2014年度 日本伝統治療(柔道整復術)指導者育成・普及プロジェクト 日本研修閉講式
平成26年8月5日(火)、東京ドームホテル地下一階シンシアにおいて「2014年度 日本伝統治療(柔道整復術)指導者育成・普及プロジェクト 第1回日本研修閉講式」が執り行われた。
この日本伝統治療(柔道整復術)指導者育成・普及プロジェクトはモンゴル国内において『柔道整復術の指導・普及がモンゴル人のみにより可能となる状態になること』を目標としたもので、(公社)日本柔道整復師会が独立行政法人国際協力機構JICAの「草の根技術協力事業」の支援を受け、2011年9月にスタートした。
閉講式は(公社)日本柔道整復師会・木山時雨副会長による開式の辞で厳かに幕を開けた。
(公社)日本柔道整復師会・工藤鉄男会長は、主催団体代表として〝今日は多くのご来賓の方々、日本伝統治療指導者育成・普及プロジェクトに対してご理解いただいている皆様をお迎えし、閉講式を開催できることを心より感謝申し上げます。このプロジェクトは日本の伝統医療である柔道整復術を発展途上国で役立てる方法はないかという想いから始まった。日本でも西洋医学が医療の中心となる以前は、柔道整復術が国民の健康を支えていた。柔道整復の「精力善用・自他共栄」の精神は、世界に通用する哲学だと考えている。研修を終えた3名はこれからモンゴルに帰国し、医師が足りずに十分な医療が受けられない地域の方々に柔道整復の無血療法を提供していく。日本柔道整復師会は全身全霊を捧げて皆様にご協力することをお約束したい〟と今後もモンゴルにおける柔道整復術の普及・指導者育成に注力する考えを示した。
来賓として壇上に立った衆議院議員・逢沢一郎氏は〝モンゴルより優秀な准医師3名をお招きし、貴重な実技トレーニングを受け、カリキュラムをしっかり受講された。日本柔道整復師会の先生方は、モンゴルにおける柔道整復術の普及・発展のために人材を育成しようという高い目標を掲げ、地道な活動を続けていただいていることで二国間関係もぐっと成長・発展している。工藤会長からモンゴルで行なっている事業について伺い、政府としても適切な形で支援し協力する体制が必要だと感じた。日本柔道整復師会の方々と外務省やJICAがスクラムを組んで活動するスキームができたことを嬉しく思う。世界にはまだ柔道整復を必要としている国がたくさんある。モンゴルにとどまることなく、世界に展開していっていただきたい〟と功績を称え、今後の活動への期待を滲ませた。
独立行政法人国際協力機構JICA東京国際センター所長・佐々木十一郎氏は、研修指導にあたった柔道整復師や医師に対し御礼を述べたうえで〝本プロジェクトは今年で3年目となり、今年も3名の研修生が日本研修を修了された。今回日本で学んだことを帰国後も復習し、研鑽に励むとともにできるだけ多くの方々に研修成果を伝え、モンゴルにおける柔道整復術の指導者として大成していただきたい。昨年9月に日本・モンゴル両首相の間で合意された「戦略的パートナーシップのための日本・モンゴル中期行動計画」では、モンゴルの優先開発課題として医療人材の育成が掲げられている。「草の根技術協力事業」は国内の団体からの発意に基づいて実施されるもので、本プロジェクトも日本柔道整復師会からの発案で始まった。このような協力が日本とモンゴルの更なる友好関係の促進につながると確信している〟と話した。
次に(公社)日本柔道整復師会・萩原隆国際部長より〝2月にモンゴル国立医科大学と公益社団法人日本柔道整復師会との間で新たに協定を締結し、2月17日から3月8日までの約2週間、2013年度第2回モンゴル派遣が行なわれ講習会を実施した。3月1日にはウランバートルのJICA日本センターにて市民公開講座を開催し、多くの地域住民が集まった。5月には課題とされていたモンゴル語の柔道整復術テキストが完成し、外傷に対する保存療法の専門書として現地で評判になっている。包帯法などをまとめたハンドブックとともに地方の医療従事者・病院・教育機関への無料配布を予定している。6月11日からの約2か月間ではモンゴル人柔道整復術指導者候補3名の第1回日本研修を行ない、本日閉講式を迎えた。今回は診断力を身に着けることを主な目的として研修を行なったが、回を重ねるごとに研修生の実力は目覚ましく向上し、プロジェクト本来の目標を達成しつつあると感じている〟と報告があった。
続いて研修生からの報告に移った。
研修生活動報告
オユンバートル・ダリルチュルン
初めの1か月間は宮崎県の今村整骨院・奈須接骨院で研修を受けた。今村整骨院では操体法を学び、その効果に驚いた。触診できるようになるまで何度も指導していただき、痛みが生じている箇所がわかるようになった。奈須接骨院では骨折や脱臼の整復・固定の復習を行なった。モンゴルの地方では落馬による鎖骨骨折が多いので、しっかり治せるようにしたい。次の1か月間は栗原整形外科で研修を行なった。ここでは検査の方法を多く学ぶことができた。たくさんの患者さんを診て、自分に足りないものを教えていただく良い機会となった。経過を記録し患者さんとも積極的に話すことができ、症状の変化や患者の訴えを理解することができた。
ムンフバタル・ボロルチメグ
最初の1か月間は今村整骨院で研修させていただいた。様々な怪我や痛みに効果がある操体法を学び、モンゴルでも役立つ技術だと感じ、懸命に練習した。短時間で痛みが取れるケースもあり驚いた。次の研修先であるやわらぎ整骨院には、高齢者のリハビリ施設があり、高齢者が熱心に治療を受ける姿が印象的だった。また痛みの評価・検査法や整復法、固定法を指導していただいた。モンゴル語のテキストで確認しながら行なうことができ、良い復習ができた。佐藤整形外科での研修では、整形外科のドクターの診察法を学ぶことを目的としており、業務中に院長の診察法を観察して休み時間に練習を重ね、それぞれの疾患の特徴を理解することができた。
エンフタイワン・トゥブシンバヤル
今回の研修では、富山県のサカイ接骨院、接骨院デイサービス、富山大学大学院柔道整復学講座、東京都の田渕整形外科で2か月間勉強した。サカイ接骨院での研修目的は診断の仕方を学ぶことだった。問診・触診などを教えていただいた。高齢者の機能訓練・運動療法についても多くのことを学び、日本と同様にモンゴルで高齢者が増えると運動療法が重要になると感じた。富山大学では柔道整復術基礎研究を勉強した。臨床試験を見学したり怪我の予防についてディスカッションを行なったりした。田渕整形外科では各関節の診察法や脱臼骨折の固定を教えていただいた。怪我の予防、高齢者の運動療法、診察法について特に学ぶことが出来た研修であった。
活動報告後には、独立行政法人国際協力機構JICAと(公社)日本柔道整復師会より受講証明書が授与され、(公社)日本柔道整復師会・萩原正和副会長の閉会の辞をもって終了となった。
今回3名の研修生が研修を修了し、モンゴルで多発する骨折・脱臼等の外傷に対し適切な処置を行なえる技術を習得した。さらに帰国後も技術を磨き、柔道整復術を指導・普及させることで医療環境の整備が不十分な地域においても治療を行なうことができるようになるだろう。今後、このような活動がさらに多くの地域を対象として進められることを期待したい。
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