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第25回日本柔道整復接骨医学会学術大会が開催!

トピック

「柔道整復 守るべきもの 変わるべきもの」をテーマに、第25回日本柔道整復接骨医学会学術大会が、平成28年11月19日(土)・20日(日)の両日、仙台国際センターで開催された。

主催:
一般社団法人日本柔道整復接骨医学会
後援:
文部科学省・厚生労働省・宮城県・仙台市・公益財団法人柔道整復研修試験財団・公益社団法人日本柔道整復師会・公益社団法人全国柔道整復学校協会

11月19日・1日目

E会場 口頭発表、「柔整基礎医学」座長 東京有明医療大学 中澤正孝氏

1-E-1『距骨下関節周囲の靭帯構造について』

帝京平成大学ヒューマンケア学部柔道整復学科、信州大学医学部人体構造学 掛川晃氏

背景・目的

「距骨下関節」は、距腿関節に比べ多方向に広い可動性を有する関節である。距骨下関節周囲の靭帯は複雑な構造をとり、これら靭帯の構造的な破綻が「距骨下関節不安定症」の原因の一つと考えられている。距骨下関節周囲の靭帯は「骨間距踵靭帯」と一括りに記載されている解剖学書も多く、その詳細な靭帯構造をアトラスなどで理解するのは困難である。そこで今回は、距骨下関節周囲の靭帯構造を明らかにすることを目的とした。

結果

距骨頭頚部の動きを制御する「頚靭帯」は single band と double band の2つのタイプがみられた。「骨間距踵靭帯」は踵骨上面の後距骨関節面前方から斜め内側に走行し、距骨下面に停止する靭帯であった。「下伸筋支帯」は足根洞内やその周囲で複数の線維に分岐し、踵骨上面に停止していた。

考察

距骨下関節周囲の靭帯構造について、常徳(2006)やLi(2013)らが詳細な報告をしているが、今回の調査でも先行報告と同様の靭帯構造が確認され、他動的に足部を動かすことにより頚靭帯や骨間距踵靭帯が緊張することが観察された。距骨下関節や足根洞に存在する靭帯や下伸筋支帯の線維束の構造は複雑であり、機能的に不明な点も多いが、学術大会ではそれら靭帯の構造上の特徴を報告。

1-E-2『伸張性収縮によるラット腓腹筋の筋損傷に対する温熱・徒手療法の効果:組織学的検討』

富山大学大学院医学薬学研究部神経・整復学講座 阿部浩明氏

目的

遅発性筋痛の治療に、後療法(徒手療法や温熱療法)などが用いられている。しかし、これら後療法の治療効果に関する実験的検討は少なく、組織学的検討はなされていない。本研究では、動物を用いて遅発性筋痛モデルを作製し、徒手療法と温熱療法の治療効果を組織学的に検討した。

結果

筋変性各部の割合(変性部/筋横断面積)を経時的に比較すると、3時間後において壊死性線維の割合が対照群と比較して温熱療法群で有意に低いことが明らかになった。同様の解析で、対照群と徒手療法群の間には、有意差が認められなかった。一方、4日後の再生筋線維の割合(再生筋/組織損傷面積)を比較すると、温熱療法及び徒手療法ではともに対照群と比較して有意に高いことが明らかになった。

考察

以上により、遅発性筋痛のモデル動物における筋損傷において、温熱及び徒手療法が筋損傷後の筋再生過程を促進することが示唆された。

1-E-3『骨折治療過程で発生する筋萎縮の分子構造について―IGF-1と筋萎縮の関係性に関する研究―』

上武大学ビジネス情報学部スポーツ健康マネジメント学科 西川彰氏

背景

近年の研究では、骨格筋における筋原線維の形成にはインスリン様成長因子-1(IGF-1)が関係しており、それがPI3K-Akt 経路を活性化することでその経路の終末にある「N-WASP」というタンパク質がアクチンの重合に関わることが報告されている。本研究では、IGF-1の発現の変化が不動化による筋萎縮の発生に関与している可能性を検討することを目的とした。

