(公社)日本柔道整復師会 第38回近畿学術大会兵庫大会 開催
去る2013年10月27日(日)、兵庫県神戸市の神戸芸術センターにて『公益社団法人日本柔道整復師会第38回近畿学術大会兵庫大会』が開催された。
大会は(公社)滋賀県柔道整復師会会長でもある中江利信大会実行副委員長の開会宣言によって開会。開会挨拶にて登壇した(公社)日本柔道整復師会・工藤鉄男会長は〝今、この業界は日本の社会保障の変化と共にあり方を変えなければいけない状況に来ている。皆さんも承知の通り、病院完結型の医療から地域完結型の医療、すなわち病院で最終的に完結するものではなく、自宅において地域の人達が皆で助け合える社会保障を作っていこうという流れになっている。現在の日本柔道整復師会会員約1万7000名だけでは、少子高齢者に向けた新たに国が取り組む社会保障の変革にはとてもついていけない。日本柔道整復師会は全ての柔道整復師を結集させるような仕組みを今検討している〟と、国が目指す新しい社会保障制度に伴い、業界も変化が必要であることを熱弁。業界一本化に向けて日本柔道整復師会が動いていることを示唆した。また、2020年に開催が決まった東京オリンピックにも触れ、〝途上国の選手たちに対し、日本医師会などと共に日本文化から生まれた医療技術をおもてなしのひとつとして提供できるよう、国に働きかけを行なっていく。柔道道整復師の社会保障の中での位置づけ、そしてスポーツ分野での位置づけを確立することによって、7年後の柔道整復師の姿は大きく変化するだろう〟と、スポーツ分野での柔道整復師の地位確立にも熱意を滲ませた。
次に主催者代表として大会実行委員長でもある(公社)兵庫県柔道整復師会・萩原隆会長より〝皆様と共に大いに学び、今日一日が必ず明日からの施療に役立つ内容になると信じている。今大会より大会スローガンを『深まる探究心、高まる行動力』とし、新たな柔道整復師の活動を模索し、将来への原動力となるような学会運営を目指しており、この兵庫大会を機により魅力あるレベルの高い学会になればと願っている〟との歓迎の挨拶、プログラム紹介があり、続けて来賓祝辞へと移った。
来賓祝辞では兵庫県健康福祉部健康局長・野原秀晃氏により〝我が国は本格的な人口減少社会を迎えた。兵庫県の人口は30年後には90万人減少して470万人程度になると見込まれている。これからは少子高齢化がもたらす地域格差の拡大、グローバル化への対応といった課題に積極的に取り組んで行かねばならない。こうした中ひとりひとりがいきいきとした生活を送るために最も基本となるのは健康である。兵庫県では、県民の健康づくりを推進するため、本年4月に策定した「兵庫県健康づくり推進実施計画」に基づき、県民一人ひとりが主体性をもって健康の保持増進に取り組むとともに、健康づくり関係者、事業者、行政等が相互に連携・協働して県民の健康づくりを支援していく。柔道整復の技術は人間が本来持っている自然の治癒力を促す伝統的な医療として、地域の中に脈々と受け継がれてきた。近年では怪我の回復のみならず、介護予防のための運動機能訓練に活用されるなどその役割はますます大きくなっている。本日ご参加の皆様が最新の技術や研究活動によって得た情報を共有され、今後より質の高い地域医療の実現にご貢献いただくことを心から期待したい〟と、井戸敏三兵庫県知事のお祝いのメッセージが代読された他、神戸市保健所長・伊地智昭浩氏からは矢田立郎神戸市長の祝辞の代読、兵庫県労働局局長・前田芳延氏より柔道整復師の地域医療貢献に関する感謝、本学会の成功を祈念する内容の祝辞が送られ、来賓紹介、祝電披露、会員表彰の後、特別講演へと移った。
特別講演では愛知医科大学医学部教授・中野隆氏による『機能解剖で斬る運動器疾患-解剖所見と画像所見による骨折・脱臼、軟部損傷のメカニズム-』と題した講演が行なわれた。中野氏は〝現在はエビデンスを求められる時代である。伝統的な方法論だけではなく、柔道整復師が自らの考えで科学的な方法論を展開し、自らが培ってきた知識と技能を検証しなければならない〟とし、大腿骨頚部骨折や橈骨遠位端骨折、de Quervain病などを例に挙げ、多数の症例やスライドを用いてそのメカニズムを解りやすく解説。講演後には参加者から投げかけられた多くの質問に熱心に対応していた。
特別講演後は会場を4つに分け、会員による論文発表、養成校の生徒や教員によるポスター発表、近畿ブロック大会の特色である超音波画像観察委員会の活動報告、(公社)日本整復師会保険部介護対策課による講演が行なわれ、非常にバラエティーに富んだ学術大会は閉会式の後、盛会の中幕を閉じた。
「論文発表」
- インソールによる身体能力の向上
-バットスイングのスピード変化の検証-滋賀県 中谷 功 - 上腕骨顆上骨折の治験例-日常まれな屈曲骨折を体験して-京都府 井坂 豊
