公益社団法人日本柔道整復師会 長尾淳彦学術教育部長に聞く!
新型コロナウイルス感染拡大で全国民が苦しい状況にある中、公益社団法人日本柔道整復師会が同会会員および患者である国民を守るために大々的に支援を行っていることは、すでにホットニュースでもお伝えしているとおりです。(『会員を守る!(公社)日本柔道整復師会の取り組み』参照)
今回は、この支援に中心となって取り組んだ(公社)日本柔道整復師会・長尾淳彦学術教育部長にお話を伺った。
- 新型コロナウイルス感染症に対する公益社団法人日本柔道整復師会の会員支援について
- アフターコロナ、ウイズコロナの柔道整復師業界について
- 「請求代行業者」と「復委任」について
ー新型コロナウイルス感染症の影響で入手困難な時期にマスクや消毒液を公益社団法人日本柔道整復師会は凄く早く凄いスケールでの会員支援を行われましたね!
令和2年3月31日に公益社団法人日本柔道整復師会内に新型コロナウイルス感染症対策本部(本部長:工藤鉄男 公益社団法人日本柔道整復師会会長)を設置しました。工藤本部長から私に「日整会員支援部隊の隊長を命ずる。直ぐに不足しているマスクや消毒液を手配して会員支援を行え!患者さんと会員を救え!」と連絡がありました。日整が持つ、あらゆるルートと交渉してマスク16万枚、弱酸性次亜塩素酸水16,000ℓを確保しました。次はいかに早く16,000の会員施術所と47都道府県の事務局職員の手元に物資を届かせるかを日整事務局職員と昼夜問わず検討しました。全てを47都道府県事務局に送っての配布では都道府県事務局の負担を強いることになるので16,000施術所に直接送るように梱包を手配致しました。大型倉庫を貸し切っての徹夜作業でした。
その支援物資は、マスク10枚、接骨院向け感染対応マニュアルや雇用調整助成金制度の活用に対する支援案内、東京都医師会のご協力により感染拡大防止マニュアルポスターや感染症対策ポスターなども同封出来、日本全国品薄時の4月末に会員施術所に届き、感染拡大防止に非常に役に立ったと会員並びに47都道府県事務局職員に大変喜ばれました。弱酸性次亜塩素酸水は20ℓ缶800個を47都道府県の支部単位で身近で配給出来るシステムにて支援致しました。
会員支援第1弾としては及第点をもらえると思っています。これも、「柔道整復術を必要とする患者さんとそれを提供する会員の為に!」という強い想いが会員支援に関わった全ての人にあったからだと思います。
ーアフターコロナ、ウイズコロナの柔道整復師業界について教えてください。
日本柔道整復師会では、4月施術分の前年比を調査しましたが50%以上減の施術所が25.4%、4000施術所あり、全国平均の減少率は30.9%ですから何も講じなければ、相当数の施術所が継続不能となる可能性があります。5月施術分は更なる患者減となるでしょう。しかし、日本柔道整復師会では、持続化給付金、雇用調整助成金、緊急融資などの案内と制度活用の支援、日本柔道整復師会独自の支援を47都道府県事務局とで協調して行い、会員施術所を絶対に潰さないという覚悟で会員支援に取り組んでおります。
柔道整復師業界でも「三密」対策など、感染拡大防止が強いられます。施術所内のレイアウトもスタッフや患者さんの院内動線もこれまでのコンパクトで纏まったものでは対応出来ません。消毒液やパーテーションなどの感染拡大防止器具の設置などランニングコストも相当額になります。コロナウイルスが無くなるわけではありません。ゼロリスクでは無いので感染拡大防止のコストは、施術所にとっては常に必要なコストとなります。
待合室での「三密」対策も考えなければなりません。骨折、脱臼など急患への三密対応もしておかなければなりません。継続患者対応としては、待合室や施術のエリア管理、時間管理が必要となり、予約システムが主流となるのでしょうか。
そして、これからの患者さんの接骨院選びの選択肢の一つに「コロナ対策がされている」が入ってくると思います。
日本柔道整復師会では、「日整施術ガイドライン」の小冊子を作成して、「いつでも」「どこでも」「どなたでも」が安心安全な施術を受けられる環境整備に努めます。
アフターコロナ対策、ウイズコロナ対策も準備して日整会員施術所の事業継続を全力でお手伝いします。それが柔道整復術を受けに接骨院にお越しになる患者さんである国民の皆様への貢献だと考えております。
今回の未曾有の外出自粛による接骨院の患者減、収入減に対して、日本柔道整復師会では、前述した会員支援により絶対に会員施術所は潰さない覚悟で取り組んでいます。
ー「請求代行業者」についてはどうでしょうか?
