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第25回日本柔道整復接骨医学会学術大会2日目!

トピック

11月20日・2日目

大会会長講演:『症例研究と単一事例実験計画法について』

元帝京大学医療技術学部教授 佐藤揵氏

大会会長講演

座長は、一般社団法人日本柔道整復接骨医学会会長・櫻井康司氏

〝医学、看護学、行動科学等の臨床科学では症例研究がよく行われてきており、珍しい病気、珍しい疾患であることが分っているとすれば、それを1例ではなく続けて研究すると、何が原因であるか因果関係を分析することが可能になります。報告された症例によって新しい疾患や新しい概念が発見されるということがよくあります。
有名な1例は、1817年にジェームズ・パーキンソン先生が症例報告し、70年後の1887年にフランスの神経学者シャルコー先生が研究を行いその疾患の病名をパーキンソン病と命名されたことが広く知られています。こういう事例に対する研究をどういう風にすれば良いかということを纏めてみたい〟と前置きした。

〝症例研究の意義については、

非常にめずらしい疾患の場合
珍しくはないが、特異な経過・転帰をたどったケース
治療・介入への反応が独特であったケース
新治療法、新技術の開発・試行・実験治療を行ってみた効果
診断・取り扱い(処遇)・治療・リハビリテーションに非常に苦慮したケース
治療手段方法に対して従来の方法に問題点を感じ、ある仮説を示す場合、

これらが症例報告の特質になります。

つまり症例報告というのは患者さんの特徴、診断、問題点、治療、反応を細かく記録したものです。元々治療効果の判定をするための仮説が役に立つ、一方、治療効果や介入の効果を証明することは出来ません。実際に発表されている症例研究の多くはどうしても定性的、或いは叙述的になることが多く、全く違う理論系の人からみると、それは”単なる幸運だ”とみられ、一般化できないととられます。
では、それを避けるべく類似例を集めることが簡単に出来るかというと極めて難度が高い等問題点もあります。実際に行われている集団的比較研究には、

倫理的問題
実施上の困難
集団の平均値の意味
結果の普遍性
被験者の個体差

という5つの問題点があります。

今回、学会で発表されたタイトルだけを数えてみると、症例または症例にふれるようなタイトルになっているのは20題あり、おそらく内容的にいえばもっとあると思います。つまり、症例研究はかなり行われているが、従来型の研究であり、メリット・デメリットがあります。簡単に申し上げると人を相手にする場合、そっちのグループに介入をやって、こっちにやらないでおくことがどうなのか、倫理的に良いのかというような意見が出てきます。そこが一番大きな問題だとされており、その反省に立ち1例または僅か数例の対象者に関していろんな方法で経過観察をすることで、その観察した部分をなんとか客観化できないだろうか、というアイデアが主として高等教育分野から出てきた訳です。