結果

健側肢に対し患側肢では、収縮張力の低下、収縮・弛緩時間の延長、疲労指数の低下とともに、SO・FOG線維での横断面積の減少が認められたが、その程度は長趾伸筋に比べ、ヒラメ筋で大きくなっていた。また、同様にIGF-1の発現量およびN-WASPのタンパク量においても、ともに減少する程度はヒラメ筋で大きくなっていた。【考察】関節固定により骨格筋を不動化するとIGF-1の発現量が低下し、その影響がN-WASPのタンパク量の減少に反映されることが推察された。また、本研究では足関節を底屈位で固定したため、伸張位となった長趾伸筋に比べ、短縮位のヒラメ筋の方で筋萎縮の程度が大きくなっていたが、IGF-1の発現量とN-WASPのタンパク量についても固定肢位の違いが影響することも示唆された。

1-E-4『血流を阻害したラット下腿筋の筋緊張』

日本大学歯学部生理学講座 花園整形外科内科 海津彰弘氏

背景

平成27年度学術大会では、ラット下腿筋の筋緊張検出方法について報告し、臨床の場で経験するコリ感を再現しているような結果が得られた。一般的に虚血状態の筋がコルといわれているが、血流とコリとの関連については不明な点が多い。そこで、本年度は虚血状態の筋の性質について解析したので報告する。

結果

正常血流群では電気刺激後にも筋の残存張力が検出されたが、虚血群のラット下腿筋では筋弛緩が認められ、血流を回復すると筋緊張を取り戻した。残存張力と力積との関連を調べたところ、正常血流群では力積と残存張力に正の相関傾向(R2=0.828)が認められ、虚血状態の筋では負の相関傾向が認められた(R2=0.757)。

考察

当初、虚血状態(ATPが不足)の筋を収縮させれば筋拘縮モデルを作成できると考えていたが、虚血状態はむしろ弛緩に働いた。これは、コンパートメント内圧と関係があるものと推察される。つまり、流入血流が維持される正常血流群は筋への持続収縮で静脈環流量が低下するため、コンパートメント内圧と関係があるものと推察される。つまり、流入血流が維持される正常血流群は筋への持続収縮で静脈環流量が低下するため、コンパートメント内圧上昇し筋緊張が高まったと考えられる。一方、虚血群では筋への血流が遮断されているため、内圧は低下し筋弛緩作用があると考えられた。このことから、本実験では、エネルギー不足による持続的筋緊張ではなく、筋内圧を検出していると考えられた。

午後1時からA会場大ホールにてシンポジウムが開かれ、6名のシンポジストが登壇。
明治国際医療大学・長尾淳彦氏が座長を務めた。

第25回日本柔道整復接骨医学会学術大会が開催!

公益社団法人兵庫県柔道整復師会の取り組み

公益社団法人兵庫県柔道整復師会 根來信也氏

平成7年1月17日の阪神・淡路大震災後、(社)兵庫県柔道整復師会は平成9年10月21日に「災害時におけるボランティア活動に関する覚書」を兵庫県と締結しました。

その後、同年11月7日には神戸市との「災害時における応急救護活動についての協定」を締結し、今日に至っています。

覚書ならびに協定を締結後、平成16年に神戸市総合防災訓練、平成22年に兵庫県合同防災訓練に看護協会の方達とチームを組んで参加。覚書の見直し並びに関係団体の連携を密に取り始めた矢先、平成23年3月11日に東日本大震災が発生。

覚書に基づく初の情報提供として、3月16日に兵庫県健康福祉部健康局医務課より連絡があり、その後、活動の窓口であるひょうごボランタリープラザより正式な依頼があり、当会学術部を中心に5名の会員を東日本大震災兵庫県ボランティア先遣隊として派遣。

