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(公社)日本柔道整復師会 第8回大阪学術大会 開催

トピック

去る11月8日(土)・9日(日)の2日間にわたって(公社)日本柔道整復師会 第8回大阪学術大会が〝一人一人の熱い思いが業界を変える!〟というキャッチフレーズの下、南御堂「御堂会館」において開催された。

第1日目

安田会長

開会式が開かれ、(公社)大阪府柔道整復師会副会長・徳山健司氏による開会の辞があり、同会会長・安田剛氏は、〝今回2日間にわたり皆さんと共に「学ぶ」という企画をさせて頂きました。柔道整復業界は厳しい時代を迎え、特に大阪では柔道整復師が6200人を数え、学生の皆さんにも厳しい状況です。

国民にとって柔道整復は療養費という有難い一番身近な医療として未来永劫守り続けていかなければならないと考えています。それには国民・大阪府民のニーズに応えるためにも皆さんと共に「学ぶ」という姿勢をしっかり根付かせなければ国民の支持と大切な医療財源である療養費の死守をしていくことは難しいと思います。そういった思いをもって、柔道整復師の先生方が一堂に会する第8回大阪学術大会を迎えて頂きたい。この大阪の地には、日整で「帰一章」という最高栄誉賞がありますが、その各務文献先生が学ばれた絲漢堂という志を一つに集まった塾が当会の会館がある大阪西区にありました。また実験生理学の祖といわれる伏屋素狄先生の墓碑も西区の和光寺に建てられています。そういった歴史的な背景を考えるとやはりこの大阪で根付いた柔道整復を歴史を考えながら今後の医療の中で更に発展させるためにもう一度しっかり学んでいく、明日は「統合医療の必要性」ということでご講演頂き、学生発表、会員発表等いろいろあります。そういった積み重ねによって皆が学んでいく姿勢をしっかり示していくという大阪の思いが2日間にわたって開催することに顕われています。皆さんと共に勉強していきたい〟等、挨拶。

府民健康づくり講座

特別講演1『新しい創傷治療』
練馬光が丘病院・傷の治療センター科長 夏井 睦 氏

夏井氏

皮膚損傷での悪化要因は、創面の乾燥と創面の消毒の2つで、改善要因は湿潤に保つことである。「傷は乾かさない、消毒しない」という2つを守れば、薬剤を使わなくてもどんな皮膚損傷も非常に早くきれいに治癒する。細胞が生きるためには湿潤環境が絶対に必要で、創面からは細胞の増殖に最適のサイトカインを豊富に含んだ浸出液が分泌されているため、創面を何かで覆えば創傷治癒物質に富んだ液で湿潤に保たれることになり、創は急速に上皮化する。この「創の閉鎖による湿潤環境の維持」のために開発された創傷被覆材を紹介。更に様々な事例で治癒過程を紹介し、ガーゼを使うと創面が乾燥し、創治療が遅れることに医者は100年気がつかなかった。火傷したら大学病院だけは避けてください等、実に衝撃的な講演内容であった。最後に〝無断改編無断コピー等、大歓迎です。何故かというと科学と医学の知識に著作権は存在しないからです〟と締めくくった。

特別講演2『足腰の手入れと運動療法』
大阪産業大学人間環境学部スポーツ健康学科教授 大槻 伸吾 氏

大槻氏

Jリーグ・セレッソ大阪のチームドクターでもある大槻氏は、まずロコモティブシンドロームの概念について、筋力低下や関節・骨の問題で徐々に体を動かす器官が弱くなって動きがとれなくなってくる状態と説明。

ロコモティブシンドロームには7つの項目があり、1つでも当てはまった場合には、ロコモティブシンドロームの危険性があるとされる。平成13年頃から骨粗鬆症が随分言われるようになり、骨を輪切りにすると骨粗鬆症は中が空けている。また骨は、鉄筋コンクリートを考えると分り易く、カルシウムだけあってもコラーゲンやビタミンDがしっかりしていないと骨は丈夫にならない。骨が弱ってくると大体折れる所が決まっていて、足の付け根、背骨、手首である。60歳を超えてくると半分以上は骨折に繋がるとして、市町村を中心に転倒予防を行っている。4割位の予防率だといわれている。足の内転、外転をしっかりやっていくのも役に立つ。自分たちのクリニックでは、足のグーチョキパー体操を行って、2か月位トレーニングをすると2割位足首の痛みが減少し、足首の安定性にも何らかの影響を与えている。運動は続けなければ効果がない。訓練をやっている人の2~3割は、2~3年先に続けていない。患者さんの嗜好に合わせた運動計画が必要であり、楽しく継続できることがポイントである。

