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日本赤十字社・大塚義治副社長に聞く!

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世界各国で起こっている地域紛争、そして大規模な自然災害はとどまることを知らず、赤十字の〝苦しむ者に手を差し伸べる〟という偉大なる使命に基づいた活動は今後ますます期待が高まるところである。

日本赤十字社副社長・大塚義治氏は、2013年3月に行われた(公社)日本柔道整復師会設立60周年記念式典で「赤十字概観、社会保障雑感」と題し、特別講演をされた。

その大塚副社長に持続可能な社会保障制度と2011年に起こった東日本大震災時における救護活動、義捐金の使われ方、今後のことなど多くを話していただいた。

『赤十字の尊い使命を守り、多くの人々が健康で幸福な社会を持続できるよう今後も努力していきます』

大塚  義治   氏

『日本赤十字社』
副社長  
大塚  義治   氏

―大塚福社長は厚労省の事務次官をされた方ですが、日本の社会保障制度についてお考えをお聞かせください。

日本の社会保障制度には、医療・年金・介護、その他沢山の制度がありますが、今日では非常に大きな規模になり、総額で約110兆円という国の予算よりも大きい金額が給付される程になりました。それだけ国民の生活にいきわたった密着した制度であり、人々の暮らしになくてはならない大事な制度になっています。国民皆保険、或いは国民皆年金という言葉がありますが、これらの制度が創設されたのは昭和36年ですから、約50年になります。その半世紀の間に急激なスピードで人々の生活の中に定着してきた。そういった国民にとって大事な社会保障制度を、なんとしても守ってより良いものにしていかなければならないと思います。

一方、少子高齢化といわれるような様々な社会変動、大きな変動があります。そうした中で社会の変化に合わせて見直し、上手く適応させていく努力を続けなければなりません。そういう意味では課題も沢山ありますし、知恵を絞って上手くメンテナンスをしていくことが重要です。

国民の共有財産であるこの社会保障制度には大勢の方が関係しますから、ある意味で利害調整という難しさも伴います。ただし、今の社会保障制度の大切さ、必要性、重要性を否定する人はいません。従って、その時代に合った社会保障制度の仕組みを考え、必要な見直しをしていくことになると思います。改革は当然必要ですけれども、根本は国民の合意ですので、その合意形成を粘り強く図っていくということが最も重要なことではないでしょうか。

―関連して、日本の医療制度は、世界から高く評価されていますが、現在進行中のTPPの中で、問題とされていることはどのような懸念でしょうか。日本の医療制度についてお考えがありましたらお聞きかせ下さい。

医療制度というのは国によってヴァリエーションがある制度だと思います。つまり、夫々のお国ぶりに合った制度を夫々作っている訳ですが、そういった世界の国々と比較しても、トータルで見ると日本の医療制度は、少なくとも今日までは、大変上手く機能してきたと思います。最近、「救急患者の盥回し」であるとか、「医師不足、看護師不足」といった問題が社会的な関心を呼びました。それでも全体としてみれば、世界から高い評価を得ている制度だろうと思います。

国民皆保険の理念は、みんなが参加し、みんなが支えるという考え方が基本になっています。国民の高い関心或いは監視の下に時代に応じた医療制度が育まれて来たと思いますが、今後の最大の問題は如何に少子高齢化に対応していくかでしょう。たいへん難しい課題ではありますが、これまで社会保障制度を作ってきた国民の知恵で、なんとか乗り切っていけるだろうと思っています。

TPPについては、未だ具体的な議論が始まっておりませんし、各国からどういった提案が出されてくるのかハッキリしていない段階ですので、お答えすることは率直にいって難しい。日本医師会をはじめとする医療関係団体は、国民皆保険制度を崩す切っ掛けにならないかということで強い懸念を示しておられますが、私自身は、先ほど述べたように、国によって医療制度というのはかなり異なりますから、医療制度そのものをこうしろああしろという議論にはならないと考えています。関係国の主要メンバーもそういうことは考えていないと表明されていますし、実際そうだろうと思います。つまり、制度の骨格や枠組みを変えろといった議論にはならない。

