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第2回『上手・適正な保険請求の為のセミナー』名古屋で開催

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平成25年3月31日(日)13時より、名古屋マリオットアソシアホテルにて第2回『上手・適正な保険請求の為のセミナー』が開催された。

第2回『上手・適正な保険請求の為のセミナー』名古屋で開催
今城康夫氏

主催団体である「患者と柔整師の会」代表今城康夫氏は、冒頭で〝昨年12月に東京で本セミナーを開催したところ大変好評で、第2回を名古屋で開催することとなりました。柔道整復療養費受領委任払い制度の維持・向上のために、柔道整復師の皆様には適切な柔整治療を行ない国や保険者の信頼を高めていただく必要があります。そのためにも本日は討論会で積極的に質問やご意見を出していただき、有益なセミナーにしていただければ幸いです〟と挨拶し、程無く第一部の講演が開始された。

第一部は『レセプトの返却防止対策』と題し、一般社団法人柔整真進会・小池保守会長による講演が行なわれた。

小池氏

小池氏は〝柔道整復師には、急性・亜急性の「骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷」の施術に対し保険請求を認められているが、患者が来院した場合、通常は肩や腰が痛いというように症状を訴える。例えば患者が「肩が凝っている」と訴えた場合、その原因が捻挫や挫傷の可能性も考えられる。柔道整復師は患者が訴える症状だけで判断(診断)をせずに、しっかり診てからどういう傷病なのか判断しなければならない〟と症状の原因を確かめ、その上で保険請求が適切か否かを判断する必要があるとした。

また、レセプトを作成する際の注意点として〝自分が保険者だったらそのレセプトを見てどう感じるかということを考慮すること。例えば保険証の資格喪失などの確認・入力ミスが多い場合、保険者は不審に思うだろう。毎月の保険証の確認は怠らず、確認したことをカルテに記載するなど、単純なミスをなくす。治療が長期に亘っている場合については、治療方針・方法を変える、定期的に傷病名の見直し・判断・評価を行なう、内科的疾患の可能性を疑って医療機関との連携を図る等、治療計画をしっかり立て、患者の同意を得られるようその都度説明をすべきである。つまり、レセプトの返戻を防止するためには、読み手である保険者が疑問を持たないように詳細な状況記載を心がけることが大切である〟と述べ、柔道整復師一人ひとりが普段から診断と請求、施術録への記載、患者への指導を適正に行い、保険者から信頼される施術をする重要性を強調した。

第二部では、象印マホービン健康保険組合・戸田省吾顧問が『療養費の問題点とあり方』と題し、講演を行なった。

戸田氏

戸田氏は〝昭和初期から、療養費の取扱いは変わることなく現在に至っている。運用の方法は政府の政策により段々と変化し受領委任払いが認められるようになったが、健康保険組合の立場では療養費の取扱いというだけで深く掘り下げて調査をすることは殆どなかった。柔道整復師の不正が多いのも問題だが、保険者が調査をしてこなかったことにも問題がある。平成20年に朝日新聞でスクープされた柔道整復業界の一部の不正は保険者にとっても衝撃的な出来事であり、それ以降、保険者による審査も強化された。平成24年3月には、厚生労働省から保険者に対し、適正化への取り組みとして指針も示された〟と、患者照会をはじめとする保険者による調査が近年厳しさを増していることの背景を解説。さらに「患者と柔整師の会」による保険者へのアンケート結果を示し、〝保険者が指摘する療養費受領委任払い制度の問題点として支給基準が曖昧である、個人請求者の増加により事務的な煩雑さが増した等の意見が多く挙げられた。審査をする上では算定基準を正しく理解する必要もあり、保険適用かどうかの判断もしなければならない。患者照会に対する回答にも不備が多く、健康保険組合が審査するのは大変な手間がかかる〟と、実際に審査業務に携わってきた経験も踏まえて語り、〝保険者、柔道整復師、患者が三者一体となって問題解決に取り組まなければ改善は難しい〟と主張した。

様々なアンケート結果から読み取れる保険者の本音が伝えられ、業界として改善していくべき課題を再認識させられる内容であった。

第三部では司会進行役に本多清二弁護士を、パネリストに柔道整復師である早津泰治氏、諸星眞一氏、福岡悟氏の3名を迎え、『療養費の審査基準の運用について』をテーマに議論が交わされた。

『療養費の審査基準の運用について』
本多氏

本多氏は〝柔道整復療養費の取扱いは年々厳しくなっている。支給基準があまりにも曖昧で、保険者の扱いにも統一性がない。柔道整復師と患者との信頼関係をどう構築すればいいのか。保険者にも理解してもらえるような基準を作り、保険者との信頼関係も強化していきたい〟として、ディスカッションがスタートした。