全国に2-300あると言われる請求代行業者に療養費の請求や振り込み手続きを依頼されている柔道整復師の皆様は、これを機会に柔道整復療養費の制度を今一度考えていただきたいと思います。
前述したような「日本柔道整復師会 会員支援」が、行っているような支援が、皆様が請求を代行している業者からありましたか?
〇〇協同組合や●●柔整協会などと称する請求代行業者に請求業務を委任している柔道整復師の皆さんが定率会費や定額会費として支払われている手数料がいったい何に使われているかを請求手続きを委任されている請求代行業者に問いただされればいいかと思います。是非、問い合わせてください。
日本柔道整復師会並びに47都道府県社団は公益社団法人という性質上、非営利で公益事業を行うことが本来の役割です。従いまして内部留保についても基準があり行政の監督下にありますので、日本柔道整復師会並びに47都道府県社団の資金を会員へ直接現金補助に支出するのは難しい。
公益社団法人は会員からお預かりした会費の50%を公益目的事業に使っております。国民の体位向上、青少年健全育成、柔道整復師の振作高揚、保険制度達成への協力など国民医療の向上に役立ち、柔道整復師の地位の確立のために使われております。日本柔道整復師会の会員の為だけでなく日本の全柔道整復師の為に公益目的事業50%は使われております。
本来、患者さん(被保険者、世帯主)に帰属されるべき療養費を受領委任の取扱いの途中で事務手数料や定額会費、定率会費と称して徴収することを何の担保も無く実態もわからない請求代行業者が出来るのでしょうか?
施術者は勿論のこと患者さんの個人情報の取扱いはどのようになっているのでしょう。
また、現在、いわゆる患者さん(被保険者、世帯主)に帰属されるべき療養費が何の担保も無く実態もわからない請求代行業者が保険者に請求し、請求代行業者の口座に振り込まれています。もし、この請求代行業者から患者さんから受領委任の取扱いを委任された柔道整復師のもとに療養費が入金されない場合の責任は誰が負うのでしょう?多分、こうした事例が発生する状況です。
自分が柔道整復師になり一生の職業として患者さんの為に尽くしたその対価が前述したような「請求代行業者」の利益に吸収されています。平成になり起こった「柔道整復師の不正問題」の諸悪の根源はこの「請求代行業者」がらみのものであります。
昭和63年7月14日から社団法人日本柔道整復師会会員以外の柔道整復師も地方厚生(支)局長、都道府県知事との間で契約を結ぶことにより(社)都道府県柔道整復師会の会員と同様の取扱いができることとなりました。これは間違ったことではありませんが、下記の表の確約書にあるようにその確約を地方厚生(支)局長、都道府県知事としているのは施術管理者の柔道整復師であるということ。柔道整復療養費受領委任がはじまってからある協定は、公益社団法人都道府県柔道整復師会会長と地方厚生(支)局長、都道府県知事との間で契約を結ぶ三者協定であり、受領委任における支給申請書の取扱いは公益社団法人都道府県柔道整復師会会長経由で行うようになっている。しかし、規程の確約書には、〇〇協同組合や●●柔整協会などと称する請求代行業者は関与していない。それなのに〇〇協同組合や●●柔整協会などと称する請求代行業者が柔道整復療養費を取りまとめて保険者等に請求すること.本来、被保険者(世帯主)に帰属される療養費を「申請書の支払い機関欄に記載された支払機関に対して療養費を支払うこと」を盾に保険者等がまとめて何の担保も実態もわからない請求代行業者に振込すること.返戻や不支給の申請書についても施術管理者である柔道整復師でなく請求代行業者に返戻していることに法律の立て付け上、問題はないのか?と杞憂しています。
私は、柔道整復療養費の受領委任の取扱いは公益社団法人日本柔道整復師会会員と会員外(地方厚生(支)局長、都道府県知事との間で契約を結んでいる施術管理者の柔道整復師)が行えるものと思っています。〇〇協同組合や●●柔整協会などと称する請求代行業者は規程の中に存在しません。
保険者などは公益社団法人日本柔道整復師会以外を「他の団体」と言われます。他の団体とは、柔道整復療養費の請求代行業者のことと推測しますが、後で詳しく述べますが、日本柔道整復師会並びに47都道府県社団とこの請求代行業者とを同列に請求団体と考えておられますが全く違うものです。開業をしている柔道整復師ですらその違いを分かっていません。
ー令和2年2月28日の第16回柔道整復療養費検討専門委員会において「復委任」の在り方を検討すべきとの意見があり、4月22日の第17回柔道整復療養費検討専門委員会でも「復委任」についての議論が若干ありましたがどうお考えですか?
