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(公社)日本柔道整復師会第49回東海学術大会静岡大会 開催

トピック

平成26年11月16日(日)、(公社)日本柔道整復師会第49回東海学術大会静岡大会がウィンクあいち(愛知県名古屋市)において盛大に開催された。

(公社)日本柔道整復師会第49回東海学術大会静岡大会 開催
工藤会長

(公社)日本柔道整復師会・木山時雨副会長による開会の辞に続き、挨拶を述べた(公社)日本柔道整復師会・工藤鉄男会長は国民医療費における柔道整復療養費が減少傾向にあることに触れ、〝皆さんも大変な思いをされているのではないかと思う。粗製乱造された柔道整復師が療養費の取り扱いを分かっておらず問題を起こし、保険者や患者との信頼関係が崩れている。勉強を通して、新しい柔道整復師としての将来を築いていく必要がある。今後は地域包括ケアの構築が進められ、医接連携がより重要となる。地域住民の役に立てるよう、地域の医師たちと意見を交換して各々努力していただきたい〟等、激励の言葉を述べた。

永田会長

主管である(公社)静岡県柔道整復師会の永田官久会長は、大会開催にあたっての御礼を述べた後、当日のプログラムの紹介を行なった。柔道整復業界は転換期に来ているとして、〝これから日整がどのような方向に進むのか知っていただきたい。柔道整復は社会保障の中で活かされており「業種の存続」を考える必要がある。本日は、存続していくうえで非常に重要な要素となる学術的要素、臨床的要素について学んでいただきたい〟とコメントした。

続いて来賓祝辞、来賓および役員紹介、祝電披露等が行われ、会員発表へと移った。

会員発表

超音波治療器を用いた急性腰痛への治療アプローチ

清水将仁(静岡県)

会員発表

柔道整復師が急性腰痛、いわゆるぎっくり腰を扱う機会は非常に多い。急性腰痛の中でも椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、脊柱圧迫骨折なども分類に含まれる。このような急性腰痛の分類の中で特に筋膜性腰痛に超音波治療器を用い早期に回復し、疼痛、圧痛、運動痛を軽減する施術方法を、私見を踏まえ報告する。

肘内障の超音波画像観察―発生メカニズムに対する一考察―

佐藤隆史(愛知県)

会員発表

幼小児の肘内障は手の牽引により生じることは知られているが、実際には全体の半数が転倒・落下・不明の受傷機転である。また、その発生メカニズムは未だ明らかになっていない。今回、徒手整復前後にBモード超音波画像観察が可能であった3症例の所見から、文献的考察を加えて、整復法と発生メカニズムについて考察する。

変形性膝関節症に対するメディカルストレッチングの効果

村上幸平(林整形外科)

会員発表

変形性膝関節症の進行により起こる膝関節の可動域制限に対しては、Bob Anderson の膝関節伸展位で行うストレッチングが指導されることが多い。しかし高齢者においては筋の伸長痛が強く継続性が低くなりがちなため、膝関節屈曲位で行うメディカルストレッチングに着目し、膝関節の可動域と周囲の軟部組織に及ぼす影響について調査した。

足関節捻挫の競技復帰に対する機能評価と運動療法の紹介

西村武蔵(愛知県)

足関節捻挫後の競技復帰に向けた治療やリハビリテーションにおいて、一般に紹介されている手法で思うような結果が得られない場合、現場では様々な工夫が必要になる。今回、軽度の足関節捻挫の患者に対し、先行研究を参考に考案した機能評価と運動療法を実施したので報告する。

初期変形性膝関節症にみられる伸展障害について

志水義人(服部整形外科)

歩行時の最終伸展域の立脚相はScrew Home Movement(SHM)が重要な役割を果たしている。変形性膝関節症の特徴として膝の伸展障害があるが、このときSHMが作用しなくなり立脚相の膝関節安定性が阻害されている。今回、初期の変形性膝関節症について、それらの膝の伸展制限角度、脛骨大腿関節、膝蓋大腿関節のgrade別の調査結果から考察した。

足部二分靭帯損傷について

亀山佳伯(岐阜県)

足部の捻転が強制されることにより起こる足部二分靭帯損傷だが、部位と受傷機転の近似性から、前距腓靭帯損傷と混同されやすい。一般的には予後は良好とされるが、重症例では長期に疼痛が残存することもある。今回当院での症例を通じて二分靭帯損傷の発生機序を考え、それを基に適切な固定法、注意点について考察を行った。

