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インターナショナルセッション -世界に羽ばたく柔道整復-

トピック

2013年11月23、24日、東京都江東区にある東京有明医療大学において、『第22回 日本柔道整復接骨医学会学術大会』が開催された。その中から、今回は24日(日)14時半からC 会場(中講義室)で行なわれた『インターナショナルセッション』の模様をピックアップしてお伝えする。

インターナショナルセッション

このインターナショナルセッションでは東京有明医療大学・橋本昇教授を座長に迎え、4名の外国人演者による発表の他、演者と橋本氏によるディスカッションが行なわれた。

エンフタイワン・トゥブシンバヤル氏

最初の発表者として登壇したモンゴル国立健康科学大学付属医療技術大学・エンフタイワン・トゥブシンバヤル氏は、モンゴルにおける日本伝統治療(柔道整復術)指導者育成・普及プロジェクトの取り組みについて発表。モンゴルの医療システムや同プロジェクトの活動報告の他、モンゴルにおける外傷専門病院でのけがに対する処置の現状、モンゴルの准医師を対象とした柔道整復術の必要性についてのアンケート結果等が報告された。

トゥブシンバヤル氏によれば、モンゴルでは国立外傷専門病院において外傷の応急処置を受けた人達がここ10年間で約2倍となり、それに比例し手術件数も多くなっているという。国立外傷専門病院での手術の内、骨と関節の手術が約7割弱に達することから、柔道整復術を学びきちんとした技術で応急処置の治療をすれば、この手術の数は少なくなるのではないかという持論を展開。日本伝統治療(柔道整復術)指導者育成・普及プロジェクトの一環として地方の准医師302人に行なったアンケート結果では、柔道整復術は地方の医療において必要かという問いに、「とても必要である61%」「必要である39%」との回答者のすべてが柔道整復の必要性を認識。柔道整復を使って処置を施したことで高位医療施設への転院がどのように変化したかという質問に対しては、回答者の約6割が「転院が減少した」と答えたと報告した。

トゥブシンバヤル氏は〝本プロジェクトで准医師学科の学生約550人、地方准医師のべ1000人が柔道整復術の講義を受けた結果、臨床における応急処置の知識、技術が向上した。柔道整復術を学ぶことで観血的療法を減少させ、国の社会保障費にも貢献できる。モンゴルに必要な技術であると感じた〟と述べ発表を締めくくった。

ガンバートル・フデレムンフ氏

次にモンゴル国のガンバートル・フデレムンフ氏が『私が柔道整復師を目指した理由』と題した演題を発表。父親が国際的な柔道家だったフデレムンフ氏は、幼少期から自分もこの場所で試合がしたいと柔道人生をスタートさせる。数々の業績を打ち立てた後、2007年にモンゴル国柔道ナショナルチームメンバーに選出され、翌2008年にはモンゴル選手権で優勝を飾った。しかし連日のハードな練習により腰を痛めていたフデレムンフ氏は、その時にJICA事業でモンゴルに来ていた日本の柔道整復師に腰を治療してもらったことがきっかけで柔道整復師の道を志すこととなった。日本の高等学校卒業後、養成校に入学したフデレムンフ氏は、2012年に国家試験に合格し晴れて柔道整復師の資格を取得。現在は公益社団法人京都府柔道整復師会会員、勤務柔道整復師として日夜、柔道と接骨院業務に励んでいるという。

フデレムンフ氏は〝幼少のころから柔道のみならず色々なスポーツを行なっている友人が肩・腰・膝などのけがに悩まされ、スポーツ医科学の専門家不足から完治せずに志半ばで競技を断念していくのを悔しく思っていた。医療インフラが整備されていないモンゴル国、特に地方では柔道整復の徒手による治療は非常に有用である。その頃から柔道整復師の技術を習得し、外傷に悩むアスリートや地方の外傷患者を助けたいと思っていた。柔道整復をモンゴル国で普及・定着する手助けになりたい。そして私自身ほねつぎの誇りを持って日本での業務を行ないたい〟と『ほねつぎ』としての熱い想いを込め、発表を終えた。

