第2回療養費適正化勉強会が開催!
平成28年7月9日(土)午後3時から大阪府医師会館にて、「大阪の柔整療養費は本当に変わるのか。保険者が知っておかなければならないこととは…?」をテーマに、第2回療養費適正化勉強会が開催された。(主催:一般社団法人大阪臨床整形外科医会。後援:一般社団法人大阪府医師会。Produce:療養費適正化研究会)。
大阪臨床整形外科医会会長・前中孝文氏は、挨拶で〝明日は参議院議員選挙という忙しい中にご参加いただき有難うございます。療養費の問題が取り沙汰されて数十年経ったと思います。大阪の柔道整復師の療養費が被保険者一人当たり8,608円、全国平均の2倍以上です。大阪の療養費の中に何か問題が潜んでいることを示しているのではないでしょうか。また、柔道整復の療養費が打撲、捻挫の名目で年間約4千億円が使われていることを一般の人が知れば、数字が一桁二桁間違っていると思うでしょう。4千億円が正しい数字ならば打撲捻挫以外の他のものが療養費に入っているのではないかと疑うでしょう。運動器の専門家である整形外科医の所にいろいろな患者さんの健康被害情報が集まってきます。患者を守る、保険制度を守るためにこの会を主催しました。柔道整復業界と整形外科が骨肉の争いをしているというマスコミの報道がありますが、それは間違いです。保険制度を守る主体は保険者の皆さんです。自分たちの個人的な損得勘定ではなく国を守る防人という気概で療養費適正化に取り組んでもらいたいのです。よろしくお願いします〟と結んだ。
『大阪からはじめる療養費適正化』と題して市立岸和田市民病院リハビリセンター長・濵西千秋氏による基調講演が行われた。
講演で濵西氏は、〝柔道整復業界との関わりは私が近大の教授に就任した平成10年に遡る。その年は、奇しくも柔道整復養成学校が雨後のタケノコのように乱立するきっかけとなった判決が福岡地裁で出された年であり、沢山の接骨院からの後始末症例に接し、また日本整形外科学会・教育研修委員長になって業界問題の深刻さを知り、日整会から厚労省に要望書を提出したりもした。そして平成16年に中部日本整形外科災害外科学会を主宰した折には接骨院受療者調査を行い、会長講演で接骨院へ整形外科医が患者さんをどれほど送りこんでいるかを示し、整形外科医に警鐘をならした。シンポジウムは長尾氏、牛山氏という2名の著名な柔道整復師にも加わって頂くという前代未聞のものとなった。平成17年に柔道整復接骨医学会に招かれたのをきっかけに、真剣に柔道整復師の行く末を考え、特化・階層化を提唱した。国民が信頼できる『地域のゲートキーパー」となることを期待したのである。そこで接骨医学会に既にあった認定柔道整復師の資格制度をまったく新しいものにし、実施に到るタイムテーブルも示した。これらの考え方は業界誌である『からだサイエンス』誌、或いは鍼灸柔整新聞等に逐一寄稿し、業界の反応を待った。接骨医学会が本気になり、もし要請があれば日整会の中で、或いは整形外科運動器保存学会を立ち上げてその中で研修施設の立ち上げを諮るぐらいの覚悟でいた。しかし大阪社団の会員2,000名が柔道整復接骨医学会に一気に入会されたのが唯一の反応であり、それから10年が経過したが、業界、そして国民を取り巻く状況は悪化の一途を辿っているように思える。
今回なぜ大阪なのかというと、まず人口10万人あたりの柔道整復師数が、大阪府が92人でダントツで全国平均46人の丁度倍であること。ついで富山72、東京71、和歌山66と続く。10年前は全国平均18人であったから、この増え方は異常であろう。特に大阪は学校数も多く、柔道整復師激増の震源地でもあるため、様々な請求問題が多発しても当然であった。例えば協会けんぽ大阪支部では柔整療養費は日本全体の1/5が支払われている。柔整だけではなく、あん摩・マッサージ・指圧は13%、鍼灸に至っては日本の1/3が大阪で支払われている。財務省の調査結果によると、「過去5年間不正請求で受領委任払取扱い中止になった件数128件のうち、76件6割が大阪、多部位請求と不正請求の間には一定の相関が推定される」「近年の柔道整復療養費(23年度4,085億円)は小児科・皮膚科・産婦人科・耳鼻科の診療所医療費よりも高額。ちなみに整形外科は7,800億円」とある。(中略)資金の逼迫しつつある組合健保は、保険者機能推進運動(3適運動)を以前より繰り広げ、日本郵船のような支払拒否組合も出現。また最近は協会けんぽ、後期高齢者や一部国保組合などは外部委託して後追い調査などを行っている。厚労省も療養費の改定にあたり運用の見直しということで打撲・捻挫の施術について、3カ月を超えて頻度の高い施術を行う場合に、支給申請書に、負傷部位ごとの経過や頻回施術理由を記載した文書の添付を義務付けることになった。しかしその理由文書は予想通り定型化し、逆に緊急性のなさと慰安療術を裏付けるものとなっている。
