HOME トピック ☆必見!! ☆ビッグインタビュー どうなる柔整業界?当事者・有識者等に聞いてみた!『来たる2030年代の危機に対して今から準備を進めることが重要であり、健康寿命の延伸に役立つ柔道整復師の役割はますます大事になると考えます!』

☆必見!! ☆ビッグインタビュー どうなる柔整業界?当事者・有識者等に聞いてみた!『来たる2030年代の危機に対して今から準備を進めることが重要であり、健康寿命の延伸に役立つ柔道整復師の役割はますます大事になると考えます!』

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元厚生労働省大臣 武見 敬三 氏

2025年1月26日付け朝日新聞をはじめ大手新聞各紙朝刊に『2030年代の危機に、いま備える』と題した元厚生労働省大臣で自民党参議院議員会長・武見敬三氏の記事が一面に掲載された。少子化と超高齢社会問題に限ることなく、都市部と地方の状況は著しく変化する中、どのような対策を国はとろうとしているのだろうか?
また、柔道整復師は今後の社会にどのような役割を果たしていけるのか?武見敬三氏にお聞きした。

―2025年1月26日付朝刊の「2030年代の危機に、いま備える」を拝見しました。15年後の2040年では65歳以上が全人口の35%になり、労働人口は2020年から2030年の10年間で約433万人、さらに2040年までの10年間でそのおよそ倍の860万人が減少するという予測すらあります。労働人口の減少は社会構造や経済環境の変化にも繋がり、その確保は喫緊の課題であり、抜本的な解決を目指して今すぐ全力で取り組む必要があると申されています。どのような解決策があるのでしょうか?

繰り返しになるようですが、2020年代の10年間だけで15歳から64歳までの生産年齢人口が433万人消滅します。しかも2030年代の10年間は加速化して放置していれば860万人強消滅します。また、高齢者の人口は、都市部例えば東京・神奈川・埼玉・千葉といった東京圏では2040年を過ぎても増え続けます。一方、地方の多くは高齢者の人口も既に減少に転じており、地方の市町村の人口がどんどん減り続けていくという現象が進むことになります。従って保健・医療・介護のニーズも都市部を中心に大きく需要が増えますが、地方は逐次減少していくという構図になっていきます。しかし、その中で過渡期の現状で、過疎地医療というのが大きな政治課題になってきており、数千人規模の住民でもプライマリーヘルスケアの医師が居ないといった深刻な問題が起きております。同時に、過疎地の医療はいわゆる個人経営の診療所が中心で今まで行われてきていた訳ですが、そういうところのお医者さんももう70代になってきておりますので、あと2,3年経つとかなりの方々が辞めていかれることになりますし、その後の後継者がおりません。後継者がいないのには理由があって、若い世代にとってみれば、これから患者さんがどんどん減っていく地域で開業しても経営の見通しが立たない。更にはお子さんの教育も都市部と比べるとしっかりした教育がうけられないのではないかという不安感等があります。従ってやはり中々若い世代がそういった所では開業したがりませんし、開業しても個人経営ではもたないということになってきます。

人口が減少して保健・医療・介護の需要も減少していく中で、公的なサービスというものを柔軟に設計し、必要がなくなれば徐々に縮小していくことが出来るような仕組みを今から作っておかなければなりません。他方で、いわゆる大都市圏等では超高齢社会が出現します。今年の2025年で、団塊の世代が全て75歳以上の後期高齢者になりますが、今は長命ですから10年後の2035年頃には多くの方が85歳以上になります。なにしろ2030年代は、都市部を中心に超高齢社会が発生します。また超高齢者の中で独居老人の数も急激に増えます。しかも85歳以上の独居者の7,8割は女性ということになります。考えてみればわかることですが、過去における高齢化の問題というのは、特に地方を中心に高齢化が深刻な課題として生まれていた訳で、それに対処していた時代の高齢化対策は、まだまだ地域社会が機能していてお互いの助け合いの機能もありました。核家族化もある程度のところまでで、やはり親のサポートも行うというような、介護のために自分の職業を投げうってしまうというような方までもが出てきていた時代です。ところが、近未来の都市部中心の超高齢社会というのは、そういった地域社会でのお互いの助け合い機能というのは著しく希薄化しており、都市部では隣に誰が住んでいるのか知らないなんていう話はままある訳です。というように支え合いの家族機能も格段に落ちています。そういう中で起きる超高齢社会というものが10年後に出現することを見越して、今の時点からどういう準備を我々はしておかなければならないのか。

