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日本機能訓練指導員協会、第1回認定機能訓練指導員実務研修会が開催!(前編)

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令和2年12月6日(日)・13日(日)の2日間、東京都柔道整復師会会館において、日本機能訓練指導員協会主催『第1回認定機能訓練指導員実務研修会』が開催された。受講人数を制限したうえで参加者は全員マスク着用、会場には消毒液を設置し、座席間隔を十分に確保するなど、新型コロナウイルス感染拡大防止に配慮した上での開催となった。

第1回認定機能訓練指導員実務研修会

柔整ホットニュースでは2日間の講義の模様を、前編・後編の2回に分けてお届け。
前編では、開校式の模様と(公社)日本柔道整復師会特別諮問委員を務める三谷誉氏による講義についてお伝えする。

開校式

日本機能訓練指導員協会は、現場で即戦力となれる機能訓練指導員を育成することを目的として、公益社団法人日本柔道整復師会と公益社団法人日本鍼灸師会によって2019年12月1日に設立された団体だ。同協会初代会長は(公社)日本柔道整復師会会長・工藤鉄男氏、同協会監査役は(公社)日本鍼灸師会会長・小川卓良氏が務める。

工藤鉄男氏

工藤氏は、〝柔道整復師も鍼灸師もその施術は「医業類似行為」と呼ばれているが、いずれも効果が裏付けられているからこその国家資格だと考えている。しかし、患者は医科以外の治療法も模索しているから柔道整復師や鍼灸師のもとにやってきているにもかかわらず、例えば捻挫であっても脱臼を伴えば医師の同意が必要になるなど、その扱いには疑問を感じる点がある。特に地域包括ケアでは「機能訓練指導員」として活動しているが、あまり評価されていないように思われる。日本機能訓練指導員協会を立ち上げたことで、我々コメディカルが互いの領域を奪い合うのではなく、互いに尊重しあいながら団結して運動療法の技術を学び合い、それを地域住民に還元していけるようにしていきたい。そういった取り組みが医師をはじめとする外部からの評価に繋がり、自身の施術所等で行った運動療法に対して介護保険を請求できるようになるなど業界の発展にも繋がるだろう〟と展望を述べた。

小川氏

小川氏は〝本日は柔道整復師と鍼灸師が共同で協会を設立して初めて研修会を行う記念すべき日。多くの方々の努力とご尽力によって、鍼灸師も機能訓練指導員という職に携われるようになった。鍼灸師に限っては6か月の実務経験が義務付けられているが、鍼灸師の職域拡大のためにもこの条件撤廃あるいは緩和に向けても活動していきたいと考えている。しかしながら機能訓練は生活機能の訓練・維持、そして介護予防につながることから、今日学んだことは必ず役に立つ。鍼灸臨床に活かすことで患者にも喜ばれるだろう。鍼灸治療とあわせて機能訓練を行えば、効果が相まって健康寿命が延び、国民のため、ひいては国のためになる。ぜひ本日参加されている方々にパイオニアとなっていただきたい〟と期待感を込めて語った。

介護保険制度における機能訓練指導員の役割

公益社団法人日本柔道整復師会特別諮問委員 三谷誉氏

機能訓練指導員の役割

三谷誉氏

機能訓練指導員は「日常生活を営むのに必要な機能の減退を防止するための訓練を行う能力を有する者」と定義され、職種としては理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師が含まれる(ただし鍼灸師が機能訓練指導員となるためには国家資格取得後、鍼灸師以外の機能訓練指導員が配置された事業所での6か月の実務研修が要件として課されている)。
機能訓練指導員が指導する対象は利用者だけではなく介護スタッフなどにも及ぶ。業務としては、具体的には個別機能訓練計画書又は運動器機能向上計画書の作成、個別機能訓練プログラムの立案・実施、計画書に対する評価・モニタリング、多職種とのカンファレンスなどを行う。

病院の入院から退院までの流れはパターン化されていて、ケアマネジャー、メディカルソーシャルワーカー、退院支援看護師など多職種が連携している。機能訓練指導員として活動していくためには、利用者本人・家族を交えた多職種からなる退院支援カンファレンスに「機能訓練の専門家」として呼ばれるような人材になり、利用者の情報を得られるようになる必要がある。