3月18日~20日の日程で、松島町内避難所での被災者支援を行い救援物資を運ぶ等もしました。

医師会の先生方、看護師さん、保健師さんが中心となり、避難者を振り分けます。
厳密には、鍼灸師会のほうには針が怖いからということで我々のほうにばかり来ましたが、私がコーディネートして振り分けました。

また、上部団体である(公社)日本柔道整復師会の要請で、災害医療ボランティア登録をした会員4名を4月30日~5月7日、宮城県本吉郡南三陸町に派遣しました。

5月1日~6日の期間で5カ所の避難所にて延べ施術人数191名(男性77名女性114名)、平均年齢(62.3歳±13.9)に対して、施術を行いました。

保健士さんに情報を引き継ぐべきで我々だけでの活動は無理だと思っています。

(公社)兵庫県柔道整復師会は看護協会の災害担当の方々と交流があり講習会をさせて頂きました。一緒に出来る体制が必要です。どうしても我々自分達で作ろうとするがそれは意味がないと思っています。

課題としては、災害時の連絡方法について携帯メール配信システムの構築は実施済みであり、平時には各種連絡に使用しています。

現在、救護活動時の負傷票は、紙ベースでの提出ですが、クラウド上で入力可能となっており、災害時の報告書も応用できるように検討中で、活動に必要な物資並びに派遣人員についてリアルタイムに双方向で行える方法をSNSなども含め検討中です。

最後に言いたいことは総本部で情報共有することが大事です。

現場で何が足りないか、困っていることが瞬時にわからないと無駄な物がいっぱいあります。

災害時、先ず自分の命を守ることを一番にやらないと全く話になりません。

東日本大震災の経験

公益社団法人岩手県柔道整復師会 植田秀實氏

平成23年3月11日午後2時46分。今までに経験のない大地震が発生。

防災無線放送にて津波警報が発令。
内容は、津波の高さ岩手県3m、宮城県6mの津波規模であり、過去の経験を踏まえ一安心し散乱した屋内の片付けや屋根瓦の修理準備を開始しました。

再び大きな地震が発生、二階から大津波を目撃し屋外避難行動をしました。
5mの防潮堤越しに旧道高台から津波が襲来し高台目指し避難開始、『津波てんでんこ』に反し、他の人を連れ出し避難しましたが途中で力尽き津波に呑み込まれました。

その後第3波、第4波と続きました。
東日本大震災の巨大津波により、岩手県では死者行方不明者が6,211名、釜石市の当時の人口は39,996名そのうち死者行方不明者981名で、全人口に対する割合は2.83%でした。

釜石市全体の62%が箱崎半島の鵜住居地区に犠牲者が集中しています。
私たちは前から、もし津波がきたら高台に逃げようと夫婦で話し合っていました。

最初は3mの津波というので住民は安心していたと思いますが、そうではなかった。

箱崎町は大体230世帯位ですが、70名位亡くなっています。引き波で引っ張られていくと何所に流れていくか分らないので、見つかりません。水死の場合は顔の見分けがつかない。

避難先の3人でろう燭の灯で町内の名簿を作り、死者・行方不明の方々を一人一人チェックして行政のほうに持っていきました。

今までの砂浜が全部なくなって外海になってしまった。この大震災を経験して改めて自然の大きさを知りました。

自然災害が多発して特にこの頃は台風も東北地方にきて大きな被害が出ました。介護施設の方が亡くなられた川の川幅は100m位あります。材木が流れてきてひっかかると川が氾濫します。

小さい川は大きい川に水が流れないと溢れて家が流される。津波の場合は破壊力が違う。

流されたら波の先まで人が流れる。

奇跡的に助かった方もいますが、今回津波を経験して、地域で活動している先生方、もう一度防災を見直して自分がどういう所に住んでいるのか、山が近いのか川が近いのか、海が近いのか等考えて頂いて地域防災活動、犠牲者を出さない活動をして頂きたいと思います。

