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(公社)日本柔道整復師会主催、第3回柔道整復師意見交換会が開催

トピック

2021年10月30日(土)、公益社団法人日本柔道整復師会会館において、第3回柔道整復師意見交換会が開催された。(公社)日本柔道整復師会からは総務部長・三橋裕之氏、理事・徳山健司氏、パネリストとしてTherapist Campの久保聖史氏、高山耕輔氏が参加。司会は日本柔道整復師会個人請求サポートセンターの藤井剛寛氏が務めた。

(公社)日本柔道整復師会主催、第3回柔道整復師意見交換会

今年4月に開催された第2回柔道整復師意見交換会ではYouTubeをはじめとする様々な媒体を介して収集された全国の柔道整復師からの質問や意見に対し、(公社)日本柔道整復師会として回答・解説する形で進められたが、今回はより良い業界を作り上げることを目的としたTherapist Camp側からの提案に対し、意見を交換するという形で進められた。

養成校カリキュラムのアップデート

国家試験も含め、養成校カリキュラムをアップデートすべきではないか。専門学校で学ぶことと実際に現場に出てから学ぶことには大きなギャップがある。また、就職先の施術所によってその後の柔道整復師人生が左右されるように感じている。学問的な側面だけではなく、保険請求等についても養成校で教えるべきではないか。

三橋氏:平成29年にカリキュラムが大幅に改正された。最低履修時間の引き上げをはじめ、臨床実習の充実や超音波観察の指導など大きく変わった。社会保障という授業も加わり、一般的な医療体制や療養費についての事柄は指導しているが、保険の取り扱いについては教員が専任化してしまっているため詳しい人が少なく、授業ができないというのが現実だと思う。ただ、「養成校で学んだことが実際の現場で全く関係なかった」ということがないように、経営学とはいかないまでも、実際に患者さんが来院した際の施術や請求についてはある程度教える必要があるように思う。現在は2年後の改正に向けて、柔道整復研修試験財団とも協議を重ねている。

徳山氏:通常の柔道整復専門学校が3年制をとるなか、私が校長を務める大阪府柔道整復師会専門学校ではあえて4年制としている。そのため、高度な柔道整復師としての称号である「高度専門士」を卒業時に付与できる学校に認定されており、卒業後に大学院への入学も可能となっている。4年制としている理由は2点あり、まず柔道整復のエビデンスを構築するには大学院での研究が必要と考えているため。もう一点が保険請求について、当校の運営母体である大阪府柔道整復師会の保険担当者が授業を行っているため。開業する際に施術録を見たことがない、書いたことがないという先生もいるが、そのようなことがないよう即戦力となる教育をしていきたいと考えている。

保険請求について教えられる教員が少ないという点については、現在オンラインで授業を行っている養成校も多いと思うので、その環境を活かして、全国の養成校をオンラインでつないで専門教員が指導し、試験等は各校で行うというようにすると解決できるのではないか。

三橋氏:社会保障の授業が始まった際には、私にも「授業をしてほしい」という要望を多くいただき、実際に養成校で授業を行ったこともあった。しかし、国家試験に向けた対策や実技を強化する養成校が多い中で、徳山氏が言うように、やはり3年間で保険請求に関してまで教えることが難しいという側面もあると思う。

カリキュラムを改正するには時間を要すると思われるので、日本柔道整復師会で学生向けの療養費の適正化に向けた講義等を行うのはどうか。

三橋氏:オンライン配信やYouTube等での配信も良いと思う。

徳山氏:やはり3年間のカリキュラムに組み入れていくのは養成校としても大変だと思う。夏休みを利用した集中講義等の形で、日本柔道整復師会からの配信を行うなどの取り組みは可能かもしれない。

接骨院AEDスポット化計画

街中に数多くある接骨院に1つずつでもAEDが設置されれば救える命が増えるのではないか。病院外で起こる心停止のうち、AEDが使われているケースはごく僅かであり、そもそもの設置台数も足りていないと考えられる。そこで日本柔道整復師会が中心となり、全国の接骨院にAEDを設置してはどうか。地域の病院や消防、警察との連携を取るきっかけにもなると思う。「接骨院にはAEDがある」と地域住民に認識してもらうことで信頼も得られ、業界としても良い方向に進めるのではないか。

三橋氏:心肺蘇生については柔道整復師の60%程度が上級救命技能講習は受けていると思うが、費用の問題もあり、AEDを設置している接骨院は少ないと思う。ただ、ご提案いただいたようにスポット化という意味では良いと思う。例えばスーパー等にAEDを設置していても、店舗の中に入ってみなければあるかわからないという場合も多いと思われるので「接骨院に行けば必ずAEDがある」と認知されれば、業界にとってもかなりメリットがあると思う。

徳山氏:やはり経費面が一番ネックになるだろう。いきなり全体に広めるというのは難しいと思われるが、日本柔道整復師会がまず取り組むとすれば、支部単位・県単位で公益事業として救護活動等に参加する際にAEDを持参する、というところから始めるべきかと思う。

