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上手・適正な保険請求の為のセミナー  開催される

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平成24年12月9日(日)13時より、柔道整復師センター(東京都中野区)において、「上手・適正な保険請求の為のセミナー」と題した勉強会が開催された。(主催:患者と柔整師の会、共催:中部柔整師協会・さくら接骨師会)

本セミナーは4つのテーマについて行われ、会場には150名以上の柔道整復師が詰めかけた。

1)レセプトの返戻防止対策
講師:社団JB日本接骨師会  専務常任理事・保険部長  諸星 眞一

諸星 眞一

冒頭、諸星氏は〝近年、新聞や雑誌等において柔道整復師の疑義請求や不正請求が取り沙汰され、さらに国会でも取り上げられたことは記憶に新しい。業界として今後このようなことを無くし、適正な柔道整復師の業を確保するためにも、柔道整復師一人ひとりが国民あるいは保険者に対し説明責任を果たすことが重要である〟と述べ、講演をスタートさせた。

諸星氏は、平成21年度の会計検査院の決算検査報告や行政刷新会議を踏まえて行なわれた、多部位請求の適正化、領収書・明細書の発行義務付け及び療養費支給申請書施術日記載の義務付け等の施術者側の適正化に続き、平成24年3月には療養費の医療費通知の実施の徹底や多部位、長期又は頻度が高い施術を受けた被保険者等への調査等、保険者の取組みや留意事項を示した文書が厚労省より各保険者宛に通知されたことで、保険者の対応も従来より厳しくなってきていると指摘。

返戻理由については〝資格喪失後の受診、記号番号・受給者番号違い、生年月日・住所・続柄の記入漏れ、割合誤り、負傷原因の記入漏れ・不備等が多く挙げられるが、ここ半年では「長期施術」「部位転がし」「協定・契約外傷病名」を原因とした返戻が急増している〟と述べ、対応策として、▽予診表を作成し、患者サインをもらう、▽レセプトや施術録には負傷原因を具体的に記入し、骨折の場合には摘要欄に「医師の同意年月日」「病院名」「担当医師名」を記載する、▽カルテに負傷の経過(変化の程度)について記載する、▽患者とのコミュニケーションを密に取っておく、▽保険者の調査に対し患者が申告した来院日数、負傷名と整合性が取れるように、来院簿、負傷名確認書、領収書を発行しておく、など説明した。

また、返戻後に再請求をしない柔道整復師が多いことについて、〝保険者の過剰な返戻に繋がる恐れもある。返戻された場合は、返戻されたレセプトと患者署名入りの予診表のコピー、施術録のコピー、必要に応じて患者の陳述書を添付して保険者に提示すること〟として、適正な請求ならば自信を持って再請求し、保険者に対しては患者の状況を具体的に分かりやすく伝えるよう心がけることが大事であると主張した。

2) レセプト作成のコツ、レセプト作成に当たっての取り組み
講師:中部柔整師協会  会長  竹田 潔

竹田氏

竹田氏は〝国民皆保険制度によって保険制度が充実し、それが現在の医療費の膨張につながっているが、一人ひとりの患者にとっては安価で良質な医療が受けられる制度となっている。だから我々は療養費を十分に理解し、守っていかなければならない〟と講演を開始。

療養費請求においてしばしば問題となるのがその支給対象であるが、竹田氏は〝急性または亜急性の外傷性の骨折および脱臼、打撲、捻挫であり、内科的疾患が含まれないもの。あるいは急性または亜急性の介達外力による筋・腱の断裂(いわゆる肉離れで、挫傷を伴う場合もある)が支給対象とされる〟とし、そのうえで〝急性・亜急性とは「時期」を示すものとして解釈している。受傷から1週間以内のものは急性と捉え、1週間以上空いたものに関してはその理由を摘要欄に記載すること。一方で、亜急性は1か月以内のものと捉えている。柔道整復師の施術対象は外傷性のものであるということが絶対条件であり、その外傷が単純にぶつけたり捻ったりしたものなのか、または繰り返し行う外力によるものなのかという点で、我々と保険者の認識が違う〟と日常における外力と負傷原因について、関連性を確立していく必要があるとした。

保険者の審査厳格化に伴い、返戻件数も増加してきていると言われているが〝大切なのは柔道整復師と患者が情報を共有すること〟として、患者に療養費取扱いや傷病名の考え方について理解してもらえるように情報発信するよう呼びかけた。