公益社団大阪府柔道整復師会から、本年3月26日に療養費適正化理念5項目が発表された。目を奪われたのは②の「負傷の徴候の認められない患者への医科受診指導を促進する」である。地域社会にあって運動器症状の裏に隠れている異常・疾病を感じ取り、取り込んでしまわないですぐ医師に紹介できる『ゲートキーパー』として成長・特化すべしという勧めであると評価したい。会員の「初検料のみの申請書」の件数と割合を公表させ、27年度現在0.04%の割合を向上させるとある。1万人の受療者中4名であったと明らかにされたことは評価できるが、そのあまりの低さには改めて驚かされた。今後会員の臨床能力向上でこれが、せめて1%になれば柔道整復師の社会的評価に大きく繋がるはずである。柔道整復師は『地域のゲートキーパーであれ』と私はこの15年間願い、また訴えてきた。しかし外からの発言は無視するしかなかった業界にとってこれは内からの提言である。当然業界多方面から強い反発を呼び起こしていることであろう。しかし負傷は負傷である。この文言を死守していただき、「亜急性の負傷」などという概念が入り込まないように頑張ってほしい。この理念が全国の社団柔道整復師会の規範となり、更に会員以外の柔道整復師の「負の意識」をも変革されんことを願う。私にとって人生初めての行動であるが、公益社団法人大阪府柔道整復師会にエールを送りたい〟等、話した。
「このままでいいのか?柔道整復業界」と題して(公社)大阪府柔道整復師会前会長・安田剛氏が講演。
安田氏は、〝私が柔道整復師になって開業したのが32年前です。後半の15年間を大阪社団柔道整復師会の役員をさせて頂きました。いま浜西先生のお話を聴いて、平成14年当時、浜西先生のお名前をよく耳にした頃だったと思い返していました。近畿大学医学部の浜西教授のお名前は柔道整復師で知らない者はいないと言われています。柔整バッシングというのは何がどうなのか、臨床整形外科の先生方は一番何を怒っているのか、どうしてほしいのか、如何すべきかを理解していませんでした。今日、本音で言って頂いて、こういう機会を与えて頂きました。丁度一年前に大阪社団の副会長とこの勉強会に参加させてほしいとお願いしました。柔道整復が療養費である以上、整形外科の先生方とだけ話しても解決しない、最終決定権は保険者の方が持っておられます。こういう形が良いのではというところも含めて腹を割って話をさせて頂きたい。
私どもの業界で一番まずかったと思うのは、見て見ないふりをしてきたということです。会員によく言われるのは、いま臨床整形外科医の先生の何処に行っても同意を全くしてくれないと。当会には協力指導病院という非常に柔道整復師頑張れといってくれる先生もおられますが、数年来、「同意したらだめ」という話の中で、逆にいえば患者さんにとって非常に良くないことで、かかえたくない患者もかかえてしまう状況が起こり始めていた。「どうして適正化が必要なのか」。今日は大阪柔道整復師会の今後の取組みについて考えてみたい。適正化は、行政・保険者側からすると金額を減らすことだというのが定説のように言われていますが、私自身、適正化というのは単にお金が安くなるという問題ではなく誰がみても「それはそうだ」といえるものが適正だと思っています。誰が見てもおかしいだろうというのは、やはりおかしいんです。
昭和63年に個人契約が認められて、柔整業界は大きな変革期を迎えました。昭和63年までは社団法人の柔道整復師会に入らないと保険の請求は出来ませんという非常に厳しい指導がありました。しかも大阪社団では1部位が当り前で2部位が多部位というのが私が入会した時代でしたが、既に業界内では自浄作用が必要だといわれていました。いま、恐らく大阪府下の接骨院の数は6500を上回っていると思います。しかし現在の大阪社団の会員は2000人を切り組織率は3分の1に達していません。というのは60人入って60人がやめていきます。オーナーに入れてもらった人は簡単にやめていきます。適正化の意味さえ分からない会員がどれだけ居るのだろうというプレッシャーで潰されそうになります。私が開業した時には、近隣の先生と労働災害の講習会を一緒に受けた時代でした。そういった近隣の先生方を講師に招いて怪我の勉強をさせて頂きました。しかし30年の間にそういった形が本当になくなってきました。柔道整復師はそれじゃダメだという先生も居ますが、そうではなくなってきたというのが現実です。
一番のキーワードになっているのは整形外科の先生方に連携してもらわないと患者さんのためにならない、保険者さんもやはり一番大事な被保険者、費用負担をしている被保険者の方の医療について、これからより良い形を作り上げていけるのではないか。それを大阪で作っていくというのが私にとって一番のモチベーションが高いところであり、これを頑張ってやっていこうということです。保険財政も厳しい、少子高齢化もどんどん進む中で10年後の自分はどうしているのかを考えてみてください。プライドのある柔整師になりましょうということで、業界自ら適正化を掲げても良いのではないかという思いで動いて参りました。「柔整師がおらんようになったね」と言われることは、私にとって非常に耐え難い話です。そんな中で、自分たちの後輩や子ども達が、沢山柔整師になっています。日本の民族医療であり伝統医療である柔道整復は心構えや魂だけではなく武道の精神も必要であると思っており、こういう良いところを残していきたい。
