公益社団法人日本柔道整復師会「匠の技 伝承」プロジェクト指導者養成講座開講式が開催
令和3年7月11日(日)、日本柔整会館(東京都台東区)において、『公益社団法人日本柔道整復師会「匠の技 伝承」プロジェクト指導者養成講座開講式』が開催された。
「匠の技 伝承」プロジェクトは、柔道整復術公認100周年を記念し、骨折・脱臼の整復・固定や超音波観察装置による判断力向上およびそれらの技術の伝承を目的として、2019年より開始された事業だ。これまで講習会はたびたび開催されてきたが、今後は各地域で「匠の技」を指導するための指導者養成講座が開始される。今般のコロナ禍という状況を鑑み、この開講式はYouTubeで生配信され、受講者は全国の柔道整復師会や施術所から約200名がオンラインで参加する形となった。
なお、開講式は会員向けとして配信されたが、開講式終了後には会員外に向けたメッセージが送られた。
開催にあたり、(公社)日本柔道整復師会・松岡保副会長は〝この「匠の技 伝承」プロジェクト指導者育成は、施術における基本技術と考え方の指導の平準化を進めることを最大の目的としている。また、これまでは一子相伝として表に出ることのなかった技術を皆でシェアして、「匠の技」として後世に残していこうという事業だ。現在メジャーリーグで活躍するダルビッシュ有投手も、野球界全体のレベル向上のために、自身のボールの投げ方や握り方をネット上で惜しげもなく披露している。「匠の技 伝承」プロジェクトも同様のことが言える。ぜひ「匠の技」をマスターして、各地域で伝えていっていただきたい〟と開会の辞を述べた。
(公社)日本柔道整復師会・工藤鉄男会長は〝現在のコロナ禍という状況から抜け出した後の社会で、どのようにして存在価値を見出すか。我々はコロナ感染拡大以前からこのプロジェクトに取り組んできた。皆で一生懸命勉強し、コロナ収束後にも柔道整復師がコミュニティの中で必要とされる存在となるために頑張っていきたい。公益社団法人の会員だけではなく、個人契約者であっても柔道整復師として活躍しているひとであれば技術をしっかりと継承していける枠組みを作っていく予定だ。皆さん参考にしていただいて一緒に勉強し、社会に必要とされる職業にしていこう〟と挨拶。
(公社)日本柔道整復師会・三橋裕之副会長は〝今回は受講者のほか、各県社団の事務局の皆様にもご参加いただいている。「匠の技 伝承」プロジェクトは日本柔道整復師会挙げての一大事業だ。アフターコロナを見据えての情報発信方法として、今回はYouTubeで配信を行っている。今後は「匠の技 伝承」プロジェクトだけではなく、様々な講習会をこのような形で進められればと考えている。ぜひYouTubeでの配信に慣れていただいて、各県でもお試しいただきたい〟と各県の協力を仰いだ。
趣旨説明として、(公社)日本柔道整復師会・長尾淳彦学術教育部長は〝指導者候補者には本会会館に集まっていただき、対面による実技指導を行っていく予定であったが、コロナ禍のため、2021年に開催予定の4回はZoomまたはYouTubeを使ってオンラインで講習を行う。この開講式に参加されている先生方は各都道府県の指導者になる。ご自身が各都道府県の会員に対し指導または講習を行っていくということを念頭に置いて、配信方法等も含めてご理解いただきたい。この「匠の技 伝承」プロジェクトは単なるイベントではなく、10年をかけたビッグプロジェクトだ。「骨折・脱臼の治療は接骨院で」そして「超音波観察装置を柔道整復師のものにする」ということを最大の目的としている。これは本会の執行部だけでは到底できるものではなく、柔道整復師全体で取り組むべき事業と考えている。今後、各地域において講習が行える状況となったら、本会会員外の方にも受講していただけるようにしていきたい。
本プロジェクトは、「匠の技」をただ見て真似るのではない。しっかりと習得して伝授し、そして患者に還元していくという大きな取り組みであり、皆さんはその指導者になるということで責任感を持ち、熱意ある施術のプロフェッショナルとなっていただきたい。「日整水準」として、いつでもどこでも全国津々浦々で均一の技術で施術を提供することが我々の使命だと考えている。安心して施術を受けていただけるようになってはじめて信頼が生まれ、患者の来院増加や経営の安定につながると考えている〟とした。
続いて今後講習会を実施するにあたっての学習方法、課題、今後のスケジュール、注意事項等については、動画により説明が行われた。