つまり、都市部における保健・医療・介護の体制づくりと、地方が減少していく中での体制づくりというのは自ずから著しく異なる仕組みになっていくことが今の時点から想定されます。いま、2040年を目途に厚生労働省で地域医療構想というのを各都道府県に作ってもらうということを行っています。従来の地域医療構想の枠でどこまで実際にこうした都市部と地方の違いというものを全体として把握をして、そして其処に必要な財源の配分、或いは人材の配分が出来るのか。また、その中で地域毎の医師の偏在とか、或いは診療科ごとの医師の偏在等、そういった問題もやはり解決していかなければなりません。そういう意味では大変な歴史の過渡期に今日本は居るんだという認識が必要です。私は非常に危機意識を持ったからこそ、新聞掲載をして頂きました。「2030年代の危機にいま備える」というテーマで、皆さんに〝これは大変ですよ。近未来、2040年くらいを見通して考えなければなりません〟と警告を発した訳です。

―また武見先生は、2030年代に向け、私たちに求められることとして、もっとも大切なのは「健康寿命の延伸」であるとされ、ヘルスリテラシーを向上させて正しい知識を身につけ、自分の健康を正しく守る「セルフメディケーション」の考えが重要になると言われておりますが、そのお考えについてもう少し具体的に教えてください。

これは、物凄く大きな課題です。要は2030年代の超高齢社会や地方の状況も踏まえて、保健・医療・介護の政策上の何が一番大事な目標になってくるのかといえば、「健康寿命の延伸」です。ただ単に健康で長生きすれば良いというだけではなく、その人達がより長期間社会で活躍出来て、仕事も継続して、そして一定程度の所得を自ら確保して、年金に出来るだけ頼らずに生きていける期間を長くするということが必要になってきます。ただし、その大前提は、健康寿命の延伸です。従ってこれからの10年間というのは、過去の10年以上に健康寿命の延伸が重要になってきます。同時にいわゆる「働き方改革」も更に促進させて、多様な働き方が出来て、年齢に応じていろいろな生産性の高い仕事に就く人もいれば、或いは自宅でやれるような仕事に就く人もいるという、いろんな働き方が出来るようにしなくてはなりません。ただし、その大前提は、やはり健康寿命を延伸させないとそもそもそれが出来ないということになります。

― (公社)日本柔道整復師会・社団法人設立70周年記念式典で武見先生は〝健康活躍社会を作る上で、存分にその役割を果たしていただきたい〟と祝意を述べられ、また(公社)日本医師会の釜萢副会長の特別講演では〝日頃の施術では、患者さんにどう寄り添い、求めに応えていくかが問われます。こうした積み重ねが患者さんの受診という結果につながってくるのです。今後、柔道整復師と医師が連携を深めることは重要〟と話されています。やはり、今後の健康活躍社会において柔道整復師の施術は必要とされると思っておりますが、武見先生のお考えをお聞かせください。

健康寿命の延伸に重点を置くということは、やはり健康リテラシーが更に向上して、国民一人一人が正しい健康維持管理をする知識を身に付けて、食生活や運動を通じてその健康寿命の延伸に努めることが期待されます。これはお一人お一人の自覚が極めて強く求められることになります。昔、福沢諭吉という方が〝一身の独立なくして国家の独立なし〟と喝破されましたが、まさに一身の健康なくして、健康活躍社会は生まれない。柔道整復師の方々は、やはり日本の国民の生活に密着して育って来た我が国の伝統的な医術ですから、それをいかに健康寿命の延伸と結びつけるか。そういったことを寧ろ政策的に柔道整復師会の皆さんと医師とが連携しながら、特に中高年層を対象にしてお考えになったら新しい役割を作れるのではないでしょうか。

―2月6日に(公社)東京都柔道整復師会と浜田山病院において医療連携の調印式が行われました。武見先生は、このような連携についてどのように思われますか?

