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「教養」・「研究」・「臨床」―深化と調和―をテーマに第22回日本柔道整復接骨医学会学術大会が開催される!

トピック

去る平成25年11月23日(土)・24日(日)の2日間にわたって、「教養」・「研究」・「臨床」―深化と調和―をテーマに「第22回日本柔道整復接骨医学会学術大会が東京有明医療大学にて開催された。主催は、日本柔道整復接骨医学会。後援は、文部科学省・厚生労働省・東京都・江東区・公益社団法人日本柔道整復師会・公益財団法人柔道整復研修試験財団・公益社団法人全国柔道整復学校協会である。

第22回・大会会長講演は東京有明医療大学・佐藤達夫氏が『足とアシクビの解剖序説』と題して行った。

佐藤達夫氏

日本柔道整復接骨医学会会長であり座長の櫻井康司氏より講師紹介が行われた。佐藤氏の講演内容は、解説の深化を図るために、いくつかの形態学的視座も導入し足とアシクビの解剖として、骨格、関節、靱帯、筋、腱、血管、神経の概要について実際の解剖所見を映像を交え解説された。

人間の足の形は他に類をみない。特に二足歩行を行う非常に貴重なもので、他の霊長動物とくらべると脳と共にヒトに特異な構造物として足があげられる。直立することで手の自由を獲得し、更にヒトの足は全身を支持して立位の姿勢を保ち二足歩行支援タイプに改修されている。足を検討する場合には、足は手とどれだけ似ているのか、同時にどれほど手と隔たってしまったかという視点を取り入れて考えることが必要である。

足を構成する26個の骨は、内側群(距骨・舟状骨・3つの楔状骨・第1-3中足骨・趾節骨)と外側群(踵骨・立方骨・第4-5中足骨・趾節骨)に分類され、前方では内側群と外側群は平置しているが、後方では踵骨の上に距骨が重なってのっている。この構築は一方で足アーチをつくり、他方で、距骨の上下に関節(距腿関節と距骨下関節)を生み出し、屈伸と内・外反の2種類の運動を可能としている。距骨が占める特異な位置は足の理解の要である。また手根骨と足根骨の比較、距骨と踵骨の重なり、足根骨の配置、距骨下関節(内反・外反)、足アーチ(足底弓)の形成などを解説し、ハイヒール着用時の筋電図を示し、つま先立ちすると距骨の幅が狭いため、揺れて立っているのが辛くなる。

アキレス腱というのは医学的な名前であり、整形にも柔整にとっても関心の高いものである。アキレス腱は踵骨につくところが非常に強力である。アキレス腱の上を辿ると、腓腹筋の深層でヒラメ筋と接続しており、腓腹筋の外側頭を切り内側頭も切って裏返すと腓腹筋の外側頭の下に紡錘状の小さな筋が見つかる。この足底筋の腱はアキレス腱の内側に加わっている。アキレス腱の主要構成筋はヒラメ筋で、ヒラメ筋は脛骨と腓骨の両方にまたがって付着した強力な筋である。所謂アキレス腱や足底筋との間に内返し、外返しの差があり、作用が異なる筋肉の間にできるという風に考えておきたい。根拠の問題点は何所かというと、両方とも屈筋で、筋肉は、幾層に幅広くても、放散するところでは非常に細くなって、その細くなったところが重なり合うことになって、それはどのようにしてできたのかということが今大きな課題になっている等話し、足の形態に潜むさまざまな問題点について臨床解剖学の立場から考察を加えた。

特別講演Ⅰは、田渕整形外科クリニック院長・田渕健一氏が『足関節内反損傷』と題して講演を行なった。

田渕健一氏

学校法人米田学園理事長で座長の米田忠正氏が講演前に講師紹介を行った。講演で田渕氏は、〝私が考える捻挫と皆さんが患者さんを診る捻挫、また患者さんが言う捻挫は全て違う。それを今までは厳しく決めてきたが、診断ができて診立てが出来る、捻挫という概念をもっと大きく拡げてもいいんじゃないかと考えました。今日初めての提案で、今までの反省を込めてやってみたい。診断もしない内に「何時から練習に復帰できるの?」と聞かれるので、これを正確に見極めることが要求される〟と述べてから本論に入った。

捻挫の重症度は2週間程度で治る軽症、4週間かかる中症、6週間以上かかる重症との3段階がある。だがこの決め手はあるのか?外力の強さ、痛みの強さ、歩けるか、可動域制限の程度、腫れや皮下出血の大きさは大事であるが、これだけでは判断できない。どこまで捻挫症候群にするのかということを中々言えない。