先ほど浜西先生が言われたように、ちゃんと可視化をしていかなければいけないということでこの取り組みを積極的にやっていくというのが適正化理念の発表です。中でも毎月往療のあった申請書は全部リストアップして、これはおかしいという往療の算定について毎月書き出し、全ての往療にチェックをかける体制を作る、これは簡単に出来ると思います。総会の場で「この理念は反対です。今でも飯食えないのにそんなことしたら終ってしまう」という意見もありました。でも大半の意見は逆で、当り前のことができていない業界に対して腹が立っているという人が沢山おられて少し安心しました。当会は平成23年に公益社団法人を取得して5年目になります。公益社団の取得が会員の意識改革のチャンスであったことは事実です。誰のための受領委任制度だという原点に戻ると、受領委任制度システム自体が元々柔道整復師のためのものではなく、患者さんのためのシステムだったということを考えると、やはり会員の先生方の所に来ている患者さんを如何大事にしていくかを考え、そして保険財源のことをしっかり考えましょうと。私が役員になった頃に健保連の人に言われたのは、「この受領委任制度について真剣に考えたことありますか?白紙委任の問題も信頼関係があって初めて成り立つ話です。そもそも支払側と患者さんと柔道整復師の間に信頼関係がなかったら成り立つものではない」と言われたことを思い出します。原点に戻って考えると、この受領委任払いというのは、特例的な扱いをされているもので、その特例は二度と生まれないと私は思っています。大事にしていくためには努力しかない。信頼関係をなくしてしまったらもう二度と復活はない。こうしろ、こうしたほうが良いという話をいただけることに感謝です。ややもすると臨床整形外科医会の先生方に「必要ない」と言われるかもしれません。でも勝負どころはやはり患者さんだと思っています。自分の信頼できる整形の先生を紹介させて頂くことで、患者さんはきっと信頼して来てくれると思います。先ほど浜西先生から「ゲートキーパー」という非常に良い言葉を頂き、会に戻って役員みんなでそれを目指してモチベーションを上げて「良いゲートキーパーになろう!」を掲げたいと思います。私は日本柔道整復師会の学術部長を務めておりますので、みんなで勉強しようということをどんどん考えて、もっともっとハードルを高くしていきたいと思っています。
また私共は平成19年から学校を開設し定員が30名と少数ですが良い教育をしていこう、人間力を身につけさせて倫理観のある柔道整復師を誕生させることを目指しています。是非興味のあるドクターの方がおられたら、講師料は安いですが、教授いただけたら助かります。浜西先生が話されたように、日本柔道整復接骨医学会は完全に独立した組織です。いろんな情報を発信して方向性を示していきたい。柔道整復師は営利を目的としないという原点に戻りながら大阪の良さを出し、地域の整形外科の先生とキチッと連携している、全国どこにもない独自の体制を示していきたい。これをやれば5年先10年先には一番拙い柔整業界といわれてきた大阪が、一番良い形が作れるのではないかという気がします。その可能性を持っていると思っています。大阪が適正化への努力をこれだけしたと示すことが出来れば、モデルとして国が取り上げてくれるのではないかという大きな期待を持っています。遣り甲斐があると思います。今後の取組みとしてはロードマップを作成し、具体的な内容を公表しながら数値化してHP上にアップしていきたいと考えています。よろしくご指導お願いします〟と結んだ。
○会場の保険者から〝こうして挙げられた適正化の理念は見守っていきたいと個人的には思っています。今日安田前会長がこの場に出られると聞いて、工程表を配布されると私は思っていましたが、具体化されていないのが非常に残念です。3月に適正化を発表されてから、もう7月です。民間ではこの段階で実行に移っていなければとても許されないことです。何時公表されるのか確認させて頂きたい〟とあり、安田氏は〝遅れた1つの原因は、大阪社団の総会があり、今の執行部で継続してもらう必要がありました。結果、同じ考えで継続してやってくれるということで、少なくとも7月中には中味を検討してオープンにしていきたいと思っています〟と答えた。
講演の他にも「柔整療養費適正化のために必要なこと」と題した事例発表及びパネルディスカッション、質疑応答が行われ第2回療養費適正化勉強会は終了となった。
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