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公益社団法人日本柔道整復師会「匠の技 伝承」プロジェクト2024年度第2回指導者養成講習会が開催

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2024年8月18日(日)、日本柔整会館(東京都台東区)において『公益社団法人日本柔道整復師会「匠の技 伝承」プロジェクト2024年度第2回指導者養成講習会(指導者評価確認講習)』が開催された。

指導者養成講習会

本講習会では、鎖骨骨折・肋骨骨折および肘関節後方脱臼を重点部位とし、本プロジェクトにおける指導者候補の柔道整復師を対象として、説明対応力を含む整復・固定技術、エコー画像描出操作技術の評価確認が行われた。

長尾会長

日本柔道整復師会・長尾淳彦会長は現在の業界最大の関心事とも言える、7月12日に開催された「第11回あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会」について触れ〝過去の検討会では「整骨院」を施術所の名称に使用するのは認められない方向性になっていると聞いていた方もいるだろう。しかし日本柔道整復師会と全国柔道整復師統合協議会に所属する全国約3万件の施術所を対象に調査を行ったところ、「整骨院」を名称に使用している施術所は約57%、特に西日本では70%以上にも及んでいたことから、前回の検討会にて再度「整骨院」の使用が認められるよう検討してもらいたいと日本柔道整復師会から要望書を提出した。結論として、今年中に発出される予定の広告ガイドラインには「整骨院」の使用可否については明記されないこととなった。具体的なガイドラインはまだ出ていないが、取扱いとしては従来通りとなる。ただし鍼灸等、柔道整復以外の施術も行っている場合は、業態で分けて記載する必要が出てくると思われる〟と説明。

森川伸治副会長

森川伸治副会長は〝先生方には特に重点部位8項目に対する施術をしっかりとご理解いただき、各都道府県の代表として若い世代の柔道整復師にその技術を伝えていただくという非常に大きな役目がある。我々柔道整復師は医師以外で骨折・脱臼の施術ができる唯一の職業であるということを再認識したうえで、何度も練習を重ねていただき、各地での講習会では先生方が中心となって柔道整復術を後世に伝えていっていただきたい〟と述べた。

徳山健司学術教育部長

徳山健司学術教育部長は〝この「匠の技 伝承」プロジェクトは単なる技術の継承ではない。国民皆保険制度の一翼を担っているという立場から、標準治療ガイドラインをしっかりと示し、そのエビデンスをもとに柔整療養費につなげていくという大きな目的がある。標準治療ができる、若い先生方からベテランの先生方まで同じ再現性のある施術ができるということは極めて重要なことだと考えている。先生方にはその点をご理解いただき、自県で指導者として技術講習会を行っていただきたい〟と改めて趣旨説明を行ったうえで、評価確認の方法について説明した。

合同実技実習

指導者評価確認に先立ち、小野博道講師、山口登一郎講師両名により指導者評価確認のポイントについて解説された。

小野講師

エコー観察を行う前に触診で骨折部位を確認すること。鎖骨骨折の場合、外側から肩関節の大結節から肩峰、そして肩鎖関節で鎖骨の外端から中枢の方に持っていくという形で描出していく。患者の前腕を大腿部に載せてポジションを作り、まずは大結節を描出する。長軸で大結節から中枢の方に向かっていくと、肩峰の線状高エコーが見えてくる。そのままずっと内側に入っていくと肩鎖関節が確認できる。そのまま鎖骨の方に持っていく。S字状の鎖骨に沿って中枢の方に線状高エコーが見えるようにプローブ走査を行う。この時、しっかりエコーが鎖骨にあたって戻ってくるように、プローブを直角に立てて描出するように気を付ける。次は短軸方向で観察する。鎖骨は胸鎖関節のところは円柱状、中枢のところは三角形、そして外側部は平らな形をしているので、そのイメージを持った上で描出していく。平坦な形の鎖骨の外端部から中枢の方に持っていくと、だんだんと丸みを帯びてくる。

肋骨骨折は第5肋骨から第8肋骨の部分に多いと言われている。限局性圧痛がある部分に印をつけておくと描出しやすい。気を付けてほしい点として、肋骨は呼吸していない時には下を向いているが、肋骨を上げてしまうと向きが変わってしまう。また、肋骨のすぐ下には胸膜があり肋骨と誤認しやすいが、肋骨を短軸像で描出すると丸みを帯びた肋骨の形が描出されるので判別できる。短軸像で確認できたら、肋骨を中心にプローブをピボット走査してクルッと回すと綺麗な線状高エコーが出てくる。

肘関節後方脱臼の観察は、まずは上腕骨の中央から短軸で観察する。その後に長軸で腕橈関節、腕尺関節を観察し、最後に内側上顆の裂離骨折、もしくはUCL断裂があるケースも多いため、その観察もあわせて行う。患肢は伸展位もしくは軽度屈曲位とし、上腕骨の中央辺りから確認すると少し尖ったような形の上腕骨のラインが線状高エコーで見えてくる。そのまま下ろすと段々と平坦化していき、関節面が出てくる。外側に行くと小頭があり、内側にずらすとM字型の滑車の部分が映し出される。次に腕橈関節を観察する。上腕骨の方からずっと下ろしていくと、少し凹みが出てきて小頭の山が出てくる。離断性骨軟骨炎(OCD)があると、小頭のラインが不正になる場合があるため併せて観察する。さらに下ろしていくと橈骨頭が観察できる。回内・回外して動けば橈骨頭、動かなければ小頭と判別できる。腕尺関節を見ると鉤状突起が欠損してしまっているケースもあるので、鈎状突起にエコーを当てた際にしっかりと映らない場合は少しプローブを押し付けるようにして観察すると良い。UCLの観察は軽度屈曲位で行うこと。内側上顆に当てると高い山が出てくる。少し移動して、鉤状突起の方にプローブを合わせてUCLの観察を行う。この時、プローブを骨のラインに対して10~30度程度の傾きを付けて当てるときれいに描出できる。

