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未来健康共生社会研究会・第2回公開シンポジウムを開催!

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去る3月6日、未来健康共生社会研究会第2回シンポジウムが午後1時から東京大学医学部教育研究棟13階セミナー室で開催された。

2013年12月に開催された統合医療学会第20回大会で渥美前理事長が話されたようにコンソーシアム構想が既に動き始めていた。今回のシンポジウムでは、大物著名人が講演を行い、また会場には大手企業をはじめ新しい産業を創出しようと意欲的な企業の担当者が大勢つめかけた。

歩を一歩も休めることなく前進し続けてきた統合医療学会の成果がいよいよ実を結び始めている。

『「未来健康共生社会」とは』
未来健康共生社会研究会代表・東京大学名誉教授 渥美和彦氏

渥美和彦氏

未来は、統合医療になる。1つは東西文明が衝突をして東の医学と西の医学が融合することになる。考え方が違うため衝突と融合を繰り返すことになる。非常に重要なのは社会資源が有限であるということで、そんな関係から未来健康共生社会を考えるに至った。統合医療は、患者中心の医療であり、全体医療である。体のみならず心の問題或いは社会の問題、霊性までをも含めた全体医療が統合医療の本質であると思われる。治療のみならず予防・健康・長寿、生まれてから死ぬまでの包括医療を目指していく。従って統合医療は非常に広い概念で、今までのような医療産業、健康産業だけでは間に合わなくなって生活環境を含めた社会的な非常に大きな産業になる。これからの健康を考える場合には、着れば健康になる衣服、或いはそこに住めば健康になる住宅、例えば森林浴を住宅の中に実現する等、今後検討していきたい。

東日本の大震災以降、世界は日本を見ている。大震災から何かを学んで世界に発信してくれるであろうと期待しており、我々はそういうものをこれから世界に発信していきたいと思っている。ライフラインであるガス・電気・水道が絶たれると残念ながら西洋近代医学は役に立たなかった。近代医学は使いたいけれど使えない。そこで使える医学を我々は実践しておく必要がある。災害というのは日本のみならず世界で必ず起こってくる、我々が其処で経験し学んだものを世界に発信していくことが大きな貢献であり、それを利用した企業が生まれるに違いないと我々は考えている。

もう1つ、地球の資源は有限であり、これから地球は大きく1つになっていく。アフリカでもアメリカや日本と同じような医療を要求するようになってくる。近代的な医療を持って行ったのでは役に立たない、そういう地域で役に立つ医療を日本のモデルで示す必要がある。それが今日の会の1つの中心になる。

あと1つは、治療だけでは間に合わないのではないか。予防すべきではないか。予防は医学において考えられてきたが、この数年ほど強く予防中心の医療を考えた時期は少なかったと思われる。これから予防医学をどのようにして進めるかということを日本に限らず世界に進めていきたい。それから贅沢な医療が沢山あり、もう少し肉を削いで本当に必要な医療に切り替えていく必要がある。

3番目に重要なことはセルフケアである。病院に行くと治ると思っている人が多い。しかし病院に行っても治らない病気は沢山あって治らない。病院に行く前に自分たちでセルフケアを心がける。装着型の予防センサーから予防センターに情報が送られ、その情報がデータバンクに集積される地域型予防医療システム・被災予防センターをつくる。データバンクに集めたデータは資産になる。エコ医療は、あまりお金のかからない医療で、再生医療は典型的なエコ医療である。統合医療はエコ医療なんである。病気になって治すことよりも病気にならない方が良い。生活習慣病対策、禁煙、節酒・呼吸・運動・睡眠は6時間位が良い等、セルフケアを心がけて、その他代替医療(ハリ・指圧・ヨーガ・気功等)をやれば体に良い。

新しい統合医療のコンセプトは、①従来の医学、健康学を越えた健康維持・増進の考え方②人間社会の生活全体が支える個人の健康③従来の健康・医療の需要に加えて、衣・食・住、移動などの生活を含んだ人間社会全体がかかわる健康を実現することである。未来健康医療産業は従来のものではなく新しい血を入れなくてはならない。農水省も健康な食品を考えていく。衣料・住宅・建築、今までの枠から離れたものをやっていく。未来健康産業は非常に幅広い。幸福な平和社会の実現、何のために生まれ、何のために生きているのか、幸福になるためである。各人が幸せを望む社会がこれからの社会の目標になる。地球の持続的な発展、多様な価値の共存、人間と自然の共生。日本が高齢化社会の実験を行っているその先頭に立っているので世界に示す必要がある等、これからの医療はどうなるか。これからの社会はどうなるかということを主に提言を行った。