前距腓靭帯(ATF)は関節内靭帯で短い靭帯である。前距腓靭帯の損傷をどのように証明するか?距骨下関節はいまだかつて証明できていない。前距腓靭帯の断裂があれば、足部が内旋しながら引き出される。遠位脛腓靭帯結合部は、外旋によって損傷され離開する。次に他の部の損傷の有無を判断する事が必要である。捻挫時には、外側の靭帯が損傷し同時に内果も衝突して損傷される。足関節捻挫症候群というべきで、靭帯損傷だけではなく関節内の軟骨も損傷される。距骨下関節には外側に踵腓靭帯と下方に洞靭帯という強い靭帯がある。バレーの選手などがジャンプして着地した時に洞靭帯がやられることがある。

実際に行っている足関節捻挫の診察は、A.仰臥位(仰向けで寝た姿勢)B.側臥位(横向きで寝た姿勢)C.腹臥位(うつ伏せで寝た姿勢)D.座位(座った姿勢)(E)立位で行う診察を紹介。「ねんざ」は必然的に種々の損傷を含み、「ねんざ症候群」とでもいうべき病態である。治療がそれぞれ微妙に異なるのもやむを得ない。狭義の足関節捻挫の治療は①亜脱臼を整復する②「ねんざ」は夜悪くなる③荷重した方が治りが早い④Toe exercise である。

足関節、距骨下関節の亜脱臼が無いか?足関節「ねんざ」時に腫れや皮下出血は軽度で、骨折が無いのに痛くて足がつけない、動きの制限が強く、歩けない。靭帯の緩みが証明できない。この時亜脱臼と考え整復を試みる。亜脱臼の時は足関節は軽度底屈、踵部内転している。距骨と舟状骨の整復は、舟状骨を距骨頭の外側にすべらせる。凸なる方を凹なる面にすべらせる。この整復をやってあげると患者さんはあっと喜ぶ。ギプスを巻く時、踵を突きあげないように配慮する。

テーピングでは、1.スターアップ(踵腓靭帯)距骨を脛骨下面に押し付ける。2.サーキュラーを両果のすぐ上に巻く。3.ホースシューと足部が下がらないためと脛腓靭帯を寄せる。4.ヒールロックは選手が好む。テーピング法は競技種目毎に異なる。スパイラルは前距腓靭帯の損傷に最も効果が有る。サポーターは足首を一周するバンドは下がらないように止める。スターアップ効果と脛腓靭帯結合部を寄せる効果がある等、卓越した講演を行った。

特別講演Ⅱは学校法人花田学園 日本柔道整復専門学校の根本恒夫氏による『果部骨折と距骨の亜脱臼における整復および固定法』と題した講演が行われた。

根本恒夫氏

公益社団法人石川県柔道整復師会会長で座長の木山時雨氏が講演の前に講師紹介を行った。根本氏の講演では、足関節における果部骨折は比較的頻度が高く、複雑な動きにより発生する損傷である。発生原因は足関節部に内転・外転・外旋外力および垂直外力などの作用で生じるが、それらの原因の中でも足部への外旋外力が働いて生じるものが多発する。

整復ポイントは、末梢牽引と内旋を加え、腓骨の外旋・短縮を除去し、内転により屈曲転位の整復。内果骨折部直上と外果部・踵骨外側部を交差圧迫し、再度の内転(内反)・内旋位の矯正により、距骨外側亜脱臼および脛腓関節の離開を整復。外転骨折での内果骨片は外上方へ直圧し整復。外旋骨折での内果骨片は、後上方へ直圧し整復。三果部骨折の際には、後縁骨折を最初に整復。後縁骨片の整復は、内側後面上方より前下方への直圧。また、整復後には①内果関節面・脛骨下関節面・外果関節面と距骨関節面の幅の確認(果間関節窩と距骨関節面の幅の確認…亜脱臼の整復確認)②骨折部の確認③関節面の段差の確認(特に関節面1/2~1/3に及ぶ後縁骨折)を行うこと。

固定範囲は、一般的には、膝下の金属副子およびギプス固定。再転位の可能性が考えられる症例は、約2~3週間まで膝関節を含む固定、末梢部は第5中足骨遠位まで(内旋位の保持)の固定とする等、距腿関節における脛腓関節および腓骨の重要性を理解し、腓骨(外果)および脛腓関節の整復を重点的に行う事で、距骨の亜脱臼が正常位に復すことにより、内側靱帯の牽引力が弱まり内果骨折もスムーズに整復位が得られることが多い。