山口講師

鎖骨骨折の一人整復法には臥位整復法、坐位整復法があるが、今回は臥位整復法を用いる。まずクラビクルバンドを腋窩にあたる部分に枕子を当てたうえで仮止めしてから、患肢がベッドから出るように患者を臥位にて寝かせる。胸郭が拡大するようベッドには円柱状の枕を置いておく。臥位の患者を上部から見ると鎖骨がかなりV字型になっているが、この位置を得るように寝かせることが重要。これだけで一般的にはほぼ整復されてしまう。ただ、特に横骨折の場合などは末梢片と中枢片の間に軟部組織が噛む場合があるため、その時は指で中枢片と末梢片を持って軽く動かすと陥頓を除去することができる。患者を起こす際には肩甲骨間部のベルトを片手で持って胸郭が開いた状態を維持し、起こしたら増締めを行う。ベルトは肩甲骨の下角の下にかかるようにすることも重要。これで臥位整復法は完了だが、鎖骨骨折は1回だけでは整復位まで持ってくることが難しいため、大体10日から2週間を目途に徐々に増締めを行う。肩甲骨間部にタオル等を入れるとさらに胸郭が拡大する。最も重要なのは腋窩の管理で、しびれや痛みが出る場合は三角巾を使って提肘を行う。まず三角巾の線状のところを結び、肘の前の布を引き上げるようにすると肘部を介して上腕を持ち上げることができる。肘関節を介して持ち上げることで腋窩の締まりがなくなる。そんなに締めるつもりはなくても簡単に締まってしまうため、骨癒合までの間患者に苦痛を与えることがないよう、なるべく患者が楽な位置で固定するようにするのが肝要だ。

肋骨骨折の場合は、単発骨折の場合は殆ど整復の必要はなく固定のみ行う。固定にはバストバンドを使用する。ポイントは最大呼気時にベルクロを締める。さらに、上から3裂包帯で固定を行うと、患者にも安心感を与えられる。

肘関節後方脱臼では、前腕の近位端に母指全体をあて、脱臼肢位の上腕軸方向に末梢牽引する。残りの四指で陥頓が取れたことを確認しながら、指を上腕遠位端に持ってくる。肘頭と上腕遠位端で槓桿作用を働かせて、滑車に尺骨の滑車切痕が来るようにしてゆっくり牽引しながら屈曲する。前腕は牽引しやすいポジションで把持し、整復されたら必ず弾発性固定の有無を確認する。固定時は前腕中間位、肘関節90度とする。包帯は副子を患肢に固定する際は蛇行帯、中枢まで来たららせん帯、肘の周りは亀甲帯で巻く。包帯は肢位を固定するために巻くのであって、血行障害の原因となるため無理に圧迫はしない。三角巾は伸びない辺を内側、伸びるほうを外側にする。さらにアイスバックで肘窩および外側を冷やすと良い。肘関節後方脱臼は伸展障害が残りやすい疾患の1つであり、完全進展できるようにするにはアイシングも非常に重要になる。必ず出血を最大限に防ぐような方法を取ること。

その後、受講者は2人1組となり、整復固定・エコー観察の疑問点やコツなどをサポート講師に積極的に質問しながら意欲的に実習に取り組んだ。その後、指導者評価が実施された。A・B・Cの評価判定により総合でC評価となった受講者については再確認が行われる。

評価確認終了後、徳山学術教育部長は〝早朝よりお疲れ様でした。養成校を卒業してから対面で評価を受けるというのは滅多になく緊張されたかと思う。今、医学部ではOSCE(客観的臨床能力試験)が当然のようにある。柔整においても必要だ。今後、本日上手くいかなかった点、反省しなければいけない点は、テキストを見ながら繰り返し練習していただければありがたい。今後、先生方が自県で指導者として新たに若い先生方、またベテランの先生も含めてしっかりと指導していただけるように切に願っております。ご協力のほどよろしくお願いいたします〟と総括した。

竹藤敏夫副会長

また、竹藤敏夫副会長は〝「匠の技 伝承」プロジェクトも今年からは各県で講習を行っていただく。全国11ブロックで行われている学術大会でも先生方が中心となって実技を行っているのを見て、素晴らしい、よく出来ていると感心している。今後も引き続き各県で講習会を開いていただき、先生方が中心になって若い先生方を育て、匠の技を繋げていくということが重要と考えている。大変だと思うが、引き続きご協力いただきたい〟と激励した。

金子益美理事

最後に、金子益美理事から〝今年度から各都道府県での技術講習が行われるが、今年度中の申し込みは現時点で23会場あり、うち5会場はすでに終了している。今後、皆さんに頑張っていただけることを期待している〟と閉会の辞が述べられ、終了となった。

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