総括として、工藤会長は〝本来であれば直接対面して実行していくことが一番だろうが、コロナ禍において主流となるであろうWEBで行っていく。本会が目指すのは、アフターコロナのコミュニティにおいて必要とされる存在となること。骨折・脱臼・軟部組織の損傷については「近くの接骨院に行けば安心できる」「老後のサポートもしてもらえる」という状況を作りたい。そのためにも本会会員に限らず、非会員であるすべての柔道整復師に対しても技術を提供するなどサポート体制を整えていく。また、業界で悩んでいる諸問題はすべて本会に相談していただければ解消できるようにしていきたい。本会はすべての柔道整復師の発展を願っている。悩み考えていることがあればぜひお知らせいただきたい。この「匠の技 伝承」プロジェクトは、必ず地域の方々に評価されるものだという信念をもっている。ぜひ一緒に地域住民に貢献していこう〟、松岡副会長は〝いつでもどこでも均一の施術を受けられるようにすることも目的のひとつだが、積極的に臨床経験を積み、勉強したことを様々なところで役立てていくことも大切。また、47都道府県を繋げるシステムも構築していきたいと考えており、協力をお願いしたい〟、三橋副会長は〝骨折・脱臼は養成校でも皆さん学習されているが、実際にはいろんなタイプの骨折・脱臼がある。このプロジェクトで失敗しない技術をしっかり学んでいただきたい。質問や疑問があればどんどん質問して、しっかりした技術を身につけていただきたい〟と纏めた。
閉会の辞として、長尾学術教育部長は〝骨折・脱臼を施術できるのは医師以外では柔道整復師だけ。これが保険請求をできる根幹となっている。これを捨ててしまってはいけない。今一度、骨折・脱臼の施術や超音波観察の方法を学び、高齢者の機能訓練や介護事業にも我々の持つ最大限の力を発揮して、柔道整復師業界をより活性化していきたい。皆さんとともに業界をよくしていきたいという趣旨を踏まえてご参加いただきたい〟と呼び掛けて、閉会となった。
開講式後には、会員外を含めたすべての柔道整復師に対するメッセージが送られた。
長尾学術教育部長:
学術教育部としては、現在日本柔道整復師会が持つ環境をフル活用して講習を行っていきたい。コロナ禍なので、対面とオンラインのハイブリッドでやっていきたい。コロナ収束後には対面で行っていけるプログラムを10年単位で計画している。ぜひ日本柔道整復師会会員だけでなく会員外の方にも参加していただきたい。
松岡副会長:
「匠の技 伝承」プロジェクト指導者養成講座は、技術的にも指導方法についても水準化を図るという目的がある。柔道整復の優れた技術を匠の技として後世に残していこう。これから講座を受講される先生方は匠の技をしっかりマスターして国民の皆様の役に立つよう努力していただきたい。
三橋副会長:
「匠の技 伝承」プロジェクトは、60~80代のベテランの先生から若い世代の先生方に臨床経験を伝承していくことを目的としている。失敗も含めて経験を伝えることで学校では伝えられないことも伝えていける。コロナ禍でもネット配信することで、会員だけでなく悩みを持って施術をしている個人契約者や、これから柔道整復師になろうとしている人たちにも伝えていけると考えている。
工藤会長:
柔道整復業界が未来永劫、隆盛を誇っていけるのかを考えたときに、骨折・脱臼の整復・固定の技術を伝承していかなければ存在価値がないのではないかという想いがある。現在、無資格者が開業し我々と同じような手当てを行っている状況であり、果たして捻挫・打撲の施術ばかりで、国家資格を持つ柔道整復師として認められるのか疑問。柔道整復師は骨折・脱臼の施術ができる伝統医療としてWHOにも認められている。にもかかわらず、骨折・脱臼の施術ができない柔道整復師が増えている。「匠の技 伝承」プロジェクトは、すべての柔道整復師が技術を継承できる内容にしていきたいと考えている。公益社団法人として、すべての柔道整復師の利益となるよう、個人契約者サポートセンターを開設し、経営や資金面、保険請求等に関する相談を受けられる体制を作っていきたい。皆さん悩みがあればぜひ日本柔道整復師会にご一報いただきたい。
「匠の技 伝承」プロジェクト指導者養成講座は9月より開始される予定だ。
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