- 粘土湿布と綿包帯を使った足関節内反捻挫への処置和歌山県 宮本 和人
- 肩関節前方脱臼の一整復例兵庫県 濱 篤史
- アキレス腱断裂保存療法の治験例奈良県 西尾 勝彦
- プライトン固定を施した中足骨多発骨折の一症例和歌山県 梅田 貴吉
- 災害現場等における古典技術の有効性-現在の技術と比較して-京都府 地當 健一
- 転倒による高齢者の上腕骨脱臼骨折と上腕骨外科頸骨折の2症例について兵庫県 根來 保彦
- 指骨骨折に対するG B(grasping a bandage)固定法兵庫県 塚本 顯彦
「ポスター発表」
- 簡易湿布による表皮温度の変化発表:里川 太志 (履正社医療スポーツ専門学校)
教員:桃井 俊明/福田 学 - 各種テーピング施行による制動効果について発表:久保 学 (明治東洋医学院専門学校)
教員:仲村 剛 - 腰痛におけるスパイラル・テープの応用発表:本田 剛之 (大阪行岡医療専門学校 長柄校)
教員:野口 裕生/西村 貴司/岡田 成賛 - ゴルフスイングによる腰痛の原因の考察発表:尼子 偉久 (大阪行岡医療専門学校 長柄校)
教員:田中 勇二/宮越 亮典/岡田 成賛 - 野球経験者の投球側と非投球側の肩関節可動域の比較・検討発表:溝口 俊成 (明治東洋医学院専門学校)
教員:仲村 剛 - PIP関節における関節リウマチとブシャール結節の鑑別と考察発表:石井 由香 (大阪行岡医療専門学校 長柄校)
教員:鳥山 哲夫/野口 裕生/岡田 成賛 - 変形性膝関節症-人工膝関節置換術にならないための予防法-発表:黒津 雄哉 (大阪行岡医療専門学校 長柄校)
教員:宮越 亮典/鳥山 哲夫/岡田 成賛 - アキレス腱骨化症とアキレス腱皮下滑液包炎の関連性発表:貞安 卓 (明治東洋医学院専門学校)
教員:仲村 剛 - アキレス腱断裂による保存療法と観血療法の適応比較発表:有馬 純平 (大阪行岡医療専門学校 長柄校)
教員:西村 貴司/田中 勇二/岡田 成賛 - 座位姿勢と股関節可動域の関連性について発表:沼井 佳代 (京都医健専門学校)
教員:上岡 伸光 - 身体能力及び、体幹可動域の改善について発表:石井 智也/兵藤 智一/村木 直彦 (兵庫柔整専門学校)
教員:荒川 秀章 - 触診における熱感の測り方について発表:平野 晃弘/福田 竜司/嶋村 宗弘
(京都仏眼医療専門学校)
教員:生駒 慎二 - 介護予防のための機能訓練教室に通う高齢者の口腔機能と運動機能の特徴発表:田原 茉莉/上田 朋佳 (関西健康科学専門学校)
教員:沖 和久/櫻井 裕士/佐々木 阿悠佳/中村 満
神戸女子大学大学院:山下 浩美/海崎 彩/田中 紀子
神戸女子短期大学:平野 直美 - 非利き手のトレーニングが身体におよぼす影響発表:梶村 友美/新垣 樹/田中 裕樹/松尾 瑛史
(大阪ハイテクノロジー専門学校)
教員:和歌 秀典/永倉 栄一/織田 修輔 - 足関節における固定力の違いについての考察発表:松井 秀平
教員:髙橋 芳貴 - 足関節内反捻挫に対する巻軸帯固定についての検討発表:安井 将二/秋山 邦臣/津田 将平/富岡 龍也
(兵庫柔整専門学校)
教員:荒井 秀章 - Kinectを用いた簡易的動作解析システムに関する検討教員:丸山 顕嘉/赤澤 淳 (明治国際医療大学)
- 独自実習用教材の開発と教育効果向上について
〝Employing original teaching materials to improve educational effectiveness.”教員:辻坂 圭央 (東洋医療専門学校)
「超音波画像観察委員会活動報告」
○第1部 ポスタースライド展示
テーマ 「超音波の原理」超音波画像観察装置の基本操作方法
○第2部 特別講演
テーマ 柔道整復師に役立つ「運動器の超音波観察法」
-超音波で考えるという使い方、その基礎から応用-
株式会社エス・エス・ビー 超音波営業部マネージャー 柳澤 昭一
○第3部 演題発表・実技
テーマ 「基礎から臨床へ、そしてその応用」
司会 副委員長 藤井 憲之
Ⅲ-1『筋損傷』について -超音波画像と症例-
副委員長 川戸 典知
Ⅲ-2『野球肘』を超音波画像観察装置で観る
-少年野球選手に対するMC活動を通じて-
副委員長 藤井 憲之
Ⅲ-3『超音波新時代』-近畿超音波画像観察委員会の活動指針-
委員 今井 雅浩
「介護保険に関する発表」
○柔道整復師と介護保険について
-機能訓練指導員として現場で直ぐに実践できる運動実技を含めた必要なskill-
(公社)日本柔道整復師会保険部 介護対策課 三谷 誉/川口 貴弘
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