その方法の1つが、シングルケース実験計画法であり、single case design(N=1 research design)という手法であります。単一個体に刺激を与えたり、治療を行ったり介入を行うことで反応に違いが出るか出ないかを追いかけて観察する方法で、コントロールグループ不必要、基礎水準期と操作介入期を設けてその差異をみます。臨床研究において重要性は高いが、あまり活用されていませんでした。例えば、リハビリテーション前後の症状や機能の変化をみて、効果を測定する、或いは目標を設定し、いろんな介入を行って効果を測定する方法、或いはある方法で行っていたが、効果が得られなかった場合、モニターすることで方針を変更する場合にも、この方法を使うことがあります〟として、1981年、Ostendorfらが片麻痺患者1例、上肢機能の治療について基礎水準7日、操作介入7日のリハビリテーション効果を直線表示の簡単な手法で比較した効果の評価法やデザインの種類(A-B-A型)について紹介し解説を行った。また(変型A-B型)基準移動型として2003年に佐藤氏が研究報告した学生トライアスロン選手1名(国際レベル)と学生レベルのプレイヤー11名と比較試行した分析結果についても概説。シーズンインをベースラインとし、3大大会を介入(独立変数)ととらえることとし、柔軟性系7項目、筋力系8項目を従属変数として時系列的に観察測定した。特に両群の差および変動の大きい体重、足底屈力、足背屈力についてみると競技力の高い選手の柔軟性と筋力のいくつかに差異を見出した。とくに足底屈力と後部(背部)の筋力の群間差が課題と読解しえた等紹介した。〝スポーツ分野で取り入れられた例はあまり無いが、この研究の手法には、薬効検定で使われるプラセボに相当する偽薬、何もやらない期間、介入をやらない観察期間を設けることは出来るかという問題がある。改善出来る方法としては、従来の治療を継続し、それに新たな方法を導入する、デザイン型として、A-B型、A-B-C-D型、B-A-B型、交替操作型、基準移動型等が可能ではないかと考えられる。症例研究をやる場合に効果を判定する方法として適用できるのであれば、症例研究の科学化が少しレベルアップするのではないかと期待できる〟等話し、1例や少数例に対するアプローチの持つ意義や問題点を検討。臨床科学の客観性を高める上での必要性を説いた。

櫻井座長から〝佐藤先生の今日の講演の中で、学会の教育というものを更に高めて、若い先生方がいろんなことにチャレンジして増えていくことに期待し、先生のご講義を明日に活かしていきたいと思います〟等述べ、盛大な拍手の中、終了。

特別講演Ⅱ『腱板断裂の病態と治療』

東北大学大学院整形外科学分野 井樋栄二氏

井樋栄二氏

座長は、一般社団法人日本柔道整復接骨医学会副会長・米田忠正氏

〝腱板というのは、仙台生まれ。実は、東北大学初代整形外科教授・三木威勇治先生が1946年に臨床外科の第1号に書いており「腱板」という言葉を三木先生が最初に使った後、日本全国に広まりました。腱板は仙台が発祥の地だったということで、皆さんは仙台でこの話を聞けるのは非常に良いことかなと思います。

どうして断裂が起こるのか。いろんな説がありますが、昔からよく言われている内因説は、加齢による腱の変性で、亡くなった方の腱を調べてみると必ず変性が起こっていて年をとるほど腱が変性を起こしています。年とともに髪の毛が白くなったり、皮膚に皺がよるのと同様に、引っぱると切れやすくなって強度が段々弱くなり、やがて切れてしまうのではないかというのが1つの考え方です。

肩峰の先端口を調べると正常な肩は関節窩の中心から10ミリ位後ろにありますが、腱板断裂の人は5ミリ位前にあり、ここに断裂の原因があるのではないかとされています。肩峰の下の接触圧は2倍以上高いので、肩峰の下を腱板が常に通過する人は切れるリスクが高い。最近言われているのは、肩甲骨関節窩を結ぶ線、関節窩の下縁から肩峰外側縁を結ぶ線、この2つの線がなす角度をクリティカルショルダーアングルと呼び、断裂の人の方がクリティカルショルダーアングルが大きい。

秋田県のある村の住民健診のデータで、40代~80代まで1328肩を観たところ「痛い」と答えた人が各年代20%位、50歳代では10人に1人。80歳を超えると3人に1人が腱板が完全に切れていました。腱板が切れていて痛い人は3分の1、3分の2の人は痛くないことが分かり非常に驚きました。日本に腱板断裂の人がどれくらい居るかを有病率から計算したところ一番多いのは70歳代で300万人位、腱板がちょっと切れている、大きく切れている、いろんな切れ方があるが日本人で4人に1人位は腱板が痛んでいることが推定されます。病院に来る人は、痛みで来た人が88%、痛いと力が入らないという人が11%、痛くないが力が入らない人は1%。病院に来る患者さんの99%は痛みで来ると言えます。肩の筋肉の働きをみる場合、これまでは筋電図しか無かったが、最近はPETを使って筋肉の働きを観ることが出来ます。痛い断裂と痛くない断裂では何が違うのかとPETスキャンをしてみました。殆どの動きは三角筋が働いて手が上がったり下がったりしていますが、痛い人は三角筋の働きが弱い。その代わり僧帽筋、或いは肩甲棘筋が働いています。これは痛みの原因というより結果で、痛いからできるだけ肩関節を動かさずに手を挙げるには肩甲骨を出来るだけ動かすのだろうと思われます。