しかし、どんな意見が出てくるかはもちろん分りません。考えられるとすれば、より効率的な制度を目指すという視点から、民間企業等の活力を十分に発揮できるような、もしそれについて阻害するような要因が我が国の医療制度にあるならば、それを緩和、若しくは取り払っていくべきだというような議論が出てくるかもしれません。例えば、医薬品や医療機器、あるいは薬価に関連する問題ですね。これから先、全く影響は無いなんて言うのは些か無責任だと思います。日本の良いところは守るという姿勢は堅持しなければならないでしょう。

もうひとつ、混合診療についても議論が出そうだと言われていますね。この議論が非常に分り難くなってしまっているような気がするのですが、健康保険と、本人が費用を負担する医療サービス、その両方の良い面を取り入れる枠組みが既に出来ているというのが私の考えです。難しい用語ですが「保険外併用療養費制度」と呼ばれている制度です。その枠組みを上手く活用すれば、そんなに大上段の議論をしなくても現実的な答えが出せるテーマであると思います。一番身近な例では、所謂差額ベッドといわれる室料の負担とか、高度先進医療のような特定の方に必要な医療については既に枠組みができていますから、それを如何に運用するかという問題であると考えています。最近は正確な議論も少しずつされるようになってきているとも感じますが、保険と自費負担との秩序ある併用は十分可能でしょうし、キチンとした議論が行われれば、具体的な解決ができる問題だと思います。

―日本赤十字社の社会的使命を教えてください。

日本赤十字社の職員が常に携帯しているカードがあります。そのカードには〝わたしたちは、苦しんでいる人を救いたいという思いを結集し、いかなる状況下でも、人間のいのちと健康、尊厳を守ります〟というMission statementが記されているんです。

ご承知のように赤十字の起源は、スイス人のアンリー・デュナンが提唱してスタートした運動です。戦争で傷ついた兵士は、もう戦う人間ではない。敵であろうが味方であろうが救おうということで始まったという歴史的な経緯があります。特に国際赤十字・赤新月社連盟では、戦いで傷ついた人々と同じように、災害その他の大きな事故等で傷ついた人、救いを求める人に手を差し伸べるということを大きな使命にしています。つまり災害救護活動ですが、国内、国外を問わず日赤の重要な事業の1つです。もとより、それだけに限らず、日赤病院も日本全国各地にございますし、献血していただいた血液を製剤にし、輸血を必要とする患者さんにお届けする血液事業、また福祉事業も行っておりますので大変幅広いんですが、苦しんでいる人に手を差し伸べるということが社会的使命であるという基本に立って、様々な事業を展開しています。

―後の質問にも出てきますが、東日本大震災が起きて日赤はどのような救護活動をされたのでしょうか?

全国各地の日赤職員が、〝こういう時に赤十字が頑張らなくてどうする〟という使命感を持って活動してくれました。勿論、日赤だけではありません。多くの様々な団体が活躍されました。阪神淡路大震災を1つの教訓にして、あの災害で学んだこと、或いは反省したことを材料にいろいろ考え準備していましたが、それが大いに役立ったと思います。阪神淡路の時にも、日赤の医療チームが随分出動しましたが、今回の東日本大震災における初動のスピードは阪神淡路の場合と全く違いました。阪神淡路の時はその日の内に動き出した救護班は数チームだと思いますが、東日本大震災ではその日の内に出発した医療チームが55チームに昇ります。これも前回の経験から学んだことが生きたのではないでしょうか。もちろん災害の種類が違ったということもあります。阪神淡路の時は地震による建物の崩壊、それによる被害と火災。東日本大震災は最大級の地震と津波の影響で被害が広範囲に及んだことが最大の特徴であり、その内容が随分違いますので、我々はまた新しい課題に直面したと言えます。緊急医療・緊急救護は、48時間が大事だ、72時間が大事だとよく言われますように、本当に1分1秒を争うとされる時期は、最初の数日間です。しかし、特に今回はそれだけでは済まなかった。少しずつ復興してきた地域の医療機関にバトンタッチをしながら、日赤の医療活動は結局、約半年に及びました。その後も、メンタルな問題や復興過程における医療の再建に対してのお手伝いは継続して行っております。

