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柔道整復施術ガイドライン作成にあたって 第4回全体会議

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平成26年4月27日(日)、柔道整復師センター(東京都中野区)において「柔道整復施術ガイドライン作成にあたって 第4回全体会議」が開催された。

第4回全体会議

はじめに事務局の澤田氏より〝去る平成26年1月19日に発生起点における急性・亜急性の外傷の定義、期間としての急性・亜急性・慢性の定義をテーマに第1回全体会議が開催された。2月16日には鑑別方法や経過観察、施術録に関するガイドラインを議題として第2回全体会議が行なわれた。3月30日の第3回全体会議では、施術に関するガイドラインを頚部・肩部・腰部の各部位に分けて話し合った〟と今回の会議に至るまでの経緯が説明された。

荒井氏

座長を務める荒井俊雅氏は〝柔道整復は新鮮な急性外傷だけではなく、急性を経過した外傷や慢性的な痛みを伴うものを施術する機会が増えてきている。しかしその施術方法に統一した基準はない。柔道整復師の底上げを図り、良質・均質な柔道整復術を提供することが社会の期待するところでもあり、業界の責任と考えている。そのためにも皆様のご意見を幅広く伺い、柔道整復師の統一見解としてガイドラインを作成したい〟と開催の趣旨を述べた。

今回は膝部の施術方法と痛みに関するガイドライン、理学療法士と柔道整復師の違い、インフォームドコンセントなどについてフリートーク形式で議論が交わされた。

膝部の施術

荒井氏から膝部の一般的な施術と鑑別の方法について問われると、〝膝の上下2関節を確認した上で膝にどれだけのウエイトがかかり症状が出ているのかを判断している。全身症状から膝への負担を診てからでなければ膝の治療は行なわない〟〝腿の硬さを診て大腿四頭筋を伸ばし、柔軟性を持たせるため電気治療などを行なっている〟〝電気で痛みを取り、ストレッチで周囲の筋肉を伸ばしていく。正しい歩行ができるようになったら、筋トレをして施術効果を上げていくようにしている〟等の回答があり、局所的に膝だけを治療するのではなく全身からアプローチしていく手法を取っている施術者が多いことがうかがえた。膝に対する直接の治療としては〝膝が曲がらない時、膝蓋骨が固くなっている場合が多いので柔らかくしていく。膝蓋骨は一種の種子骨であり滑車の役割を果たしているため、徐々に慣らしていくと動くようになる〟との意見があった。ガイドラインに盛り込む要素としては〝起こりうる損傷は限られており、柔道整復施術の適用範囲外となる内科的疾患等も把握しておかなければならない〟として、適用範囲外の患者を抱え込んでしまうことがないように注意すべき疾患をガイドラインに記載する必要があるとの見解も挙げられた。

痛みに関して

社団JB日本接骨師会最高顧問の本多清二氏は〝昼間起きているときに痛いとか夜寝ているときが痛いとか、置かれている環境によって痛みの感じ方は違う。痛みをどう表現するかもガイドラインでは重要〟として、日頃の業務で遭遇した患者の痛みの表し方について意見を求めた。出席した柔道整復師によれば、ズキズキやジンジン、ピリピリ等の擬音のような表現をする患者もいれば、動かしたら痛いなど動作痛を訴える患者もいると多種多様な実例が挙げられた。そのため、〝ペインスケールのようなもので施術前と施術後での痛みの違いを来院ごとに記録している〟〝一過性の治療にしてもどう変化したかはきちんと書いておかなければ、何が効いたのかわからず積み重ねにならない〟という意見に見られるように、痛みの表現は様々であってもそれを記録し、どの程度の治療効果が得られたのかを確認することが重要になると思われる。

理学療法士と柔道整復師の違い

荒井氏からの〝臨床現場において、理学療法士と柔道整復師の行なっている治療は違うのか〟という質問に対して〝柔道整復では固定を行なうが、医科においては理学療法の範疇ではない「処置」に含まれるため基本的には行なわない。柔道整復師の後療法と理学療法士の治療は一部異なる部分もあるが、基本的には同じである。マッサージはあるが、マッサージ師の権限を奪わないようにとされている〟との回答があった。つい最近理学療法を受けたという柔道整復師は〝患者に対する運動療法もきめ細かく指導されていた。電療の種類等は柔道整復師のほうが多い。処置も医師に確認してからという場合が多く、柔道整復師のほうが範囲も広いし一人の術者が最後まで診る。良いところも悪いところもあると思う〟と述べ、柔道整復師が行なう施術内容は理学療法士の行なう治療と共通する部分も多々あるが、理学療法士または整形外科医が行なうことのできない面をカバーしている部分もあるようだ。また〝理学療法士の治療は評価を非常に大切にしている。柔道整復師とは評価方法が全く違うので、柔道整復師独自の評価方法をガイドライン化していくべき〟との意見もあった。

説明義務等について

本多氏は〝ガイドラインには患者への説明義務やコミュニケーションの取り方についても記載しておきたい。特に重要なのが転院勧告だと思う〟として、どういった場合に転院を勧めるのか尋ねた。〝柔道整復の範囲ではないと思えば、一番適当であろうと思われる医療機関に可及的速やかに転院させる〟〝精神的疾患が疑われる状態で、このまま治療を続けると問題が起きると思われる場合にも転院させる〟など、柔道整復の範囲外であればできる限り早急に判断し転院させる必要があると回答する出席者が多く見られた。また〝病院で検査を受けて何ともないと言われたが、超音波で見ると異常がある場合があった。患者は病院を信じ切っていたが、頼み込んで病院を変えさせた〟というように、一つの医療機関の診断だけではなく、別の医療機関での診察を受けた方がいいと思われたケースもあるとのことだった。

また本多氏は〝医療事故は説明不足により不信感が生まれるために起こる。では、患者には何のために説明するのか?〟と疑問を投げかけた。これに対し多くの出席者が〝納得して治療を受けていただくことを大切にしている〟と答える中、〝いくつかの選択肢を与えてリスク等についても説明したうえで患者に治療法を選ばせることをしないとインフォームドコンセントとしての説明責任は果たせていない〟とする施術者もおり、結果は問わずに選択肢に関し十分に説明を行なった上で患者に治療方法を選択させる必要性があると主張し、〝いいことをしているから良いのだという独りよがりは医療者として絶対にしてはならない。またそれを施術録に記載しなくてはならない。施術録に書かずに説明したといっても通用しない。患者にパンフレット等を渡して、その後にわからないところがあったかどうかまで確認する必要がある。それがなければ説明責任を果たしたとは言えない。説明をしてから熟慮させる時間があったかも重要となる〟と患者が理解できるように説明し、且つその記録もきちんと残しておくことが大切だとした。

今回で柔道整復施術ガイドライン作成のための全体会議は終了となり、6月頃までにガイドラインを作成していくとのこと。本多氏は〝柔道整復師は様々な治療方法を使っており、統一化されていないように感じている。業界共通の認識となるものを作り、次の世代に渡していけるようにしたい〟とコメントした。

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