平成26年度健康保険組合全国大会 開催
平成26年11月26日(水)、東京国際フォーラムにおいて「皆保険を次世代へつなぐ改革実現総決起大会」をテーマに掲げ、健康保険組合全国大会が盛大に開催された。当日は健康保険組合関係者を中心に全国より4000人を超える参加者が詰めかけた。
会場を埋め尽くした健康保険組合関係者が見守る中、大会は運営委員長を務める三菱健康保険組合理事長・徳永一夫氏の開会の辞により幕を開けた。
健康保険組合連合会会長・大塚陸毅氏は、基調演説の冒頭で今月21日に衆議院が解散したことに伴う消費税率引き上げ延期に言及し、〝消費税は社会保障財源に直結する財源であり、非常に重要なものと考えている。来るべき消費税率引き上げの日に向け、より強力に活動を推進するとともに、公費投入による財政支援、不合理な現行制度の是正・改正等によって、現役世代の負担の軽減を目指していかなければならない〟と話した。
医療保険制度改革の現状については〝非常に重要な時期に差し掛かっている。昨年の社会保障制度改革国民会議の報告書では肝心の高齢者医療についてほとんど触れられていなかったが、我々の再三にわたる主張の甲斐もあってか本年4月以降の社会保障審議会医療保険部会の論点に加えられ、我々としても期待を高めている。現在、健康保険組合が先行きの見えない苦しい財政状況を強いられている最大の要因は、高齢者医療への過重な負担にある。拠出金は保険料収入の45%を超え、このままでは50%を超えることも確実であり、健康保険組合の存続だけでなく皆保険制度そのものが崩壊しかねない。来年にはすべての団塊の世代が前期高齢者へ移行することで、さらに負担が増大することは明らかである。世代間の助け合いとして高齢者医療への一定の負担は必要なことだが、負担にも限界がある。特に国民医療費の約6割を占める高齢者医療費について、現役世代と高齢者の負担の公平性の確保や公費の拡充について、中長期にわたるビジョンを持ったうえで改革が進められるべき〟と訴えた。
また同時に、増え続ける医療費の抑制も重要であるとして、〝思い切った給付範囲の適正化も含めて、更なる医療費適正化策の実施を求めていくとともに、要求するだけではなく、我々も苦しい中少しでも加入者の将来の健康が保たれるような事業を実施していかなければならない。私は健康保険組合連合会会長に就任して以来、「一般の方々にできるだけわかりやすく伝えていく」ということを意識してきた。我々の健康保険組合に関心を持ち、その状況と主張を理解していただくには、わかりやすく粘り強く伝えていかなければならない。本日ご参加の皆様方にも意識し、実行していただきたい〟と協力を求めた。
この全国大会を契機とし、「前期高齢者医療への公費投入の実現」「高齢者医療費の負担構造改革と持続可能な制度の構築」という2つのスローガンの達成に向け、健康保険組合連合会副会長・白川修二氏によりスローガンを基にした決議の趣旨が説明され、百十四銀行健康保険組合常務理事・宮武厚志氏により決議内容が読み上げられた。決議は拍手をもって全会一致として採択され、健康保険組合の総意として厚生労働審議官・原勝則氏に要望が提出された。
(決議内容の詳細はこちらをご覧ください)
公務のため止む無く欠席された厚生労働大臣・塩崎恭久氏に代わり、原氏は〝我が国の医療制度は国民皆保険の下、国民がいつでもどこでも良質な医療を受けられ、長寿を全うできる社会の基盤として経済成長や国民生活の充実とともに発展してきた。しかし近年は高齢者の医療費が増える一方で、支え手である現役世代の人口が減少傾向にある。制度の持続可能性を問う声も聞かれるようになり、日本の医療保険制度全体の給付と負担のあり方について検討していかなければならないと考えている。そのため現在厚生労働省では、昨年12月に成立した社会保障制度改革プログラム法に基づき、後期高齢者支援金に対する負担のあり方を含む高齢者医療制度の見直しや医療費適正化といった諸般の改革に取り組んでいる。皆様との連携を基盤として、医療保険制度の持続性の確保に取り組んでいきたい〟とメッセージを代読した。
続けて来賓紹介や政党代表挨拶が行なわれ、その後関係団体として日本経済団体連合会社会保障委員会医療改革部会長・望月篤氏、日本労働組合総連合会会長・古賀伸明氏、全国健康保険協会理事長・小林剛氏が登壇し、挨拶を行なった。
望月氏は〝今はまさにデフレからの脱却と経済の好循環を実現できるか否かの正念場と考えている。高齢化を背景に社会保険給付は増え続けるという中で、今後も社会保険料率は上昇を続けることが確実とされており、経営者の間でも高齢者医療への拠出金等社会保険料負担が際限なく増え続けることに対し、懸念する声が非常に高まっている〟と述べ、保険料の引き上げにつながる政策は〝何としても阻止していかねばならない〟とした。
古賀氏は〝健康保険組合の平成24年度及び25年度決算によると、高齢者医療の拠出金の割合は保険料収入の5割以上を占めているという健康保険組合が2年連続で全組合の3割を超えた。このような事態を招く要因である高齢者医療の財源の在り方を見直さない限り、根本的な解決にはならない。21日に衆議院が解散し総選挙が決まったが、超少子高齢化が急速に進む社会にあってこの改革の歩みを決して止めてはならない〟と力強く述べた。
小林氏は〝白川副会長から「健康保険組合と協会けんぽは同じ被用者保険の仲間である」というお言葉をいただいたが、私たちも全く同じ思いを持っている。私たち被用者保険の保険者は、患者や加入者の皆様に対して質の高い医療サービスを提供できるよう、また医療財政が安定的に運営できるよう、関係方面に意見を発していかなければならない〟と一層連携を強めていく意志を表明した。
最後に、大会運営副委員長であるクボタ健康保険組合常務理事・阪口克己氏が〝我々の主張する改革が実現するまで厳しい状況が続くと思われるが、我々健康保険組合は全国3000万人の健康を守り支える保険者として、皆保険制度の維持・発展を目指して取り組んでいかなければならないと再認識した〟と閉会の辞を述べ、閉会となった。
このほか、皆保険制度の認知と保険料負担に関して行なわれた街頭インタビューのVTR放映や、野球解説者の田口壮氏とプロゴルファーの古閑美保氏をゲストに迎えたトークセッションが行なわれた。街頭インタビューには一般の方々の健康保険に対する認識・関心の薄さが表れており、健康保険の現状に関する周知を行なっていく必要性を感じさせた。トークセッションではアスリートならではの健康管理方法やスポーツにはつきものの怪我との向き合い方等についてエピソードを交えて紹介され、会場は和やかな雰囲気に包まれた。
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