東日本大震災を経験して

公益社団法人宮城県柔道整復師会 松元浩二氏

平成23年3月11日宮城県沖を震源とする観測史上最大の巨大地震、大津波を引き起こした「東日本大震災」が発生。

宮城県の会員被害状況は、会員1名、家族9名が亡くなっており、お子さんは未だに見つかっておりません。会員の住居被害は全壊21棟を含め会員の約半数に被害がありました。

仙台市中心部でも2日~1週間程度、ライフラインが寸断され、被害概況が全く把握できない状況の中、連絡不能会員の安否確認と被害状況把握のため、宮城県警本部へ「緊急車両登録」を申請、車3台で視察を決行し、その完了と同時に「必要なとき・必要なだけ・必要なところに・活動できる会員から・活動できる地域に」をコンセプトに(社)宮城県柔道整復師会災害ボランティア対策本部を設置。242箇所においてSVM医療救護派遣活動を実施しました。

続いて日整本部が「医療救護ボランティア」派遣窓口となり、宮城と連絡調整のもと各県社団会員の派遣を頂きました。4月15日に大阪に入って頂いて10県の社団に2か月に亘り総勢76名に来て頂き、5月30日でボランティア対策本部を解散しました。

その時点で、DMATとの連携、柔道整復師の顔の見える化であるところの情報収集と研修等が少し足りなかったように感じています。

災害が起きて柔道整復師は如何とらえるのかという今回のシンポジウムの大きなテーマですが、個人的には、家族の理解であったり家族の支援体制、地域活動を通してNPOボランティア活動を通して地域の住民との連携、柔道整復師の認知等を行いながら備える。

接骨院の耐震化をして、一時避難所であったり医療救護に備える。

社団としては、運動競技や医療救護活動を通してボランティア組織を備え、災害協定を結ぶ。

また社員を守るのが社団としての一番の役割です。

関係団体との相互情報理解ということで地域防災体制を考えて柔道整復師の立ち位置に立った活動と相互理解が非常に重要で万全な体制で臨むことです。

原発事故避難所より思うこと

公益社団法人福島県柔道整復師会 遠藤寿之氏

平成23年3月11日、観測史上最大のM9.0、震度7の大地震により、家屋の崩壊、大規模土砂崩れ。そして、大津波による水没は死者不明者1,810名の大惨事となりました。

また、原子力発電所の11基が停止した後1号機から4号機まで相次ぎ爆発、30km圏内の住民に避難指示が出されたことにより26万人を超える人が避難者となり、避難所は疲れきった人たちで埋まっていました。

この避難所には、そのままバスに乗せられたり、そのまま車で来たということで全て手帳も何も持ってきていません。

明日の薬はないといっても殆ど医科は入らず、1週間目にお医者さんがどんと入ってきました。

ビッグパレットは約3,000名入って通路も何所も満杯で、中長期的に仮設が出来るまで使うということで其処で生活をする形が出来上がっていました。

被災者が避難所で長期に渡り巡回を行うには限界があり、日整に願いを求め、6名位を長期に渡り、交代で派遣して頂いた。

宿泊場所の確保と活動場所は当方で対応しました。避難者数2,500人と、1,500人の所には接骨院を立ち上げており、県外からの応援は有り難く、組織の必要性を感じ感謝しています。

避難所の責任者によっては柔道整復師の業務内容に理解がなく、また国の災害協定業種となっていないため必要性が無いと判断されます。

県知事と医師会会長に依頼書をとり、車の燃料確保が難しいことと道路に規制がかけられていることより、緊急車両の証明を得るため大変苦慮したが、災害協定があれば問題無く解決できます。

避難所で感じた問題点は、休日に他県より柔整が押し寄せ、また医療関係者以外の業種のボランティア手続きを行ったとして入ってきます。

帰った後に何人かの方が〝肩が上がらなくなった〟〝アバラがおかしくなった〟等、そういうケースはいくつも聞きました。

避難者は事故が起きた時の責任所在が分からない。ボランティアで入って直ぐ帰るから誰だか分らないところに問題があり、また被災者が避難所にいるところを一生懸命写真を撮っているがこれを見てどうかなと。

