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(公社)日本柔道整復師会第38回東北学術大会山形大会開催!

トピック

平成29年7月22日・23日、山形国際ホテルにおいて(公社)日本柔道整復師会第38回東北学術大会山形大会が開催された。

(公社)日本柔道整復師会第38回東北学術大会山形大会開催!

1日目の22日(土)には、開会式、ブロック報告会・表彰式、実技発表、日整介護セミナー、事例発表(山形県版)等が行われた。

齊藤勝典会長

開会式では、(公社)山形県柔道整復師会・齊藤勝典会長より〝東北学術大会は東日本大震災で学会が開催できなかった時期もあったが、皆様のご協力があり開催することができた。
この学会を益々発展させ、技術と伝統を誇れるものにしていきたい〟と意気込みが述べられ、〝明日は2題の特別講演を予定している。
1題は鶴岡市立加茂水族館元館長の村上龍男氏に、もう1題は山形県医師会副会長の中目千之氏にご講演いただく。今日明日と勉強会が続くが宜しくお願いしたい〟とプログラムの紹介が行われた。

工藤鉄男会長

続いて(公社)日本柔道整復師会・工藤鉄男会長は、現在の日本柔道整復師会の取り組みについて、〝柔道整復師として生計を立てていくのが大変厳しくなっているというのは皆さんも感じていることと思う。
まずは組織として足元を固めることが大切だと思い、改革に着手した。
教育分野の改革としては、カリキュラム改正を行った。これにより存続が危ぶまれる養成校もあるかもしれないが、崇高な理念をもって一丸となってやっていこうとしている。養成される柔道整復師数が少なくなることは間違いないだろう。
また制度改革としては、実務経験がなければ保険を取り扱うことが出来ないとした。真面目に業務を行っている柔道整復師が生計を立てられるようにするために、厚生労働省等と折衝を重ねている。審査会も強化し、皆さんを苦しめている患者照会の問題に対応していきたい。
患者照会は「不正を行っているのではないか」というイメージを患者に与えかねないため、適正化に導いていくための対応策を考えている。
日本柔道整復師会が次々に手を打っていてもなかなか難しい分野もある中で、一歩一歩進んできたのが今回の制度改革と教育改革だとご理解いただきたい。必ず良い時代を築いていけるよう尽力していく〟と述べ、さらなる改革を進めていくために協力を要請した。

2日目の23日(日)には、特別講演2題、ポスター発表、研究発表、講評・表彰および閉会式が行われた。

特別講演1
「どん底から世界一へ」

鶴岡市立加茂水族館元館長・現シニアアドバイザー 村上龍男氏

村上龍男氏

【概要】
私は加茂水族館で昭和42年から48年間館長を務めた。
その歴史について今日はお話したい。加茂水族館は昭和39年に開館したが、市の意向で昭和42年に売却された。
翌年には入館者数が過去最高となったが、繁盛は長くは続かなかった。売却先企業は水族館で上げた収益を他施設の赤字補填に使っていたため、建物を補修したくても雨漏りを直すお金すらなかった。

東北各県の大きな水族館でも新しい試みが始められたこともあり、加茂水族館はそれに対抗するためにアシカショーを始めたが、他の水族館の真似をしただけでは客は増えなかった。
ラッコの展示で起死回生を狙ったが、それもダメで借金だけが増えた。

入館者は減り続け、10万人を下回り「もうこれまでだ」と思った。苦し紛れにサンゴを取り寄せて展示したところ、そこからクラゲが出てきた。これを展示したことが転機となった。
客が喜んでいる姿を見て、水槽を増やし、近海でもっとクラゲを獲って展示した。すると翌年、長い間下降線を辿っていた入館者数が2000人増加した。
それが堪らなく嬉しく、クラゲに特化していくことを決めた。クラゲ展示数は世界一となり有名になったものの、とても小さな水族館なので「本当にあの有名なクラゲの水族館ですか?」と確かめる人も少なくなかったが、「ボロボロだった水族館をここまで立て直した」という褒め言葉のように感じられた。

しかし、その後は客足が遠のいていった。
苦肉の策として「クラゲを食べる会」を開いたところ、それが大ヒット。クラゲ入りまんじゅうや羊かんはテレビでも取り上げられ、話題となり客も増えた。市民に借金をしようと売り出した「クラゲドリーム債」が募集開始からおよそ20分で完売したことも、ネットニュースやテレビ番組で大きく取り上げられた。
素晴らしいことをやっていても、宣伝が上手くいかなければ成果が上がらないという良い見本となった。さらに、クラゲの人気が高くなってきていたことも来館者の増加を後押しした。