腱板断裂の診断には、現病歴と身体所見が大切です。視診では棘下筋、棘上筋の委縮に注意し、触診では棘上筋腱の触診が大切で、全層断裂があればその部位を陥凹として触れることができます。肩自動運動時の肩甲骨の動き、有痛弧、インピンジメント徴候など痛みに関連してみられる所見をとります。断裂の部位診断には、棘上筋腱断裂を診断する棘上筋テスト、後方の腱板である棘下筋腱断裂をみる外旋筋力テスト、外旋ラグ徴候、後方の断裂が小円筋腱まで広がるとHornblower徴候が陽性になり、前方の腱板である肩甲下筋腱断裂に対してはLift-off テスト、内旋ラグ徴候、Belly press テスト、Bear hug テストなどが有用です。ランセットに載っている論文では、棘上筋テスト、外旋筋力、インピンジメント徴候をみて、この3つが全て陽性であれば全ての年齢層で断裂を持つ確率は98%。3つの内の2つが陽性で患者さんが60歳以上であれば、98%の確率で断裂がある。3つが全部陰性であれば、年齢に関わらず断裂を持つ確率は5%と報告しています。以上の身体所見に加えてX線、超音波、MRIなどの画像所見も合わせて診断を確定します。治療は大きく保存療法と手術療法に分けられ、保存療法では断裂した腱の治癒は期待できませんが、断裂によって引き起こされる痛みは約75%の症例で軽快します。保存療法を3か月続けても症状が改善しない症例や症状の再発を繰り返す症例では手術的治療を考えます。若年者、スポーツ愛好家、肉体労働者では症状再発、断裂拡大のリスクが高いので積極的に手術を考えます〟等述べ、〝煙草が断裂を大きくする1つの引き金になることが分かりました。更にその後の研究で喫煙そのものが腱板断裂の発症にも関与していることが分っています。煙草を吸っているとゴムのような腱板が瀬戸物のようになってくることも分かりました〟と話し、日本は喫煙率が高いので啓発活動をしなければならないとした。

最後に〝2年前に日本に入ってきたのが、反転型人工肩関節、リバーストータルショルダーが入ってきました。最大の利点は、手を挙げるモーメントアームにあります。フランスのグラモンという方が1987年に開発し、出来たのは94年です。2004年にアメリカにわたって2006年に韓国、2008年中国、2014年ようやく日本に導入されました。去年1年間で使われた人工関節はあっという間に75%が反転型になっています。導入を待っていた患者さんは沢山いるということです。フランスと比べれば26年も遅い2014年に日本に導入されたということで悲しくなるが、しかし遅ればせながらも日本に入ってきたので、今後も反転型人工関節の果たす役割は非常に大きくなるだろうと考えています〟と結んだ。

(フロアからの質疑と応答は省略)

実践スポーツ医科学セミナー『腰部障害の発生機序と病態別運動療法』

早稲田大学スポーツ科学学術院教授 金岡恒治氏

金岡恒治氏

座長は、東京有明医療大学・山口登一郎氏

〝腰椎は5つの椎骨が連なる不安定な構造をしており、体幹筋による動的安定化機能が十分に働かないと身体安定性の低下により様々な障害を誘発します。体幹筋には体幹深部筋(ローカル筋)と浅層筋(グローバル筋)があり、ローカル筋は脊椎に直接付着し単関節筋として関節の安定性に寄与し、特に腹横筋は腰背筋膜を介してすべての腰椎横突起に付着し、その収縮によって腰背筋膜に緊張を与えることにより腰椎の安定性を高めます。