受領委任払い制度に関しては〝骨折、脱臼、打撲および捻挫が、柔道整復師の4傷として定義づけられたのは大正9年の按摩術営業取締規則一部改正であり、昭和45年4月には単独立法制定の経過をとっている。つまり我々の扱う傷病というのは法で守られているが、裏を返せば「これ以上は出来ない」と制限されていることになる。この部分を改正しなければ他の傷病を扱えるようにはならない。協定を結んだ昭和11年頃は労働産業中心であったが、現在は日常生活が変化している。現代における外傷性疾患を捉えていくべき〟と、施術者側あるいは保険者側の認識も時代に則して改めていくことが重要と語った。

3) 療養費の問題点とあり方
講師:神奈川県石油業健康保険組合  常務理事  廣部 正義

廣部氏

はじめに廣部氏は、療養費について〝健康保険法第87条によれば、療養費とは「保険者がやむを得ないと認めるときは、療養の給付等に代えて」支給することができるもの。つまり療養費の審査・支払いは保険者が行うこととなっている〟と説明。続けて〝保険者の立場からみると、医療機関または他の施術所での受傷日との矛盾、時間外加算の誤り、往療料の算定など、請求に数多くの問題点が見受けられる。平成21年度の会計検査院による監査結果報告を受けて、厚生労働省から各保険者に柔道整復療養費の適正化に関する通達が出されたことによって保険者はまた新たな対策を練っている。療養費等の知識がない故に審査を外部に委託する保険者も多くなるが、外部委託業者はレセプトとの突合ができないため「疑わしきは返戻」ということになる〟と現場の実情を語った。

さらに〝現行の柔道整復療養費支給基準は、慢性に限らず急性・亜急性であっても外傷性の負傷でない限り、保険適用外である。患者自身にも疼痛の原因又は負傷原因がはっきりしないものは、施術者にも外傷性によるものなのか内的要因によるものなのか判断できないのが普通であり、この場合は医師の診断を待つことになる。しかし施術者が外傷性であると確信すれば施術可能であり、保険適用となる。問題は、古傷(陳旧性)の再発、スポーツ障害の恒常化したものも柔道整復療養費の対象とする意義があるかどうかである〟と問題を提起した。

一方で、厚生労働省を含む保険者側の問題点についても言及し〝厚生労働省は曖昧な支給基準を改正してこず、時代の変化にも対応していない。健康保険組合も各組合間での審査基準のばらつきや施術者への支払いの遅延などの問題もあり、きちんとしたルールを策定しなければならない。解決するためには、統一した審査機関と支払機関、保険柔道整復師制度が必要ではないか。また施術者も保険者も、同じく患者を「お客様」としているのだから、もっと協力していくべき〟と行政・柔道整復師・患者・保険者がひとつになって、より良い方向性について議論していこうと訴えた。

4) 療養費審査基準の運用について
司会進行役:弁護士  本多 清二

パネリスト:
諸星眞一・河野示・荒井俊雅・矢萩裕・山田佳香・川辺二郎・濱本和明

パネリスト

司会進行役の本多氏は〝柔道整復療養費は現在、風前の灯と言っても過言ではない程、大変大きなバッシングを受けている。おそらく返戻の件数も増加傾向にあるのではないかと思う。敢えて今回のセミナーのタイトルに「上手・適正な」という言葉を使ったのは、請求の仕方が下手であるために保険者の誤解を招いているからである。今日はそれを理解し、実際に保険請求する中で直面している問題をどう考えればよいのか、あるいはどうすれば保険者の誤解を受けずに済むかという事を議論していきたい。そして新しい共通認識を持って療養費を請求する道筋を作っていきたい〟と話し、議論を進めた。

まず本多氏は〝現行の療養費審査基準は、骨折・脱臼・捻挫・打撲・挫傷のみ対象とすることを原則としているが、それら以外の負傷原因が明確でない症状についても柔道整復師が治療しているのが現状であり、その治療によって症状が緩和されるケースも多々見られる。しかし、治療することと療養費請求することは別問題である〟と問題を提起。荒井氏は〝患者本人が原因を認識していない類似症状は、もし療養費として請求するのならば患者と施術者が共通認識を持つという事が大切〟と語り、諸星氏は〝狭窄症などの退行性変化に関して、柔道整復師はある程度の治療ができると思われる。保険請求はできないかもしれないが、患者のプラスになるならば良いのではないか。全てとは言えないが、治ることも往々にしてあると述べた。

