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(公社)日本柔道整復師会第11回大阪学術大会開催!

トピック

平成29年8月20日(日)、シティプラザ大阪(大阪市)において、第11回大阪学術大会が開催された。

(公社)日本柔道整復師会第11回大阪学術大会開催!
工藤鉄男会長

(公社)日本柔道整復師会の工藤鉄男会長は〝日本柔道整復師会は業界のトップリーダーとして、会員に対し「地域包括ケアの中でどのように対応していくべきか」を全国11ブロックで行う学術大会で指導している。
国民に対し我々の医療を安心・安全に提供していくため、社会保障審議会の下に柔道整復師療養費検討専門委員会を立ち上げた。まずは制度改革として、保険を取り扱うには3年の実務経験を要することとした。柔整審査会の権限も強化し、問題のある請求に目を光らせていこうとしている。

また、柔道整復師養成校にはカリキュラム改正を申し入れた。養成人数も限られてくるし関係者からは反発もあるだろうが、現在の日本柔道整復師会執行部には業界を立て直す心構えができている。これから始まる地域包括ケア等において、柔道整復師が必要とされる状況を作るためだとご理解いただきたい。

モンゴルやベトナム等、医療環境が整備されていない国でも柔道整復は必要とされている。人口減少と超高齢化が進む日本においても、柔道整復は地域の皆様に幸せを与えられるものと信じている。しっかりと研鑽を積み、学んだ技術を地域の患者に提供することで地域の発展に役立とうという想いを持っていただきたい。

柔道整復を存続させていくために、日本柔道整復師会は皆さんと手を携えて歩んでいく。ここに集まっている皆さんにも地域貢献にご協力いただきたい。今日は互いの発表を参考に、明日の治療に役立てていただきたい〟と熱く激励した。

徳山健司会長

また、(公社)大阪府柔道整復師会の徳山健司会長は〝本日の大会開催にあたり、尽力いただいた方々には感謝申し上げる。前回の学術大会までは「学ぶ」ということをテーマに開催してきた。学ぶことは非常に重要で、継続していかなければ意味がない。
ただ、今大会からは学ぶということを少し掘り下げて考えていきたい。
7月に行われた北海道学術大会では特別講演を拝聴したが、基礎研究に重点を置いてエビデンスを十分に理解し、将来に向けて確固たるものとしていかないと柔道整復業界は存続の危機に立たされると感じた〟として、本大会で参加者が知識・技術を向上させることへの期待感を示した。

教育講演:
痛みの考えかた

三重大学大学院医学系研究科 麻酔集中治療学
教授 丸山一男 氏

丸山一男 氏

【概要】
痛みは、痛み担当の神経が活性化し、神経で電気信号が発生し、その電気信号が脳に達することで感じる。痛みを伝える神経は一本に見えるが、たくさんの太さが異なる神経線維が集まっている。中でも痛みを伝えるのはAδ線維とC線維である。
例えば指を扉に挟んでしまったとき、瞬間的に痛みが生じ、そのあとにまた痛みが起こったという経験はないだろうか。これにはAδ線維、C線維の伝達速度が関係している。

Aδ線維は秒速30メートル、C線維は秒速1メートルで痛みを伝達する。
瞬間的に痛みを感じるのはAδ線維によるもので、じわじわと痛くなるのはC線維経由の痛みだということだ。痛みが過剰であるとき、下降性抑制系というものがそれを抑えようとする。
不安や心配、ストレスなどがあると下降性抑制系の働きを抑制してしまうために逆に痛みが強くなってしまう。そのため患者を安心させることも大切だ。

痛みの電気信号は、刺激によりナトリウムチャネル(ナトリウムにより神経細胞に開いた穴)が開口し、ナトリウムが神経細胞内に流入することで伝達される。電気信号の発生・伝導・伝達をその過程のどこかで抑えることにより、痛みを抑えることができる。
方法としては薬などを用いて痛みの電気信号の発生を抑制する、下降性抑制系を強める、痛みの伝導・伝達を抑制する等がある。ストレッチや血流改善、鍼灸、さすりなども行って総合的に痛みを抑制することが重要となる。

人間は発痛物質と鎮痛物質の双方を自己産生している。
炎症が起きている際には血管が拡張しており、赤く腫れている、熱感がある、痛みがある等の症状が出るが、痛みが出ている際には発痛物質が出ている可能性がある。つまり炎症反応を抑えるということは、痛みを抑える手段であると言える。
血流低下も発痛物質の産生を高める。正座をしているとしびれて動かなくなると同時に痛くなるが、これは交感神経が緊張すると、血管が収縮して血流が悪くなり乳酸が出るためである。

痛いことを繰り返していると、最初は痛くなくても段々と痛くなってくる。これは記憶と同じで、刺激を覚えて電気信号が強くなるからだ。しっかり痛みを取るためにも、痛い時間を減らしていくことが大切だ。
痛み止めは対症療法というわけではなく、覚えた痛みを忘れさせるという治療でもある。痛みのメカニズムを知っておくことで患者と接するうえでも非常に役に立つのではないか。