柔道整復師の先生方は、国民生活に密着している分野で皆さん施術をされている訳ですから、柔整の皆さん方が医師の診断と治療を求めたほうが良さそうだという患者さんが来た時には、そういう働きかけをされることが、医療と柔整の連携機能として期待できると思います。そもそも柔整は脱臼と骨折について施術する時には医師の同意が必要だという風になっている訳ですけれども、高齢化が進展すると高齢者の施術が増える訳です。高齢者というのは、いろんな病気を抱えていますから柔整の皆さんが医療機関と連携をして、そうした人達のニーズを上手に医療機関と連携して吸い上げていって、そういう人達の早期の治療や健康の回復に役立つようにする一環としての機能を果たすというのは、正しい在り方であると思います。

―柔道整復療養費検討専門委員会の委員である健保連の幸野参与からメッセージを戴きました。その中で〝健保連の試算では、2040年の国民医療費は、今の1.5倍の約73兆円程度になると推計され、このまま放置すれば国民皆保険制度は2040年までに崩壊するでしょう。・・・・柔道整復療養費、按摩ハリ灸マッサージの保険給付の在り方も根本的に見直す必要があるというのが私の考えです。・・・・今後もプレイヤーとして存在するのであれば業界全体の意識改革により、保険者や国民からの支持と信頼を得るしか道はないと思います〟等、仰られています。武見先生は幸野参与のお考えについてどのようなご意見をおもちでしょうか?

今の制度のままではもたないというのは確かです。ただし、私はもっと歴史的に考えます。これは私の父が言っていましたけれども、漢方というのは中国から渡来したもので、西洋医学は西洋から渡来したものであると。しかし、柔道整復師というのは、日本の武術の中から医術として編み出されてきたものであり、そして国民の生活の中に定着をした純粋に我が国の国内における民族医学であると話しておりました。だからこそ国民生活に密着した施術として今日に至るまで、国民の健康増進に繋がる役割を果たしておられる訳です。そうした歴史的な文脈の中からも私は将来に向けて、こうした柔道整復師の役割というものは寧ろ健康寿命の延伸に役に立つ方向で従来の役割は引き続き期待されるものであると考えています。つまり、柔整の皆さんの施術というのは、国民の健康の増進に資するものであるということです。従って現在の医療保険制度の下でも療養費の支給対象とされているのです。この考え方は、私は昔も今も全く変わりはありません。

―更に幸野氏は、〝我々保険者は、真面目に取り組まれている施術者の方を守っていくためにも不適切な施術や不正請求をする施術者を、一緒になって協力して防ぐということを考えています。・・・・我々が提案していることは、柔整師の方々が国民からの信頼を得るためにも必要なことを保険者の立場で言わせていただいているので、我々の意見に耳を傾けて頂きたい〟とのことでした。今後柔道整復業界はどのような意識改革をすべきであるとお考えでしょうか?

柔整の皆さん方も国民にとって安全安心で質の高い施術を提供する努力を常に継続して行っていただきたいと考えております。やはり、不正請求等に関しては、業界としてもしっかり適正化に向けて取り組んでいただきたいという風に私は思います。例えば、大阪府の柔道整復師会で療養費の不正請求排除を目的として、療養費適正化特別対策班を組織して定期的に療養費適正化特別対策班会議を開いていると聞いておりますので、こういうことは大いに行ったら良いと思います。

―(公社)日本柔道整復師会元会長・工藤鉄男氏がインタビューで、〝社会保障の中で柔道整復師が必要とされることがあるならば、どういうものがあるのかということを全ての柔道整復師並びに社会保障に精通した人達がいろんな議論をする場所を作る必要があります。そうでなければ、柔道整復師が社会保障の中での立つ位置がいつまでもあやふやな状況が続く恐れがあります。日整の常識が社会保障制度の中の非常識にならないためにも知識・見識・胆識を持った人達を集め、今こそ業界を前進させる努力を協定団体である日整に求めて、新しい業界の景色を観れるように皆さん頑張ってください〟と話されました。やはり、こういった有識者会議というのは重要と思いますが、武見先生のご意見をお願いします。

現役の社団の人達がそうした仕組みを作ってちゃんとやるべきでしょう。昔、水野肇さんという医事評論家の方が、そういった会議を作ってやっておられました。私もそのメンバーの一人でした。

社団の皆さん方が会員をしっかり増やして、また個人経営の皆さんともっとしっかり繋がって、その上でそういった有識者会議のようなものを作って将来に備えるというようなことを是非社団がおやりになると良いと思います。そういう風にされればきっと上手くいくのではないでしょうか。出来る限り社団も個人経営の皆さんもしっかりと連携をして、業界一丸となってこれからの時代状況に対応できるように努力されることを私は期待しています。

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