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大同団結へ前進!!「柔道整復師連携フォーラム」開催

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2014年11月23日(日)、大阪市中央区にある難波御堂筋ホールにおいて柔道整復師連携フォーラムが開催された。

会場

このフォーラムは公益社団法人日本柔道整復師会(以下、日整)と一般社団法人全国柔道整復師連合会(以下、全整連)との協働による国政や関係省庁への働きかけ、その成果などを多くの柔道整復師に理解してもらうため全整連が主催。この日は日整・工藤鉄男会長による基調講演、日整と全整連の代表者によるパネルディスカッションが行われ、近畿地方を拠点とする様々な柔道整復師団体会員や個人請求者など総勢520人が集まった。

田中先生

開会挨拶で登壇した全整連・田中威勢夫会長は〝我々のこの業界は公益社団法人を中心に多くの団体がある。各会それぞれ業界や会員の為を思い活動していると思うが、会ごとに言っていることが違えば、それを聞く厚生労働省、保険者、議員らに「業界の声をひとつにまとめてほしい」と、逃げの口実を与えてしまう。一団体が動いたところでやはり一団体の活動であり、これを業界のひとつの声にすることにより役所や議員も動くという方向に持っていかなければいけない。本日、このフォーラムに参加されている皆さんと一緒に、この難局を超えていきたい〟と、制度改正や業界が抱える諸問題解決のため、業界の想いをひとつに集約させることの大切さを挨拶に滲ませた。

基調講演:「業界秩序の再構築」
(公社)日本柔道整復師会・工藤鉄男会長

工藤会長

工藤氏は冒頭〝今までは日本柔道整復師会の仕組みもあり、皆さんとこのようにお会いするきっかけが作れなかった。しかしこれからは団体や個人の垣根を越え、お互いに尊重し合い、そして問題点の解決のため皆で協力し合うことが必要だ〟と挨拶し、講演をスタート。『業界秩序の再構築』と題して、まず柔道整復師倫理綱領や社会保障改革の背景を解説し、それらを踏まえ「国民のため=最重要項目」「同時に柔道整復師のための対応が必要」「抜本的な制度改革が進められるかが焦点」の3つを柔整改革の胆と位置付けた。

また、工藤氏は多様な統計データを基に業界が置かれている状況を説明。日整でも年収500万円以下の会員が年々増加していることに触れ、真面目にやっている柔道整復師ほど年々状況が厳しくなっている現状に「柔道整復師の正当な評価の必要性」「療養費の仕組みを見直す」など、伝統を守りながらも時代に即した改革の必要性を訴えると共に、一部の管理不能となった柔道整復師によって失われた信頼の回復、業界内の秩序の再構築の重要性を訴えた。

その他にも民主党政権下での事業仕分け・会計検査院報告で柔道整復業界が指摘された7つの問題点(柔道整復療養費の急増、平均負傷部位数の地域格差、資格者の急増、養成校の乱立、算定基準の明確化、審査基準の明確化、審査体制の強化)に対し、スライドを用いてわかりやすく解説。それに伴い、今後業界が改善すべきポイントとして「協定の見直し」「支払基金の創設」「臨床研修制度の確立」の3つを掲げ、ひとつひとつ詳細に解説を行った。

最後に工藤氏は〝確かな知識、技術、誇り、さらに公益というモラルを備え持った柔道整復師が地域で施術にあたり、社会に貢献できる仕組みの構築を必ず実現する。その為にも皆さんの理解と協力を賜りたい〟と制度改正、業界秩序の再構築を力強く約束し、基調講演を終えた。

(基調講演の詳しい内容はこちらをご覧ください)

パネルディスカッション「国政における業界の問題点について」

「国政における業界の問題点について」と題したパネルディスカッションでは、日整・工藤鉄男会長、日整・豊嶋良一理事、(公社)大阪府柔道整復師会(以下、大阪社団)・安田剛会長、全整連・田中威勢夫会長がパネリストとして迎えられた。尚、コーディネーターは道友協会・田畑興介会長が務めた。