特別講演:
アスリートにとっての痛みとスポーツ心理学的支援

大阪体育大学体育学部スポーツ教育学科 准教授 菅生貴之 氏

菅生貴之 氏

【概要】
メンタルトレーニングはものの見方や考え方にアプローチしていく方法で、目標を設定してモチベーションを高めたり、イメージのテクニックを学んだり、心の調整方法を考えるなど認知的なトレーニングを繰り返すことで、物事のポジティブな側面を見ることができるようになる。
しかし、実際にナショナルチームにスポーツメンタルトレーニングの有資格者がいるケースは稀で、心理面のケアもトレーナーが担っていることが多い。皆さんも施術をしているうちに患者の悩みを聞くということも現実として起こり得るだろう。クライエント(相談者)は人間関係や競技生活の悩み、将来への不安や葛藤等、何かしらの人生の危機に直面していると想像される。このような場合、どう対処すべきか。

カウンセリングの基本的要件として、クライエントを不利益、不幸な状態に陥れることは避けるということが最優先の事項として挙げられ、クライエントの自発的な問題解決志向が必要だ。
相談を受ける側は自分自身の満足感を得たいがために相談に乗る、人を助けることで優位に立とうとする「メサイア(救世主)コンプレックス」に突き動かされないよう注意しなければならない。
カウンセリングの際には、最後までクライエントの話に耳を傾けつつ、相談者、被相談者双方の心の動きに注意すること、スポーツの場面など悩みの対象がはっきりしている場合にはアドバイスも有効であるということ、相談以上の個人的付き合いを避けること、相談者の沈黙を、創造性を孕む時間として尊重すること、が大切となる。

アスリートの場合は、怪我などによる「身体の痛み」から練習ができず、競技に対する不安などでモチベーションが低下した結果「心の痛み」につながる。こちらが答えを提示するのではなく、悩みを理解しようと話をよく聞くことで、選手自身に「正解」に近いものを探し出させる態度が必要だ。
しかし配慮なしに聞きすぎると無意識下にあるものを引き出してしまい、むしろ混乱を深めてしまう恐れがあるので配慮しなければならない。
もし被相談者として手に負えないと感じたら、カウンセラーなどの専門職に引き渡す勇気を持つことも必要だ。

柔道整復師は援助職であり、特に身体的接触が多いことから心理的接触につながりやすいためカウンセリングマインドについて理解しておくことが大切となる。

全発表終了後、発表者に対する表彰が行われ、本学会は終了となった。

表彰

日整発表

  • 2017・柔道整復師と介護保険について
    ~柔道整復師の地域包括ケアシステムへの貢献~
    公益社団法人日本柔道整復師会保険部介護対策課

一般発表

  • 最新・最速の柔整実技(急性頚部障害の鑑別と治療法)寺内尚三(藤井寺市部/てらうち鍼灸整骨院)
  • 膝蓋骨横骨折の遷延治癒に対するアプローチ河井好照(西成支部/河井整骨院)
  • 腰部痛に対するトリガーポイント圧迫が前頭前野脳血行動態へ及ぼす影響児玉香菜絵、高本孝一、坪島功幸、小野武年、西条寿夫
    (富山大学大学院システム情動科学講座)
  • 閾値付近の遠隔振動刺激がヒトの触2点閾に及ぼす影響杉本恵理(大阪府柔道整復師会専門学校)
  • 耳への振動刺激による肩関節の可動域改善についての検証嶋田薫温(福島支部/福島しまだ整骨院)
  • スポーツ現場に多い肩脱臼の整復法(安全で痛みの少ない整復法)川合康博(住吉支部/川合整骨院)
  • Colle’s骨折に対する固定法のポイント樋口正宏(東淀川支部/ヒグチ整骨院)
  • 低コストで出来る膝関節の軽度屈曲位の固定松永泰栄(東大阪支部/松永栄整骨院)
  • ラット腓腹筋における伸張性収縮中および温熱・寒冷刺激時の血行動態および温度変化坪島功幸、阿部浩明、児玉香菜絵、高本孝一、小野武年、西条寿夫
    (富山大学大学院システム情動科学講座)
    浦川将(広島大学大学院医歯薬保健学研究科運動器機能医科学研究室)
    田口徹(新潟医療福祉大学リハビリテーション学部理学療法学科)
  • ハイドロバッグを用いた関節整復
    ―PVL(脳室周囲白質軟化症)患者の著効した1症例からの示唆―
    三雲大輔(みくも整骨院)
  • 動的安定を考えた鎖骨テーピングについて金田英貴(生野支部/金田整骨院)
    柳永善(吹田市部/みらい鍼灸整骨院)
    関寛樹(旭支部/旭区清水整骨院)

学生ポスター発表

  • 学生現場における熱中症対策の実態堤美沙、安田睦(大阪ハイテクノロジー専門学校柔道整復スポーツ学科)
  • ストレッチングと温熱・寒冷療法の併用による筋伸長の変化
    ~下腿三頭筋への処置による足関節の関節可動域の変化から~
    宇野智也、木田晧介、峰松大介、野村孟生(大阪府柔道整復師会専門学校)
  • バランス能力を向上させる方法
    ~キネシオテープと簡単な運動の効果と比較~
    出雲洋人(大阪行岡医療専門学校)
  • 下肢PNFが歩行と跳躍に及ぼす影響中西絢大、伊藤隆文、今藤岳、松岡怜央、峰松秀樹(大阪府柔道整復師会専門学校)
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