最近聞こえてきているのは脊柱管狭窄症で、脊柱管狭窄症の根源には変形性の腰痛症がある。高齢者だけに限らないのでスポーツ現場でもチェックは必要。また背景に動脈疾患もあるため、チェックしておく必要がある。日常の診療という中で生活を改善してあげてナンボという現場に先生方も我々も立っているので、人間の運動器としての本来の機能をどうやって回復させるかという運動処方をしていくことが良いのかなと学ばせてもらっている。危険な症状が幾つかあり、腰でいうと神経の痺れが常に伴っている、熱を伴う、じっとしていても痛い等あれば要注意。運動だけやっていたらよくなるということもないので、しっかりチェックして直ぐに適切な対応、病院に送ることは必要である。まとめでは足腰に関する疾患の治療の基本は保存療法(運動療法と物理療法と薬剤療法)であり、危険な兆候を見逃してはいけない、運動を始めるのに「遅すぎる」はないと述べ、終了後に理学療法士の林氏が、ベッドサイドで行っている運動療法や体幹のトレーニングのデモンストレーションを行った。

第2日目

工藤会長

開会式が9時から行われ、学術大会会長で(公社)日本柔道整復師会会長の工藤鉄男氏が〝47都道府県の代表の方が会員を指導している中、会員に大変な思いをさせていることを私は非常に心苦しく思っており、それにより会員の収益が著しく減少している事実が本会の税務委員会の調査で明らかになりました。これは決して我々の技術が間違っていてマイナスになっているのではないということ証明していかなければなりません。日本柔道整復師会11ブロックが毎年学術大会を開き、総まとめとして年に1回、全ての柔道整復師が壁を超えて日本接骨医学会が開催されています。我々は全ての柔道整復師が国民の医療・福祉において貢献できるような仕組みを作っていく責任があります。

いま厚労省と保険の取り扱いや卒後教育と管理柔道整復師の在り方について交渉しているところで、我々に課せられた課題だと思っています。医師と違って柔道整復師は患部に触って、部位別に手当をしながら包括的に痛みを消していく日本の伝統医療であり、この辺を深く追求して参りたい。社会保障の中での柔道整復師の位置づけをしっかりと確立させて後世の人たちにバトンタッチをしていくことが私に課せられた使命であります。

今後お医者さん達、歯科医師の先生達、我々柔道整復師は待つ医療から出向く医療に変わる訳です。今の社会保障制度で足りないマンパワーの中で入ってきたのは、経済産業省が医療産業の1つとして認めたリラクゼーションの人たちで、しっかり制度の中でやれるどうかをジャッジしていかなければいけないという役目もおおせつかっていると思います。公益法人として何が出来るのか、今苦しんでいるものは何が原因なのか一つ一つチェックしていきたい。医療業界、歯科医師業界で既に実行されている支払基金については、我々には国が予算をつけて頂けませんので自前でやらなければならないことになっています。

2020年度のオリンピックに向けて、世界から来るアスリートに全ての手当てができるような状況を作っていく。また、包括ケアの第一回目の全国会議には柔道整復師の名前が入っていませんでしたが、第2回目の会議から日本柔道整復師会を入れて頂いて、今度は国の制度の中で私どもは頑張って参ります。47都道府県の包括ケアシステムの会議に入れるような努力を各県ではしっかり行って頂きたい。自民党の医療部会の人たちとよく連絡をとって皆様に情報を提供して参りたい。混乱してきている社会保障の中で我々が活躍することによって国民が元気になれるように協定を作っていく。日本柔道整復師会はありとあらゆる政策を実行して参りたいと思っています。47都道府県の皆さんご協力ご指導を頂くことを心からお願いします〟等話され、次に(公社)大阪府柔道整復師会会長・安田剛氏から挨拶が行われた。