一方グローバル筋は胸郭と骨盤をつなぐ多関節筋として速く大きな力を生み出します。何らかの運動をする際にはローカル筋がグローバル筋より先に収縮し(feedforward 機能)、5つの腰椎を機能的に一つのunit とした後に、グローバル筋の活動によって胸郭と骨盤間の運動を行うことが合理的な運動と考えられます。もし体幹筋群の機能不全が生じ、腰椎に過度の負荷が加わると下位椎間に不安定性が生じ、椎間板障害、椎間関節障害(椎弓疲労骨折)、仙腸関節障害などの腰部障害を誘発します。またローカル筋機能不全を代償するためにグローバル筋に遠心性の収縮が強いられることによって筋筋膜性腰痛、筋付着部障害、体幹筋肉離れを引き起こします。これらの障害発生機序は、”stabilizer 機能不全症候群”と捉えることができます。

最近アスレチックトレーナーはいろんな障害予防について治験を固めてきており、股関節のモビリティ、体幹のスタビリティ、腰椎・胸郭・肩甲帯のモビリティが大事であり、肩甲上腕関節のスタビリティが大事であるとしてモビリティとスタビリティが交互に存在するという状態が良い状態と言われ、それらを指導することがいろんなフィットネスでも行われています。

肩のインピンジメントに対する肩甲帯、肩の使い方、筋肉の使い方は結果的に伸展型の腰痛に対するアスレティックリハビリテーションだといえるのかと思います。人間の体は結局繋がっているので何所か一か所治せば良いものではないと思います。つまり正しい体の使い方を修得するということがこの様な障害を減らすためには何より重要と言えます。仙骨が腸骨に対して前傾する運動のことをニューテーション、反対側がカウンターニューテーションと名前が付けられています。座った状態で仙骨に圧力が加わって、仙腸関節に負荷が加わる。或いは座った状態で椅子と骨盤が固定された状態で体を前に持って行く。仙腸関節障害を起こしている人は、その関節の部分だけではなく、靭帯部分に圧痛を持っているという人が多いと言われています。

診断方法は前屈制限、伸展制限、どっちが起きてもおかしくない。カウンターニューテーションの痛い人は伸展すると痛い。ニューテーションで痛い人は前屈で痛い。両方ともある人は前屈も伸展も両方痛いので、動きだけでは診断できない。一番診断のマッチが高いのは、痛みの場所がどこにあるのか、ワンフィンガーテストと仙台の村上先生が提唱されている方法です。女性のほうが圧倒的に仙腸関節障害が多く、妊産婦さんに仙腸関節障害が多い。

去年の4月-5月に山口県の整形外科医院を受診した323名を対象に腰痛を細かく診断した報告では、323名中、MRIやレントゲンで明らかに異常のあった腰部障害は21%。内訳は脊柱管狭窄症が一番多く、ヘルニヤ、圧迫骨折が診断されています。一方画像で診断できなかったものが8割になり、これらを鑑別するために触診、機能的な評価を行って4つに分類しようとしたところ、結果的には8割の非特異的腰痛といわれた中の7割が次の4つ、椎間関節が約4割、筋筋膜性が3割、椎間板性が2割、仙腸関節が1割と報告されています。中にはこれだけやっても分らない人が3割いるのも事実です。出来るだけこれを減らしていくのが1つの課題と思っています。そのためには、体幹深部筋の機能を高めてやれば良いというのが1つの大事な方法です。一番単純なのがドローインというおへそを引きこむような収縮を行うことによって腹部の収縮を促します。筋肉の収縮をみるのに一番良いのは超音波です。もし自分のところに超音波のある人は、腰痛の患者さんに実際にエコーをみせながらやるのが一番良い教育効果があります。キューイングという動作を促す言葉かけもあるので、それを上手く使って収縮を出来るようにしてあげられれば良いと思います。筋力を高めるというよりも筋の反応性、コーディネーションを高めてやることが重要です。有名な実験で立った状態で右手をパッと挙げる時に三角筋よりも先に同側の腹横筋が収縮すると無意識に手を上げているようでも自分の脳の中では手をあげるという動作において、体幹を固めた後に三角筋を動かすようにプログラムされていると言われています。運動をする時には常に動きを予測しながら運動をすることが重要です。おそらく一流サッカー選手とか一流のラグビー選手たちは次にどうなるかを予測しながら運動をしているので良い競技が出来るのだと思います。