橈骨遠位端骨折(コーレス)におけるfinger trapの有用性の検討

伊藤智廣(米田病院)

橈骨遠位端骨折診療ガイドライン(2012)によると徒手整復を行う際、finger trap は必要かとの記載に整復度の差はなく行ってもよい手技であると記載されている。今回、当院で橈骨遠位端骨折に対して、finger trapを併用して徒手整復を行ったので知見を交えて報告する。

50歳代以降女性の第4腰椎変性すべり症におけるX線機能撮影による腰椎変性変化の分析

大橋洋介(服部整形外科)

中年以降の女性に多くみられる第4腰椎変性すべり症(L4 degenerative spondylolisthesis)は大きな外傷や格段の労働負荷がなくても、主婦の家事レベルの可動域や運動負荷で経年的に進行する。この原因に、第4腰椎の(L4)形態学的・運動学的特徴が報告されているが、これを検討するためX線像でL4椎間関節の形態、L4のすべり度や回旋度を計測した。

鎖骨骨折に対する固定法の工夫とその経時的効果について

成山麗樹(米田病院)

転位がある鎖骨骨折においては徒手整復を要することがあるが、疼痛や不安感および筋緊張が障害となり良好な整復位を得られないことがある。このように整復後も転位の残存する鎖骨骨折に対して、当院で行っている固定法により良好な整復位を得られたので紹介する。

足関節捻挫に対する早期腫脹軽減を目的とした一症例

市川秀彦(三重県)

足関節捻挫は日常業務において高頻度に遭遇する外傷であるが、腫脹を伴うものは周囲組織にも悪影響を与え治癒を遅らせる。今回、RICE処置の圧迫に着目し、フォームラバーを用いて新しい圧迫固定法を施し、良好な結果を得ることができたので、Bモード超音波画像観察による腫脹計測の経時的変化とともに報告する。

午後の部は、(公社)日本柔道整復師会・工藤鉄男会長による、『柔道整復師の将来を語る』と題した基調講演から開始された。

工藤氏は冒頭、〝大正9年に柔道整復が公認されて以来、先達が道を切り開いてきた。どういう人が社会保障の中で生き残るのかを真剣に考えなければならないということで、日本柔道整復師会は1年5か月前に新執行部を立ち上げ、良いものは継承したうえで悪い点は変えていこうと努力している〟と歴史的背景から現在の改革の動きに至る経緯を説明。制度改革における要点として〝柔道整復制度改革の肝は「国民のため」であるということ。しかし同時に「柔道整復師のため」の対応も必要となる。団体に所属しているか否かを問わず、受領委任払いをきちんと管理していくことも考えなければならない。算定基準や審査基準の明確化、審査体制の強化は受領委任払いの根幹にかかわることであり、保険者・行政と交渉し、制度改正をする必要がある〟と解説した。

改善のポイントとして▽協定の見直し、▽支払基金の創設、▽臨床研修制度の確立を挙げ、実現のために(公社)日本柔道整復師会として関係各省に働きかけを行っていくと強調した。

特別講演では米田病院院長・米田實氏が登壇し、『「私の診察室から」最新画像が示す、聴いて、視て、触って、動かす、そして「考える」ことの重要性』と題した講演を行った。

米田氏は〝当院には年間1万名を超える新患患者が来院しているが、その内15%以上が接骨院からの紹介となっている。他の整形外科に行ってから柔道整復師の先生の所に行って、確認が必要ということで当院に来る方もいる。柔道整復師の先生の診立てが正確で教えられることも多い〟として講演をスタートした。

転んで膝をついた際に負傷し歩けなくなってしまった男性は〝負傷から5分ほどで来院したが20分も経つと大きく腫れあがった。針を刺すと油の混じった血が出ており、骨から出た血ということが明確にわかる。MRIで確認して膝蓋骨骨折と診断した〟との症例や、リウマチと診断された24歳女性の場合は〝当初はショックでうつ病になりかけて会社を休んでいたが、画像等で確認し初期状態のうちに治療できたため回復し、完全に社会復帰を果たした〟等、レントゲンやエコー、MRIの最新画像を用いながら25もの症例を詳細に解説した。

これらの他、東海地区養成学校によるポスター発表3題、(公社)日本柔道整復師会保険部介護対策課・川口貴弘氏と三谷誉氏による「柔道整復師と介護保険について」と題したセミナーが行われ、好評を博した。

表彰式

最後に発表者が表彰され、次年度東海学術大会の主管である(公社)愛知県柔道整復師会・森川伸治会長による閉会の辞で幕を閉じた。

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