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第4回「上手・適正な保険請求のためのセミナー」開催

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平成26年9月7日(日)、柔道整復師センター(東京都中野区)において『第4回「上手・適正な保険請求のためのセミナー」』が開催され、所属団体を問わず約70名の柔道整復師が参加した。

会場

本セミナーは、第一部「レセプトの返戻防止対策」、第二部「療養費の問題点とあり方」、第三部「療養費の審査基準の運用について・柔道整復施術ガイドラインの作成について」討論会の三部構成で進められた。

今城代表

主催団体である「患者と柔整師の会」患者代表の今城康夫氏は〝近年の医療費の増大に伴い、柔道整復診療に対する審査が厳しくなっている。今後も療養費受領委任払い制度を継続していくためには、これまで以上に有効な診療と適正な申請書作成が求められている〟とセミナー開催の趣旨を述べ、さらに〝当会は全国各地で保険者会議を開催し多くの保険者の意見・ご声援をいただいたが、柔道整復診療は患者にとって必要な制度であると保険者は認めている。患者が有効な柔道整復診療を受けやすくなるよう柔道整復診療制度の改革に取り組んでいる〟として改革運動への協力を呼び掛けた。

第一部:「レセプトの返却防止対策」
社団JB日本接骨師会専務常任理事・保険部長 諸星眞一氏

諸星氏

はじめに諸星氏は、平成23年12月の社会保障審議会医療保険部会において柔道整復療養費の見直しをするよう指摘されたことに触れ、〝長期や部位変更が多い、請求内容と患者の聞き取り結果に相違があり整合性が取れないこと等が問題視されている。これを受けて各保険者が積極的に調査に乗り出している〟と述べ、実際に保険者から患者に対し送られているという調査文書の例を紹介した。患者調査の手法として、保険者は長期・多部位・頻回のレセプトを抽出し、被保険者に対し利用状況に関するアンケート調査を行ない、その分析結果を基に啓発文書を送付しているという。

返戻される理由としては〝保険給付対象外のものや多部位・長期であるもの、部位変更が疑われるものは勿論、負傷原因や部位がパターン化しているなども保険者に疑義を持たれる〟と述べたうえで、返戻防止に重要なポイントとして▽予診票、▽レセプト、▽施術録、▽負傷原因、▽来院簿の作成、▽負傷名告知書(確認書)、▽領収書、▽保険者・患者との価値の標準化およびコミュニケーション等を挙げ、それぞれの項目に対する対策を記載例なども示して詳細に解説した。

諸星氏は〝今後、長期・多部位・部位変更等で患者縦覧調査が行なわれ、状況はますます厳しくなると思われる。返戻後諦めてしまう柔道整復師が多いが、それが理由で「正しい請求をしていないから再請求をしてこないのでは?」という誤った印象を保険者に与えかねない。正々堂々と強い意志を持って再審査を依頼することを心がけ、小さな情報でもわかり易く保険者に伝えられるよう意識してほしい〟と締めくくった。

第二部:「療養費の問題点とあり方」
日本中央競馬会健康保険組合事務局長・関勝廣氏

はじめに関氏は〝柔道整復療養費は医療費全体に占める割合は1%ほどでほぼ点検も行なっていなかったが、平成24年3月に厚生労働省から「患者等に施術の回数および回数等を照会して、施術の事実確認に努めること」とした通達があり、同年秋から点検業務を開始した〟と点検開始に至った背景を語った。

健康保険組合における点検の注意事項として、関氏は▽必ず本人に署名させる、▽負傷原因を正確に聞き取る、▽病院等の治療と重複していない、▽領収書を発行する、▽長期にわたる施術には医師の診察を受けさせる等を列挙し、具体的な審査のポイントも含めて解説した。外科・整形外科で治療を受け、同時期に同じ個所について柔道整復師の施術を受ける場合に関しては、〝柔道整復の点検業務しか行なっていない外部点検業者には不可能なチェックだが、こういった点検を重点的に行なうという流れがある〟と述べ、同内容の返戻が増える可能性を示した。また、領収書発行に関しては〝健康保険組合は必ず被保険者に対し医療費通知を発行しているが、その内容を見た被保険者から健康保険組合に対し「実際に受けた施術と合っていない」と問合せをしてくるケースがある。被保険者は医療費通知と見比べているので、領収書は必ず発行してほしい〟と添えた。