水泳連盟とスポーツ科学センターが協力して水泳選手の腰部障害の予防プロジェクトを2008年から行っています。MRIを使った腰のメディカルチェック、ストレッチ、体幹筋の強化、コーディネーション等を重点的に行っています。アスリートに対する介入だけではなく、一般の人への腰痛対策としても非常に有効で、体幹深部筋の賦活化を指導することによって腰痛の頻度が半年で減ったと聞いています。腰痛の運動の用語ですが、体幹深部筋の機能改善は1つの目安であると思います。昔ヒポクラテスが“腰痛は人間が自らの力をもって自然に治すものだ”と言っていました。おそらくローカル筋がキチンと普段の生活の中で無意識に働いて体幹を安定させてくれるように体を再教育する、これを難しくいうと小脳の中に内部モデルを形成し、小脳の中にその運動様式を覚えさせることが重要と言われています。

鍛えるというより繰り返し使うようにして運動学習をすることが重要で、体幹筋の機能を高めることである程度の予防が出来るのではないかと思っています。腰痛難民はかなりの社会的問題で、それをどう解決すれば良いか。自分の体の機能を改善することによって腰痛の再発予防が可能です。身体機能を高めることが重要で、言うのは良いが、それは何処で誰が保険適用をどういう形で行えば良いのかその辺はハッキリしていません。腰痛を機能的に評価をして、それに対する運動療法をちゃんと出来る人をなるべく育てたいとして身体機能研究会を作って腰痛運動療法セミナーを行っています。興味のある方はHP、フェイスブックからご覧になってください〟等、熱い講演を行った。

(フロアからの質疑と応答は省略)

教育研修セミナー『柔道整復師と高度救命救急センターの連携~災害時対応を中心に~』

佐賀大学医学部附属病院高度救命救急センター・阪本雄一郎氏

教育研修セミナー

座長は一般社団法人日本柔道整復接骨医学会副会長・木山時雨氏、副座長は公益社団法人佐賀県柔道整復師会・隈本圭吾氏

〝我が国における救急医療体制は、地域におけるメディカルコントロール体制を中心に構築されています。メディカルコントロール体制は行政、医師会、消防機関に救命救急センター等の地域の救急機関病院によって構築されており、救急現場における判断が困難な際に救急隊員の現場活動を直接サポートする直接的メディカルコントロールと実際の現場活動を公文章として記述した救急活動記録表を検証し、活動内容をフィードバックする間接的メディカルコントロールおよび現場活動プロトコールの作成・修正、救急隊員の研修体制から成り立っています。

また、全国に広がっている我が国のドクターヘリ事業の特徴は諸外国の救急ヘリコプター事業と異なり、各自治体における都道府県事業という点であります。高度救命救急センターは急性期の患者対応に加え前述のような業務において行政や消防機関等様々な外部機関との連携が必須であり、我々は東日本大震災における佐賀県の災害支援を通じて佐賀県柔道整復師会との連携を始めています。実際に柔道整復師のセミナーに参加し、臨床的に極めて高い技術を柔道整復師が有することを認識しており、佐賀県初の多職種連携を、今後の展望として全国に広げていきたい。昨年から佐賀県柔道整復師会の皆様に大学病院の災害訓練に参加して頂き、足が老化している方に対して、先生方の力を発揮していただく取り組みがありました。医療資源からも正に理にかなったもので、固定などを施してからの体制が出来たと思います。