一般的には「整復は可能でも固定保持が困難である」と言われ、安定した整復位を保持できる固定が必要である。いわゆる外転・外旋損傷では内転位(内反位)の矯正肢位を持続的に保持できる固定法が要求されるとして、「交差圧迫固定法」を紹介。交差圧迫固定法の効果について、通常の金属副子とスダレ副子の固定では、内転(内反)・内旋位の矯正力が加わらず、整復肢位の固定保持が不安定である。しかし金属副子とスダレ副子による交差圧迫固定又はギプスによる交差圧迫固定では、内転(内反)・内旋位の矯正力が加わり整復位の固定保持が可能である。交差圧迫固定による圧力測定の結果、金属副子とスダレ副子固定では、ギプス固定より*外・内側での平均圧力(Mpa)は僅か大きい*最大圧力(Mpa)はほぼ同じ*荷重(N)は小さい。ギプス固定では、金属副子固定より、*外・内側での平均圧力(Mpa)は僅か小さい*最大圧力(Mpa)はほぼ同じ*荷重(N)は大きい等、金属副子による交差圧迫固定法とギプスによる交差圧迫固定法の2種類を比較検討、その有効性について説いた。主に整復のポイント及び圧迫の固定を中心に話され、明日への臨床応用に導く内容であった。

他には、有明臨床解剖学シンポジウムが行われ、『柔整国試と他分野出題の類解剖問題から見た柔整臨床解剖の考察』信州医療福祉専門学校・加藤征氏、『体性感覚構造図と運動器疼痛症候学』山王整形クリニック・高橋弦氏、『肩関節ならびに上肢帯の構造:とくに烏口上腕靭帯の構造について』東京医科歯科大学大学院臨床解剖学分野・秋田恵一氏、座長は東京有明医療大学・小泉政啓氏と同大学・成瀬秀夫氏が務めた。また教育研修セミナーでは『教育と柔道~柔道の教育的価値について~』国際武道大学・石井兼輔氏、座長・富山大学・酒井重数氏、実践スポーツ医科学セミナーⅠでは『股関節のトレーニング』筑波大学大学院人間総合科学研究科スポーツ医学・白木仁氏、座長・東京有明医療大学・久米信好氏、実践スポーツ医科学セミナーⅡでは『野球選手における「肩機能の基本から眺めた評価と指導」』東京有明医療大学大学院・柚木脩氏、座長・日本柔道整復専門学校・溝口秀雪氏、物理療法分科委員会フォーラムでは『新刺激法・柔整市場における「ラジオ波療法」に期待するもの』フィジオプラス株式会社・宮崎健二氏、座長・物理療法分科委員会委員・深井伸之氏、鑑別診断分科委員会フォーラムでは『想定外を想定内にする鑑別診断』~その愁訴、本当に無視していいのですか?~』兵庫県・磯英治氏、大阪府・荻澤俊彦氏、同・銭田幸徳氏、同・水口純宏氏、同・村田誠氏、座長・鑑別診断分科委員会委員・銭田幸博氏、柔整・接骨史分科委員会フォーラムでは『中国骨傷科の歴史から格言、金言を探る』東京有明医療大学・福田格氏、他4題、座長・柔整・接骨史分科委員会委員・我部正彦氏、社会医療分科委員会フォーラムでは『社会保障政策の展望』参議院議員・丸川珠代氏、座長・社会医療分科委員会委員・前田和彦氏、司会・東京都・北原康矩氏、整復治療手技固定分科委員会フォーラムでは『前腕骨遠位端骨折における固定材料』前橋東洋医学専門学校・北澤正人氏、他4題、座長・整復治療手技固定分科委員会委員・横山健二氏、了德寺大学・山本清氏、画像解析分科委員会フォーラムでは『ナラティヴ(NBM)としての超音波骨観察症例報告』東京都・名倉接骨院・井澤津久夫氏、他3題、司会進行・コメンテーター・帝京大学医療技術学部柔道整復学科・櫻井庄二氏、コメンテーター・東京都・谷沢接骨院・谷沢俊嗣氏、バイオメカニクス分科委員会フォーラムでは『腱のトレーニング』東京大学大学院総合文化研究科・久保啓太郎氏、他1題、座長・国士舘大学・角田直也氏、十文字学園女子大学・池川繁樹氏。

今回学術大会の目玉であるインターナショナルセッション

―世界に羽ばたく柔道整復―が2日目の24日C会場で午後2時30分から開催され、『モンゴルにおける日本伝統治療(柔道整復術)指導者育成・普及プロジェクトの取り組みについて』モンゴル国立健康科学大学付属医療技術大学 Enkhtaivan Tuvshinbayar、『私が柔道整復師を目指した理由』モンゴル国 Ganbaatar Khudermunkh 、『Menstrual irregularity prevalence in elite female university judo athletes 』 Yongin University Tae-hyun Lee 、『私が柔道整復師を目指した理由』大韓民国 朴成龍(敬称略)ら外国人演者4名の発表とディスカッションが行われた。座長は東京有明医療大学・橋本昇氏が務め、若い柔道整復師達に希望を託した。