そして柔道整復師も避難所では枠を超えるような施術はやらないほうが良い。いろんな技術はあるが基本的に骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷だけに限ったほうが良いと思われる。

福島の救護活動は絶えず放射能問題と向き合いながらの活動のため、各地域の線量を把握しながら理解を求めての活動となりました。事故は起きますので、柔道整復師はその時どうなっているのか。

そういったケアが出来るのかを含めてシュミレーションし、この東日本大震災を柔道整復師として検証することがこれから先の震災等、大規模な災害に備えると考えます。

大分県柔道整復師会の活動報告―九州北部豪雨・熊本大分地震:二つの災害を体験して―

公益社団法人大分県柔道整復師会 加藤和信氏

大分県柔道整復師会の災害時の中心的活動は阪神淡路大震災の平成9年からでした。

大分県は幸いにも大規模災害には見舞われていませんが何時起こるか分らないということで警鐘を鳴らしています。

大分県災害ボランティア制度をつくり県内でも大規模な自然災害や事故に対して緊急に救護活動にあたるため、災害ボランティアを200名登録し、救護活動に速やかに対応するための公的な制度としてスタートしました。

また当会は医師会・歯科医師会・薬剤師会・看護協会・歯科衛生士会・柔道整復師で構成する医療ボランティアの活動を開始しました。 熊本・福岡・大分の北部において北九州豪雨災害が発生し、県災害ボランティア本部より出動の依頼がありました。

当会としては参加できる会員を把握し、現地に調査に参りました。
交通の遮断箇所がありキチッと行けるかどうかの調査を入念に行い、自己完結型ということで会員を募集しました。治療を第一に掲げ、施術録を作り次の会員に継なぐ施術録の場所を避難所に2・3か所設けました。

福岡・大分の流された全壊の家は360位ですが、浸水等は18,000、死者は30名です。

ネットワークの一員として初めての実践でした。その都度、避難所の責任者の方から謝辞を頂きました。

7月の終わり頃になり交通状況が改善し家に帰られる方が多く、7月末で終了しました。

多くの謝辞を頂き感動しました。県内初めての出動から4年、熊本大分地震が発生しました。

直ぐ会員の安否確認と被害状況を把握しました。局地的には大きな被害がありましたが、当会の会員には大きな被害はありませんでした。

熊本の応援に入りましょうということで宮崎県の会員と連携して支援すると決まり人員配置を計画しました。避難所で宮崎県の方と合流して、ブースを設けました。

長い間災害ボランティアとして訓練する中で、いま南海トラフト地震に対する警鐘があります。

職能団体として出来ることを行政と共有することで現在担当者と行政と協議し〝我々こういうことが出来ますよ〟と今話し合っています。

県としても災害ボランティアの横の組織を立ち上げようとしていますので、今は医師会と歯科医師会と2つですが、3番目に私たちが申し込んでいます。

職能団体としての認識を行政と共有することで今後の訓練、災害ボランティアと協力し合って、もし災害が来た時に備える準備、少しずつでも行政と対応して災害への準備をしていきたいと思います。

「平成28年熊本地震」における活動状況報告

公益社団法人熊本県柔道整復師会 松村圭一郎氏

全国の皆様方には、今回の「熊本地震」発生に際しまして、心温まるお見舞い、ご支援を賜り誠に有難うございました。心より厚く御礼申し上げます。

熊本地震は1回目4月14日午後9時26分震度7が発生し、2回目16日午前1時25分に震度7が発生しました。

当会では4月14日、1回目の地震が発生した翌日の15日から、被災者救護活動を実施致しました。持続的に活動していくためのチーム編成等、準備を進めていた最中、2晩続けてとなる震度7の地震が再び発生し、県内広域に亘り甚大な被害が更に拡がりました。

当会でも会員の多くが被害を受け、車中泊や避難所生活を余儀なくされた会員が、全会員の43%にも上りました。

現時点では、柔道整復師はDMATのような体制にはありません。

当会は県と「防災協定」を結んでおり、被災したにも拘わらず半数を超える会員が被災直後より災害医療活動を行いました。無論、当会からの強制ではなく会員の意思によるものです。

