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第15回日本超音波骨軟組織学会学術総会 開催

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平成27年10月25日(日)、富士通関西システムラボラトリ4階大会議室(大阪市)において第15回日本超音波骨軟組織学会(以下、JSBM)学術総会が開催された。

第15回日本超音波骨軟組織学会学術総会 開催
山田直樹会長

学術総会開催にあたり、JSBMの山田直樹会長は〝関係者および参加者の皆様、発表者の皆様は日頃の業務の合間を縫って研鑽を積んでこられたことと思う。2年前に、JSBMで認定している資格制度の改正を行った。従来は筆記試験のみで合格としていたがそれだけでは実技が伴っているとは限らないため、実技スキルも必要とされるライセンスを別で設けることとした。認定資格制度はこれからの柔整施術には必要になってくる。今日も休日にもかかわらず多くの方々に時間を割いていただいているが、さらに勉強を重ねていく必要があり、もっとたくさんの方に受講していただき柔整業界全体のことを考えていってほしい。この学術総会で様々なものを吸収して明日からの診療に活かしていただきたい〟と激励した。

【特別寄稿】今後の柔道整復師業界について

JSBMは今年3月、(公社)日本柔道整復師会と全国柔道整復師連合会を訪問し、超音波画像診断装置による検査料の保険適用認可のため、学会の活動支援ならびに関係省庁への働きかけを要請しており、(公社)日本柔道整復師会・工藤鉄男会長は超音波画像診断装置の有用性を認め、継続的にJSBMとの意見交換を行なっていく考えを示していた(※要請の詳細は『日本超音波骨軟組織学会、超音波保険適用に向け日整へ協力要請』をご覧ください)。その中で、最大の柔道整復師団体である(公社)日本柔道整復師会会長としての超音波画像診断装置使用に対する見解を広く伝える必要があるとの趣旨から、工藤会長より特別寄稿として今学術総会へビデオメッセージが送られた。

ビデオメッセージ

工藤会長は〝我々日本柔道整復師会は、医療介護の抜本的改革において柔道整復業務が必要とされる状況を作るために、学識経験者の方たちのアドバイスをいただきながらありとあらゆる公益事業を展開している。いま我々には取り組むべき3つの課題がある。1つは柔道整復師の急増によって生じた業界の乱れを正すための再構築、2つ目はその乱れによって失われた保険者・地域医療の医療従事者・行政・患者の信頼の回復、そして最後は先達が血の滲む想いで作ってきたこの柔道整復が地域包括ケア制度の中で必要とされるために、上手くバランスを取り改革を行っていくことだ。これらの実現には国民が安心して柔道整復術を受けるためのエビデンスが必要だが、その1つの柱が超音波画像診断装置だと考えている。療養費の点数の中に組み込んでいくのかそうでないのかで大きな違いが出てくると思うが、初期治療に超音波画像診断装置が必要であるならば、間違いなく点数に組み込む努力もしていきたい。そのためには皆様といろいろな情報交換をしながら価値観をともにし、しっかりと皆さんと手を携えながら進んでいくことをお約束する〟と力強いメッセージを送った。

山田会長は〝全国には超音波画像診断装置を使用している施術所が3,000~4,000か所あるとされており、JSBMにはその3分の1にあたる約1,000名の会員がいる。全国組織であり所属している団体の垣根もない。これからは日本柔道整復師会だけでなく、業界が一丸となる必要があると工藤会長も仰っていた。今後もし療養費算定に向けて意見交換の場が設けられることになった場合、学会が認定している資格者がちゃんとした観察をできないということがあれば評価する先生方はどう感じるのかということを考えると、やはり今後も認定資格によって棲み分けを進めていく必要があるのではないかと考えている〟と、超音波画像診断装置の検査料認可の為にも、超音波を扱う最大級の学術団体として統率力を示していく姿勢を見せた。

田中和夫副会長

JSBMの田中和夫副会長は〝社会保障審議会医療保険部会に設置された柔道整復療養費検討専門委員会では、2年に1回の療養費改定が行われている。そのなかでも施術に対するエビデンスが求められているところであり、そのために公益社団法人日本柔道整復師会と協力体制を取って活動している。我々で認定資格を設けて検査料を認めるよう提案していくことで、我々学会も発展していくし柔道整復師のレベルもアップする〟と説明した。