自費の規制緩和

接骨院として外傷を診るのはもちろんだが、若手の柔道整復師にはこれから開業するにあたって外傷だけを診ていては経営が厳しいだろうと考えている人が多い。そうなると需要が高い自費施術を、国家資格を持った人間が行えるという環境を作るべきではないか。

三橋氏:自費施術として行っているのが、果たして柔道整復術なのか、あるいは整体やカイロプラクティックなのかという線引きができていない。整体やカイロプラクティックを行う場合、専有面積の問題も出てくる。また、完全自費ではなく保険請求を絡めているようなケースもあり、保険者も問題視している。療養費には混合診療に対する定義はないが、基本的に医科に準じるものであるので、保険と自費を混合して行うことも問題があるように思う。やるのであれば受領委任取り扱いは申請せず、自費のみで行うべき。規制緩和となると、様々な問題が生じるのではないか。

患者単価が安いから患者をたくさん診たいが、これだけ接骨院が増えるとそれも難しい。そこで単価を上げるために自費を取り入れたい、と考える人が多いのではないか。以前は接骨院が少なく、1日の患者数が100人を超えていたという話も聞くが、今は10人も来ないという人も珍しくない。そういった背景が根底にあると思う。

藤井氏:骨折や脱臼に対する単価が上がってきているのに、外傷を扱わない柔道整復師が増えている。だがそもそも柔道整復師はそういった施術を行うものであり、そこに乖離がある。日本柔道整復師会では「匠の技 伝承」プロジェクトとして、骨折・脱臼の整復固定や超音波観察装置の取り扱いができる技術と知識の継承に取り組んでいて、それができれば経営も成り立つし、「怪我をしたらまず接骨院に」という流れもできるのではと考えている。

三橋氏:「外傷患者を10人診れば十分に食べていける」という料金体系が理想だと思う。そうすれば不正請求対策にもなる。自費の規制緩和となるとおそらく軟部損傷などに対する施術になるかと思うが、我々の本来の業務は骨折・脱臼・打撲・捻挫であり、そこが確保できていれば料金を上げることも十分に可能だと思う。不正対策を行ったうえで料金体系を変えていけば、国や保険者も納得するのではないか。日本柔道整復師会工藤会長は将来、「痛みがあるものはすべて柔道整復師が扱えるように」という方向性を述べている。

徳山氏:一番大切なのは痛みとリラクゼーションの棲み分けだと思う。

保険者との対談

柔道整復師と保険者が敵対しているのではと感じる部分がある。保険者からすると、65歳以上の人が病院や接骨院にかかった場合、その数倍の額の高齢者納付金を国に納めなければならないため、そこに支払うくらいなら保健事業等にお金を使いたいと考えている。それであれば、保険請求できない部分については療養費という形ではなく、保健事業費から捻出してもらうことも可能なのではないか。このような明るい未来に向けて、保険者と対談してみてほしい。

三橋氏:昔から頻繁に保険者と連絡を取ったり直接会って話したりしているが、全く対立はしていない。基本的には考えていることは一緒で、保険者としては被保険者に健康になってもらいたいし、原因がある痛みなら我々柔道整復師が診ることができる。組合員全員が病院に行けば保険料が膨大になるが、接骨院であれば安価に済むし、非常に助かると思う。

保険者は柔道整復団体が多数あり、どこが窓口なのかわからない、そもそもそんなに団体が必要なのかと感じている。

三橋氏:柔道整復療養費検討専門委員会でも議題に上がったが、やはり全部の団体が良い団体というわけではない。本来、柔道整復療養費は「団体協定」と「個人契約」しかないという形で進めてきたが、現在は請求代行業者が数多く存在し、復委任の問題も出てきている。医科とは異なり、グループ接骨院を経営する人や請求代行業者のトップが柔道整復師とは限らないというのも問題がある。

不正請求を無くすには?

不正対策については、現状では個人のモラルに任せるということしかできていない。やはり何かしらのシステムを導入すべきではないか。不正請求をする一部の柔道整復師がいることで保険者への印象も悪くなっていると思う。

三橋氏:不正請求は詐欺だと、学生のうちからしっかり植え付けていくことも必要。学生に施術録や支給申請書を書かせることから始めるのもひとつの方法だと思う。また、不正請求には不正と認識してやっている人と、そうではない人がいると思う。そこを何とかしなければならない。日本柔道整復師会では会員に対し頻繁に保険講習会も行い、不正の事例なども挙げて周知している。

藤井氏:実際に大手グループ院に勤務する柔道整復師から「交通事故の不正請求に加担させられている。やらないとクビになってしまうかもしれない。どうにかならないか」と相談を受けたこともあり、非常に問題だと思う。不正は今すぐ止めてもらいたい。

審査を人間が行っているというのが一番の問題だと思う。電子請求の中で不正ができないシステムを導入することも可能なのではないか。実際に他業種による柔道整復の不正感知システムも開発されてきているが、業界内で行うほうが業界のためにも良いと思われる。