次に静岡県立大学教授で内閣官房参与の本田悦朗氏が『アベノミクスと健康産業』と題して講演を行った。

本田悦朗氏

我々はユニークな日本の文明を大事にしていかなければいけない。絶対孤立してはならない。アメリカのビジネスモデルが世界を覆っていたが、リーマンショック以降、アメリカの文明は脆弱化してきており、この世界には矛盾があるということを自覚しなければならない。それぞれの国にアイデンティティがある。TPP協定の目的は太平洋を取り囲む国々が、ハーモナイゼーションを望むものであるが、アメリカナイゼーションなのではないか。

日本の安全や安心感は常にジレンマの緊張感を孕んでいる等、世界における日本の立ち位置をおおまかに述べた後、アベノミクスの背景について、安倍総理は根本的な病を治そうと思った。貨幣経済は不安定であり、需要が落ち込んで値段が下がる、2年以上続くとデフレーションである。市場経済、円の価値は物価で決まる。インフレになるとお金の価値が下がる。そのバランスをとっているのが日銀である。景気は現役世代や若い人を直撃する。すべての悪循環を変えようとして、大胆な金融政策でデフレを脱却しようということである。

第3の矢は成長戦略で、健康産業はその「日本再興戦略」に入っている。今かなりのスピードで成長しているが、何故成長するのか。アベノミクスがあるからである。供給力と需要力が近づいてデフレギャップを埋める。成長能力、生産能力を上げようとするのが第3の矢である。健康・医療は規制改革の重点分野・実施計画に掲げられた例(2013.6)の中味は、再生医療の推進、医療機器に係る規制改革、一般健康食品の機能性表示を可能とする仕組みの整備、医療のICT化の推進、国家戦略特区の活用である。健康産業は健康寿命の重要性と自己実現、幸福・満足感の追及、そして高齢者の社会貢献、財政負担を軽減し、健康・観光・信仰による地域の魅力を発揮していく。市場の力をどこまで生かせるか。人の尊厳・福祉の公共性VS市場の公共性と日本型モデルの提示をしていくなど解説。

高齢者・若年層等の雇用を促進していく。金融の世界が変化してくると実体経済が変わる。キーポイントは賃金が上がるかどうかであり、基本給が上がらないと国民は安心できない。良い雰囲気が出てきているが4月から消費税アップが行われるので油断できない。金融市場が上がってくることで消費マインドが上がってくる。相当右肩上がりになっており製造が増えているということは需要も増えている。安定を期待し、まともな経済にしていこう。成長戦略には創意工夫が活かされる等、ハイテンポで明快に話した。

続いて(株)エイチ・アイ・エス代表取締役会長・ハウステンボス㈱代表取締役社長の澤田秀雄氏が『ハウステンボス健康予防センター構想』を講演。

澤田秀雄氏

私自身、沢山病気をしてきた体験を通して病気にならないようにしようと努力した結果、33年間一度も会社を休まずにこれた。どうしたら病気にならないですむか。病は気からといわれるように、心と「気」を大切にすることを第一に考えた。

2つ目は、インドで病気をした経験から「食事」が大切と考え、バランスよく新鮮な物を食べよう。ハウステンボスは18年間赤字で設備過剰でメタボになっていたのでスリム化をはかった。企業とヒトの体は似ているところがある。

最後に考えたのは、住んでいる環境で、「気」と「食事」と「生活環境」の3つが大切なのではないかとして今までやってきた。更に医療観光も行おうと考えた。感動し喜んでいただく。ハウステンボスには自然も多く花が沢山あり医療観光に向いていた。「医食同源」というように食事を充実させる。良い食べ物を提供する努力をしている。伝統的施術を積極的に取り入れながら免疫力を高める先端医療を活用した体質改善・痩身プログラムなども提供し、「病気予防」を図っている。

また新たに「ハウステンボス認知症予防セミナー」を開催し、認知症予防という観点から効果が期待できる有酸素ウオーキングや歌劇セラピー、リズミック体操やアロマスプレー作りなどハウステンボスならではの独自プログラムを用意し、お客様の健康寿命を延ばす取り組みで、病気になりにくいカラダづくりから体質改善まで、滞在できる癒しの環境ハウステンボスで様々な施術とメンタルヘルスケアで日本のみならず、アジアそして世界の人々をサポートすることを目指している等、分り易く述べた。

次の講演の前に渥美代表が東京大学時代からのご友人で、日本総合研究所所長の野田一夫先生を紹介し、野田氏は軽妙かつユニークな挨拶を述べて会場の参加者を大いに和ませた。