【基調講演概要】
投球障害肩の損傷メカニズムと協議復帰のための治療戦略
~スポーツ関節鏡外科医の視点から~

地方独立行政法人芦屋中央病院 迫田真輔氏

迫田真輔氏

投球障害肩は野球に多いが、ハンドボールやバレーボール、テニス、アメフトのクオーターバック等ボールを上から投げたり打ったりするスポーツで発生する肩関節の障害の総称である。野球の場合、投球のたびに100㎏の負荷がかかる。運動連鎖とは、足から手指まで連続して協調して行われる動作だが早い投球を行うためにはスムーズな運動連鎖が必要となる。この連鎖が破たんすると連鎖の上流である下肢や股関節や体幹等の機能低下を補うために、運動連鎖の下流である方や肘のストレスが増大し障害が起こると考えられている。正しい治療戦略を立てるにはまず投球障害肩を正しく診断し、招いた原因、運動連鎖の異常は何かを明らかにし、異常の改善に適切にアプローチしていく必要がある。そのためにも正しい投球メカニクスと投球障害肩発生のメカニズムを理解する必要がある。

投球メカニズム

投球動作はワインドアップ期、ストライド期、コッキング期、加速期、減速期、フォロースルー期に6つのフェーズに分類される。ストライド期後半から減速期が終了するまで、肩は外転90度のポジションをキープしている。このとき肩関節は最大内旋しており、外旋運動に向けてエネルギーを蓄えている。非投球側の肩も体幹を絞り込むために内旋している。ストライド期・コッキング期はボールに大きな力を与えるための重要な役割を果たす。この動作が上手くいかないとボールにスピードを与えることができない。加速期には下肢や体幹から生まれたエネルギーが上肢に伝えられ、非常に大きな肩の内旋トルク、肘の内反トルク・屈曲トルクが発生する。肘の伸展後に肩の内旋が急激に起こり、短い時間にとてつもない力が肩にかかることになる。投球フォームは人によってさまざまであるが効率よくボールを投げるためのいくつかのポイントが存在していることを理解しておく必要がある。

投球障害肩の発症メカニズム

発症メカニズムは投球時に肩に生じる外力によって分類することができる。コッキング期は前方関節包損傷、肩峰下インピンジメント、インターナルインピンジメント。加速期は上方関節唇損傷(SLAP)、減速期からフォロースルー期には肩峰下インピンジメント、前方関節唇損傷、ベネット病変などがある。投球フェーズによって肩にかかる負荷のパターンが異なることを理解して、発症メカニズムを理解し正しく診断する必要がある。

投球障害肩の臨床評価・診断

まず詳細な病歴聴取・患者背景の確認から行う。年齢や急性外傷であるかオーバーユースであるか、既往歴や手術歴があるか、投球頻度などを確認する。どこが痛いのかどの動作で痛みが生じるのか等を確認する。ここまででかなり診断が絞られてくることが多い。その後、理学的所見と画像所見で確認作業を行う。理学的所見として運動連鎖を破たんさせている原因である機能異常も探す必要があるため、肩を含めた全身の評価を行う。視診で左右差等を評価し、触診し、関節可動域制限を確認して左右差を観察する。次に筋力評価、安定性の評価、関節唇損傷の誘発テスト、肩関節以外の柔軟性・筋力・安定性の評価を行う。さらに問診や理学的所見での診断との整合性をチェックする補助診断として画像診断を行う。まずは骨性の異常を除外するために単純レントゲンを撮影する。SLAPなど器質的損傷が疑われる場合にも画像だけで診断してはいけない。病歴・理学的所見と併せて診断すること。局所麻酔のブロック注射が有用なことがあるが、超音波を用いることで目標となる部位ヘの確実なブロック注射が可能となる。

投球障害肩の治療戦略

鏡視下手術では構造的異常の正確な評価や診断や修復は可能であるが、構造的異常を生じた原因にアプローチすることはできない。機能的異常を改善しない限り構造的異常も改善できず、再発や新たな障害の発生につながってしまう。構造的異常がある場合でも機能的異常の改善を行うことで手術をせずに競技復帰ができることもある。機能的異常の改善には正しい投球動作の習得、柔軟性筋力の獲得等を行うことが重要。機能的異常を正しく抽出して改善に導くことが投球障害肩治療の基本である。