パネルディスカッション

本ディスカッションは日整と全整連が同じ壇上に上がる貴重な機会となったが、両者の協調体制に関して、田中氏は〝個人請求の方々は全整連でまとめ、日整と話し合いをしながら一丸となって進めていこうとしている。今回のような機会を1回で終わらせず、2回、3回と続けていきたい〟と話した。地方の日整各都道府県社団としては最大規模である大阪社団を率いる安田氏は〝団体の垣根も越えて腹を割って話し合いをしないと、5年後、10年後の若い先生方を守ることはできない。個々の柔道整復師に出来ないことは団体が責任を持って行なっていくことが大切だ〟と述べ、共同歩調を強める考えを示した。

柔道整復師の生活に直結する料金の問題や業界の抱える課題については、社会保障審議会医療保険部会柔道整復療養費検討専門委員会に施術者代表委員として参加する豊嶋・田中両氏から意見が上がった。

豊嶋氏は〝療養費の金額は厚生労働省と交渉を行い財務省が決定しているが、治療にエビデンスがなければ交渉もなかなか前に進まない。そのため富山大学に研修室を作り、科学的な裏付けを進めている〟と述べた。田中氏は〝保険者や行政から柔道整復師は不正が多いと言われている。正しい診断、正しい治療、正しい保険請求をしていかなければ交渉も進まない。何でも保険請求すればいいというものではない〟と、まずは業界の自浄が必要との見解を示した。

田畑会長

また、田畑氏は現在最も柔道整復師を悩ませている問題として受診照会を挙げ、それに対する対応等についてパネリストに意見を求めた。

豊嶋氏は〝行政も収拾がつかず大変困っている。我々は要望を出そうにも組織として日整各都道府県社団の名称が統一されておらず、一般の方のほとんどは何をしている団体なのかもわかっていない状態。まずはこれを是正しなければならない。来春までには相当統一される見込み〟とし、安田氏は〝患者がわからないのであれば分からないと書いて返信するしかない。照会が来たら困ると言っていては、保険者等からいいかげんな施術をしていると思われてしまう。胸を張ってカルテでも何でも出して主張すべき〟と強調した。田中氏は〝誤った解釈がされた調査票を患者に送っている保険者もある。日整と全整連の連名で要望書を提出したことで厚生労働省からは改善を求める通知が出されたが、間違った解釈をしている保険者も多く、患者に先生方からしっかりと説明してあげることが大切〟と説明責任の重要性を説いた。

さらに、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックについて、オリンピック顧問会議の特別顧問メンバーとして選出された工藤氏は選出に至った経緯を明かし、〝選ばれた以上は責任がある〟として準備室を設け態勢を整えていると述べた。統一した技術で選手をサポートするために積極的に研修を行なっていくと話し、〝柔道整復は国際的にも必要とされている技術であり、オリンピックは未来永劫続くこの柔道整復業界を担う若い世代の人たちが自信を持つきっかけとなるだろう〟と期待を込めた。

近藤昌之理事

最後に全整連・近藤昌之理事より〝「あなたたちはこの業界をどのようにしていくのか?」と厚生労働省や業界、国から問いかけがある。その時に我々がまとまっていなければ何もできない。工藤会長、田中会長が一生懸命リーダーシップを発揮されているが、まだまだそれが皆さんの全体に通じるまでになっていない。是非、このような柔道整復師連携フォーラムを通じてひとつずつこの業界のことを理解していただき、コミュニケーションを取り、業界としての総意・新しい時代の枠組み・制度改革を作っていこう。そして輝ける柔道整復師医療を私どもの子どもの世代に残せるよう、国民医療としての柔道整復師医療を築いていこう〟と、閉会挨拶があり約2時間の柔道整復師連携フォーラムは幕を閉じた。

今回のフォーラムには所属団体あるいは所属・無所属を問わず、多くの柔道整復師が集まった。業界内では大きな反響があり、既に全整連事務局には次回の開催予定に関する問い合わせも来ているという。まだ『大同団結』と言えるものではないかもしれないが、それに向け一歩前進したことは間違いないだろう。今後もこのような機会を通じて、全国の柔道整復師達が正しい情報を共有し、共に業界が進むべき方向性について話し合いを重ねていくことを期待する。

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