HOME トピック ☆必見!!どうなる柔整業界?有識者に聞いてみた!◇柔道整復療養費検討専門委員会の委員である健保連参与・幸野氏からのメッセージ

☆必見!!どうなる柔整業界?有識者に聞いてみた!◇柔道整復療養費検討専門委員会の委員である健保連参与・幸野氏からのメッセージ

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健康保険組合連合会 参与 幸野庄司 氏
健康保険組合連合会 参与 幸野 庄司 氏

20121019日に第1回「社会保障審議会医療保険部会柔道整復療養費検討専門委員会」が開催されて以来、今年の426日の開催まで29回を数える。非常に透明性の高いプロセスで審議を行い、中・長期的な視点に立った療養費の在り方の見直しについて検討を行うというのが専門委員会設置の趣旨である。しかしながら、不正防止策への対応について委員会における施術者側、保険者側の主張には未だ大きな隔たりがあり、道筋を見いだせていないのが現状である。

近年、専門委員会で「公的保険制度のなかで療養費の適正化を図るには、受領委任制度の下ではもはや限界である、療養費の原則である償還払いに戻すしかない」と厳しい意見を提唱される柔道整復療養費検討専門委員会・委員であり健康保険組合連合会参与の幸野庄司氏にインタビューを試みたところ、「真面目に取り組まれている施術者の方々を守るため保険者と施術者が一緒になって協力し防ぐということを考えています。医療保険制度のプレイヤーであり続けるのであれば、保険者の意見にも耳を傾け、全ての施術者が安全で質の高い施術を提供し、真に国民の信頼を得るよう業界自ら意識改革を行っていただきたく率直な意見を述べている〟」と述べた上で、今後の柔整あはき業界へのメッセージをいただいたので、掲載する。

メッセージ 

いま我が国の社会保障は、当面の課題として団塊の世代が後期高齢者となる「2025年問題」と、究極的な課題としてその15年後にピークを迎える「2040年問題」があります。2040年の年間の死亡者数は約160万人、出生数は約70万人と推計されており、人口は現役世代を中心に減少し、高齢者3人に1人が65歳以上、4人に1人が70歳以上といった超高齢社会になると見込まれています。

この「2025年問題」と「2040年問題」を比べると、「2040年問題」というのは、次元の異なる最大の局面を迎えることとなります。直近の国民医療費は、約47.3兆円ですが、健保連の試算ではこの2040年の国民医療費は、今の1.5倍の約73兆円程度になることが推計されています。このまま放置すれば国民皆保険制度は、2040年までには崩壊するでしょう。

制度の崩壊を回避するために何をすべきか。私の持論では、現行の医療保険制度について「聖域なき構造改革」の断行です。医療提供体制、診療報酬制度、医師の偏在、生活習慣病の治療、予防、医薬品の保険収載の在り方など、今の制度を抜本的に変えていく必要があり、あらゆる場面でこれを提言しています。

その中で柔道整復療養費、按摩ハリ灸マッサージの保険給付の在り方も、根本的に見直す必要があるというのが私の考えです。正直に申し上げて、2040年を迎えて柔整あはきの施術が、今のまま当たり前のように保険給付されているようでは、国民皆保険制度は間違いなく崩壊しているでしょう。業界の方々は、近い将来訪れるこの現実にどのような危機感を持ち、これからどう向き合おうとしているのでしょうか。

それでは柔整あはき業界に未来がないのかと言えば、そうではないと思います。現役世代が減少し、高齢者が増加する時代が到来します。超高齢社会になれば国民の疾病構造も自ずと変化します。急性期の疾病の減少、回復期・慢性期の疾病の増加、在宅療養のニーズも増大します。柔整あはき業界の対象患者は、約半数以上が高齢者で在宅療養にも柔軟に対応できるこの業界の特性を踏まえると、この需要は自ずと増大するでしょう。そのなかで、柔整あはきの施術の安全性と質が担保され、真に国民の信頼を得ることが出来れば、医療の一部を補完的に担う時代が訪れるかもしれません。

そのような時代に柔整あはきがどのような存在であるべきか、そのためにこれからどのような業界を構築し、真に国民の支持と信頼を得ていくかについては、今から真剣に考えておくべきです。明確に言えることは、現状が今後もそのまま継続するようであれば残念ながら医療保険制度のプレイヤーからは退場を余儀なくされるでしょう。患者は増加する訳ですから、医療保険制度の財源を見込まなくても存在価値は示せるという考えであれば、それも選択肢だと思います。今後もプレイヤーとして存在するのであれば業界全体の意識改革により、保険者や国民から支持と信頼を得るしか道はないと思います。

全てとは言いませんが、一部の施術者は違法な広告で国民を誘引し、患者の状態に相応しくない施術を行い、受領委任という不透明な請求、支払い制度を悪用した不適切な請求をする、それでも国民は医療保険制度を使うと、安価で手軽に施術を受けることができるため、後ろめたさを感じつつも通いますが、それでは真の信頼は得られないでしょう。全ての施術者がそうでないことは充分理解していますが、一部でもそうであれば業界自体が信用を得られないのです。

私の通っている施術者は、医師の治療とは異なった理論で心身の状況を把握され、施術方針を丁寧に説明された上で納得のいく施術を行われます。患者に向き合って誇りを持って施術されるので自然とそこに信頼関係が生まれ、医療機関の治療では到底得られない効果を体感します。そういった満足感の高い施術に対して、相応の対価を払うことに惜しいと思ったことは一度もありません。多くの国民がこのような印象を持てば柔整あはきの業界も、国民の健康を維持していくためのある意味貴重なインフラとなることも出来るのではないでしょうか。これから厳しい超高齢社会を迎えますが、真に価値のあるものは確実に生き残り、そうでないものは、自然に淘汰されるのが世の常です。

今年の3月に行われた療養費検討専門委員会で、私は以下の内容を申し上げました。

「我々保険者は、真面目に取り組まれている施術者の方々を守っていくためにも不適切な施術や不正請求をする施術者を、一緒になって協力して防ぐということを考えています。そのことは、未来志向の信頼関係を築く第一歩であり、柔整師業界を守っていくことにも繋がるのではないでしょうか。我々が提案していることは、柔整師の方々が国民からの信頼を得るためにも必要なことを保険者の立場で言わせていただいているので、我々の意見に耳を傾けていただきたい」。

これが本当に伝えたかった業界へのメッセージです。今後、厳しい環境の中で国民皆保険制度を維持していくためには、制度に携わるそれぞれのプレイヤーに適応した役割があると思っています。柔整あはき業界もそのインフラの一翼を担う意思があるのであれば業界全体の意識改革で、国民にとって安心安全で質の高い施術を提供していただき、信頼を得る努力をしていただきたいと思います。

目指しているものは真逆ではないと思います。お互いの意見に耳を傾けることが大切です。

以上

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