本多氏

さらに本多氏は〝類似症状の場合には、療養費請求するために何らかの傷病名を付けないと保険者から却下されてしまうから、無理に傷病名をつけている。もっと実態を明らかにして、こういう治療したんだから療養費を払ってほしいときちんと言えるようになれば、保険者も安心して支払う〟と主張した。これについて河野氏は〝以前、手術して人工関節をした患者が来院され、どのように治療すればいいのか、療養費請求はできるのかと困ったことがある。会や保険者に相談した結果、不全骨折の後療として治療することになった〟と具体的事例を挙げ、保険者にも事実を隠さず伝えれば解決方法が見つかることもあると、本多氏に賛同した。

また、柔道整復業界で用いられる「亜急性」の概念について意見を募ると、川辺氏は〝解釈の仕方がひとつではないと思われるが、例えば1ヵ月前に怪我をして後になって症状が出てきた場合は亜急性と捉えてほぼ間違いないのではないかと考える〟と述べた。その一方で、山田氏は〝亜急性とは、反復継続されることによって、本人ははっきり原因が自覚できないのにもかかわらず損傷が発生するもの。期間という意味ではない〟とし、荒井氏は〝明確にはわからないが、亜急性も保険者に言わせれば慢性ではないかと思われてしまう気もする〟と話し、亜急性の捉え方には柔道整復師内においても差があるように見受けられた。

次に計画治療について、矢萩氏が〝問診し、痛みが取れる時期やいつ頃までにどの程度回復するか、スポーツ選手なら復帰するまでにかかる期間のある程度の予測と、今後の治療計画等を説明している。それ以上時間が掛かったり、症状が変わらない場合は医師にアドバイスを頂いたり、他の医療機関を利用させてもらっている〟と自身が行っている方法を紹介。本多氏は〝診断書だけでは治療の計画性が見えない。専門家として治療する以上は治療計画を立てて、この位の期間で治療の効果を上げるということを保険者に示す必要がある〟として、保険者が判断しやすいよう具体的な情報を提供するよう呼びかけた。

これに関連して、〝計画も立てずに漫然と治療していたら治療期間や治療回数等は想定できない。例えば捻挫に対して治療期間はどれくらいに設定すべきか〟と本多氏が問いかけると、山田氏は〝一般的に靭帯損傷の場合は3ヶ月位かと思われる〟とし、濱本氏は〝腰部捻挫の場合、急性の場合は1週間から10日、亜急性の場合は3ヶ月から6ヶ月くらいはかかるだろう〟と回答した。治療回数に関しては、河野氏は〝腰痛の類似症状の場合では、月に10日見ておけば良いのではないか〟と目安を提示した。これらの返答を受けて、本多氏は〝最初は痛いから回数が多く、徐々に減っていくのが当然だ。それをずっと同じ回数施術していたら、本当に治療しているのかと保険者から疑われても仕方がない〟と、第三者にも治療内容がはっきり判るようにするために、きちんと治療実態に合わせた請求を行なうことが大切であると述べた。

加えて、近年の柔道整復療養費の適正化に端を発する患者照会については〝最近は患者照会が当たり前となっている。これには3つの理由が考えられる。1つ目は患者照会で返却をすると柔道整復師がほとんど再請求しないから。2つ目に、レセプトだけでは治療内容がわからないため、患者を通して治療内容を知りたいから。3つ目は、支給対象となる症状を患者にも啓蒙しなければならないから。これにどう対応していくかが非常に大切である。施術後、時間が経ってから患者本人に聞いても覚えておらず、どう書くべきかわからないから柔道整復師に相談に行く。すると保険者に患者と柔道整復師が共謀しているような悪いイメージを持たれてしまう〟として、患者・柔道整復師・保険者の三者間でのコミュニケーション不足を指摘。〝患者照会する際の照会文章のモデルを業界から保険者に提案して、本当に情報を取るための穏やかな手法に変えられれば、先生方と患者の間の信頼関係も今よりも強固なものになるのではないか〟とひとつの解決策を示した。

会場の参加者からも活発に質問や意見があがり、終了予定時刻を過ぎてもしばらくの間、熱い議論が交わされていた。

なお、同様のセミナーは今後、全国各地で開催される予定となっている。当面は来春に名古屋を予定しているようである。

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