三橋氏:電子請求において、本当に必要で多部位・頻回施術している場合であっても、それをAIで一律に切られてしまうのではないか、正確に判断ができるのかという点を懸念している。国民健康保険や全国健康保険協会の審査会の場合は、施術所ごとに支給申請書を確認しているため、いわゆる傾向審査が可能となっているが、果たしてそこまで機械でチェックできるのか。
グループ接骨院経営者や請求代行業者のトップが柔道整復師ではないところは、特に問題が多いように思う。例えばグループ院で、多く請求すればより多く給料をもらえるといった歩合制をとっているところもある。

徳山氏:大阪でも請求団体の指導で不正請求をしているという事例があった。やはり団体のトップがモラルを持っているかが重要だと思う。
また、返戻レセプトがあると不正を疑われやすいと感じる。大阪府柔道整復師会では、返戻レセプトの7割が保険証の確認不足や資格喪失など資格関係の理由だった。そこで返戻レセプトがなくなれば不正も防げるだろうということで、返戻レセプトゼロを目指すキャンペーンを行ったこともある。

藤井氏:よく「保険請求テクニックセミナー」と称した講座を開いているところもあるが、実際に行った施術について支給申請を行うだけなのだから、テクニックなど何もない。今後、日本柔道整復師会では、個人請求サポートセンターとしてホームページ上に窓口を開設する予定。不正を行っている施術所を知っていたり、また「これって不正なの?」と不安に感じたりすることがあれば、ぜひ情報提供していただきたい。日本柔道整復師会のTwitterでも相談を受け付けている。

日整が考える柔道整復師の未来

現在、平成世代の柔道整復師が4万人程度いるなかで、次世代の柔道整復師に向けてどのような環境整備を考えているのか。また、どのように業界をけん引していくのか。学生に対して、業界の魅力や実際に稼ぐことができるのかどうか等の情報を発信するならば、教育や稼げる環境も大切になる。医療職である柔道整復師には難しい面もあるが、だからこそ自費施術も取り入れていかなければ未来はないように思う。守るべき伝統を教える場も時代にあわせて作りつつ、新たな領域も視野に入れるべきではないか。

三橋氏:昭和60年頃までは患者も多く良い時代だったと思う。一方で今は混迷の時代。一番大きいのは料金の問題だと思う。柔道整復療養費は平成24年度以降右肩下がりだが、その分医療費は増加している。柔道整復の料金が上がっても、医科にかかる人がその分接骨院にかかってくれればそれほど医療費全体は増加しないと考えている。そのためにも、まずは業界全体を改善していかなければならない。「怪我をしたら接骨院に行く」という流れを作るために、骨折・脱臼の患者が来院したときにしっかり整復・固定ができる技術を身に付けることが重要。

藤井氏:柔道整復師が活躍する場面は増えてきているように思う。外傷を診ない若い世代が増えているが、例えばスポーツの現場においても骨折・脱臼を診てもらえるのは選手にとっても非常にメリットがあることだと思う。やはり原点に立ち戻るべきと感じる。

三橋氏:さらに、超音波観察装置をスポーツの現場に持参して使えるようになれば、もっと外傷患者も増えると思う。

外傷が増えると整形外科との棲み分けの問題も懸念される。業界団体が一つにまとまれば、整形外科との棲み分けも上手くいくのではないか。その点においては業界全体の改革が必要と考える。「痛みはすべて柔道整復師が診る」といったビジョンも新鮮で、そういった未来が近づいてくると、柔道整復師が医療費を下げるとか、国民を健康な状態にさせ続けるといったことが可能になるのではないか。

徳山氏:国家資格を持っている限りは、食べていける職業でなければならないと考えている。コメディカルの一員としてタスクシフトしてもらえるようになればこの業界もしていくだろう。そのためにも、運動器系の疾患を扱う職業としてスキルアップが必要だと考える。

藤井氏:柔道整復術が柔術の活法から発展して現在も残っているということを、柔道整復師として胸を張ってもらいたい。柔道整復師を子どもたちが憧れる職業にするためにも、「自分は関係ない」ではなく当事者意識をもって様々な取り組みやその情報に耳を傾けてほしい。柔道整復師が一致団結して取り組めば様々なことができると思うし、そこに明るい未来があると信じている。

三橋氏:意見交換会は今回で3回目となるが、我々にとっても非常に勉強になる。ぜひ様々な意見や情報を寄せていただきたい。

最後に、久保氏は〝いつでも相談してほしいと聞き、とてもオープンだと感じた。さらに寄せられた意見に対して「こうなった」という結果をフィードバックしてもらえると、自分の意見が無駄ではなかったと意義を感じられると思う。先輩方でなければできない話もあるので、若手としても頼れるところは頼って進めさせていただければと思う〟、高山氏は〝やはり課題は山積みだと感じた。企業等に行って施術させていただくととても喜んでもらえるので、非常に需要はあると感じるが接骨院があまり認知されていない。先輩方の人脈と若手のフットワークを使って認知度を上げていきたい。今後もこのような意見交換会を開催させていただきたい〟と締めくくった。

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