審査改革し、医療費大幅削減/韓国
病院から請求される医療費をコンピューターで審査する仕組みを日本から学んだ韓国が大幅なコスト削減に成功し、世界から注目されている。日本はシステム開発計画で先行したが、医師会などの反対で出遅れている。
医療費請求を一手に審査する韓国政府機関「健康保険審査評価院」(HIRA)では、約150人の審査員が電子請求された医療費をパソコン画面でチェックする。日本は医師、歯科医師、薬剤師しか審査員になれないが、HIRAでは審査員の大半が若い女性看護師だ。
審査室の趙貞淑室長によると、コンピューターによる「機械審査」によって、コンピューターが人の目でしか審査できないと判断した請求書だけを審査員のパソコン画面に表示しているため人件費が削減できる。審査員がチェックするのは全請求の14%ほどだという。
HIRAは年1千件の不正請求を調査している。制度開始から9年間で見つかった不正請求額は約367億ウォン(36億7千万円)、報奨金は約34億ウォン(3億4千万円)にも及ぶ。
日本は1983年に韓国に先駆け、機械審査を視野に入れた医療費請求の電子化計画「レインボーシステム」を打ち上げている。この年に韓国の機械審査の開発責任者である沈氏が来日した。沈氏は日本システム技術(JAST)で1年の研修の後、4年間勤務した。帰国後、94年に大手通信会社の事業部長として機械審査のシステム開発を担当し、97年に本格運用を実現。
日本の審査は、社会保険診療報酬支払基金(支払基金)と国民健康保険団体連合会(国保連)の2団体がほぼ独占してきた。ともに国や自治体から天下りを受け入れ、高コスト体質を指摘されている。機械審査も4年前に本格導入されたばかりで、その後も全請求書を人の目で審査している。8千人以上の審査員らがすべての請求書に目を通す日本に対し、海外ではコンピューターが問題ありとして抽出した数%の請求書に限って、人がみる方法が主流だ。
06年に全請求書を電子化した韓国に対し、日本では医師会などの反対で導入が遅れ、今も完全実施に至っていない。
<ニュースソース>
朝日新聞(2016/06/16 朝刊)
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