保険者や患者からよく寄せられる質問とそれに対する回答についても紹介し、施術者には当たり前であっても患者や保険者には理解できていない部分が多くあることを示した。関氏は〝患者が整骨院と整形外科の違いが判らず、病院と同じように請求を行なうと思っている場合が多い。請求方法の違い等を説明してあげれば患者も納得できて、本当に苦しんでいる方の治療をしてあげることができる〟等述べた。

第三部:「療養費の審査基準の運用について・柔道整復施術ガイドラインの作成について」討論会

次に、討論会に移る前に「患者と柔整師の会」事務局およびJB日本接骨師会事務局より各報告が行なわれた。

保険者訪問報告

多くの保険者が現状に合わないルールで受領委任払いが行なわれていると認識している。患者が良くなるのならば急性外傷以外でも療養費扱いしても構わないが、医科の支払基金のような申請・支払いを取りまとめ、規律を持って柔道整復師を指導できる機関があると良いという保険者が多い。患者照会により徐々に請求額は減っているので、今度は併療について厳しく審査するという保険者が多くなってきている。受領委任払いがあるから不正が起きる、償還払いにすべきという厳しい意見や柔道整復師の質をどう担保するのかと懸念する声もある。

急性期経過外傷申請書提出後の報告

患者と柔整師の会は「柔道整復療養費請求受領委任払い制度運用改善方策案」に基づき、JB接骨院において昨年11月より急性期を経過した外傷についての申請書提出を開始している。半年以上が経過し、一部厳しい反応を示す保険者もあるが急性期を経過した外傷の請求を継続して推進していく。

医科との併療について

併療による返戻は増えてきている。患者が「1日しか病院に行っていない」と言っても、湿布薬を30日分もらっていればその期間は医師の管理下にあることになる。いつ併療があったのかと尋ねても「個人情報だから患者に聞くように」と言う保険者や一切返答のない保険者もあり、患者に情報開示に同意していただいて保険者へ情報開示の請求をしている。患者としっかりコミュニケーションをとり信頼関係を築くことで、併療での返戻も少なくなると思われる。

柔整業務浄化対策と広告についての委員会活動報告

接骨院・整骨院の看板や広告に適正な表示がなされていない施術所が増加しており、柔道整復師のモラル低下が懸念されている。厚生労働省は本年1月に広告の指導徹底を求め、一部都道府県では既に広告規制や指導が開始されている。当委員会では広告や看板等の柔道整復業務の情報提供のあり方について、現状に適したルールを作成するとともに知識・情報を共有していく。

続いて本論の討論会へと移り、まず進行役である本多清二氏が〝私どもは適正な請求がどうあるべきかを考えて活動してきた。患者・保険者・施術者各方面から話を聞いてきたが「柔道整復の施術内容が分からない」という意見が保険者から上がってきた。一枚の申請書では到底わからない。しっかり施術をやっていても原因をきちんと把握していないと書けない。嘘を書くから保険者に信用されなくなってしまった。だから原因がはっきりしない施術を療養費で扱ってもらいたいと正直に現状を訴えようとしている。ではどうしたら急性期を超えた外傷を適正な施術として治療してもらえるかと考え、「柔道整復施術ガイドライン」作成に至った〟としてガイドラインの要旨を説明。さらに、協定が締結された昭和11年当時のルールが現在まで適用され続けていることに言及し、〝当時にはなかった国民皆保険制度が始まった。労働状況も生活様式も食生活もすべて変わってきており、怪我の背景もずいぶん変わった〟として、時代に即した基準へと改革していく必要があると強調した。

会場の参加者からは

  • 保険者に対してわかり易く情報を書くのが最も重要だと感じている。患者とのコミュニケーションも重要だが、申請書一枚に書ききれない情報をどうまとめるか。
  • 初めて接した考え方だったので目から鱗が落ちた。
  • 自分たちの生活に直接関係することでもあるので、真剣に考えていかなければならないと感じた。
  • もっと前から業界が一つにまとまって、陳旧性外傷を扱えるよう運動を起こしていれば現状は変わっていたのではないかと感じた。

などの意見・感想が上がり、参加者が自らの施術を見つめ直す機会となったことがうかがえた。

最後に本多氏は〝部位別請求は限界にきている。慢性期を扱う割合が増えると部位別で扱えなくなる。部位別を止めて一括請求で扱うなど新しい料金体系を作る必要がある〟と述べ、閉会となった。

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