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(公社)日本柔道整復師会第44回九州学術大会沖縄大会開催

トピック

平成28年3月5日(土)、パシフィックホテル沖縄(沖縄県那覇市)において、公益社団法人日本柔道整復師会第44回九州学術大会沖縄大会が開催された。

(公社)日本柔道整復師会第44回九州学術大会沖縄大会開催

本大会は(公社)沖縄県柔道整復師会・渡慶次克紀学術部長の開会の辞で幕を開けた。

工藤鉄男会長

学術大会長として壇上に立った、(公社)日本柔道整復師会・工藤鉄男会長は〝いま業界は大変な時代に突入している。毎年多くの柔道整復師が誕生し、そして多くの接骨院・整骨院が開院するなかで、業界の秩序が乱れ、保険者や医師会、行政からの信頼を失われるような事案が多くなってきている。現状の規制ではなかなか解決できない問題だが、日本柔道整復師会は組織をあげて制度の見直しを行っている〟と述べ、医療・福祉の抜本的改革における地域包括ケアを柱とし、各地区医師会との連携を図るために尽力すること、さらに保険取扱いのシステムの見直しを検討していること等話した。また、大きな取り組みとして〝日本柔道整復師会は2つのことを実行する。1つは日本で生まれた我々の柔道整復術を世界の人たちに如何にして役立たせるか。モンゴル国においては約10年間の長い歴史の中で国際交流をさせていただいている。また3月末にはベトナムにおいて国際医療財団とともに柔道整復術を紹介する。もう1つは東京オリンピック・パラリンピックである。日本柔道整復師会は政府顧問としてどのような形で参加するかということを、現在関係者と協議している。この2つを通して日本で生まれた柔道整復術を世界に発信していくことが大きな使命となる〟と、業界の将来を担う柔道整復師や学生に対し、柔道整復の技術を世界へ発信する意義を語った。

その後来賓祝辞・来賓紹介が行われ、会員発表および特別講演が開始された。

特別講演
持続的収縮筋由来と思われる症状の解釈とその治療の考え方

仙台徒手療法研究会 会長 倉田繁雄氏

倉田氏

倉田氏は〝筋徒手療法の治療の対象疾患であると考えている「持続的収縮筋症候群」には複数の症状があるが、そのうちの運動痛をどう解釈するか。痛みは皆さんも日常で出会う疾患だと思うが、その症状の解釈と、実際に筋徒手療法では患者さんの臨床像をどのように解釈しているのかということをお話していきたい。前半は持続的収縮筋症候群とはいったい何なのか、またその症状の一つである運動痛の解釈などの基礎知識について、そして後半は持続的収縮筋症候群に対する治療法である筋徒手療法についてお話しする〟として講演をスタート。

〝筋は筋周膜で細かく区分けされており、それらを筋線維束という。さらにその中に筋線維が存在し、筋線維の一つ一つに運動神経がくっついている。何らかの原因により筋線維が持続的に収縮すると脈管系が圧迫される。そうすると局所に循環障害が発生し浮腫ができる。局所の浮腫により酸素が不足しATPの産生量が低下する(酸素が十分あるほうがATPの産生量は多くなる)。一度収縮した筋が再び緩むためにはATPが必要となるため、その結果、収縮した筋が緩みにくくなり(弛緩不全)持続的収縮が増強される。そして時間経過に伴い、新たな持続的収縮が起こる。持続的収縮筋と局所の浮腫が同時に存在すると、同領域の水素イオン濃度が上昇し、痛みを伝える神経が過敏になる。これらを持続的収縮筋症候群と呼んでいる。持続的収縮筋症候群により、運動痛・可動域制限・運動巧緻性の低下・平衡感覚の低下・筋出力低下・異常感覚・不眠・自律神経失調症様症状・顔面頭頸部の症状(歯痛・耳鳴り・頭痛・顎関節症様症状など)が出現する。中でも運動痛は臨床的な分け方として伸長痛、収縮痛、短縮痛がある。短縮痛は患者がその気がないのに勝手に収縮してしまう、収縮痛は意識的に動かしているという点では異なるが、生理学的に見るとどちらも酸素欠乏による循環障害のなかで筋収縮を伴う痛みが発生している。神経が過敏になっていると、軽い刺激でも運動神経が興奮して痛みを感じてしまう。運動痛を理解する際には痛みを感じやすくなっていることを意識することが大切〟として、神経が過敏になるメカニズムや筋徒手療法について模型や図を用いて解りやすく講義を行った。〝既存の診断名にかかわらず持続的収縮筋症候群が併存していることは決して少なくない〟と強調し、日々の診療を進めるうえで持続的収縮筋症候群を意識しておくことが重要なポイントとなると締めくくった。