とにかく何が大事かというと一番は皆さんの安全と指揮命令系統の情報が大事です。どこが指揮を持って、どういう風に情報を伝達しているか。参加される皆さんに平時にも情報を伝達し、有事の時に使って頂くと非常に有益です。災害時には被災者の数が圧倒的に多く通常とは違う大変な状況であり、限られた医療資源を最大限活用できることが災害の基本です。地域毎の柔道整復師の方は伝統医療としての技術、地域の資源として最大限に活躍できる場です。熊本地震の時にも佐賀県の柔道整復師の先生方は被災地にかけつけて、我々と情報交換させて頂きました。

トリアージは、一人約30秒位で評価します。呼吸数が10回以下とか30回以上になった場合は重症に変わってきます。病院に着いた後は、二次的なトリアージを行いますが、このトリアージの方法はいっぱいあります。患者さんは刻々と変化していきます。最初は緑だった人が黄色に変わることがあります。先生方は緑の軽症の方を処置をされるが、患者さんの様子がおかしいという場合、例えば意識が混濁しているとか、さっきまで安定していた方がソワソワしているといった場合、ショックの徴候だったりします。そういった医療知識も持っていただけると良いと思います。二次トリアージ・生理学的解剖学的評価(Physiological and Anatomical Triage:PAT)の第1段階は、生理学的評価で意識・JCS2桁以上、呼吸9/分以下、30/分以上。脈拍120/分以上、50/分未満、血圧sBP90未満、200以上 SpO2 90%未満。その他、ショック症状・低体温(35度以下)・注)心肺停止であれば黒(救命困難群)に分類。第2段階は、解剖学的評価で開放性頭蓋骨陥没骨折・外頚静脈の著しい怒張・頸部又は胸部の皮下気腫・胸郭動揺、フレイルチェスト、開放性気胸、腹部膨隆、腹壁緊張、骨盤骨折(骨盤の動揺、圧痛、下肢長差)両側大腿骨骨折・四肢切断・四肢麻痺・穿通性外傷・デグロービング損傷・15%以上の熱傷、顔面気道熱傷の合併等。JPTECの全身観察の項目に準拠し、いずれかに該当すれば赤・緊急治療群。第3段階は、受傷機転による対応、受傷機転・評価など。傷病状態及び病態において、体幹部の挟圧、1肢以上の挟圧(4時間以上)、爆発、高所墜落、異常温度環境、有毒ガス発生、汚染(NBC)。第三段階の受傷機転で重症の可能性があれば一見軽症のようであっても非緊急治療群(Ⅱ)の分類を考慮してもよい。災害弱者の扱いは、WATCH PPPに注意、女性(W)、高齢者(A)、旅行者(T)、小児(C)、障害者(H)、妊婦(P)、病人(P)、貧しい方(P)は、必要に応じてⅡを考慮してもよい〟等説明し提示した。最後に昨日行われた災害訓練の様子について〝柔整師の先生からのレクチャーもあり非常に素晴らしい訓練が出来ました。

我々救急活動を行う医師や看護師、特に若い医師等にとって参考になる現場のノウハウと思います〟等を述べられ、(公社)佐賀県柔道整復師会会員の先生からこれまでの経緯と今後の展望が報告された。また阪本氏から〝我々小さな県ですが更にこういった勉強を継続して全国に発信していきたい〟と結び終了。地域の救急医療体制において柔道整復師との連携の可能性についてと実際の災害対応における柔道整復師の活動の可能性、地域の防災体制における柔道整復師と高度救命救急センターの連携によって得られる可能性について述べた。

第25回学術大会では、大会会長講演をはじめ特別講演2題、シンポジウム1、教育研修セミナー1、実践スポーツ医科学セミナー1、8つの分科会フォーラム、ワークショップ1、口頭発表162題、ポスター発表58題が熱心に行われ好評を博した。

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