その後、いま脚光を浴びている神奈川県知事・黒岩祐治氏が登檀し『かながわの挑戦「ヘルスケア・ニューフロンティア」』と題して講演。

黒岩祐治氏

昨年、ハーバード大学で未病の講演を行った。健康と病気の間には未病が位置づけられ、健康か病気かに2分されるものではなく、全体としてはグラデーションのようになっている。超高齢社会を乗り越えていくためにはこの未病を治していく。私は健康・医療戦略会議のメンバーであるが縦割り行政には中々理解を得られなかった。であれば神奈川でやっていこう。「医食同源」、父親の末期がんの闘病体験をしたことで、有胃気即生、胃に気があれば生きられる。父親の肝臓がんが完治した。

神奈川県は、今後、全国を上回るスピードで高齢化が進むと見込まれており、来る超高齢社会に備えた健康長寿の社会づくりが急務となっている。そこで、神奈川は、超高齢社会に対応するフロントランナーとして、「ヘルスケア・ニューフロンティア」と称する世界のモデルとなる取り組みを進めている。これは、「最先端医療・最新技術の追求」と「病気の手前の状態である『未病』を治す」という2つのアプローチを融合させることにより、健康寿命日本一を目指すものである。

昨年は、シンガポールにおいて、ヘルスケア・ニューフロンティアの推進に向けて、「歴史的快挙」とも言える大きな一歩を踏み出した。京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区における国家戦略を強化し、企業等の海外展開のサポートなどを行うGCC(一般社団法人ライフイノベーション国際協働センター)は、シンガポール科学技術研究庁、国立シンガポール大学および国立シンガポール医学大学との間で、ライフサイエンス分野での相互協力に関する覚書を締結。

今年は、米国やシンガポールとの連携に加え、新たに欧州との具体的な連携も検討していく。「未病を治す」取り組みとしては、県民の皆さんがライフスタイルを見直し、健康づくりを進めていくための取り組みを加速させる。「医食農同源」を中心とする食による健康づくりや各地域で実施される健康体操などを支援し、運動習慣のきっかけづくりを行う。ICTなど最先端の技術を活用して未病の状態をモニタリングし、未病を「見える化」する等、神奈川から未病産業を創出するとともに、東西医療の融合に向けた漢方の産業化にも積極的に取り組んでいく。

また、神奈川の西部は、豊な自然や多くの温泉など多彩な魅力にあふれており、この地域資源を活かし、県西地域を「未病を治す」実践の場とすることで、地域の活性化を図る取り組みを進めているところである。最先端の技術と企業を融合させる等々、アクティブなプレゼンを行った。

この日、体調を崩してこられなかった和田雄志氏(公益社団法人未来工学研究所理事)の代理で小野直哉氏(公益社団法人未来工学研究所特別研究員)が『健康共生関連産業の市場と育成』と題して講演を行った。

講演要旨は、未来健康共生社会に向かう背景として、①我が国が世界最先端の長寿国となり、シニア層が社会のマジョリテイを形成しつつあること②「社会」が成熟化するにつれ健康価値の重要性がますます高まりつつあること③健康対策に関して、病院中心の「医療モデル」から、「生活モデル」、「社会モデル」へと軸足がシフトしつつあること、などがあげられる。未来健康共生社会の社会的な潮流について、65歳以上が3千万人、今世紀はシニアの世代といっても過言ではない。

2020年をピークにアジア全体が老いていく。健康志向の方の割合が高い。健康共生社会を支える産業は、従来の医療・介護・福祉といった限定的市場から、「衣・食・住」から「移動」、「余暇」などを含めた、あらゆる生活関連産業に波及しつつある。このような潮流は、中国、韓国をはじめとするアジア周辺諸国などでも同様(いわゆる「老いるアジア問題」)であり、日本の取り組み動向が各国から注目されている。人間の健康と、環境の共生~「エコヘルス」の時代で超高齢社会ニッポンの主役はシニアである。介護対象者とそこそこ元気な普通の高齢者の比率は1:5で、介護対象は490万人(16%)、そこそこの高齢者は2458万人(84%)で、介護対象者は顕在化しているが、そこそこ元気な人は内在化していて見えにくい。市場構造は、医療介護福祉市場規模は50兆円である。

近い将来、アジア海外市場展開も視野に。コンソーシアムの展開分野は「健康共生社会」を形成する未来型産業コンプレックスでありベースとなる主な産業の市場規模としては自動車(製品出荷額)50兆円、住宅(居住関連支出)40兆円、衣料(アパレル小売)10兆円、食品(生産・加工・流通)100兆円、国内旅行(消費額)24兆円、生命保険(新規契約)70兆円、計300兆円が見込まれる。

