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何故、柔道整復は国民に支持されてきたのか?
【第8回:非医業禁止勧告による消滅の危機】

2018/03/01

前号でお伝えした通り終戦直後に、省令の改正という形式であったものの「按摩術営業取締規則」から「柔道整復術営業取締規則」として単独法成立に向けた悲願達成もつかの間、PHW(進駐軍衛生部)による非医業禁止勧告により、歴史上再び大きな消滅の危機に直面します。

これは我が国の衛生面の向上措置や武道の禁止に乗じて、いわゆる東洋医学的治療そのものに対する偏見的な捉え方も加わった禁止勧告であったと言えます。

PHW統括者であるサムス大佐の命令は絶対的であり、厚生省医療制度審議会も逆らうことが許されず、禁止勧告に対する厳しい答申を出さざるを得なかったそうです。

 

厚生省医療制度審議会による禁止勧告に対する答申内容
1)
鍼灸、按摩、マッサージ、柔道整復術営業者は凡て医師の指導の下にあるのでなければ、患者に対してその施術を行わしめないこととすること。
2)
鍼、灸営業については、盲人には原則として新規には免許を与えないものとすること。
3)
柔道整復術営業については、原則として新規には免許を与えないものとすること。
4)
いわゆる医業類似行為は凡てこれを禁止すること。

この答申を受けた厚生省は、4)の医業類似行為は全面禁止とし、1)2)3)については、医業の一部と位置付けることとした。
それが法第1条の冒頭に「医師以外の者で」を冠した真意である。

(理療の科学 第20巻・第1号 芦野純夫先生著より抜粋)

4)の記述は、凡ての医業類似行為を禁止としており、1)~3)とは明らかに区別されています。つまり鍼灸、按摩、マ、柔道整復術はいわゆる医業類似行為とは異なり、医業だと捉えることが示唆されます。
また、1)2)3)は医業の一部とすることにより、後に成立する法律の第一条に定められた「医師以外の者で」と但し書きされるに至った可能性があると考えることができます。
芦野先生のお考えと共に、当時の営業法の成立までの主な動きから、非医業として禁止の対象となったのは療術行為や、無資格者による行為を医業類似行為として限定し、資格を有する鍼灸、按摩、マ、柔道整復は医業として今日に継承されていると言えそうです。
(編者注釈)

業界としては省令の改正という形式ではあるものの、これを起点として法改正に全力を傾注し、国会においても衆参両院で賛成支持を得ました。ですが上述のように連合軍最高司令部の了解が得られず、国会での賛成も見送られることになりました。
しかし、一松厚生大臣・小野厚生委員長のお陰をもって昭和22年12月20日「あん摩、はり、きゅう、柔道整復等営業法」として国会の通過を得て制定公布されました。

 

昭和22年12月5日衆議院厚生委員会速記録(営業法の成立前)抜粋

金光義邦 厚生政務次官:
医業類似行為乃至療術行為は、医療衛生上種々の弊害も考えられますのみならず、存置の根拠も乏しいと考えられますので、今後新規には一切認めないことと致したのであります。

田中松月 代議士:
~略 第四条によりますと、外科手術を行なったり薬品を与えてはいけないということになっておりますが、脱臼したとか骨が折れたという場合に、俗に云う骨継ぎの仕事をすることはちょっと考えてみると「外科手術」のような気がしますが、そしてその上に膏薬でも張ってやるということまで第四条によると禁じられることになると、その接骨師の仕事そのものを否定したような格好になってしまいますが ~略~ どの程度やってよいのか、どの程度がいけないのか、そうして又、根本的に云いますと、全く骨折そのものを否定するようにも見受けられますが、この点について御説明をお願い致します。

東龍太郎 厚生技官:
第四条、第五条についての御質問でございましたが、決して接骨の施術を出来ないようにすることは考えておりません。~略~ 只今純然たる観血的外科手術という意味でございます。

福田昌子 代議士(医師):
~略 この「あんま師及び柔道整復師は医師の同意を得た場合の外云々」と云うことが書いてありますが、私はこの条文におきまして、あんま師という文句を挿入する必要はないと思うのであります。~略~ あんまということで特別規定する必要はないのではないか、更に又あんまというものと柔道整復ということが同等のかたちに取扱われがちと思われるのでありまして、その修業過程においても非常に差があるものを同じに取扱うことは、非常に弊害が伴うものではないかと斯様に考えるのであります。

東龍太郎 厚生技官:
~略~ これは脱臼又は骨折の患部に施術をしてはならない。ということがありますが、何も脱臼をあんまが直すという意味ではないのであります。既に脱臼をしてそれが整復されておる患者でありましても、そこに多少のあんま術を必要とする場合には、あんま師と云えども矢張りその患部を施術することがあるから柔道整復師と並べて入れた訳であります。

福田昌子 代議士(医師):
第一条でございますが、柔道整復師という名前になっておりますが、世間ではこういうように呼んでいる人は先ずないのでありまして、所謂骨つぎ屋さんというような名前で呼んでいるのでありますが、接骨師に類したようなもっと簡単な名前に変えていただく方が大衆的であり、使用価値があるのではないかと思います。

一松定吉 厚生大臣:
~略 委員会におきましてそれは穏当でないから接骨師という名前に変えろというような御修正のことでありますれば、強いて政府は反対致しません。

榊原亨 代議士:
~略 薬品を投与することが出来ないと致しますと、例えば整復を致しました後にイヒチオールを塗りますとか、或いはその他の罨法の薬も塗ることが出来なくなりますが、かかる簡単なことは整復術を致しました後の処置として許さなければならぬのではないか。この点が本文上はっきりしておりませんが如何でございますか。

東龍太郎 厚生技官:
~略 薬品を投与した云々と云うのは、医師が患者に対して薬品を投与するようなそういうやり方、つまり処方箋を出すというような意味の授与のことでありまして、患部にイヒチオールを塗るとか或いは必要な薬品を塗る、或いはこういうような売薬をつけるということを教える、そういう意味のことを禁じる意志はないのであります。接骨師として当然許された範囲内において行うべきものについては、それをも禁じるというつもりはないのであります。

(日整六十年史より一部抜粋)

 

戦後の混乱期、加えて敗戦国となった我が国の各政策に対して、絶対的権限を有するGHQ連合軍最高司令部に抗してまでも柔道整復は再び認められることとなりました。

その根拠とは、衆議院厚生委員会の抜粋からも柔道整復師への信頼にほかなりません。

ただし、療術行為や無資格者によるいわゆる医業類似行為については完全に否認されています。

現在、柔道整復や按摩、鍼、灸、治療は「医業類似行為」の範疇にあるとされる意見が散見されますが、非免許者による治療行為を意味する法令的行政用語であると言えなくもありません。

GHQはすべての非医業を禁じる方向へシフトしましたが、消滅の危機を脱した柔道整復は、国家資格を有する身分であり、医業の一部と認められているものだと言えます。

柔道整復師の先生方は、柔道修養と共に利他の精神によって国民から信頼が寄せられ現代に継承された賜物であります。

 

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