―先日の日本柔道整復師会60周年記念式典で大塚副社長は記念講演をされ、2年前におきた東日本大震災で日赤救護班等の初動や医師ら1万5千人が被災地入りし、また医療救護班の派遣状況と柔整師による救護活動の記録も報告されました。柔整は阪神淡路大震災時にも何も医療機器をもたずして医療活動ができるとして高い評価を受け、東日本大震災でも被災地の多くの方々から喜ばれたと聞いております。多発する災害、南海トラフなども予測される中、柔道整復師の果たす役割は今後ますます高まると思われます。柔整団体と各県で災害協定を締結されるところも増えておりますが、日赤が柔整を医療チームに正式に参加させていただくようなことは可能でしょうか。

夫々の地域の事情もあるでしょうから、一律に形を決めるよりも、夫々の地域でご相談いただくことだろうと思います。日赤病院では、常日頃から各病院に医師と看護師と薬剤師と事務スタッフ等による救護班を配置、準備しており、二百数十チームが常備されています。何かあればその医療チームが動くという仕組みになっています。従って、そのメンバーになるという形より、他のチームなり団体なりとのコラボレーションという形で協力し合うパターンのほうが現実的な気がしますがどうでしょうか。どういう形で協力すると一番効率的な救護活動を行えるかということについて考えたほうが良いのではないでしょうかね。今回の災害での柔道整復師さん達の救護活動に対して評価が高まっているのですから、今後も実際の活動を通じて、被災地域の方々に支持、評価される活動を積み重ねていけば、様々な可能性が出てくるように思います。その場合も、いろんな形で常日ごろ関係者間でご相談しておくことが大事です。柔整師会独自の活動もあるでしょうから、医療チームと柔整師チームが上手く協働できる枠組みが見つけ出せればいいですね。

―やはり講演で、東日本大震災の義捐金について、手数料等は一切いただいていないが、風評被害にあっていることも言われました。私も日本赤十字社ならばと少額ですが、寄付させていただいた一人です。知人が先月2年後の被災地を訪ねて義捐金をまだもらっていない人と出会ったとお聞きしました。義捐金の使われ方について今一度教えていただけますか?

まず、義捐金から手数料とか事務費のようなものはビタ一文いただいておりません。どうして、そんなことが言われたのか、今でも不思議でなりません。

直近の数字を申し上げますと、3300億円近くの義捐金をいただいております。しかし、それは日赤が配っている訳ではありません。大きな災害の時には、各都道府県に義捐金配分委員会という組織が出来ます。日赤の支部も関係者として入っておりますが、その委員会で、具体的な配分について、どなたに配分するか、いくら配分するか等を決めていく仕組みになっています。従って、日赤としてはお預かりしたお金をそちらにお送りするということが役割であり、今回の災害では、福島・宮城・岩手、さらに東京都・茨城・千葉などを含め15の都県にお送りしています。ということで非常に広域なんです。実際問題として住民の方をキチッと把握されているのは市町村ですので、その都道府県配分委員会から市町村を通じて被災者のお手元に届けられることになっています。

既に3300億の内の98%は少なくとも被災地に届けられております。〝2年経ってまだ貰っていません〟という方がおられるのはどういうケースか分りませんが、考えられる理由の1つは、義捐金は被災者全員にいく訳ではないんですね。原則的には、「亡くなられた方」、「家を失ってしまった方」、「家が半壊した方」、福島でいうと「原発事故で避難区域になって、他に移らざるを得なかった方」、そういった方々が対象ですから、被災者であっても、現金という形で差し上げる対象にならなかった人もいらっしゃいます。あるいは、支給の対象なんだけれども、何らかの事情でその手続きがとれなかったということがあったのかも知れませんね。

本当に気の毒な、家族も家も何もかも失なった方から、それほど深刻な被害には至らなかった方まで、被災された方の中でかなり差があるため、どういう風に義捐金を配分するかというのは非常に難しい問題です。例えば、少額であっても、まず被災者に一律に配分するのがいいのではないかといった議論もありますが、これはこれで異論もあり、もっときめ細かい知恵があるのではないだろうかという気もしております。

