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患者と柔整師の会が『柔道整復師施術療養費請求・受領委任払制度運用改善方策(案)』を発表

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平成25年6月6日(木)14時より、患者と柔整師の会が主催する『登録柔道整復師制度実現の為の総括会議』が中野サンプラザ13Fコスモルーム(東京都中野区)にて開催され、患者47名、保険者55名、柔道整復師21名の他、業界団体やマスコミ等を含む165名の参加者が一堂に会した。

患者と柔整師の会が『柔道整復師施術療養費請求・受領委任払制度運用改善方策(案)』を発表

この総括会議は2部に分かれており、前半は総括会議開催の趣旨説明と『柔道整復師施術療養費請求・受領委任払制度運用改善方策(案)』(以下、方策案)の解説、後半は方策案を基にした参加者によるディスカッションという形式で進行がなされた。

今城康夫患者代表

冒頭、壇上に登った患者と柔整師の会・今城康夫患者代表は〝多くの方は柔整療養費制度に問題があり、改革が必要だと認めているが、誰も行動を起こすには至っていない。本日、私達は現実的な方策案として、療養費受領委任払制度の改革試案のひとつである登録柔道整復師制度について発表・提案し、今年度末頃には実施したいと計画している。本制度は柔整療養費の信頼を高めるもので、保険者の審査合理化にもつながっている。是非とも保険者、柔整師の皆さんの協力をお願いしたい〟と挨拶。

萩原啓二柔道整復師代表

続けて萩原啓二柔道整復師代表からは〝患者さんをないがしろにするような議論や制度、また保険者と対立するような制度では、私達柔道整復師の未来はない。改革・改善の方策案を実現させるためには、まず私達が具体化し運用することで、団体個人を問わず他の心ある柔整師もこの趣旨に賛同してくれるものと思っている。この後のディスカッションでは時間の許す限り活発な議論、質問等をしていただきたい〟と方策案実現の為、保険者からのさらなる意見を求めた。

事務局・八島義忠氏

その後、事務局・八島義忠氏より〝保険者を訪問し、基本試案、第二次試案、第三次案を説明すると、多くの保険者から『いい案だね。でもできるの?』という言葉が返ってくる。保険者は『吹いている風には乗りますよ』という言葉が非常に多かった。しかし風は待っていてもとても吹きそうにない。そこで私達は、風を吹かせるには自らがこの案を具体化することが良いのではないかと考え、この度、方策案を発表し、そして年内にも実施に踏み込もうとしている。そこでこの方策案を始める前に、多くの保険者に私共の案を熟知していただきたいと思い、本日総括会議と称し、ここにこの具体案を発表させていただくこととなった〟と今回の総括会議開催趣旨を説明。また八島氏は、方策案実現のキャッチフレーズとして「現実的な・合理的療養支払基準で、施術力を保持・推進しましょう!」を掲げ、当面このキャッチで我々は動いて行きたいと思うと力強く語った。その後会議は来賓紹介、方策案の解説へと移った。

方策案では、【療養費対象施術の明確化―施術力の向上】、【保険者審査機能の充実・適正】、【療養費請求・支払業務の合理化・簡素化・リスク回避等】を『合理化のための枠組み』と位置付け、「柔整療養審査・支払機構の設置」、「請求・支払の審査方法」、「加入登録契約等」が詳細に記されている。(※方策案の詳細はこちら

本多清二弁護士

休憩を挟んで会議は後半のディスカッションへと移行。JB日本接骨師会最高顧問・本多清二弁護士を進行役に、方策案について保険者を中心とした参加者と活発な議論が交わされた。

療養費受領委任払い制度について

受領委任払い制度について、保険者からは〝受領委任払いがない方が良いと考える保険者は結構あると思う。ただ実際に掛かられる患者の事を考えると本当に無くして良いのかという疑問は持っている〟〝柔道整復師側は現在、どのくらい正しい運用をされていないと認識をしているか、またこの方策案によってどの程度正常化されるのかが問題〟と、複雑な思いが語られた。

本多氏は〝昭和11年に発せられた通達で捉えるのであれば、それに適った請求をしている柔道整復師は極めて少ない〟と認めながら、昭和11年当時から現在までに負傷が起こる背景なども変化してきていることから〝今の柔道整復業界の中で、新鮮な外傷だけ診られれば十分だという意見はおそらくない。この運動によって、少なくとも新鮮な外傷あるいはそれに類するような外傷を診られない柔道整復師、要するに慰安行為を類似の治療と称して請求している人たちは、この業界から去っていくだろう〟と期待を込めた。

審査・支払いについて

審査に関しては、〝償還払いにしたいという保険者もあるが、本当にそんなことが出来るのか、受診抑制になってしまうのではと考えてしまう。今回の方策案で、ある程度基準を持って保険者にはできない内容を審査して頂けるということは非常に助かる〟〝少なくともあいまいな現在の施術範囲をきちんと見直さなくてはならない。柔整業界は勿論、保険者も全体の組織として統一した方向性を持って行動しないと問題解決にはつながらない〟と改革の趣旨に賛同する保険者が多く見受けられた。