クラゲは寿命が短いため、どの水族館も積極的に展示を行わなかった。
そこに加茂水族館が参入して上手くいったのは、倒産を免れるにはクラゲに頼る他なかったからだ。大切なのは現場の意見を大事にし、意思を尊重すること。
現場に自由を与えなければ、新しい芽は生まれてこない。本当に苦労したが、今では日本一元気の良い水族館と言われるようになった。

特別講演2
「医師会主導による地域包括ケアシステムの構築」

山形県医師会副会長 中目千之氏

中目千之氏

【概要】
私は現在、山形県医師会で活動しているが、20年以上鶴岡市で地域包括ケアシステムの構築に携わってきた。
今日はその一端をお話したい。

2010年から2040年までの年齢階級別人口推移は、0~64歳は約3000万人減少、65~74歳はほぼ横ばい、一方で75歳以上は約800万人増えると予測されている。少子高齢化を通り越して少子超高齢化ということになる。

地域包括ケアシステムとは、住まいが確保されていて医療・介護・福祉が切れ目なく提供され、住み慣れた地域で最期まで人生が送れるということ。
医療側から提供できるものとしては、かかりつけ医、在宅医療、多職種連携の3つがキーワードになる。つまり、治す医療から支える医療に変わってきている。

平成23~27年度の活動内容から、歯科医師会への働きかけについてご紹介したい。鶴岡地区医師会では多職種の調整役となる「地域医療連携室ほたる」というものを立ち上げた。
主治医や訪問看護師などが往診した際に、例えば患者の入れ歯の調子が良くないなどの連絡が地域医療連携室に入ると、その職員が鶴岡地区歯科医師会に連絡する。そうすると歯科医師会が近隣の歯科医師に往診の要請をしてくれるというシステムになっている。

自宅で療養していて歯科医院に通院できない人が増えており、これからは歯科医師も往診をしなければならない。訪問歯科診療を導入し、褥瘡ができるくらいの寝たきり状態でゼリー状のものしか口にしていなかった患者に、総入れ歯をつくってできるだけ家族と同じものを一緒に楽しく食べるように指導しただけで、自立歩行が可能になったという例もある。
今までの医療では考えられないが、現在、日本全国で同様の報告が多く上がっている。このような成功例を考慮して、在宅医療の患者には早期に訪問歯科診療を導入してADL向上につなげていくことが重要となる。

地域包括ケアシステムの構築は多職種で、最初は医師会主導で行い、後にその他の職種に任せていくことが重要。そこで情報共有が課題となる。鶴岡地区医師会では多職種連携のために「Net4U」というヘルスケアソーシャルネットワークを立ち上げた。
患者の周りの多職種の人たちがそれぞれ書き込むことで、リアルタイムで情報を共有することが可能となった。ケアマネジャーからは、各サービス事業者とすぐに情報交換ができ、早めに対応ができるようになった、主治医との連携が取りやすくなった、床ずれや薬剤情報が把握しやすい等の声があがった。かかりつけ医もケアマネジャーとの連携について、主治医が知らないたくさんの情報が得られる、在宅医療の新しいパートナーだという声もある。

鶴岡地区医師会の精神として、「社会システムとしての地域包括ケアシステムを構築する」という強い志を持っている。多職種が連携していくためには、他の職種の人たちのために医師が動くことが重要だと考えている。
地域包括ケアシステムの構築で、各地域の医師会の力量が問われている。

2日間に亘った本学会は多数の柔道整復師および学生の参加のもと、盛会のうちに幕を閉じた。

実技発表

  • 割り箸を用いた顎関節前方脱臼の整復法遠藤夏美(福島県)
  • 根治させるオスグッド病アプローチ柴田匡一郎(宮城県)
  • 冬期間における運動指導の有用性について高橋信裕(岩手県)
  • 歩行動作に対する効果的筋力向上トレーニング法安井巧(青森県)
  • 介護予防事業の機能訓練指導と効果(パワーアップライフ秋田)小枝英樹(秋田県)
  • 腰痛および下肢痛患者にDYMOCOインソール対応した一症例佐藤康悦(山形県)

研究発表

  • 身体症状の非対称分布と重ね合わせ的共存鴫原一信(福島県)
  • 疼痛が長期化する足関節後果骨折一症例における考察櫻本和夫(宮城県)
  • 筋・筋膜に対する近赤外線照射の有用性について小笠原哲夫(岩手県)
  • 足関節障害における有痛性三角骨の鑑別と考察鶴田直司(青森県)
  • 胸郭出口症候群診断の文献研究と診断アルゴリズムの提案丹学(山形県)

ポスター発表

  • 三角筋と棘上筋のフォーカスカップルと、腱板断裂との関係性学校法人滋慶文化学園 仙台医療専門学校
    柔道整復師科 小池達也・阿部蓮・鈴木康平・高橋諄己
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