また、全国の柔道整復師の皆様から災害医療活動を支援して頂くためにも、まずは(公社)熊本県柔道整復師会が行政、避難所等と協議・了承の下、災害医療活動を行い、受け入れ態勢を整えることが必要です。

日本赤十字社本部からの依頼により、心身のケア活動として当会会員で構成している熊本県接骨・整骨赤十字奉仕団が行政職員の方々へ、6月11日~7月3日(実働5日)、延べ130名を対象に施術を行いました。

今回、災害医療活動を行う中、観えてきたものが多くありご報告します。

2回目となる震度7が発生して、状況が一変し予定を変更せざるを得なくなり地域で徹夜の必至の救護活動を行いました。肋骨骨折、鎖骨骨折を含む外傷性疾患を多数施術致しました。

当会としては会員が行いやすい地域での救護活動を指示しました。救護活動は強制ではない。我々誰もが被災者なんだ、夫々に行動する事情があるとして会員全員に周知しました。

前震から9日目の4月22日、会員に限界がきました。初動期はどうしても被災県の会員が動かなければなりません。施術所の復帰、また不安を抱える家族等を守る立場でもあります。

車中泊の会員も多数おり疲労がかなり蓄積していました。九州各県へ応援を要請しました。

4月23日、九州各県より応援に来て頂き、担当地区を割り当てて同じ県同士の会員の方でやって頂くというコーディネートをさせて頂きました。

避難所責任者等と意見交換を行って、医療機関復旧に伴いまして、「病院への回帰を促す」が当会の方針です。

日赤関係者の方から〝あなた達のお仕事は大変素晴らしいお仕事ですね〟という言葉を頂きました。良かったと思うことは、災害医療活動の理念を思いました。

会員が使命感を感じること、責任をもってやるということで、行政等との信頼関係の構築ができると考えます。日赤との共有関係が構築されていたので大変ご協力を頂いたと思います。

県との防災協定を締結しており、活動のお墨付きをもらえたことも良かったと思います。

災害担当理事を2名担当させたことも良かったと思っています。4年連続で災害医療の研修会を開催し、何をすべきかを理解していましたので対応が早かったと思います。

また災害活動の予算提示をして、県の補助金も組んでおります。会員間の連絡体制、ラインが有効でした。

その他、重要と思われることは、各県に精鋭チームを編成する必要があると私は思います。

被災地の会員の活動は1週間が限界とみています。各県合同でのチーム編成も必要だと思います。県内単一では、不十分ではないでしょうか。応援要請の派遣を明確にすべきです。

ガイドラインの作成が必要だと思います。財源の確保が必要です。参加することによって人の交流に繋がるのではないでしょうか。

「災害医療柔道整復師」について、災害医療は歴史的にも柔道整復師の原点です。柔道整復師に対する誇りがもてると思います。

外傷性疾患に対応できる柔道整復師は数少ない職種です。トリアージ「緑色」が可能です。

人によっては、「黄色」であっても対応できる方は多数いらっしゃると思います。停電や機器を使用できない環境でも対応が可能です。災害派遣、会の活動には限界があります。

組織力を活かした取り組みが必要であり、ボランティア活動には限界があると考えております。

※発表終了後にディスカッションが行われ、長尾座長より〝被災地の方にしか分らないことで、他府県からボランティアとして入られ帰った後に地元の人たちからのクレームや、これは困った、これだけはやめて欲しい、やってはいけないことを聞かせて頂きたい〟との質問に対し