朴成龍氏

続けて大韓民国の朴成龍氏もフデレムンフ氏と同様に『私が柔道整復師を目指した理由』という題で発表を行なった。朴氏はまず韓国における接骨士(柔道整復師)の歴史を詳細に説明。韓国では1910年に日韓併合により、それまで韓医学(東洋医学)中心だった制度を廃止し、西洋医学を医療の主体とした。1946年4月に米軍政庁は韓国において保健厚生部訓令を出し、按摩術、鍼術、灸術の営業取得規則の効力を停止。1948年に大韓民国が建国された後は、1951年9月25日、国民医療法第59条に鍼士、灸士、按摩士および接骨士に関する制度が新設され、医師とともに医療制度の二本立てが始まった。日本の厚生労働省にあたる保健社会部は1960年11月28日に保社部令第56号に類似医療業者令を設定。これとともに鍼士、灸士、按摩士および接骨師の資格試験も規定された。1961年にクーデターが勃発し、翌1962年には新たな医療法が成立。軍事革命の国家再建最高会議で国民医療法第59条を削除し、医療法附則警戒規定(鍼士、灸士、按摩士および接骨士の既得権者に対する管理規定)を設定することによってこれらの制度は廃止となり、それにより韓国国内で接骨士は一代限りの取扱いとなったという。

朴氏は韓国・龍仁大学を卒業後、韓国で廃止になった接骨士制度復活を夢見て、日本で柔道整復師の資格を取得。現在は龍仁大学校の講師を務め、京畿大学校博士課程でスポーツ医学学の研究をしている他、龍仁大学校が考案し、世界50か国がおこなっている総合武術「龍武道」の普及にも力を注いでいるという。朴氏は結びに〝接骨士(柔道整復師)はひとりの患者を初検から治療に至るまで一貫して診られる素晴らしい職業である。私が日本の柔整学校や接骨院で学んだ「柔道整復」を韓国の柔道競技の現場に還元し、韓国において接骨士の復活を果たしたい〟と接骨士復活への夢を語った。

Tae-hyun Lee氏

最後に韓国国立体育大学・Tae-hyun Lee氏より『Menstrual irregularity prevalence in elite female university judo athletes』(女性の柔道家の生理における状況について)と題した研究発表がなされた。女子アスリートにとって生理不順とはけがに繋がるなど選手生命を脅かしかねない問題であるが、とりわけ女子柔道選手の生理不順頻度は体操、バスケットボール、バドミントンに比べて高いことが報告されており、生理不順の原因は過度のトレーニングとして知られている。過去30年の間に女子アスリートの生理不順と景気能力との関連性が報告されているが、選手たちの骨の健康との関連性は不明であった。女子アスリートたちの骨、筋肉、関節、人体、腱などの傷害発生に起因する運動の中断は筋肉の消失に影響を与え、骨と筋肉の損失は生理周期に依存しているため、競技力の向上と維持のために選手たちの常時的な生理周期と骨の健康性向上の必要があるとし、柔道、バスケットボール、跆拳道など8つの種目の女子アスリートを対象とした研究結果を発表。その研究結果では「柔道選手の生理不順やトレーニング量は比例関係にある」「柔道選手の初経に伴う生理不順の関連性はない」「柔道選手たちが過度なトレーニングによる生理不順があっても骨密度は正常であり、他の種目に比べて優れている」ということが分かったという。

Tae-hyun Lee氏は〝女子柔道選手たちの生理不順がひどくても筋力、または骨の健康に悪い影響はなかったと思う。その理由は柔道のコンタクト運動法と自分の体重以上を利用した部分、例えば受け身とか投げることなどの運動が原因だと思われる。我々、龍仁大学はこのような活動を検証するため、最近引退した選手たちの生理の状態と骨の健康の関連性を追加的に調査している。更に生理不順である女性たちの骨の健康状態を向上させるために受け身を実施し、良い結果を得ることが出来た〟と発表した。

発表後に行なわれたディスカッションでは、座長の橋本氏より各演者に対し、発表内容をより深く掘り下げる質問がなされた。

橋本氏

インターナショナルセッションの最後に橋本氏は〝モンゴルにおいて我々日本柔道整復師会が行っている日本伝統治療(柔道整復術)指導者育成・普及プロジェクトは、現在受け入れ先である国立健康科学大学の中で行なっている。さらにバグと言われる地方の集落で活動されている准医師の方達に我々の技術を継承していただき、それを広めていただいている。このプロジェクトには沢山の日本柔道整復師会会員の方に参加していただいているが、さらに発展させるためには若くて体力がある方達にモンゴルに行っていただき、モンゴルの柔道整復の指導者とともに普及発展に努めてまいりたい〟と話し、約1時間にわたったインターナショナルセッションを締めくくった。

(大会実行委員長、4名の発表者に掲載許可了承済)

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