義捐金に絡んで日赤がご批判を受けたのは、スピード、つまり被災者の手元にお金が届くのが遅いということでした。〝少しでも早くお届けしたい〟という気持ちは全く私達も同じですが、いかんせん今回の大震災では市町村も甚大な被害を受けてしまった。市町村以外に住民の方々全体を把握しているというところは何所にも無いのです。その市町村の多くがやられてしまった。また、市町村にとっても、被災後にまずやるべきことは、今直ぐに医療を必要とする人、住いを必要とする人、食料を必要とする人、そういう人達に具体的な対応をするのが最優先だと思います。食料だけは何とか凌ぐ、水も何とか手配する、最小限の生活物資をお届けする、それらがまず先ですが、その中で義捐金も配分しなければならない。そうした現場では、実際問題として、そうそう簡単な作業ではなかったと思います。もちろん、それで良いとは決して思いません。何かうまい知恵はないだろうかということは常に考えなければなりません。我々も反省するところもあります。

今後こういう大災害が起きては困りますが、起きないという保証はありません。阪神淡路で学び、東日本でも学んだことが多々ありますので、一旦総括をしようということで、今年の3月末にこれまでの経緯を私どもなりに総括して、報告書に纏めました。災害が発生してから議論している暇はありませんので、大体こういうことにしようということを予め決めておくことが重要なのではないでしょうか。地方自治体や関係者の意見もあるでしょうから、日赤だけで決められる訳ではありませんが、我々としては一応のマニュアルを整備しておくこととしています。

また、今回の震災で生命保険や損害保険の会社が非常に速く保険金を支払ったと聞いています。全国から職員を動員して被災地に少しでも早くお渡ししようとされた。例えばそういった保険会社等と何か協力できないものだろうかと考えたりもするのですが。

今回の災害では、世界各国の人々からもたいへん大きな支援金が寄せられました。日赤ではこの海外から頂いた資金を使って、例えば着のみ着のまま逃げてきたために日常生活に必要な物が何も無いまま仮設住宅などに入居されている方々に、家電6点セット(冷蔵庫・洗濯機など必需品)をお送りする事業を行ったり、被災地の子ども達を対象として、北海道でサマーキャンプを開いたり、いろんな事業活動を展開しています。

―柔道整復師向けの雑誌ですので、柔道整復に関連した内容もお聞かせください。柔道整復の業務、あるいはその内容を医学的に理解することは、ある意味では難しいことのように感じます。しかし柔道整復は、日本で歴史的にみて十分貢献してきたこと。通院する患者さんは身をもって効果を感じているからこそ柔道整復は、高度診断機器、薬物を用いることなく医療先進国、日本で尚存在し続けています。こうした国民のニーズが存在している現実があります。一方で、現在、標準化されていないなど、いくつかの問題もあります。大塚副社長から見て、柔道整復の問題点はどこだと思われますか。

昨年、厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会に、初めて柔道整復療養費専門委員会が設置されたそうですね。オープンな場で議論することは良いことだと思います。キチッと議論されることは、長い目で見れば、必ずプラスになるはずです。柔道整復師に対する一般の方のイメージは、伝統医療といわれるぐらいですから、古いというイメージがあるかもしれませんね。元々西洋医学とは成り立ち、基盤が異なるので、同じように考えられるかどうかは別ですが、西洋医学でいえば、EBM、証拠に基づく医療ということが強調されるようになってきている。特に、コンピュータでいろんなデータが処理できるIT時代になってきますと、益々具体的な数字で科学的に検証を行うことが求められる。そういう意味で、柔整の場合、西洋医学と全く同じやり方をする必要はないと思いますが、数字で具体的な説明ができるデータの集積と理論構築を進め、それを通じて一般の方々の理解を得るという努力が、これからは必要なのかなという気がしています。

―柔道整復業務を例えるならばスポーツトレーナー的、所謂「日常生活トレーナー」であるといわれた柔道整復師の先生がおります。超高齢化社会においては、運動能力の維持管理が重要なテーマの一つと感じます。運動能力を維持していくには、単に痛みを取るということではなく、介護における機能訓練指導員のように一般の方々に対してもトレーナー的な取り組みは必要と感じます。介護現場であっても同じだと思いますが、医師のみが医療行為を行なうとする時代ではなくなっているように感じます。以上のことから、柔道整復は今後の高齢化社会において十分に能力を発揮できると思われますが、そうした中で、現状柔道整復師が、医師を始めとして、社会に広く理解され受け入れられるには、単に来院した患者さんに満足し理解していただく以外に、広く訴えなければならないことがあると思います。どうしたことを訴えれば、広く受け入れていただけるのでしょうか。