政府は、65歳以上の高齢者の人口が最大になるとされる2040年を見据えて社会保障の見通しを立てており、医療提供体制の改革や持続可能性の高い介護提供体制の構築などが課題として挙げられている。
地域包括ケアシステムは、地域の実情に応じて高齢者が可能な限り住み慣れた地域でその有する能力に応じ、自立した日常生活を営むことができるよう、医療、介護、介護予防、住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制を指すが、その中には『今ある社会資源を活用していこう』という考え方がある。接骨院なども社会資源の一つとして、地域包括ケアにどう参入していくかが課題となる。介護予防日常生活支援総合事業には参入のチャンスがある。健康寿命が短いと医療費も膨らむため、健康寿命の延伸と健康格差の縮小に国も注力しており、コメディカルの活躍が期待されている。

機能訓練指導員の対象者像には、介護保険制度等による対象者(要介護認定による要介護者、基本チェックリストによる事業対象者)、心身機能による対象者(サルコペニア、フレイル、ロコモティブシンドローム、障がい者区分)がある。ただし、要介護認定を受けている人がサルコペニアになっているなど、両方に当てはまる場合も多い。対応方法としては、▼通所介護事業所等の立ち上げもしくは勤務、▼施術所で1号通所事業所の指定・委託を受ける、等がある。制度を理解したうえで必要なスキルを身に付ける必要がある。

機能訓練指導員としての視点

機能訓練指導員として介入する際には、ケアマネジャーの作成するケアプランの見方を理解しておかなければならない。ケアプランとは、利用者一人ひとりの現在の状況を踏まえ、その方が望むその方らしい生活をしていくための設計図である。現状について細かく評価することで、今後の可能性や危険性などを浮かび上がらせ、利用者やその家族の思いなどを踏まえたうえで長期・短期の目標や今後の具体的な取り組みなどを盛り込む。ケアプラン作成と同様に、個別サービス計画の作成においても現状のアセスメントを行い、ICF(WHO国際生活機能分類)に沿って、生活目標を達成するための具体的な実施内容(訓練)や頻度などを計画する。「できる生活活動」等の評価(能力)、「している生活活動」等の実働(行動)の確認、改善の可能性や方法などの検討を行い、課題を抽出したうえで設定した目標に向かってアプローチすることが重要となる。

事業開始前に行うサービス担当者会議には、主治医、利用者・家族、居宅サービス担当者、住宅改修・福祉用具担当者等が参加する。利用者を中心として、ニーズやケアプランの共有、役割分担の明確化やリスク管理などを協議する。説明をする際には「足の痛みが少なくなり買い物に行けるようになる」「肩が動くようになり服の着替えが楽になる」というように、機能訓練を行うことでどう変化するのかを具体的に示すと他業種にも伝わりやすい。

個別サービス計画の作成

個別サービス計画の作成においては、座っているだけではわからない利用者の状況を推察し、何を聞きとるのか、そしてそれを基にどのように個別サービスを考えるのかが重要だ。

転倒であれば、いつ転倒したか?どこで転倒したか?薬は服用しているか?服用する薬の種類が変わったか?等、状況を詳しく正確に引き出せるように質問すること。過去30日間・過去90日間の転倒回数や転倒状況などを聞き取ることによって、リスク要因や転倒後の心身の変化などについても検討することができる。身体能力の制約が転倒リスク要因となっている場合は、座位バランスを保つのは難しいか?歩幅は狭くなっていないか?筋骨格系の問題はあるか?など順序立てて考え、その原因に合わせた改善策を模索していくことが大切である。運動器以外の問題に目を向けることも重要。視覚障がいや認知障がいがある場合も転倒リスクは高くなる。また、転倒の痛みや恐怖により出歩かなくなり心身機能や認知機能が低下する「転倒後症候群」にも注意する。現在どの状態にあるのかをしっかり確認し、負のループを断ち切る必要がある。

運動については、利用者の求めている目標に沿って、習慣化できる運動を処方する。何のために機能訓練を行うのかを把握し、その目標を達成できるプログラムを組むことができるかが重要だ。そして目標を達成するためにはどのような運動内容が必要なのかを具体的に検討し、現在のレベルを考慮して運動メニューを組む。身体活動量が増加することで心肺機能の強化や転倒リスクの低下も期待される。運動を習慣化するためには、利用者が目標を理解していることも大切だ。


後編では、東京大学大学院特任研究員・竹並恵理氏『筋肉から健康を考える!シニアのための筋育栄養学』、公益社団法人日本柔道整復師会特別諮問委員・藤本進氏『認知症について(認知症サポーター養成講座)』、新宿医療専門学校歯科衛生学主任・内藤美生氏『嚥下機能と口腔機能 摂食嚥下とQOL』、株式会社ペアレント専務取締役・谷元健吾氏『福祉用具と住宅改修の知識と活用方法』の4題についてお伝えする。

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