柔道整復施術ガイドライン作成にあたって 第3回全体会議
平成26年3月30日(日)、柔道整復師センター(東京都中野区)において「柔道整復施術ガイドライン作成にあたって 第3回全体会議」が開催された。
まず事務局の澤田成弘氏より全体会議のこれまでの歩み、注意事項および資料等について説明された。
座長の荒井俊雅氏は〝実際に現場でも多く行なわれている急性期経過外傷の施術に関して、業界の皆様のご意見を幅広く伺い、柔道整復師の統一見解としてガイドラインを作成したい。急性外傷に関して我々は養成校において統一した教育を受け、共通認識を持ち、国家資格を取得した。しかし、急性期を経過した外傷に関しての見方や施術に関しては、それぞれ捉え方が異なり画期的な施術方法がないのではと思われてしまうのではないか。そこで最低限、治療効果を保証するためにもガイドライン作成は急務であると考える。ガイドライン作成の先には、多部位・長期・頻回等の諸問題の解決が含まれていることをご理解いただきたい〟と趣旨説明を行なった。
今回は【総論】【各論】の2部で構成され、フリートーク形式で議論が展開された。
総論・共通認識
患者の健康状態の把握
患者が痛みを訴えて来院した際、その原因が柔道整復で扱える外傷性のものなのか、内科的疾患等の柔道整復の業務範囲外のものなのかをできる限り迅速に判断しなければならない。そのために〝患者の健康状態についてどの程度把握しておくのか〟という問いに対し、〝初診時に反射や血圧についても確認しており、それだけでもすぐに判断が必要な心疾患や脳血管障害等のリスクもかなり軽減できるのではないか〟や〝どういう痛み方なのか、どんな時に発生するのかまでしっかり聞き取りをしないと大変な事態も起こり得る〟とする意見が多く挙げられた。また、本ガイドラインが比較的経験の浅い柔道整復師を対象としていることから〝若い施術者に「患者の顔色を見るように」と言っても、どんな様子であれば注意が必要かわからない等、あまりにも判断基準がない。細かく作成したほうが解りやすいのではないか〟や〝問診で聞くべき事項をチャート図のようにしてはどうか〟というように、経験を積んだ施術者なら経験から判断できるような事柄に関しても、ある程度詳細に記載しておくべきとの意見もあった。
「マッサージ」に関して
漫然とマッサージが続けられることを防ぐにはどうしたらいいかとの質問に対しては〝柔道整復の治療の中で必要なマッサージは「柔整マッサージ」や「マッサージ手技」とか名前を変えるなどして慰安行為とは明確に分けたらいいのではないか〟や〝マッサージは医療行為としても効果があるので、マッサージ自体を排除するのではなく、医療過誤を重点的に考えていくべきではないか〟など、柔道整復師が行なうマッサージは治療という目的を持った手技の一部である、慰安行為とは区別すべきとの声が上がった。
また、不正を行なう一部の柔道整復師が原因で業界全体が被害を受けているとして〝不正請求や慰安行為を行なっている接骨院は潰れてもいい。ガイドラインから逸脱している接骨院にはどんどん行政の手が入ってほしい〟という厳しい見方を示す参加者もみられた。社団JB日本接骨師会最高顧問の本多清二氏は〝団体に所属している柔道整復師は指導を受けているが、不正を行なうような人は団体を辞めて、個人で保険請求をして指導の枠を超えてしまい、誰も指導しない。そういう人たちをどうするかが問題〟とした。
各論
頚部に対する施術
頚部に関しては、しばしば議論の的となる「肩こり」について議論が交わされた。
〝肩こりを訴えて来院された人の中には血圧が200前後ある人もいて、そういう人には治療せずにまず内科に行ってもらう〟や〝硬膜下血腫や脳腫瘍の場合、検査だけではわからず接骨院に回ってくることも多い〟、〝見逃していけないのがくも膜下出血で、項部硬直という症状が出る。リンパ節が腫れる悪性リンパ腫や甲状腺がん等で肩こりを訴えてくる患者もいる〟など、様々な神経が通う頚部の痛みには内科的疾患が疑われるケースも多く、絶対に知っておかなければならない疾患についてはガイドラインに記載すべきとする柔道整復師が大半だった。問診と身体所見に細心の注意を払い、疑わしいものに関しては速やかに専門医に転院させることが重要との認識で一致した。
肩部に対する施術
肩部の施術について、荒井氏は〝一番苦労しているのは五十肩ではないか〟と投げかけた。
これに対しては、〝五十肩で「治るから」と言われて整形に通い、注射や湿布で治療していたら肩が全く上がらなくなってしまったという患者が結構いる。柔道整復の施術を受けて機能障害が起こらないようにすることが大切〟や〝放っておけば痛みは取れるかもしれないが、関節可動域が狭くなる等の症状が残ってしまう。それを防ぐのが柔道整復の治療〟という意見もある一方で、〝多くの場合は腱板損傷や周囲炎など何らかの原因があり、それらに対しての治療効果は期待できる。患者自身が五十肩と思っていても治療効果が期待できるものも多く存在しているということを認識しなければならない〟や〝たとえば雪かきをして肩が上がらなくなった高齢者の場合、五十肩ではなく腱板損傷もしくは炎症と考える〟というように、患者が五十肩と思っていても実際には治療可能な疾患である場合も多いとする意見もあった。
腰部に対する施術
腰部に関しては、ヘルニアや脊柱管狭窄症で来院される患者が多く、これらは〝筋膜性のものや仙腸関節の痛み等様々な症状が出ている場合もあり、それらを治療することで痛みが取れることもある〟との認識が示された。それ以外にも、精神疾患が原因で腰痛を訴える患者も多くいるとして〝治療していたが予想通りの結果が得られず、整形外科で検査をしても異常が見つからないという人に対し、心のクリニックに行ってもらうと一気に楽になったという人がかなりの割合でいる〟や〝ストレスだけが原因で腰痛になっている人であれば柔道整復の範囲外だが、治療していく上でストレスが症状を悪化させる可能性もある〟と注意を喚起する声もあり、ガイドラインにも盛り込むよう要望された。
第4回全体会議は4月27日(日)に行なわれ、各論の主題として残った「膝部」についての施術のガイドライン及び今まで重ねてきた全体会議の総括として方向性が示される予定となっている。
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