〝来ただけで終わってしまった〟〝当たり前のことを当たり前にやる。アピール度を強くしない〟〝日曜日はいっぱい居たが月曜日は誰も居ないという、行ったり行かなかったりでは信頼関係は成り立たない〟等々出された。またフロアから〝「コーディネート」と「災害支援ガイドライン」という言葉が出てきているが、先生方の県ではどの程度進んでいるか?各都道府県で作ったほうが良いのか、全国統一形式みたいなものがあったほうが良いのか?〟や〝今後「多職種連携」がキーワードになってくると思いますが?〟といった意見が出され、それに対し〝多職種連携も良いと思うが、多職種との棲み分けも必要である〟等の考えが述べられ、盛大な拍手の中、終了した。

特別講演Ⅰ『心身の健康と呼吸』

東京有明医療大学副学長 本間生夫氏

座長は、一般社団法人日本柔道整復接骨医学会理事・松岡保氏が務めた。

心には「情動」が絡んできます。情動というのは、喜怒哀楽の感情といってもよく、情動にはポジティブな感情とネガティブな感情があります。
こういう感情は、脳の中で作られています。
大脳系の扁桃体が情動を中枢する第一中枢と言ってもよいと思います。

ここに呼吸がものすごく関わってきます。情動がないと社会で人々と一緒に生活することは出来ませんし、人との絆を強固にするのも情動のお蔭です。この感情・情動は4才までの間に確立されてしまいますから、それまでの教育が非常に重要です。

情動は5、6歳までに教育しないと、固まってしまいます。
小学校に入る前に情動の教育をしなければいけませんが、幼児教育の取り組みは中々されていません。

東日本大震災が起こった時に〝日本人というのは奪い合いをしない〟〝絆が強いと感じた〟と外国から称賛されましたが、おにぎり一個でもちゃんとみんなで分け合っている。ここはやはり情動というものが出来ていることになります。

情動の中でも不安というのはネガティブな情動の最も代表的なもので、誰もが経験したことのある感情です。不安は非常にストレスに結びつきます。不安尺度というのは、不安の度合を点数化したものです。非常に不安になってくる時に呼吸数が増えています。

呼吸数と不安度は相関します。呼吸数の研究は動物実験でも出来ますが感情の研究は出来ません。扁桃体には呼吸が絡んでおり、この扁桃体で感情と呼吸が一体となって生まれているということになります。

2011年3月11日に東日本大震災が起こってから、政府はいろいろな対策、被災地の子どもにどのように支援介入していくかを考えました。当時どのように心に添って介入するかという方法論があまり確立されていませんでした。この研究班に私も加わり、私のテーマは、子どものリラクゼーションのための呼吸法でした。

東日本大震災被災地のこどもの心のケアを、岩手県宮古市の熊野地区の鍬ケ崎小学校で、呼吸体操で体を動かすことと生け花で美しいものに触れる、この2つのことを行いました。

呼吸筋ストレッチ体操”ラッタッタ体操”は、呼吸で心を癒しリラックスすることでストレスから解放されるものです。この体操をよりやり易くするために体操の歌も作りました。子ども達の笑い声が聞こえてきたり笑顔が見られます。

感情と呼吸は密接に関係しています。被災地に限らずいろんな所で活用されればと思っています。子どもに限らず、感情の癒しとか、どの年代でも誰が行っても良いものです。

日本は高齢社会ですから健康寿命を伸ばすことが重要になってきます。高齢者は加齢によって呼吸機能だけではなく、様々な機能が低下します。

ラッタッタ体操を高齢者の方にやって頂くと最大吸気量が増えて肺機能が上がります。また介護の支援者は、仕事でストレスを感じている人が60%位います。

呼吸筋のストレッチ体操の効果は、

  1. 情動・気分の改善(不安の解消)
  2. 肺機能の改善(老化予防)
  3. 息苦しさの軽減(胸がスッキリ)などの効果が得られます。

文化というのは非常に重要で、特に日本の伝統芸能である「能」は、呼吸法と非常に絡みます。呼吸が変わると身体の様相が変わる。能というのは、心の表象、内的な表象である等を話し、最後に会場のみんなでストレッチ体操を行って和やかに終了した。

口頭発表は、【Abstract】を記載しましたが、紙面の都合で【方法】を割愛させて頂きました。

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