またアプリケーション・サービスイメージとして食分野では機能性温州ミカンジュースや神奈川県立保健福祉大学の「栄養ケアステーション」、衣料分野ではNTTドコモと東レが共同開発したバイタルセンサー付き下着やRazor Racer TMのアスリート強化系ウエア、住宅分野では国交省と厚労省がコラボしたサービス付き高齢者向け住宅(全国で14万戸)、㈱コミュニティネットの別荘型シニアコミュニティ(ゆいま~る那須)、移動分野ではホンダの歩行アシストやWhillのパーソナル・モビリティ、旅行・リゾート分野ではHISハウステンボスのヘルスケア・リゾート、未来工学所アイデアの養生クルーズ(クルーザー内でヘルスケア、ヨガ、機能性食品グルメ、「洋上で養生」)等、幅広く紹介。

事務局・山田修氏が「今後の活動予定」を報告。

山田修氏

以前より産官学が連携してきたが、これまでは生活者の視点が欠けていたため必ずしも上手くいっていなかった。双方通信、インターフェースで行ってまいりたい。主客転倒がもたらす発展、逆転の発想、発想の転換をプロデュースすることもやっていく。現時点で想定される具体的検討会テーマとして、食と健康は重要なキーワードであり、モデルケースとして駅ナカをウエルネスのステーションとして使えないか。中長期的に向けて我々はどのような準備をしていけばいいのか。単独な役割と複数の役割を考える。TPPによって機能性サプリメントが世に出てくる。もしかして外食を続けると健康になるのではないかということも有り得る。また、健康指標の開発とその活用に関して(仮題)、ピンポイントで介入することでパフオーマンスも上がり、各論を複合的なことに活用する。日本人の俯瞰的な心の眼をもつ。

現時点で想定される具体的検討会テーマとしては①未来型健康・予防センター(淡路島・長崎ハウステンボス)②都市型健康特区構想の具体化(神奈川県、UR大規模団地)③食と健康をコアにした地域産業展開(北海道、静岡県、農水省ほか)④ヘルスケアステーション全国展開(コンビニ、駅ナカなど)⑤未来型ヘルスケア人材育成プログラム(教育機関、大学等)⑥ネクストクライシスに対応できる草の根ヘルスケアプログラム作り(首都圏の複数自治体、地域防災組織)等である。

今後は、「食と健康寿命の延伸」(仮題)基調講演者:中村丁次先生、関連講演者として農林水産行政関係、地方公共団体関係、農業生産物加工技術、食品生産・加工業関係(サプリメント、健康食品を含む)、食品物流関係、外食産業関係、小売業関係、宅配弁当関係、健康食品関係、その他の関係者を予定している。「健康指標」の開発とその活用に関して(仮題)基調講演者:水島洋先生、関連講演者は厚生労働省、経済産業省、農林水産省、総務省(地方自治体を管轄している)、地方自治体(「健康指標開発」に必要な実証を行う)、「健康介入手法(仮称)」の各論提案者、開発に必要となるセンサーなどの開発関係者を予定している等、これからの活動内容を報告し、今後深く掘り下げて行くことに期待感を持たせた。

ラストの講演者は、(株)パソナグループ代表取締役・南部靖之氏で『淡路島健康予防センター構想について』を講演した。

南部靖之氏

南部氏は、約8年前からパソナグループが淡路島と関わってきた取り組み内容を披露・紹介した。淡路島が「くにうみの島」と呼ばれ日本で歴史的地理的に重要な場所であるばかりでなく気候が穏やかで美味しい食材に溢れる素晴らしい可能性を秘めたとても美しい島である。

今年の3月、56万人が大学を卒業するが、その中で仕事に就けない人は7~8万人である。8年前にこれだと思ったのが農業で、淡路島でいま行っている。兵庫県から5億円を出してもらっており、農業と芸術の振興をはかっている。漢方等、付加価値のあるものをどんどん作っていく。漢方の果物もいっぱいあり、食べ物をキチッと管理する。「医食同源」、更にもう一歩進んで癒しを考えていく。癒しイコール健康であり、これからはそういった文化が脚光を浴びてくるのではないか。

文化産業の中で需要が増え、半農半芸という需要の場を作った。雇用の目線からスタートし、未病的なものを織り込んだ文化産業を創出している。結果として3年位で800人~2000人位まで雇用した。淡路島で産業を生んで1万人位の雇用を目指したい。メディカルツアーではないが半年位滞在すると元気になる、今後そういった取り組みを継続していく等、実際に取り組まれている内容等を報告、モデルを示した。

学術会議の先生たちが今回のシンポジウムに参加して如何考えたのかとして、神奈川県立福祉大学の中村丁次氏、日本統合医療学会理事長・仁田新一氏、がん研有明病院漢方サポート科部長で渥美夫妻の主事医でもある星野恵津夫氏らが一言ずつ短い挨拶を行った。

ディスカッションは時間の関係で行われなかったが、懇親会の場に引き継がれる形となって終了した。

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