【研究発表】

保存療法を選択した若年型の膝離断性骨軟骨炎

髙橋達徳(久米鍼灸整骨院 東京都)

膝の離断性骨軟骨炎は若年型と成人型に分類されるが、今回、若年性膝離断性骨軟骨炎の1症例を経験し、X線ならびにMRI検査と比較しながら超音波画像関節装置を用いた継続的な評価を行うことができたため報告する。

高齢者の膝関節大腿骨内顆部脆弱性骨折
-Bモード超音波画像とMRIの比較-

白石洋介(麹町白石接骨院 東京都)

高齢者の大腿骨遠位内顆部の脆弱性骨折の症例を基に、Bモード超音波画像(BUS)とMRIの対比による患部の経過を示し、BUSによって脆弱性骨折の前兆を捉えうる可能性について述べる。

肩関節における筋活動評価の試み -超音波画像診断装置と筋電図を用いて-

竹本晋史(竹本鍼灸整骨院 大阪府)

肩甲上腕関節は多軸性関節で運動範囲が大きいため損傷頻度も多い。今回、肩関節内旋における筋活動評価と骨頭の移動距離との関係性について超音波画像診断装置と表面筋電図を用いて検討を行ったので報告する。

Real-time tissue Elastographyの定量化に向けて -Strain Elastographyを用いた運動器組織の硬度測定-

徳田仁志(かなざわみなみ接骨院 石川県)

組織の硬度を測定するElastographyには、Shear Wave ElastographyやStrain Elastographyなどの計測技法がある。どちらも定量的に計測することを試みた研究報告があり、それらを参考に運動器組織に特化した定量的な硬度測定技法を確立する可能性について検討する。

中手骨骨折と基節骨骨折の同時損傷例に対して超音波画像診断装置が有効であった1症例

前田尚利(まえだ鍼灸整骨院 大阪府)

高齢者の利き手の骨折は若年者のそれと比較して著しくQOLを下げるだけでなく日常生活にも大きな障害となる。今回、高齢女性の利き手に発症した右第4中手骨骨幹部骨折および第3基節骨基部骨折の同時損傷に対し、低出力超音波を照射し観察した症例を報告する。

肩・PL-notchに対するechoの有用性について

山岡峻(たむら鍼灸接骨院 大阪府)

現在、PL-notchとは投球障害の一つとして研究されてきているがその診断方法はまだまだ確立されていない。今回はその診断方法のひとつとして超音波診断装置の有用性を述べていきたい。

小児肘頭骨折に超音波画像診断装置が有用であった1症例

小児肘頭骨折に超音波画像診断装置が有用であった1症例

肘頭骨折は成人によく発生するが、小児では稀であり肘関節周辺の骨折の5.65%に過ぎないと言われている。一方で軟骨成分が多い小児の肘頭骨折の診断は難しい。今回、13歳の小児肘頭骨折に対し、超音波画像診断装置の距離測定機能を使用して加療を試みた症例を報告する。

上腕骨内側骨折と橈骨頭骨折を合併し超音波画像診断装置が有用であった1症例

守永和哉(もりよし整骨院 大阪府)

肘関節周辺の骨折は小児の外傷の中でも頻度が高く後遺障害が残ることも多い。今回、超音波診断装置を用いることでX線写真での判断が困難であった橈骨頭不全骨折を確認した症例を経験し、良好な経過を得ることができたので報告する。

膝蓋腱炎において膝膜層構造に観察された新生血管
-超音波および組織学的検討-

渡辺正哉(名古屋市立大学 愛知県)

膝蓋腱炎症例において疼痛部位で観察される異常血管について、拍動係数、抵抗係数、収縮期最高血流速度に相関があることがわかった。さらに有意な血流波形測定値を示した血流増加部位が腱膜、膝蓋支帯膜間に観察されたため膝蓋腱膜周囲組織の組織学的検討を行った。

このほか、教育セミナーとして肩関節後方にテーマを絞り、4名のインストラクターによる実技演習が行われ、参加者は積極的に質問を投げかけながらインストラクターの指導に熱心に耳を傾け、超音波画像を食い入るように見つめていた。

表彰

最後にJSBMの竹市勝副会長より優秀発表として優秀賞・最優秀賞が発表され、学術総会は盛会裏に終了した。

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