基本的にはここでいう「復委任」の件は、健康保険法等の療養費の法律の立て付けに沿って行われなければならないと思います。 柔道整復師の施術、あん摩・マッサージ・指圧師の施術、はり師、きゅう師の施術、治療用装具の支給、生血代、移送費など「療養費の支給基準」(社会保険研究所)に下記のように記されています。
柔道整復療養費の請求は
被保険者等が柔道整復師の施術をうけた場合の費用は療養費として支給されるが、この取扱いは、他の療養費の場合にくらべて若干相違がある。すなわち他の療養費の場合は、被保険者等がその施術に要した費用を施術者に直接現金で支払った後に、その支払額を証明できる書類を添付した申請書を保険者に提出して療養費の支給をうけるのであるが、柔道整復師の施術に要した費用については、各保険者から受領委任にかかる委任を受けた地方厚生(支)局長及び都道府県知事(以下「地方厚生(支)局長等」という。)と(社)都道府県柔道整復師会との間で行われている協定に基づき、被保険者は施術者に対し直接現金を支払う代りに、被保険者がうけるべき療養費の受領を施術者に委任する取扱いが従来から一般的に行われている。従って、この協定を結んでいる保険者に属する被保険者等はその協定の相手方である柔道整復師会に所属する柔道整復師については、一般の保険医療機関に受診する場合と同様の形で、その施術をうけることができる。また、(社)都道府県柔道整復師会の会員以外の柔道整復師については、地方厚生(支)局長等との間で契約を結ぶことにより(社)都道府県柔道整復師会の会員と同様の取扱いができることとなっている。すなわち、被保険者等が一部負担金に相当する額を柔道整復師に支払い、被保険者等から受領の委任を受けた施術者が、保険者に療養費を請求する仕組みである。
しかし、この場合においても、療養費を被保険者に支給していることには変わりない。
柔道整復師の施術に係る療養費について(協定―規程)対比表
<2020.6.1 長尾淳彦氏 作表>
※上記画像をクリックするとPDFが表示されます。
上記の中には確約にある受領委任の取扱いを希望する施術管理者である会員は、様式第1号により、本協定に定める事項を遵守することについて、甲(厚生(支)局長)、乙(都道府県知事)及び丙(都道府県柔道整復師会会長)に確約しなければならないこと。
規程は、受領委任の取扱いを希望する施術管理者である柔道整復師は、様式第1号により、本規程に定める事項を遵守することについて、施術所の所在地の厚生(支)局長と都道府県知事に確約しなければならないこと。 また、日整会員に対しては、保険者等又は国保連合会は、申請書の事前点検を行い、申請書に不備がある場合は、丁(様式第3号により丙を経由して登録された当該会員)が所属する各都道府県社団法人柔道整復師会長を経由して丁に返戻することとあり、日整会員外には、保険者等又は国保連合会は、申請書の事前点検を行い、申請書に不備がある場合は、施術管理者に返戻すること。
「請求代行業者」はどこにも存在しない。
療養費の支払いにおいては、保険者等は、申請書の支払い機関欄に記載された支払機関に対して療養費を支払うこと。(この35は平成8年6月版には記載が無く平成11年度版には32として記載されるようになった) とありますが、日整会員施術者は、各都道府県社団会長委任により支払うことは可能ですが保険者等が日整会員外施術者に対しては、請求代行業者に支払うことは冒頭話したように「復委任」の件は、健康保険法等の療養費の法律の立て付けに沿って言えば出来ないことだと思います。
柔道整復療養費検討専門委員会という平場でもっともっと議論すべき問題だと思います。
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