特別講演

『統合医療について、柔道整復師の役割』
自由民主党衆議院議員 外務副大臣 中山 泰秀 氏

中山議員

特別講演で中山氏は〝「飲水思源」、自分が飲んでいるこの水は一体何処から来たお水なんだろうかと源流を常に思うことは、明日への発展に繋がると心の底から思います。今、党内では2つ統合医療に対して議論を進めており、その1つは、ツムラ(旧・津村順天堂)さんたちの漢方議員連盟で鴨下先生が中心に動いています。もう1つは統合医療に対するもので、熱海のMOA美術館の事業体であるMOAが中心で元々哲学に基づく形で創立者である岡田茂吉先生が、医学という観点から一人の患者を如何に助けるかという問題で西洋医療と東洋医療がやがて一つになるだろうと予言をされ、その予言を証明する形で普遍化させようと伊豆半島に大きな農場を作って、いのち「医・農・地」というプロジェクトを実施しておられる。私も現地視察をしてきましたが、病床数12床位の病院を運営していて全て木で出来ているコッテージのような病棟でアレルギーのある方はその病院に行って、あまりにも広大でオーガニックな自然の中で診療を受けられる。昨今精神的な疾患が多く見られる中、そこに行くだけで治療の半分が終わった気持ちになれるという方が患者さんに多い。

自然と医療、そして和漢、実は漢方も薬価改定の問題があり、新薬には大きく点数がつくが、過去長きにわたって活躍した薬に対し日の目を見る評価が段々薄らいでいく発想で薬価改定が行われている。医学部の大学生の96%が卒業するまでに漢方の授業を受けています。中国は所謂漢方の7割がベースになっている薬草を輸入規制をかけて海外に輸出しないということで漢方薬剤が高騰したり、政治的な思惑を背景として漢方の原材料の輸出制限をやられてしまうと、遅くとも15年以内には製剤として販売が出来なくなります。国がメディカルツーリズムをプロデュースしようと言っている矢先に、暗雲が立ちこめるようではいけない。

また考えなければならないのは、視覚障害の方は鍼灸マッサージ按摩師資格をとっておられるが医師の同意書があって初めて診療報酬が請求できて、30分数百円位です。平成になっても何も変わりません。障害者の観点から見て大問題なのは、障害者手帳は都道府県によって違いますし、更新はありません。もし私が厚生労働大臣であれば47都道府県共通にして更新制にします。12月1日に塩崎恭久厚生労働大臣を招いて会合を行います。障害者の福祉、生活保護の問題を考えてほしい。是非、安田先生をはじめ柔道整復師の皆さんにも参加頂いて、要望事項を纏めて渡して頂きたい。その機会を作ります〟等、強く述べた。

※大会プログラムは以下の通り。

知識アップセミナー①『もう一度”捻挫”を考える』~文献から考察~
(公社)大阪府柔道整復師会研究事業部員・筧健史氏、米村幸治氏。

知識アップセミナー②『医接連携』について~患者さんのために~をテーマに、湯口脳神経外科・脊髄外科院長・湯口貴導氏、(一社)日本柔道整復接骨医学会監事・筧健史氏の2名をコメンテーターに、(公社)大阪府柔道整復師会理事・河井好照氏が座長を務めた。

◇学生発表

『青壮年男性の跳躍にパートナースタティックストレッチが及ぼす影響』
大阪府柔道整復師会専門学校・吉田健人氏、今谷忠允氏、後藤基継氏、野間龍太郎氏、樋口竜也氏、星元蔵人氏、鳥牧皓一氏

『ノルディックウォーキング初級者の歩行姿勢と指導法について』
近畿医療専門学校・児玉崇史氏

◇一般発表

『初心者のためのエコー~エコーを理解するためのおもしろ実験~』
守口支部・今村豪氏

『早期臨床実習が柔道整復教育に及ぼす影響-学生の職業的アイデンティティスコアの分析結果から-』
大阪府柔道整復師会専門学校教務主任・杉本恵理氏

『内側型野球肘のエコー像 評価・判断編Ⅰ』
摂津支部・増田雅保氏

『内側型野球肘のエコー像 リハビリ編Ⅱ』
関西運動器系学術研究会学術ユニット・上川達矢氏ら10題。

◇『肩関節捻挫』と題した座談会が行われ、(公社)大阪府柔道整復師会理事・滝口幸三氏が座長を務めた。介護関連では、(公社)日本柔道整復師会保険部介護対策課・川口貴弘氏、三谷誉氏による『2014柔道整復師と介護保険について-生活目標を達成する運動とは?-』と題し発表があったほか、柔道整復師の介護予防事業について考えるをテーマに『介護事業に伴う高齢者の権利擁護・尊厳について』柔整介護ステーション管理者・竹川朋典氏、『高齢期膝痛・機能訓練のリハビリと考察』リハビリ特化型デイサービスモンクール・小川仁志氏。

『介護予防体操教室の「デモンストレーション」概要』(公社)大阪府柔道整復師会附属オージェイ整骨院院長・橋本貫次郎氏、座長は(公社)大阪府柔道整復師会理事・永野秀信氏が務めた。

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