口頭発表・病態把握では『日本整形外科学会などによる腰痛診療指針の考察』鶴亀整骨院・伊藤篤氏、『大腿四頭筋の滑走性に対する光線刺激の与える影響について』医療法人一裕会・辻クリニック・立山直氏、『変形性膝関節疾患の柔道整復診療』牛山接骨院・牛山正明氏、他28題。座長・牧内整骨院・牧内くみ子氏、他8名。口頭発表・固定法『中手骨骨幹部骨折に対する finger trap を用いたギプスによる3点固定』古東整形外科・佐野順哉氏、『第5趾基節骨骨折に対する固定法の検討と結果』ながせ接骨院・長瀬久夫氏、他23題。座長・公益社団法人京都府柔道整復師会・岡本玄剛氏、他6名。口頭発表・バイオメカニクス『肘屈曲動作時における表面筋電図の類似度に着目した運動単位活動計測法』明治国際医療大学・赤澤淳氏、他8題。座長・帝京平成大学・煙山奨也氏、他2名。口頭発表・スポーツ外傷・障害『野球肘内側障害に対しエコー観察をした1症例』イソヤ接骨院・磯谷充律氏、『弱高気圧高濃度酸素療法が及ぼす生理学的反応~体表温度に着目して~』環太平洋大学体育学部健康科学科・古山喜一氏、他10題。座長・公益社団法人兵庫県柔道整復師会・根來信也氏、他2名。口頭発表・社会医療『柔道整復師の診断(権)』さいたま柔整専門学校・川東信秀氏、『医業類似行為取締に関する地方令―その1.昭和5年警視庁令「療術行為取締ニ關スル取締規則」―』酒井整骨院・酒井正彦氏、『柔道整復師の施術に係る療養費の支給対象疾患の解釈』牛山接骨院・牛山正実氏、『柔道整復師と介護予防について―身体機能の質の向上と認知症予防に与える影響と効果の検証―』中川接骨院・中川裕章氏、『柔道整復師の専門性獲得過程における「場」の重要性』大東文化大学・稲川郁子氏、『大学評価・学位授与機構における柔道整復学区分親設の報告』(公社)日本柔道整復師会・酒井重数氏、他6題。座長・社団法人奈良県柔道整復師会・米田博伸氏、他2名。口頭発表・運動療法『思春期特発性側弯症二症例に対する装具療法の効果について』原接骨院・原隆氏、『シニア世代のスポーツ科学』九州ブロック会学術部・今道昭哉氏、他8題、座長・東京有明医療大学・髙橋康輝氏、他1名。口頭発表・物理療法『頚部痛患者に対するトリガーポイントへの高電圧電気刺激療法が前頭前野の脳血行動態に及ぼす影響』富山大学医学薬学研究部システム情動科学講座・三田峰久氏、『腫脹(浮腫)へのアプローチ 圧迫と磁気加振式温熱治療器併用の比較』九州医療専門学校・大塚俊介氏、他1題、座長・森ノ宮医療大学・川畑浩久氏、他1名。口頭発表・整復法『肘頭骨折(微調整整復法)』田中鍼灸接骨院・田中博氏、他11題。座長・高崎接骨院・高崎光雄氏、他2名。口頭発表・画像解析『骨軟部組織損傷における画像診断のピットフォール』さいたま柔整専門学校・木村都優司氏、『足関節捻挫モデルに対する綿包帯の動的制動力の検証』東京有明医療大学保健医療学部柔道整復学科・櫻井敬晋氏、他4題。座長・帝京平成大学・掛川晃氏、他1名。口頭発表・手技療法『股関節マイクロ牽引法が筋硬度へ及ぼす影響 ‐1kg、10kg牽引での比較検討―』明治国際医療大学・中川達雄氏、他6題。座長・根本接骨院・根本隆司氏、他1名。口頭発表・柔整・接骨史『大槻玄沢の長崎遊学を通して覧る蘭学事始』大河原整骨院・大河原晃氏、『高志鳳翼と伊吹堂年梅家』高野接骨院・高野廣道氏、他3題。座長・東京有明医療大学・福田格氏。

ポスター発表は『骨格筋損傷モデルにおける温熱刺激による筋再生分子メカニズムの検討』森ノ宮医療学園専門学校柔道整復学科・外林大輔氏、他24題。座長・東京有明医療大学・笹木正悟氏、他2名。学生会員によるポスター発表『温罨法による血流量と皮膚温の変化』帝京科学大学・井上成美氏、他37題。座長・瀧澤整骨院・瀧澤一裕氏、他2名であった。

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