本多氏は〝A4のレセプト1枚の情報では実際にどういう治療がなされてどれだけ効果があったのかはわからない。すると治療ではなく、請求書をいかに上手く書くかを重要視するようになる〟と述べ、審査情報の充実化を図ることで、不適切な請求を抑制することが出来るとした。

患者照会

患者照会について、本多氏はその方法によっては柔道整復師と患者の信頼関係を損ねることにもなりかねない、また回答方法が難しいものもあり、結果として不回答や柔道整復師に相談するケースが多くなっており照会方法を見直す必要があると指摘。

対する保険者は〝照会を外部委託するところが増え、照会内容を理解している保険者とそうではない保険者があると思う。しかし照会は行政の指導に基づいて行なっていると、柔道整復師にも受け止めていただきたい〟〝負傷原因がはっきりせず被保険者に問い合わせても、その痛みが外傷なのかどこから来ているのかわからない場合もある。改善するためにも基準を統一すべきではないか〟などと主張した。

部位変更について

次に、一定期間ごとに施術部位を変更していく「部位変更」については、保険者からは〝被保険者本人に確認しているが、上手い具合にここがおかしくなった、怪我したと理由をつけられ、最後は本人が言うなら仕方ないということになってしまう〟と、柔道整復師と患者が結託して不正をしているような印象を受けるという意見や〝部位変更が毎月あり、はっきり言って部位も原因も嘘だろうと思っている。被保険者側にもどういう原因で受診するかという認識をもう少し持っていただきたい〟〝部位変更には基本的に反対だが事前に患者に対して明細書を提示し、どのような形で請求しているのかを説明するならば5部位施術していてもいいと思う。そうすれば患者と柔道整復師の信頼関係も出来るし、保険者もその明細書を見た時にそれだけ診ているとわかって信頼関係が出来るのではないか。レセプトに近い形の請求明細だと保険者も理解しやすい〟というように、患者に対しても自分の負傷やその原因、また請求内容を理解しておいてほしいという要望も上がった。

これらの意見を受けて、本多氏は〝方策案では治療が正当であることを前提として、施術を行なった部位を隠さずに最初から全部出すことを提案している。例えば5部位治療しているが請求しているのは2部位だけで、そのうち1部位の治療が終わったから、次は施術していたが請求はしていなかった分を請求する、というように施術部位と請求部位を分けて考える。申請書でも明細書でも、行なっていることは全てオープンにした方が支払い側は見やすい。患者に内容を分からせるには、明細書をその都度その都度だして、今日はこんな治療をしたということを示すのが一番良い〟と述べた。同様に、領収証発行についても〝請求されたから発行するのではなく、義務として当然発行しなければならない。どうしてもまとめて領収書を発行してほしいという場合にはきちんと内訳を書き、いつ行ったかというのが明確に分かるようにするよう指導している〟と、方策案には施術および請求の透明性を向上させる狙いがあることを示した。

白紙委任について

さらに、以前より問題視されている白紙委任の問題については、〝医科の場合は医者に請求権があるが、柔道整復師の場合は患者に請求権があり患者が委任して請求している。原点を見直さない限り解決しない〟〝被保険者に聞いても委任したという認識はなく、不正があった場合その被保険者が不正請求をして、受け取りを柔道整復師に委任したということになるが説明しても分かってもらえない〟などの保険者の意見からも、請求は患者が『委任』して行なっているという制度の根本を、患者があまり理解していないことがうかがえた。

一方で、本多氏は〝患者が治療途中で来なくなった場合、柔道整復師は請求できなくなってしまう。だからリスクを回避するために予め委任欄に署名をいただいている〟と柔道整復師の現場での厳しい立場について、保険者の理解を求めた。加えて〝請求者が誰かということが重要。登録制度を敷くことによってこの柔道整復師はどういった経営者に雇われているのかを知ることが出来る。請求に何らかの影響を与えていたとしても、経営者は表には出てこない。それを断ち切るためにも登録制度を敷かなければならない。精神的に不正請求をしにくくするという間接的な規制を加えていく〟と、改めて登録制度を設置する意義を熱く語った。

最後に本多氏は、方策案の具体的実現に向けて、JB日本接骨師会が運営している接骨院にて試験的に運用を開始すると明かした。方策案では、痛みの原因や症状等を詳細に記載すれば無理に傷病名をつける必要はないとしているため、運用に際して〝傷病名がはっきりしない申請書が皆さんの手元に届くことがあるかもしれないが、保険者の方々のご理解を仰ぎながら実施・指導していきたい〟と関係者の協力を仰ぎ、終了した。

JB日本接骨師会は、平成25年11月より柔道整復療養費の請求・審査・支払(代理受領)システムを実施する予定としており、ついに実現へと踏み切る形となった『患者と柔整師の会』による方策案。保険者がどれだけ協力的な姿勢を取るのかが鍵となるだろう。運用を開始して初めて直面する問題もあるかもしれないが、この枠組みが柔道整復業界全体に普及していくことを期待したい。

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