会員発表

ばね指及び、ばね指に伴うモーニングアタック改善法

福岡県 河野雅樹

モーニングアタックとはばね指特有の症状で、起床後の初動時に起こる激痛を伴う弾発現象である。モーニングアタックを緩和・解消することで患者のADLとQOLが改善すると考え、簡単に行える独自のストレッチと手指の捻挫固定に使用されるユビットを併せて試行した結果、症状の改善と愁訴の軽減がみられたので報告する。

橈骨遠位端伸展骨折(関節内粉砕型)の一症例

鹿児島県 中浩一

前腕骨遠位端骨折は発生頻度が高い。今回、橈骨遠位端関節内粉砕の骨折の症例を、患者の意向と専門医の指導を受けながら、保存療法で良好な結果が得られた。経過報告と整復の問題点を考察し、整形外科的診断のAO分類で分類して報告する。

成長期における橈骨頚部骨折についての一考察

福岡県 髙石雅徳

成長期の骨折では、成長障害と機能障害が懸念される。今回は、成長期には稀な橈骨頚部骨折に対して、保護者と外科医の同意のもと施術を行ない、独自の固定法により、成長障害、機能障害も無く良好な結果が得られたので報告する。

AHIと肩関節可動域制限原因因子との関連性について検討

佐賀県 樋口大夢

肩関節の肩関節痛・肩関節可動域制限を引き起こす原因因子は2つに分類され、1次的因子としては石灰沈着・肩峰の変形などの構造的狭窄、2次的因子としては腱板断裂などによる機能的狭窄とされている。今回は機能的狭窄に着目し、超音波診断装置を用いてAHIを測定し、AHIとROM制限との関連性について検討した。

足部舟状骨疲労骨折保存療法の考察

熊本県 長谷尚

足部疲労骨折には踵骨・舟状骨・内外側楔状骨・中足骨などがあげられる。中でも舟状骨疲労骨折は比較的稀な疾患であり、医療機関など受診の際にも愁訴が不定であり、X線画像のみでは見落とされやすい。今回、これまで経験した3症例において装具固定や免荷を行わず物理療法・手技療法・包帯固定により競技復帰に導くことができたので報告する。

肩鎖関節脱臼の定期的X線撮影検査と固定法

大分県 安部良太郎

肩鎖関節脱臼はほとんどが上方脱臼で、交通事故やスポーツでの転倒時に肩峰への直達外力によって発生する。前回発表では、作成した固定装具を用いた整復位保持が非常に効果的であることを報告したが、実際の新鮮例に対して使用したことがなかったため、今回第3度の肩鎖関節脱臼に対して固定装具を用いた保存療法で対応した症例について報告する。

下肢部障害に対するウォーキングテープの効果

沖縄県 豊里剛

下肢部障害を訴える患者に対し、患側下肢のバランスを安定させ、蹴り出しを強化することで下肢部障害の愁訴を軽減できないかと考えた。従来はインソールを用いて施術にあたっていたがその効用に不十分さを感じ、独自に考案したウォーキングテープを患足部に貼付したところ、愁訴改善が認められたので、その効果を報告する。

YNSA脳幹部への電気刺激が身体に及ぼす影響について

宮崎県 宮永敏郎

YNSAは宮崎県の山元勝医師が1973年に確立した頭針療法である。脳幹部と呼ばれるツボは様々な症状を治療するにあたり初めに施術するツボである。このYNSA脳幹部は痛みやストレスからくる身体の筋過緊張を和らげる効果があるのではないかと考え、YNSA脳幹部のツボを電気刺激し、身体に反応を引き起こせるか刺激前後の指床間距離にて検討した。

全発表終了後、発表者の表彰が行われ、次回九州学術大会の主管である(公社)長崎県柔道整復師会・今道昭哉学術部長の閉会の辞で本大会は閉会となった。

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