外傷の定義について

まず本多氏は〝現在運用されている基準は、骨折・脱臼・捻挫・打撲・挫傷の5つの傷病名によって審査が行なわれているが、現実と乖離しているように感じられる。そこで私どもの提案する新基準では、負傷原因が明らかに外傷によるものであると問診・診療等で特定できる骨折・脱臼・捻挫・打撲及び挫傷、ならびにその特定ができない捻挫・打撲・挫傷に類似するものに加え、同程度の筋・関節・腱等運動器系の痛みや運動制限に対する施術も、療養費支払い対象に取り込もうと考えている〟と「柔道整復師施術料療養費請求・受領委任払制度の改善実現の為の方策案」(第三次案)を提案するに至った経緯と目的を述べ、「外傷」とはどのようなものを指すと認識しているかを参加者に尋ねた。

早津氏は〝外からの色々な形での外力によって生じた疾患〟と回答し、福岡氏は〝負傷した部位が何処であれ何かをきっかけでそこに負荷がかかった状態〟であるとし、続けて諸星氏は〝物理的な力が加わって起きるもの〟と表現した。

会場からは、例えば転んで靭帯を痛めるというような瞬間的・急性的なものだけではなく、背負い投げを200回も300回もかけて反復して負荷がかかったことによる疾患も外傷とする、という意見も挙がった。

本多氏は〝外傷は怪我や転んだという負傷原因が明白な場合だという事を、まずはきちんと認識しておかなければいけない〟と前提を示した。

計画治療について

しかしながら、問診や触診を行なっても負傷原因がわからないが痛みや運動制限があるという場合について、〝捻挫とは言えないものを捻挫と言ったり、挫傷で請求できない時は打撲と言ったり、請求するために症病を考えている〟と現状の請求方法の問題を指摘。その上で解決策として〝傷病名を付けられるものは正確に傷病名を付ける。付けられないものには請求するために無理やり傷病名を付けるのではなく、症状の部位と程度、状況をきちんと書いてはどうか〟と提案し、これに対しては〝正直にレセプトに書いて保険者に分かってもらえるなら〟と賛同する参加者が多数見受けられた。

しかし本多氏から〝原因がはっきり掴みにくい中で漫然と治療しているのではないか。新しい審査基準では、漫然治療から計画治療へと訴えている。数回来院したらその患者の症状や生活実態などを把握して、どの治療をどのくらいの頻度で何回行なって目的を達成する、というような治療計画を立てて保険者に提出してもらいたい〟と重ねて提案がされると、参加者は趣旨については理解を示すものの〝金額的・時間的な余裕がない〟や〝患者の年齢や症状・状態等によって治癒期間には差が出てくるはずだが、計画書を作成するとなると捻挫はこの位の期間で治るという統計のようなものが出てしまうのではないか〟などの意見を挙げ、計画治療の手法にはまだ議論の余地があることを示唆した。

患者照会について

本多氏の提案する治療計画書の作成には、保険者に提供する審査情報の充実化という狙いも含まれているが、これに関連して本多氏は患者照会についての意見を会場から募った。

保険者から被保険者に対して配布される「接骨院の正しいかかり方」というパンフレットについては、〝如何にも接骨院にかかってはだめだということが書かれていることが多いと感じる〟や〝柔道整復師の顔が描かれているが、柔道整復にかかるのが嫌になるような如何にも悪人という感じになっている。これはやめてほしい〟などと切実な思いが訴えられた。なかには、通院日数が1日で施術部位も1ヶ所という患者にまで照会があったと困惑する参加者もいた。

現場の声を聞き、本多氏は〝患者照会は法的な根拠があり、してはいけないという事ではない。これは保険者の権限でもあり責任でもある。問題は照会時の表現上のエチケットと、基準が曖昧で被保険者自身が照会にどのように回答すればいいかわからないという事だ。この点を改善していきたい〟と述べた。

最後に本多氏は〝今までのような基準では現実に合っていない。基準を明確化して徹底すれば保険者も納得できると思う。そういった意味でこの療養費審査基準を公開し、わかりやすく具体的なものを作りたい。まだまだ研究しなければいけない事もあるが、保険者の方にもできるだけ了解をいただき、実施していきたいと考えている〟と制度改革実現に向けた意気込みを語り、約2時間に及ぶ討論会を締めくくった。

尚、「患者と柔整師の会」の柔道整復師療養費改革活動は今年6月6日(木)に予定されている総括会議に向け、いよいよ議論も大詰めとなってきている。残された課題は果たしてどこまで解消されるのか。柔道整復師・保険者・患者のどの立場においても納得のできる内容になることを期待したい。

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