第1回柔道整復師団体情報交換会 開催される
平成28年5月13日(金)午後6時より衆議院第二議員会館第7会議室において、一般社団法人全国柔道整復師連合会(以下、全整連)主催、第1回柔道整復師団体情報交換会が開催され、20数団体が出席し意見交換を行った。
柔道整復療養費検討専門委員会(以下、検討専門委員会)委員も務める全整連・田中威勢夫会長は〝本日、第5回柔道整復療養費検討専門委員会が開催されたが、これまでは制度と仕組みに関する内容が主に議論されてきた。これからは料金改定の話題に移っていく予定だ。それに向けて多くの先生方にご意見を伺い、次回の検討専門委員会に活かそうということでお集まりいただいた。本日の検討専門委員会でも保険者から厳しい意見・要望が出ており、それに対する対応策を日本柔道整復師会と全整連で今後検討していくが、それだけではなく、多くの先生方のご意見を聞き集約していくことが全整連の役目だと考えている。本日は時間が許す限り、ご意見をいただきたい〟と忌憚ない意見を求めた。
来賓として参加した検討専門委員会委員で公益社団法人日本柔道整復師会の三橋裕之理事(保険部長)は〝田中会長よりお話があった通り、本日、本年2回目となる検討専門委員会が終了したところだ。1回目はどのような議題を上げていくかということで施術者側から意見を挙げたが、今回委員の一部交代があったこともあり、議論が少し戻ってしまったという残念な内容だった。その中で施術管理者の要件強化や公的審査会の権限強化、電子請求化については早急にスタートさせるようにと要望した。料金改定については通例では6月に行われるが、今回は延期される見込みだ。その分上乗せして改定されるようしっかりと要望している。皆様にご意見いただきながら施術者の意見として纏めていきたい〟と力強く挨拶した。
その後、出席団体の自己紹介が行われ、本旨へと移った。
まず、全整連・近藤昌之常任理事より、第5回検討専門委員会の内容が報告された。
近藤氏は〝第5回目となる今回の検討専門委員会は、仕組みの検討ということで始まった。①支給対象の明確化に向けた個別事例の収集の方策、②不正の疑いのある請求に対する審査の重点化、③適正な保険請求を促すための施術管理者の要件強化、④療養費詐取事件への対応、⑤その他として初検時相談支援料、往療の在り方、受領委任払いについて、医師の同意について、電子請求の導入について等をテーマとして討議が行われた。支給対象の明確化に向けた個別事例の収集の方策については、有識者委員から亜急性の定義について再検討すべきという意見が出て、それに対する施術者側と保険者側の意見応酬となった。結論が出たわけではなく、再度明確な答えを厚生労働省として出すべきではないかというニュアンスを残して終わった。不正の疑いのある請求に対する審査の重点化については、施術者側としては、柔整審査会で調査権限を持ってしっかりした指導をすることによって不正を失くしていきたいと主張した。これに対し、保険者側からは柔整審査会で本当にできるのか?と疑問視する声も上がった。施術管理者の要件強化については、義務化する講習受講や実務経験を3年間とする点については、具体的に説明できるエビデンスをという意見は出ていたが、保険者側からの反対意見はなかった。療養費詐取事件については、保険者側からは「何とか自浄できないのか」「毎回チェックするような仕組みができないのか」といった厳しい意見が出ていた。回数制限を求める意見もあった。初検時相談料は、施術者側は現状のままでいきたいと要望したが、保険者側からは初診料に含めてもいいのではないかとの提案もあった。受領委任制度については、患者も結託して長期・多部位・頻回になっているケースもあるのだという意見も保険者側から上がった。医師の同意については、施術者側としては例えば顎関節症など歯科医から回ってきた患者を治療するのに、整形外科に同意を求めるのはどうなのか、限定解除できないかと要望している。次回検討専門委員会は6月頃に開催される予定だが、料金について話し合われる見込みだ〟と説明した。
これを受けて、出席者から検討専門委員会に対する意見・質問、また次回以降の料金改定に関する要望等が挙げられた。
出席者からの意見
S氏
受領委任契約の請求権者は患者であるのに、患者を抜きにして検討委員会は成立するのか疑問。
N氏
最も重要なのは、急性または亜急性の外傷とは何かという定義をはっきりさせること。ここが曖昧なままで話し合っても意味がない。ひいては柔道整復師法に定められている業務範囲も話し合うべき。各論はあると思うが、まずは最も重要な部分を話し合っていただきたい。また、初検時相談支援料はどこまで書けばいいのかはっきりしていないので算定できればいいという施術者も多いが、定義をはっきりさせるか、あるいは初検料に含めるのではなく廃止して、代わりに他の部分の料金を上げるようにしていただきたい。
S氏
受領委任は局長通達レベルであり、業務範囲を含めて法制度を何とかしなければならない。明日にもなくなるかもしれない通達ではなく、法制度として整備することが重要ではないか。
H氏
エビデンスとして検査に基づいた結果が重要視されるのは確かだと思う。しかし医科と違い、柔道整復は検査ができないというのも現実であり、検査ができないからこそ判断させてもらいたいというところもある。
N氏
回数を制限するという案については、患者が長期・頻回・多部位が何故いけないのかを理解しておらず、周知もされていない中で回数を制限するのはどうなのか。
S氏
料金がどうであれ保険者は返戻してくる。基本的に保険者は払いたくないという姿勢だが、柔道整復師のその先には保険料を支払っている患者がいる。料金の上げ下げだけではなく、根本的に議論しなければいけない。
U氏
料金は下げるより上がったほうが良いというレベル。むしろ適正化への取り組みをどうガードしていくかが重要。検討専門委員会は三者構成ではあるが、有識者に利害関係者である整形外科がいては、実質2対1だ。3者構成であれば中立な立場が必要。
K氏
料金がプラス改定になっても適正化としてルールが増えて、何倍もの労力がかかるようになる。保険者判断とか原則としてとか、曖昧な部分をルール化して明確にすることが大切ではないか。
N氏
高齢化も進んでいるので、いわゆる「いつのまにか骨折」などがあるが、保険者には階段を上っているだけで脚を痛めるわけがないというような考えがあるので難しい。亜急性だけではなく急性でもそういったことが起こり得るので、体験したことのある患者の意見も重視するべき。
閉会にあたり、近藤氏は〝我々の医療は素晴らしいものだ。安価で副作用もなく、地域に密着しており、国民医療としての長い歴史もある。しかしそれが今、風前の灯となっている。負けるわけにはいかない。皆さんのお知恵を拝借しなければ、到底我々の力だけでは太刀打ちできない。今回のような情報交換会を事あるごとに持ちたいと考えている〟と、各団体の協力を仰いだ。
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