近年、医療の世界では、「チーム医療」の重要性が唱えられるようになり、更に最近では地域包括ケアといわれるように、医師を中心に様々なスタッフが能力を発揮し、お互いに協力し合うことによって、より適切な医療、或いは地域医療の確保ができるという発想が定着し進められて来ました。私もその通りだと思っています。いろんな職種の人が夫々役割分担を持ちながら一緒にチームを組み、或いはネットワークを構築するというのは、先ほどの赤十字の活動でもこれから大事にしたいと申し上げましたように、そういう時代に入ってきています。そうした中で柔整が担える役割は十分あると思います。ただ、類似の業務、或いは資格を伴わない活動も含めて、広い意味での競争を強いられる時代でもあります。その中で存在感を示していくために、実績を積み重ねながら、まさに団体や関係者の中で、自分たちの基本的な役割を改めて議論し考えていくことが重要になってきているのではないでしょうか。

―柔道整復はWHO世界保健機関に民族医療〝柔道セラピー〟として仲間入りしましたが、医療先進国日本において、なお存続している柔道整復は医療先進国ばかりでなく発展途上国においても有用性が高いと思われます。また現在モンゴル国等で柔道整復師がJICAの草の根活動で国際交流を通して医療支援と医療指導を行っております。海外における活動では赤十字社は、大きな活躍を常にされていますが、”発展途上国では人口の6~8割が経済的理由で西洋医学の恩恵を受けていない”と言われております。そうした中で、柔道整復の役割も存在するのではないかと思われます。医療先進国と途上国では役割や捉え方に違いがあるように思いますが、いずれにしても柔道整復は世界的に多くの人々を救い得る有用な学問となる可能性を秘め、「国際化」の可能性もあるのではないかと思われます。大塚副社長からよきアドバイスをお願いできればと思います。

なるほど、興味深い視点ですね。柔道は世界的なオリンピック種目ですし、今や柔道人口はフランスが日本より多いそうですが、柔道そのものがグローバルな存在になりました。そんなに簡単な話ではないでしょうけど、柔道整復師のような業務が外国に技術移転されてもおかしくないでしょうね。正直私も分りませんが、柔道がこれだけ国際的なポジションを持ち、これだけ世界に普及していることを考えれば、面白い着眼だという気がします。

今後特に日本は高齢化が進みますので、医療的な業務以外にも健康づくり、或いは介護における高齢者の運動能力・体力の維持が非常に重要になってきます。こうしたニーズはもっともっと増えるでしょう。恐らくこの分野には、看護という立場からのアプローチもあるでしょうし、介護の観点からも、PT・OT等いろんな職種の方々が取り組むことが考えられます。これに柔道整復師も挑戦してみることは必要と思います。

最近は、病診連携が随分進んできました。診療所にしてみれば、いざとなれば病院に送れるという安心感があり、患者さんにも安心感があります。病院でやることが大体終わったら今度は診療所に送り返してフォローしてもらえれば病院にとっても良い。両方にとってプラスになるとして地域の中で取り組まれて参りました。それらを考えると、例えば柔整と整形外科の連携というようなモデルケースが何所かに出来れば、他の地域のいい参考になる。病院と診療所のようなネットワークに似たシステム、そんな仕組みが作れると良いですね。

大塚義治氏プロフィール

1947年栃木県生まれ。1966年、東京都立上野高等学校卒業。1970年、東京大学法学部卒業。1970年、厚生省入省。1994年、同省大臣官房会計課長。1996年、同省大臣官房審議官、1998年、厚生大臣官房長。1999年、厚生省老人保健福祉局長。2001年、厚生労働省保険局長。2002年、厚生労働審議官。2003年、厚生労働事務次官。2004年、退官。2005年、現職。日本赤十字学園理事長兼務。現在に至る。

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