食の半分は玄米や雑穀パンなどの全粒穀物、8.食べる頻度を減らすべき食品:クッキー、ケーキ、アイスクリーム、清涼飲料水、ピザ、ベーコン、ソーセージなど、9.食品に含まれている塩分の量を比較、10.清涼飲料水の代わりに水を飲む。

また、「My plate」は1枚のお皿を4分割して考え、野菜、果物、穀物、タンパク質の4つを食事に取り入れる簡単な方法で直ぐに実行できると紹介した。終わりに講演のまとめとして、出来るところから簡単で楽しく料理する、”いろどり”で献立を考え野菜中心にカラフルな料理、旬のものを取り入れる等々、なにごとも分り易く解説した。

続いて(医)明悠会サンデンタルクリニック理事長で、30年前よりリラクゼーションのできる歯科診療に取り組まれてきた小山悠子氏の「健康になる食べ方」と題した講演が行われた。 小山氏は、健康のために何をどう食べるか、ガンを防ぐ食べ方、歯とアルツハイマーや頭の良い子の相関性などを話した。

喪失歯0~4本のグループと喪失歯15~28本のグループを比較すると死亡率は1.8倍。1日1回の歯磨きの人は、2日の人に比べて口腔ガン、食道ガンになる危険性は3割高い。歯周病菌は、口の中に潜む殺し屋である。歯が悪いとボケる。噛まないと脳の委縮、脳血流の虚血を招き筋肉の委縮、顔貌の衰え、認知症になる可能性が高い。アルツハイマー型老年認知症患者と正常者の比較では、自分の歯がない・殆どない人は患者73.5%・正常32.4%で、また上顎が総義歯の人は患者52.9%・正常30.9%、下顎が総義歯の人は患者44.1%・正常20.6%であった。中学2年生までの生徒を対象に行った調査結果から知能指数の高い子供は、聴力も優れ、咬合状態も良い。不正咬合を治すことによって、成績が向上した。歯周病の病原菌は、肺炎・糖尿病・虚血性心疾患・心臓発作・細菌性心内膜炎、脳卒中は6~7倍で、胃潰瘍・骨粗鬆症・皮膚炎・早産(低体重児出産)は7.5倍、冠動脈心疾患のリスクは6.6倍(歯槽骨吸収4mm以上の人)膵臓ガンは1.64倍等、多くのデータを示し、咀嚼することは脳や体に影響する。脳を刺激するために料理を作って美味しく食べるのが良い。昔から唾液は万病の薬と言われており、100回は噛めないにしても10回でも噛むと良い。意識して噛むことが大事である等、歯の大切さ、唾液の役割について貴重な報告を行った。

川嶋みどり氏

日本赤十字看護大学名誉教授で日本統合医療学会副理事長・川嶋みどり氏の「口から食べる」と題した講演が行われ、川嶋氏は、健康な人は勿論、病気の子供も高齢者も、命の終わりを迎える人にとっても「口から美味しく食べることは生きること」そのものである。口から食べることの意義、セルフケア、自分で自分の健康を目配りしながら人間が人間らしく生きて暮らしていくための生活と生活行動について述べた。

最期まで口から食べる、噛んで食べる。生活とは、人々が生きて暮らしていく営みであり、居住空間のもとで、食物の調理を始め水・火・照明の管理、生活空間の清掃、衣服の洗濯等、最低限の条件を満たすものでなければならない。生活行動とは「息をする」「食べる」「身体をきれいにする」「トイレに行く」などなど、生命維持に関連する営みであり「身だしなみ」「コミュニケーション」「移動・動作」「学習や趣味」など、人間らしくあることに欠かせない営みを言う。何れも個体レベルの営みで、他人が代わって行うことはできない。そのありふれた営みの価値とは、人間が人間らしく生き、その人らしさが尊重され、支障なく継続できることであり、その前提には尊厳ある生と人権の保障がある。

人の心は食べることで〝開く〟、食べる力を引きだす支援を行う。そのための環境を整える。食べる場つくり、食べられる体の準備(尿意・便意はないか、はっきり目覚めているか、痰や分泌物は?呼吸、声など唾液の分泌を促す、口腔ケア、誤嚥予防、姿勢を整える等)、食べる行為の援助としてできるだけ自力で楽しく、急がせない、一口の量に適したスプーン、食べる順序、立ったままの援助はしない等、介護ケア現場での注意すべき点に触れ、また現代医療の重要な問題点、重病人の思いをよそに食べる営み支援の後退、輸液技術の進歩、静脈栄養、簡便な胃ろう増設法による安易な選択、診療報酬制度の影響及び診療面の業務過多等、様々な背景を訴求。

在宅療養のメリットとして病院や施設ではできない食の醍醐味を看護・介護の力で充実させる。上手に食べることはQOLを高める。個別の好み(少しのわがまま)を活かせるメリット、食べなれたものを食べられる嬉しさ、住み慣れ見馴れた環境が大事であり、使い慣れた食器、共に食卓を囲む家族、食べることを通じてコミュニティー力をつける。隣人の安否を気遣うコミュニティ、食べることを媒介としたお隣さんづくりでは、川嶋氏自身が関わられている宮城県多賀城市の仮設住宅での〝お茶っこの会〟を紹介。

賢さがより求められる現代、地球温暖化のもと受け入れがたい食べ物を見抜く力を養い、TPPにより脅かされる食糧自給が持たらす意味、そして原発推進を黙認してよいかが問われる今、賢い女性として考えるべきこと行うべきことは何かとした問題提起を行い、多くの出席者に深い感銘を与える講演であった。

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